微細管およびその製造方法
- 【要約】
【目的】 流体の輸送に使用される微細管の耐薬品性を良くすることを目的とする。
【構成】 陽極酸化法により酸化物の形成が可能な材料製の棒状体1の表面に陽極酸化被膜2を形成した後、陽極酸化されていない棒状体1aを除去する方法により、陽極酸化被膜2からなる耐薬品性の良好な微細管4を製造できる。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 陽極酸化法により形成した酸化物で構成した微細管。
【請求項2】 陽極酸化法により酸化物の形成が可能な材料製の棒状体の表面に陽極酸化被膜を形成する工程と、前記陽極酸化被膜を形成した棒状加工体の陽極酸化されていない部分を取り除く工程とからなることを特徴とした微細管の製造方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体の輸送に使用される微細管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、微細管は金属や硝子等の無機材料またはナイロンやテフロン等の有機材料を溶融して、流動性・粘性を有する物質とし、棒状体や管状体に塗布、あるいは、所定形状の型に流し込む等の処理をし、その流動性・粘性を有する物質を固化した後、棒状体や管状体、あるいは、型を除去することにより製造されていた。
【0003】例えば、硝子を構成材料とした微細管の製造方法では、まず、硝子を加熱により溶融し、流動性・粘性を有する液状の硝子材料とし、ついで、傾斜角度と中空軸を備え、管内に高所から低所の方向へ流れる空気流を有し、中空軸を中心として一定の速度で回転する管状体の外周に液状の硝子材料を巻き付けると、液状の硝子材料は、傾斜角度を有する管状体の高所から低所へと移動し、低所側の端部での空気流の吹き出しにより、粘性を有する硝子の管状体が形成される。ついで、この管状体を冷却し、固化させることにより、硝子を構成材料とした微細管が製造できる。
【0004】近年の技術ニーズの多様化により、内部を通過する流体と微細管の構成材料との化学的、物理的な相互作用、あるいは、微細管を配置する周囲の環境雰囲気との化学的、物理的な相互作用による耐食性を考慮したうえで、構成材料が選択され、使用されている。金属材料の防食性を良化させるのに、陽極酸化被膜を形成した発明がなされている(例えば特開昭62−33783号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のような近年の技術ニーズの多様化に対応して、本発明は、内径が100μm以下の耐薬品性の良好な微細管およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明の微細管およびその製造方法は、陽極酸化法により形成した酸化物からなる構成、および、陽極酸化法により酸化物の形成が可能な材料製の棒状体の表面に陽極酸化被膜を形成し、ついで、棒状体の陽極酸化されていない部分を取り除く方法としたものである。
【0007】
【作用】この構成および方法において、耐薬品性の良好な内径が100μm以下の微細管を形成することとなる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0009】図1(a)に示すように、陽極酸化法により酸化物の形成が可能な材料のアルミニウム製で直径が50μm、長さが5cmの円柱状の棒状体1を形成した。
【0010】酒石酸アンモニウムとエチレングリコールとを1対9の割合で混合した混合液を30℃として陽極酸化の電解液に用い、内径10cmの白金筒を陰極に棒状体1を陽極にして、直流印加電圧350V、電流密度1mA/cm2の条件のもとで陽極酸化を行い、図1(b)に示すように、棒状体1aの表面に約0.5μmの膜厚の酸化アルミニウムの陽極酸化被膜2を有する棒状加工体3を形成した。
【0011】ついで、棒状加工体3を所定の長さに切断した後、塩酸に浸して陽極酸化されていない棒状体1aを取り除き、流水中に浸して付着した塩酸を除去し、図1(c)に示すように、内径が約50μm、肉厚が約0.5μmの陽極酸化被膜2の微細管4を形成した。
【0012】以上のように構成された微細管4について、耐薬品性を調べた。すなわち、微細管4を塩酸、硫酸、硝酸、弗酸、酢酸の中に1時間以上放置して耐酸性を、また、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニウム水溶液の中に1時間以上放置して耐アルカリ性を、また、雰囲気温度50℃の塩素ガス、硫化水素ガスの雰囲気中に1時間以上放置して耐腐食ガス性を調べたが、いずれの場合も、微細管4の変化は観察されず、耐薬品性は良好であった。
【0013】以上のように本実施例によれば、陽極酸化法により酸化物の形成が可能な材料製の棒状体1の表面に陽極酸化被膜2を形成し、ついで、陽極酸化されていない棒状体1aを取り除くことにより、内径が100μm以下の耐薬品性の良好な微細管4が形成でき、実用的価値は大きい。
【0014】なお、本実施例で説明した断面形状がドーナツ状以外の微細管であってもよく、微細管4の断面の大きさ、長さ、肉厚についても制限されるものではない。また、陽極酸化法により酸化物の形成が可能な材料製の棒状体1は、アルミニウム以外の材料であってもよい。
【0015】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように本発明は、陽極酸化法により形成した酸化物からなる構成、および、陽極酸化法により酸化物の形成が可能な材料製の棒状体の表面に陽極酸化被膜を形成し、ついで、棒状体の陽極酸化されていない部分を取り除く方法により、内径が100μm以下の耐薬品性の良好な優れた微細管およびその製造方法を実現できるものである。
- 【公開番号】特開平7−1038
【公開日】平成7年(1995)1月6日
【発明の名称】微細管およびその製造方法
- 【出願番号】特願平5−149228
【出願日】平成5年(1993)6月21日
【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 重孝
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