スポンサード リンク
捲取機の尾端停止位置制御方法
スポンサード リンク
- 【要約】
【目的】 捲取設備により帯状圧延材を捲取停止させる場合、減速開始後、被捲取材の尾端を最短時間で目標位置にて停止させるための尾端停止位置制御方法において、減速開始ポイントの最適化により、停止位置精度の向上と停止に必要な時間の短縮を図ることを目的とする。
【構成】 従来の尾端停止位置制御方法に対し、GD2に加え被捲取材の材質、サイズを考慮した最大減速レートを計算し、減速開始ポイントをリアルタイムに演算し(減速開始点演算部)、演算結果と実際の尾端位置が一致した時点で減速を開始し(減速指令出力部)、尾端を目標位置にて正確に停止させる。
【効果】 モータの能力を最大限に利用しながら定位置停止制御をすることにより、捲取後のオペレータの介入が不要となる。また、捲取後の空転をミニマムに出来、最尾端部の捲取品質を保持しつつ、最短時間で捲取を完了できる。
スポンサード リンク
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱間圧延機出側に設けられた捲取機の回転を検出して捲取コイル径を演算すると共に、被捲取材の尾端を検出して捲取機の所定点に停止させる速度基準を演算する尾端停止位置制御方法において、電動機の減速能力,被捲取材のはずみ車効果,板厚,および板硬さに基づいて最大減速レートを演算し、この最大減速レートにより現在の回転数から零速度まで減速するために必要な停止距離をリアルタイムで演算し、減速開始ポイントを目標停止位置から逆算し、被捲取材の尾端が前記減速開始ポイントに一致した時点で減速を開始し、最短時間で目標停止位置に尾端を停止することを特徴とする尾端停止位置制御方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱間圧延機出側に設置されている捲取設備に係わり、特に、被捲取材の尾端を目標位置で停止させる尾端停止位置制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】捲取設備により帯状圧延材を捲取り停止させる場合、減速開始後、被捲取材の尾端を最短時間で目標位置にて停止させるため、尾端停止位置制御装置が利用されている。
【0003】捲取設備の基本的な構成と従来の尾端停止位置制御装置の構成を図1に示す。図1において、仕上圧延機を抜けた被捲取材は、ピンチロールを通過し捲取機に捲取られる。ここで、ピンチロール及びマンドレルを駆動する各々の電動機にはその回転数を検出するパルス発信機(PLG)が設置されており、また、ピンチロールの手前(仕上圧延機側)には尾端停止位置制御の起点となる尾端通過検出器が設置されている。
【0004】コイル径演算手段は先述の発信器のサンプリングによりカウントされたピンチロール及びマンドレルの回転パルスに基づいてコイル径を計算する。図2に示すように、コイル径演算の方法には比例方式と捲き太り方式の2種類があるが、一般的には、精度の高い比例方式を使い、捲き太り方式はバックアップとして利用する。
【0005】トラッキング部は検出器からの尾端通過の信号を受け、その時点のコイル径とマンドレルの回転速度より板尾端の位置を計算し、予め定めた減速開始ポイントに到達した時に減速指令を出力する。
【0006】また、速度基準出力部は、減速指令を受信した時点のマンドレル回転速度から、目標停止位置にて零速度となるような減速レートdN/dtで速度基準を設定出力しマンドレルを停止させる。
【0007】ここで、尾端の停止位置が目標位置よりずれた場合には、尾端停止位置制御の再起動、あるいは、オペレータの手動による位置合わせが必要となる。また、大幅に停止タイミングが遅れた場合には、マンドレルの空転により被捲取材の巻形状や品質に悪影響を与える。
【0008】例えば特開平3−47622号公報に示されるように、減速を開始するタイミング(減速開始ポイント)は、設備の調整段階で設定され、操業時には不変である。つまり、捲取速度や捲取材の種類に関わらず、減速開始ポイントは一定である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の制御方法では、減速開始時のマンドレル回転速度が大きすぎる場合、あるいは、コイルのはずみ車効果(GD2)が大きすぎる場合、目標位置で止めることはできなくなり、尾端停止位置制御の再起動、あるいは、オペレータの介入が必要となる。逆に、減速開始時のマンドレル回転速度が小さすぎる場合、あるいは、コイルのはずみ車効果が小さすぎる場合には、目標位置に到達するまでの時間を最小限にすることはできなくなる。これらの問題は、いずれも操業上のロスタイムとなる。
【0010】また、本発明が対象とする熱間圧延においては、被捲取材の品種が多品種に亙っており、材が厚く、硬い場合、厚さ、硬さという要因がブレーキ作用に大きく影響を与える。従って、例えば特開平2−80116号公報のように、GD2のみで最大減速レートdN/dtを計算しても、実際のレートとの間に誤差が生じ、正確な位置で停止させることはできない。
【0011】本発明は上記の問題を解決することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、熱間圧延機出側に設けられた捲取機の回転を検出して捲取コイル径を演算すると共に、被捲取材の尾端を検出して捲取機の所定点に停止させる速度基準を演算する尾端停止位置制御方法において、電動機の減速能力,被捲取材のはずみ車効果(GD2),板厚,および板硬さに基づいて最大減速レートを演算し、この最大減速レートにより現在の回転数から零速度まで減速するために必要な停止距離をリアルタイムで演算し、減速開始ポイントを目標停止位置から逆算し、被捲取材の尾端が前記減速開始ポイントに一致した時点で減速を開始し、最短時間で目標停止位置に尾端を停止する。
【0013】
【作用】本発明は、マンドレルを停止させるために必要な距離(以下、これを停止距離という)、即ち、被捲取材のはずみ車効果,板厚および硬さより最短時間で停止できるような減速レートを求め、減速開始ポイントをリアルタイムで演算し、演算結果と実際の尾端位置が一致した時点で減速を開始し、尾端を目標位置にて正確に停止させることを特徴とするものである。
【0014】本発明によれば、減速開始ポイントの最適化を図ることにより、常に最短時間で尾端を目標位置に停止させることができる。
【0015】
【実施例】本発明の一実施例の構成を図3に示す。この実施例では、図1と対比すると、減速レート演算部,減速開始点演算部,及び、演算結果と実位置との比較を行い、両者が一致した時点で減速開始の指令を出力する減速指令出力部が付加されている。
【0016】減速レート演算部の動作を説明する。ここでは、まずコイル,マンドレル,軸,減速機(図示せず)及び電動機内部の回転体の、全体のはずみ車効果(GD2:慣性モ−メントの4倍)を計算する。全体のはずみ車効果GD2は次式により求められる。
【0017】
GD2=GD2C+GD2M ・・・(1)GD2C:コイル分のはずみ車効果GD2M:コイル以外のはずみ車効果GD2Mは、マンドレル,軸,減速機及び電動機内部の回転体のそれぞれについて求めたはずみ車効果を電動機軸に働く力に換算(1/減速比の2乗)した値の総和であり、変化しないので、予め計算した固定値を用いる。またコイルのはずみ車効果GD2Cは次式により求める。また、GD2Cは時々刻々と変化するので繰り返し計算し、最新の計算結果を利用する。GD2Cも電動機軸に働く力に換算した値を用いている。
【0018】
GD2C=(π/8)ρL(D4−d4)×(N1/N2)2×103[Kg・m2] ・・・・(2)G:全質量D:コイルの直径[m]
d:マンドレルの直径[m]
ρ:密度[g/m3]
L:幅[m]
N1:コイル軸の回転速度[rpm]
N2:電動機軸の回転速度[rpm]
次に、減速レート演算部は、はずみ車効果GD2と電動機出力トルクTM及び負荷トルクTLの関係から、電動機による最大減速レートα0(正の値)を算出する。即ちα0は以下のようにして求められる。
【0019】
TM =Kφ・I ・・・(3)
I:減速時に電動機の電機子に流れる電流Kφ:トルク定数(Kg・m/A) TL =(GD2/375)×(dN/dt) ・・・(4)
N:電動機の回転数(回転速度)
Iを減速時に流れる最大電流値IMAXとし、TM=TLとおき、次式からα0が求められる。
【0020】
α0 =375・Kφ・(IMAX/GD2) ・・・(5)
以上のように求められたα0に対して、板厚hおよび板硬さC(カーボン当量)を考慮し、以下の様に補正項を加え最大減速レートα1(正の値)を求める。
α1=α0+a・C+b・h但し、a及びbについては、図4に示すように、過去の実績データから重回帰分析により得られた値を利用する。a及びbは共に正の値である。
【0021】速度基準出力部は、減速レ−ト演算部が出力する最新の最大減速レートα1に基づいて速度基準を出力する(図5参照)。
【0022】減速開始点演算部は、図5に示すように、速度基準に対する実績速度を予測し、停止までに必要な距離を演算する。ここで、基準に対する実績の遅れ要素として、電流応答(電流が負側最大電流まで変化するまでの時間)を考慮している。従って、停止距離Sは、面積S1とS2の和となり、以下のように求められる。
【0023】図5より、減速開始から減速レート(実績)が基準のレートα1に一致するまでの時間t1、及び、零速度となるまでの時間t2は次式により表わされる。
【0024】
t1=IMAX/(dI/dt) , t2=t1+N1/α1・・・(6)
dI/dt:電流応答N1:時刻t1でのマンドレル回転数(回転速度)
また、0≦t≦t1のとき、マンドレル回転数N(t)は次式で表わされる。
【0025】
N(t)=N0−(α1 t)dt =N0−α1・t2/2 ・・・(7)従って、S1,S2及びSは次式で表わされる。
【0026】
S1=N(t)dt =N0・t1−α1 t13/6 ・・・(8)
S2=N1・(t2−t1)/2 ・・・(9)
(N1=N0−α1・t12/2)
S=S1+S2 ・・・(10)
減速開始点演算部は、以上の演算により得られる最新の停止距離Sと目標停止位置から、減速開始ポイントをリアルタイムに演算する。捲取りの進行に伴なってコイル径が増大するので、はずみ車効果GD2が増大し、最大減速レートα1が減少し、停止距離Sが増大する。従って、減速開始ポイントは、捲取りの進行に伴なって目標停止位置から離れる方向(鋼板の進行方向と逆の方向)に移動する。
【0027】減速指令出力部は、演算された最新の減速開始ポイントP(検出器からの距離)と実際の鋼板の尾端位置Q(検出器からの距離)とを比較し、Q≧Pになったとき、減速開始指令を出力する。
【0028】減速開始指令が出力されると、速度基準出力部は、それが出力する速度基準(速度目標値)を最大の減速レートα1に従って図5に示すように更新する。
【0029】この減速開始ポイントは、電動機の能力を最大限に利用した最大減速レートに基づき、更に速度基準に対する速度実績の遅れを考慮して算出されているため、尾端を減速開始ポイントから最短時間で目標位置にて正確に停止させることができる。
【0030】なお、減速開始指令を出力した後も、捲取りを継続するので、コイル径が時々刻々と変化し、はずみ車効果GD2が増大し、最大減速レートα1が減少し、停止距離Sが増大する。従って実際には、板厚,回転速度等に基づいてコイル径の変化を予測し、停止距離Sの変化量を予め考慮して減速開始ポイントPを決定している。
【0031】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の尾端停止制御方法を採用することにより、被捲取材の尾端を最短時間で正確に定位置で停止させることができる。
【0032】この結果、以下の効果がある。
【0033】■モータの能力を最大限に利用しながら定位置停止制御をすることにより、捲取後のオペレータの介入が不要となる。
【0034】■捲取後の空転をミニマムにでき、捲取品質を保持しつつ、最短時間で捲取を完了できる。
- 【公開番号】特開平7−60347
【公開日】平成7年(1995)3月7日
【発明の名称】捲取機の尾端停止位置制御方法
- 【出願番号】特願平5−209603
【出願日】平成5年(1993)8月24日
【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】杉信 興
- ※以下のタグをホームページ中に張り付けると便利です。
-
当サイトではIPDL(特許電子図書館)の公報のデータを著作権法32条1項に基づき公表された著作物として引用しております、
収集に関しては慎重に行っておりますが、もし掲載内容に関し異議がございましたらお問い合わせください、速やかに情報を削除させていただきます。