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ナトリウム−硫黄電池における消火装置
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- 【要約】
【目的】 ナトリウム−硫黄電池の収納ケース内の火災に対して消火剤の充填不十分となるのを回避できるとともに、消火剤が過剰に投入されて浪費されたり、配管系に残って別の収納ケースの消火が不可能となったりするのを防止できる消火装置を提供することにある。
【構成】 電池を収納した収納ケース1と、粉末又は粒状の消火剤4が貯蔵された貯蔵タンク5を有し収納ケース1内へ消火剤4を不活性ガス流にのせて供給する消火剤供給装置と、前記複数の収納ケース1と対応するように消火剤経路中に設けられ火災事故時間に開放される弁とからなり、消火剤供給装置から収納ケース1に至る経路の一部に設けられた圧力検出装置としての圧力センサ14と、同圧力センサ14の信号に基づいて開放状態の弁を閉鎖するように制御する制御装置とを備えたことからなる。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 ナトリウム−硫黄電池により構成された集合電池を収納した複数の収納ケースと、粉末又は粒状の消火剤が貯蔵された貯蔵タンクを有し前記収納ケース内へ消火剤を不活性ガス流にのせて供給する消火剤供給装置と、前記複数の収納ケースと対応するように消火剤経路中に設けられ火災事故時に開放される弁とからなり、前記消火剤供給装置から収納ケースに至る経路の一部に設けられた圧力検出装置と、同圧力検出装置の信号に基づいて開放状態の前記弁を閉鎖するように制御する制御装置とを備えたことを特徴とするナトリウム−硫黄電池における消火装置。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ナトリウム−硫黄電池により構成された集合電池の火災を消火するための消火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ナトリウム−硫黄電池の事故火災消火は、粉末又は粒状の消火剤を窒素などの不活性ガスの流れにのせて電池の収納ケース内に投入することにより行われる。この場合、消火剤及び不活性ガスは前記収納ケース内の壁部に設けたノズルからケース内に噴射される。そして、ケース内において不活性ガス及び消火剤の流速が低下するため、消火剤がケース内に沈下残留して消火が行われる。収納ケース内の不活性ガスは収納ケースの壁部の排出口からケース外に排出される。
【0003】この場合、当然のことながら、消火剤は短時間で円滑に収納ケース内に投入され、消火剤の充填完了と同時のタイミングで投入が停止されるのがよい。このため、従来は消火開始から終了までに要する時間を実験などの経験に基づいて定め、消火開始から一定時間経過すると、自動的に消火剤投入による消火動作が終了されるようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記の消火に要する時間は、消火剤及び不活性ガスを搬送する配管系の長さ、不活性ガスの圧力などの種々の要因によって変動するものである。従って、消火に要する時間は一様ではない。このため、従来の消火装置においては、消火が完了する以前に消火剤投入が終了する危険性や、消火剤が余分に投入されるおそれがあった。そして、後者の場合には余分な消火剤が配管系の内部に残留することがあり、このような場合には別の収納ケースに対する消火に支障をきたすという問題があった。
【0005】つまり、収納ケースは多数が列状に並べられ、その多数の収納ケースは消火配管系を共用しているのが一般的である。このような場合には、消火時の残留消火剤により配管系が閉塞されたり、配管内流路が狭くなったりすると、それ以後の別の収納ケースに対する消火に支障をきたすものである。
【0006】なお、従来、配管内の消火剤及び不活性ガスの流速を検出して、収納ケースに対する消火剤の投入量を判断することも考えられた。しかし、消火剤の流速を不活性ガスとともに検出する流速計は複雑で、高価である。
【0007】本発明は上記問題を解消するためになされたものであって、その目的はナトリウム−硫黄電池の収納ケース内の火災に対して消火剤の充填不十分となるのを回避できるとともに、消火剤が過剰に投入されて浪費されたり、配管系に残って別の収納ケースの消火が不可能となったりするのを防止できるナトリウム−硫黄電池における消火装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明ではナトリウム−硫黄電池により構成された集合電池を収納した複数の収納ケースと、粉末又は粒状の消火剤が貯蔵された貯蔵タンクを有し前記収納ケース内へ消火剤を不活性ガス流にのせて供給する消火剤供給装置と、前記複数の収納ケースと対応するように消火剤経路中に設けられ火災事故時に開放される弁とからなり、前記消火剤供給装置から収納ケースに至る経路の一部に設けられた圧力検出装置と、同圧力検出装置の信号に基づいて開放状態の前記弁を閉鎖するように制御する制御装置とを備えたナトリウム−硫黄電池における消火装置をその要旨としている。
【0009】
【作用】火災事故時において前記収納ケース内に粉末又は粒状の消火剤が投入され、収納ケース内に消火剤がほぼ満たされると、消火が完了するとともに、消火剤供給装置から収納ケースに至る経路内の不活性ガスの圧力が上昇する。このとき、ガス供給装置から収納ケースに至る経路の一部には圧力検出装置が設けられているので、この圧力検出装置が前記圧力上昇を検出し、この検出信号に基づいて、制御装置が開放状態の弁を閉鎖させる。従って、適正量の消火剤により収納ケース内の火災が確実に消火されると同時に、消火剤の供給が停止されるので、過剰の消火剤が使用されるおそれはない。
【0010】
【実施例】以下に本発明を具体化した実施例について図1〜3に従って説明する。図1に示すように、四角箱状をなす収納ケース1内にはナトリウム−硫黄電池の単電池を多数組み込んだ複数の集合電池2が収納され、この収納ケース1が複数並べて設置されている。これら収納ケース1には、粒状の消火剤4が充填された貯蔵タンク5が消火剤経路となる連結配管6を介して接続されている。前記集合電池2の内部は図示しないが、単体のナトリウム−硫黄電池単体で、もしくは上下方向に積層されて直列接続された状態で設けられている。そして、単体のナトリウム−硫黄電池には固体電解質管を介して金属ナトリウムと硫黄とが区分して収納されている。さらに、前記収納ケース1の内部は約300℃に保持され、電池内の金属ナトリウム及び硫黄を溶融状態にしている。
【0011】前記連結配管6には貯蔵タンク5内の消火剤4を収納ケース1へ通過させるための常閉の導入弁7が設けられるとともに、連結配管6の各収納ケース1に接続される部分は分岐管6aに分岐されている。これら分岐管6aには火災が発生した収納ケース1に消火剤4を通過させるための常閉の選択弁8がそれぞれ各収納ケース1に対応するように設けられている。前記消火剤4は電池の活物質及び火災発生時の生成物と非反応性を有し、吸湿性がなく絶縁性を有するものが使用される。具体的には、消火剤4は粒子径0.2 〜2.0mm のセラミック粒子や砂の単独又は混合物で形成されている。
【0012】前記セラミックとしては、長石質普通磁器、アルミナ含有磁器、クリストバライト磁器等が使用される。前記収納ケース1内には温度センサ等の火災検出装置3が取付けられている。また、収納ケース1には排気管1aが取付けられ、前記分岐管6aから導入された収納ケース1内の窒素ガスを排気するようになっている。
【0013】前記貯蔵タンク5には不活性ガスとしての窒素を収容した窒素加圧ボンベ16が窒素配管17を介して接続されるとともに、この窒素配管17は途中で分岐されその分岐配管18は貯蔵タンク5の出口配管10を介して前記連結配管6に接続されている。窒素配管17には常閉の貯蔵タンク加圧弁20が取付けられ、分岐配管18には常閉の搬送弁21が取付けられている。前記不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスであってもよい。そして、前記窒素加圧ボンベ16、窒素配管17、貯蔵タンク加圧弁20、貯蔵タンク5、導入弁7等により消火剤供給装置が構成されている。
【0014】前記分岐配管18は、貯蔵タンク5内の消火剤4を出口配管10を介して連結配管6から前記収納ケース1へ供給するガス流を導くためのものである。前記貯蔵タンク5の上部には圧力検出装置としての圧力センサ14が取付けられ、貯蔵タンク5内の窒素の圧力を検出するようになっている。
【0015】前記貯蔵タンク5の上部には消火剤投入用の孔が設けられ、その孔の周縁には蓋取付用のフランジ9が形成されている。貯蔵タンク5の上部には安全弁15が取付けられている。なお、前記前記導入弁7、選択弁8、貯蔵タンク加圧弁20、搬送弁21はいずれも電磁弁、電動弁もしくは空気圧駆動等による自動弁である。そして、前記火災検出装置3により収納ケース1内の火災が検知されると、貯蔵タンク加圧弁20が開いて貯蔵タンク5内に窒素が供給されて内部圧力が所定値になった後、搬送弁21、導入弁7、所定の選択弁8が開いて貯蔵タンク5内の消火剤4が収納ケース1内へ投入される。
【0016】次に、本実施例の消火装置を作動制御する構成について説明する。図2に示すように、CPU22は制御装置を構成し、同CPU22には前記火災検出装置3及び圧力センサ14が接続され、それらからCPU22に各信号が入力される。また、CPU22には前記導入弁7、選択弁8、貯蔵タンク加圧弁20及び搬送弁21の制御接点部が接続され、それらに対してCPU22から開放又は閉鎖信号が出力される。
【0017】そして、ある収納ケース1内の温度が異常に上昇するなどして、火災検出装置3からCPU22に信号が入力され、CPU22は前記各弁の開放を制御する。また、消火剤4の投入を継続した後貯蔵タンク5内の窒素の圧力が所定圧力に達すると、圧力センサ14からCPU22に信号が入力され、CPU22は各弁を閉鎖する。各弁を閉鎖させる前記窒素ガスの設定圧力は連結配管6の長さ、貯蔵タンク5内の窒素ガスの圧力等に応じて適宜設定される。
【0018】次に、上記のような消火装置の作用について説明する。複数の収納ケース1のいずれかにおいて、電池内部の固体電解質管が何らかの理由で破損すると、陽極及び陰極の活物質である溶融した金属ナトリウムと硫黄が直接接触して急激な化学反応を起こすことにより火災事故が発生する。このとき、その収納ケース1内の温度が上昇し、火災検出装置3がそれを検知する。図2に示すように、火災検出装置3からの信号はCPU22に入力され、CPU22は貯蔵タンク加圧弁20を開放させて同タンク5内に窒素ガスを圧入させる。タンク5内の圧力が所定値に達するとCPU22は搬送弁21を開くとともに、導入弁7及び火災の発生した収納ケース1に対応する選択弁8を開く。
【0019】すると、貯蔵タンク5内の消火剤4は窒素ガス流に搬送され、出口配管10、連結配管6、導入弁7及び選択弁8を介して収納ケース1内へ導かれる。そして、収納ケース1内において粒状の消火剤4はその慣性力により飛翔した後、自重により落下し、次第に収納ケース1内の各電池を覆うように堆積する。その結果、溶融状態にある硫黄、金属ナトリウム及び多硫化ナトリウムが熱を奪われて冷却固化するとともに、酸素や水分が遮断されて化学反応が抑制され、火災が消火される。
【0020】引き続き消火剤4が収納ケース1内に導入されて収納ケース1内に満たされると、排気管1aより窒素ガスとともに消火剤4が流れ出す。この場合、排気管1aは窒素ガスの逃しに見合った大きさに設定されているため、消火剤4が流出し始めると窒素ガスの排気抵抗が大きくなり、収納ケース1内及び連結配管6内の窒素ガスの圧力が上がる。また、消火剤4が収納ケース1内に満たされても排気管1aより消火剤4が流れ出さない場合は、消火剤4が分岐管6a又はその先端に位置するノズルに詰まってくる。従って、このような場合も、窒素ガスはノズル及び分岐管6a内に詰まってきた消火剤4の抵抗により連結配管6内の圧力が上がる。
【0021】そのため、図3に示すように、貯蔵タンク5内の窒素の圧力が急に上昇する。即ち、同図の曲線Aに示すように、消火剤4を搬送しながら窒素を供給している間は圧力センサ14で検出される貯蔵タンク5内の圧力がほぼ一定であったのに対し、収納ケース1内に消火剤4が満たされたときには圧力が急激に上昇している。
【0022】この圧力センサ14の検出信号は、図2に示すように、CPU22に入力され、CPU22は火災の起きた収納ケース1の選択弁8及び導入弁7を閉じるように作動させる。なお、CPU22はこの消火装置の起動時における圧力上昇と消火終了時における圧力上昇とを区別する。従って、収納ケース1内の火災は消火不十分となることなく、確実に消火された後、収納ケース1内に消火剤4がほぼ満たされたときにはその時点で消火剤4の供給が停止される。その結果、適量の消火剤4により消火を確実に行うことができ、消火剤4の浪費を防止できる。
【0023】また、使用される消火剤4が適量であるため、余分な消火剤4が連結配管6内に詰まって窒素ガスの流通抵抗が大きくなり消火剤4の搬送ができなくなるという事態を招くおそれがないので、他の収納ケース1で火災が発生したとき、速やかに対処することができる。その結果、火災部分は局限化され、健全な電池が類焼破壊してゆくのを未然に防止できる。
【0024】また、この実施例のように、圧力センサ14を貯蔵タンク5に取付ければ、各分岐管6aや各収納ケース1のそれぞれに圧力センサ14を取付けて圧力検出を行う必要がなく、1個の圧力センサ14でよい。勿論、各分岐管6aや各収納ケース1に圧力センサ14を設けても、前記実施例と同様な作用を得ることができる。
【0025】本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように具体化してもよい。即ち、圧力センサ14を窒素配管17中の圧力調節弁19の2次側に設けること。この場合、図3の曲線Bに示すように、検出圧力のレベルは、前記実施例よりも高いが、消火開始後の圧力変動は前記実施例と同様な傾向を示す。なお、曲線Bにおいて貯蔵タンク加圧弁20の開放後に窒素配管17の内圧が一時的に低下するのは、大気圧である貯蔵タンク5の内圧を上昇させるためである。圧力センサ14をタンク加圧弁20とタンク5との間の窒素配管17上、あるいは分岐管6aとタンク5との間の連結配管6上に設けてもよい。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、ナトリウム−硫黄電池の収納ケース内の火災に対して消火剤の充填不十分となるのを回避できるとともに、消火剤が過剰に投入されるのを防止して、消火剤が浪費されたり、消火剤が配管系に残って別の収納ケースの消火が不可能となる事態を防止できたりするという優れた効果を奏する。
- 【公開番号】特開平5−84319
【公開日】平成5年(1993)4月6日
【発明の名称】ナトリウム−硫黄電池における消火装置
- 【出願番号】特願平3−247964
【出願日】平成3年(1991)9月26日
【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
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