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上取り式払出し装置の伸線素材払出し制御方法
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- 【要約】
【目的】 固定キャリアにコイル状に収納された伸線素材が固定キャリアに巻き付いて払出し不能になったり、弛んで縺れたりするのを防止し、スムーズに固定キャリアから払出すことを目的とする。
【構成】 固定キャリア2の上方に駆動モータ5で回転駆動される回転アーム12と、この回転アーム12に配設された誘導ローラ13とを備えた誘導装置15を設置し、前記固定キャリア2から伸線素材3を解きほどく方向に前後誘導装置15に備えた駆動モータ5により回転される回転アーム12の回転数を伸線機の伸線スピードに基づいて同調制御し、かつ前記駆動モータ5の負荷電流値の変化に応じて回転アーム12の回転数を微調整しながら当該誘導装置15に備えた誘導ローラ13を介して上部ローラ10を経由させ、伸線機に供給して伸線する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 テーブル上の固定キャリアにコイル状に収納された伸線素材を前記固定キャリアから上方に払出し、上部ローラを経由した後、伸線機に供給して伸線するに際し、前記固定キャリアの上方に駆動モータで回転駆動されて斜め下方に延びる回転アームと、この回転アームに配設された誘導ローラとを備えた誘導装置を設置し、前記固定キャリアから伸線素材を解きほどく方向に前記誘導装置に備えた駆動モータにより回転される回転アームの回転数を伸線機の伸線スピードに基づいて同調制御し、かつ前記駆動モータの負荷電流値の変化に応じて回転アームの回転数を微調整しながら当該誘導装置に備えた誘導ローラを介して上部ローラを経由させ、伸線機に供給して伸線することを特徴とする上取り払出し装置の伸線素材払出し制御方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、上取り払出し装置の固定キャリアにコイル状に収納された伸線素材を上方に払出し、上部ローラを経由し、伸線機に供給して伸線するラインに適用される上取り式払出し装置の伸線素材払出し制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、上取り式払出し装置から伸線素材を払出し、伸縮機に供給して伸線作業を行うことが行われている。上取り式払出し装置には、図4に示すようにテーブル1上に固定したキャリア2と呼ばれる容器にコイル状の伸線素材3を収納し、固定したキャリア2から伸線素材3を上取りにより払出し、上部ローラ10を経由して伸線機(図示せず)に供給して伸線するものがある。
【0003】また、図5に示すように回転テーブル23上のキャリア2に伸線素材3を収納し、駆動モータ24により回転テーブル23を回転させキャリア2から伸線素材3を上方に解きほぐしながら上方に払出し、上部ローラ10を経由させるものが知られている。前記いずれの上取り式払出し装置を用いる場合にも、キャリア2から払出された伸線素材3の速度が大きくなると伸線素材3がキャリア2に巻きついて供給をスムーズに行うことができなくなり、伸線作業に支障が生じることがある。このため、伸線素材の払出し速度は、最大として実際的には 200m/分程度であり、高速化払出しには限界があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のように従来の上取り式払出し装置を用いて伸線素材3を供給すると、伸線素材3の性質(引張り強さ、線径など)、伸線条件(速度など)により、伸線素材3がキャリア2に巻き付き払出し不能となって伸線作業に支障が発生するという問題点があった。このような伸線素材3がキャリア2に巻き付くのは伸線素材3がキャリア2から払出される時に、たとえばコイルバネを上下に引張ったときのようにコイル状の伸線素材3の払出し量が必要払出し量より少ないとコイルの縮径により絞られるために巻き付くのである。
【0005】本発明は、前記従来技術の問題点を解消し、上取り式払出し装置のキャリアに伸線素材が巻き付いて払出し不能となるのを防止し、常にスムーズにキャリアからコイル状の伸線素材を払出すことができる上取り式払出し装置の伸線素材の払出し制御方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記目的を達成するために、図1に示すようにテーブル1上に固定したキャリア2に収納したコイル状の伸線素材3の上方に位置させて支柱4の上端部から水平に張り出す支持フレーム4Aに上部ローラ10を設けると共に誘導装置15を配置して固定キャリア2に伸線素材3が巻き付くのを防止することを試みた。
【0007】誘導装置15は、支柱4の上端部から水平に延びた支持フレーム4Aの先端部に配置した軸受14に鉛直に支持されたアーム回転軸12Aから斜め下方に向けて延びる回転アーム12と、この回転アーム12に配設された誘導ローラ13とを備えている。そして支柱4の途中に設けた支持台4B上に駆動モータ5およびウォーム減速機6が設置してあり、駆動モータ5とウォーム減速機6とは連結軸11により連結してある。またウォーム減速機6に設けた駆動側タイミングプーリ7はアーム回転軸12Aに固定した従動側タイミングプーリ8とタイミングベルト9により連結されていて回転アーム駆動系を形成している。
【0008】固定キャリア2にコイル状に収納された伸線素材3を上取りにより払出した後、駆動モータ5を駆動し、前記回転アーム駆動系を介して伸線素材3を解きほどく方向に回転アーム12を回転させながら誘導ローラ13を介して上部ローラ10に導くことによって固定キャリア2に伸線素材3が巻き付くのを防止することを試みた。
【0009】この場合、回転アーム12の回転によって固定キャリア2に伸線素材3が巻き付く力とは逆方向の力を付与するようにしても、回転アーム12の回転速度が過少のときには巻き付きを助長し、逆に回転速度が過大のときには伸線素材3の弛みが生じて伸線素材3の縺れを助長することが判明した。本発明は固定キャリア2の上方に設置した誘導装置15により伸線素材3を誘導する試験を重ねた結果により達成されたものであり、その要旨とするところは下記の通りである。
【0010】本発明は、テーブル1上の固定キャリア2にコイル状に収納された伸線素材3を、前記固定キャリア2から上方に払出し、上部ローラ10を経由した後、伸線機(図示せず)に供給して伸線するに際し、前記固定キャリア2の上方に駆動モータ5で回転駆動されて斜め下方に延びる回転アーム12と、この回転アーム12に配設された誘導ローラ13とを備えた誘導装置15を設置し、前記固定キャリア2から伸線素材3を解きほどく方向に前記誘導装置15に備えた駆動モータ5により回転される回転アーム12の回転数を伸線機の伸線スピードに基づいて同調制御し、かつ前記駆動モータ5の負荷電流値の変化に応じて回転アーム12の回転数を微調整しながら当該誘導装置15に備えた誘導ローラ13を介して上部ローラ10を経由させ、伸線機に供給して伸線することを特徴とする上取り払出し装置の伸線素材払出し制御方法である。
【0011】
【作用】固定キャリア2から伸線素材3を解きほどく方向に回転される回転アーム12の回転数を伸線機の伸線スピードに基づいて同調制御し、かつ駆動モータ5の負荷電流値の変化に応じて回転アーム12の回転を微調整しながら誘導ローラ13を介して上部ローラ10に導くので伸縮素材3が固定キャリア2に巻き付いたり、弛んで縺れを助長するなどのトラブルを発生することなく安定した状態で伸線機に供給することができる。
【0012】
【実施例】本発明で使用する上取り式払出し装置は前記図1に基づいて説明したものを使用するが、その制御系統図を図2に示す。コイル状になった伸線材3を固定キャリア2に収納したのち、テーブル1上にセットする。テーブル1上にセットした固定キャリア2の伸線素材3を回転アーム12に配設してある誘導ローラ13を介して上部ローラ10を経由したのち伸線材に導き伸線素材3の伸線を行う。
【0013】誘導装置15が備えた回転アーム12は支柱4の途中に設けられた支持台4B上に設置した駆動モータ5から連結軸11、ウォーム減速機6、駆動側タイミングプーリ7、タイミングベルト9および従動側タイミングプーリ8により動力が伝達され回転アーム12自身が回転する。回転アーム12の駆動制御方法は、図2に示すように伸線機自身に設けた速度計16で測定した速度信号を電流電圧変換器17で介して変換したのち駆動制御演算装置19に入力される。また誘導装置15等の設備制約条件および伸線機で伸線される伸線製品径、伸線素材径等の操業制約条件が入力端末装置18に入力され、入力端末装置18から設備制約条件および操業制約条件の各信号が駆動制御演算装置19に入力される。さらに回転アーム12を回転する駆動モータ5に設けた負荷電流計20で計測した負荷電流値を電流電圧変換器21で変換して駆動制御装置19に入力する。
【0014】駆動制御演算装置19はそれぞれ入力された伸線機速度、設備制約条件および操業制約条件に基づいて回転アーム12を所定の回転数で回転させるための駆動モータ5の必要回転数を決定する。そして駆動制御装置19では、決定した駆動モータ回転数とするためたとえば周波数、電圧値を演算し、その周波数および電圧値を回転アーム駆動モータ5にアウトプットして必要な回転数に制御する。
【0015】回転アーム12を所定の回転数に決定するには以下の式を用いて計算することができる。まず操業時の制約条件は以下の通りとする。伸線により製品化される単位時間内の処理量をF1 とし、そのために必要な伸線素材払出し量をF2 とすると(単位は全てメートルとする)マスフローは次のようになる。
【0016】
F1 =製品径(直径)2 ×(π/4)×伸線機伸線速度F2 =伸線素材径(直径)2 ×(π/4)×払出し速度となりF1 =F2 が理論上なりたつ。ここで便宜上、製品径(直径)をD2 、素材径(直径)をD1 、伸線機伸線速度をV2 、払出し速度をV1 とすると、V1 =(D2 2 /D1 2 )×V2となる。
【0017】さらに回転アーム12の回転直径をDとし回転アーム12の必要回転数をNとすると、回転速度V1 =πDNが求められ、したがって回転アーム12の回転数は、N=(D2 /D1 )2 ×(1/πD)×V2で決定される。また、回転アーム12を回転させる駆動モータ5と、回転アーム12と一体で回転する従動側タイミングプーリ8間の減速比より回転アーム駆動モータ5自身の必要回転数も求めることができる。
【0018】回転アーム12の理論上の必要回転数は前述で求めることができるが、操業上において制約条件として入力する伸線材の製品径あるいは、伸線素材径は常に一定ではなく微妙に変化している。このため駆動制御演算装置19では回転アーム12の理論上の回転数Nを常に一定でなく変化させ、常に同調を保つように制御する必要がある。このために回転アーム12を回転させる駆動モータ5自身の駆動負荷電流を負荷電流計20を用いて測定し、これを回転アーム12の回転数制御の微調整に用いて制御するのである。
【0019】実機の回転アーム12を回転する駆動モータ5は交流式モータを用いているが、駆動モータ5の負荷変動が数パーセントある。この負荷変動は前述した単位時間当りの製品化処理量F1 とその時の払出し量F2 の関係から発生することが判った。たとえばF1 >F2 のときは、キャリア2に収納されたコイル状の伸線素材3は締られる方向になりそれをほどくために必要な動力がアップする。またF1<F2 の場合は伸線素材3はゆるみすぎるため必要動力が低下する。このようにF1 、F2 のバランスがくずれると伸線素材3がキャリア2に巻き付く現象が発生するため変動幅を必要動力の約5%以内になるよう回転アーム12を回転する駆動モータ5を制御するのが好ましい。
【0020】すなわち本発明では図1に示すように回転アーム12はコイル状に形成された伸線素材3を解きほどく方向に回転し、図4に示すように固定された条件で伸線素材を払出すときに発生する捩じり力とは逆方向の捩じり力を与えて、この捩じり力を±0にするため伸線速度と伸線素材の払出し速度との同調化を図るものである。
【0021】本発明によれば、図2の制御系統図に示すように設備制約条件操業時の諸条件を入力することで基本となる回転アーム回転数を求め、さらに回転アーム12を駆動するモータ5の電流負荷変動より捩じり力がどちらの方向、すなわち伸線素材3がキャリア2に巻き付く方向(負荷電流計20の負荷電流が上昇)か、伸線材3が弛む方向(負荷電流計20の負荷電流が下降)かを判断し、それに応じて回転数の微調整を行う。
【0022】本発明により払出し制御を行った場合には、キャリア2に巻かれたコイル状の伸線素材3は、キャリア2に巻き付くことなく、また弛むこともなく払出すことができ、キャリア2への巻き付きあるいは弛みに起因する縺れによる操業トラブルは大幅に減少することができる。連続伸線機を用いた伸線ラインに本発明を適用した場合と、図4に示す従来装置を適用した場合の伸線素材のもつれ回数と度数との関係を図3に比較して示す。図3に示すように本発明により伸線素材を払出す場合には従来に比較して大幅にもつれ回数を低減することができる。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、固定キャリアに収納されたコイル状の伸縮素材を払出す際に伸線素材が固定キャリアに巻き付いて払出し不能となったり、伸線素材の弛みに起因する縺れを生じることなく誘導装置の回転アームに配設された誘導ロールを介してスムーズに誘導することができる。このためトラブル処理の負荷を解消することができると共に伸線処理の生産性向上が達成できる。
- 【公開番号】特開平7−1040
【公開日】平成7年(1995)1月6日
【発明の名称】上取り式払出し装置の伸線素材払出し制御方法
- 【出願番号】特願平5−148019
【出願日】平成5年(1993)6月18日
【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
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