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鋼板表面のすり疵欠陥発生予知方法
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- 【要約】
【目的】 巻き取り装置において発生する鋼板の表面のすり疵欠陥の発生を予知する方法を提供する。
【構成】 圧延ラインにおける鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の端部の板幅方向の位置を検出しそれから特定の周波数成分を抽出し、両端部の板厚方向の板振れ量及びその位相を検出し、或いはコイル端部のコイル巻き太り方向の振れ量(移動量)を検出してそれから特定の周波数成分を抽出して、その周波数成分の信号レベルに基いて鋼板表面のすり疵の発生を予知する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧延ラインにおける鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の端部の板幅方向の位置を検出し、その位置検出信号から巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数成分を抽出し、その周波数成分の信号レベルに基いて鋼板表面のすり疵の発生を予知することを特徴とする鋼板表面のすり疵欠陥発生予知方法。
【請求項2】 圧延ラインにおける鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の両端の板厚方向の板振れ量及びその板振れ位相を検出し、検出された板振れ量及びその板振れの位相に基いて鋼板表面のすり疵欠陥を予知することを特徴とする鋼板表面すり疵欠陥発生予知方法。
【請求項3】 圧延ラインにおける鋼板の巻き取り装置によってコイル状に巻かれたコイル端部のコイル巻き太り方向の振れ量又は移動量を検出し、その検出されたコイルの振れ量又は移動量から巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数を抽出し、その周波数成分の信号レベルに基いて鋼板表面のすり疵の発生を予知することを特徴とする鋼板表面すり疵欠陥発生予知方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鋼板の巻き取り装置において鋼板の表面に発生するすり疵欠陥を予知する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼板の巻き取り装置において、鋼板を巻き取る時に鋼板の表面に発生するすり疵欠陥は、鋼板をコイル状に巻き取る時鋼板と鋼板とが重なり合って疵付くすり疵であるが、このすり疵の発生を防止するための従来技術としては例えば特開昭60−37222号公報、実開平4−415号公報等に開示されているものがある。特開昭60−37222号公報においては、鋼板表面に潤滑剤を塗布することにより鋼板間の表面疵の発生を防止しているが、無塗油材の鋼板には適用できなかった。また、実開平4−415号公報においては、コイル巻き取り装置のリールシャフトの軸受け部に振動センサーを設置し、軸受け部における振動及び変位を検出して鋼板表面すり疵の発生を防止しているが、コイル巻き取り装置のリールシャフトの軸受け部の振動を検出している為、実際の鋼板の挙動及び振動を検出していないのですり疵発生の初期段階での検出が遅れ、また、検出精度も低かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の鋼板の巻き取り装置においては、上述のように、すり疵をいち早く精度良く予知する画期的な技術はなく、このすり疵が発生するとすり疵欠陥をもつコイルは次工程へ送られて格落ちし歩留まりの低下の原因となっており、すり疵欠陥は品質管理上大きな問題点となっている。このような問題点を解決するためには、すり疵の発生の有無をコイル巻き取りの初期の段階で判別し対処することが望ましく、そのためにはすり疵欠陥の発生メカニズムの解明が必要であるが、いまだその解明がなされていないという状況にあった。
【0004】本発明は、上記のような問題点を解決する為になされたものであり、巻き取り装置において発生する鋼板の表面のすり疵欠陥の発生を予知することを可能にした鋼板表面のすり疵欠陥発生予知方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る鋼板表面のすり疵欠陥予知方法(請求項1)は、圧延ラインにおける鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の端部の板幅方向の位置を検出し、その位置検出信号から巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数成分を抽出し、その周波数成分の信号レベルに基いて鋼板表面のすり疵の発生を予知する。本発明に係る鋼板表面のすり疵欠陥予知方法(請求項2)は、圧延ラインにおける鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の両端の板厚方向の板振れ量及びその板振れ位相を検出し、検出された板振れ量及びその板振れの位相に基いて鋼板表面のすり疵欠陥を予知する。本発明に係る鋼板表面のすり疵欠陥発生予知方法(請求項3)は、圧延ラインにおける鋼板の巻き取り装置でコイル状に巻かれたコイル(鋼板)端部のコイル巻き太り方向の振れ量又は移動量を検出し、その検出されたコイルの振れ量又は移動量から巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数を抽出し、その周波数成分の信号レベルに基いて鋼板表面のすり疵の発生を予知する。
【0006】
【作用】本発明に係る鋼板表面のすり疵欠陥予知方法(請求項1)においては、鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の端部の板幅方向の位置を検出し、その位置検出信号の周波数成分を分析して所定の周波数成分を抽出し、その周波数成分の信号レベルに基いて、鋼板と鋼板とがバタツキながら重なり合って疵付くすり疵の状態を未然に検知し、すり疵欠陥の発生を防止している。すり疵欠陥の発生は、鋼板の巻き取り装置において鋼板をコイル状に巻いていく過程で発生するが、巻き初めの段階(すり疵欠陥の発生無し)においては、鋼板の端部の位置検出信号の巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数成分の信号レベルは低く、鋼板の端部の蛇行及びバタツキは常に同じ量を示し、また、その動作量も小さいためすり疵の発生に至らず、鋼板を疵付ける事もない。
【0007】鋼板をコイル状に巻き、コイルが巻き太っていくとある時点で、位置検出信号の巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数成分の信号レベルが徐々に高くなり、鋼板の端部の蛇行及びバタツキの量が少しずつ大きくなる。そして、鋼板の端部の蛇行及びバタツキの量が大きくなって鋼板の表面にすり疵が発生し始めると、このときの前記周波数成分の信号レベルも高くなっている。従って、この信号レベルにより鋼板表面のすり疵欠陥の発生を予知することができる。
【0008】ここで鋼板に発生するすり疵は、板厚・板幅・鋼種によって発生形態・発生時期は異なってくる。板厚が厚く板幅が狭い材料では、すり疵は発生しやすい傾向にあり(発生時期もある程度小さいコイル径から発生してくる)、また、板厚が薄く板幅が広い材料ではすり疵は発生するが発生時期は遅くすり疵の程度も比較的軽い傾向にある。また、板の鋼種によってもすり疵の発生形態・時期は異なり、硬い材料ほど発生しやすい傾向にある。このように、すり疵の発生事態・時期は鋼板の板厚・板幅・鋼種によって異なってくるので、すり疵発生の時期を示すしきい値は毎回異なってくる。ここで、すり疵発生を示すしきい値の決め方としては、ラインの巻き取り装置によって異なってくるのですり疵の発生形態・時期と鋼板の板厚・板幅・鋼種との関係を十分把握してからしきい値を決定しなければならない。
【0009】本発明に係る鋼板表面すり疵欠陥予知方法(請求項2)においては、鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の両端の板厚方向の板振れ量を検出し、その板振れ量及びその位相に基いて、鋼板と鋼板とがバタツキながら重なり合い疵付くすり疵の状態を未然に検知し、すり疵の発生を防止している。上述のように、すり疵の発生は鋼板の巻き取り装置において鋼板をコイル状に巻いていく過程で発生するが、巻き初めの段階(すり疵発生無し)においては、鋼板の両端部の板振れ量は同じ板振れ量を示し、また、鋼板の両端が同相の動きをする為すり疵の発生には至らない。また、鋼板の両端の板厚方向の板振れ量が小さいため鋼板を疵付ける事もない。鋼板がコイル状に巻き、コイルが太っていくとある時点で鋼板の端部の板振れ量が少しずつ大きくなりまた、鋼板の端部の動きが同位相の状態から位相形態に変化が見られだんだんと位相が変化していき、鋼板の端部の板厚方向の動きが完全に逆位相になった時点よりすり疵の発生が始まる。このように鋼板の端部の板厚方向の板振れ量が或るしきい値を越えた時及び板振れが逆位相になる状態を検出することにより鋼板表面のすり疵欠陥の発生を予知することができる。
【0010】本発明に係る鋼板表面のすり疵欠陥予知方法(請求項3)においては、鋼板の巻き取り装置でコイル状に巻かれたコイル(鋼板)端部の振れ量又は移動量を検出し、その検出されたコイルの振れ量又は移動量から巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数を抽出し、その周波数成分の信号レベルに基いて、鋼板と鋼板とがバタツキながら重なり合って疵つくすり疵の状態を未然に検知し、すり疵の発生を防止している。すり疵の発生は、鋼板の巻き取り装置において鋼板をコイル状に巻いていく過程で発生するが、巻き初めの段階(すり疵欠陥の発生無し)においては、コイル端部の振れ量は巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数成分の信号レベルは低く、コイルの揺れ移動は常に同じ量を示し、また、その動作量も小さいためすり疵の発生に至らず、鋼板を疵付ける事もない。鋼板をコイル状に巻き、コイルが巻き太っていくとある時点で、上述の場合と同様に、コイル端部の振れ量の巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数成分の信号レベルが徐々に高くなり、コイルの揺れ移動の量が少しずつ大きくなる。そして、コイル端部の揺れ移動が大きくなり鋼板の表面にすり疵が発生し始めると、このときの前記周波数成分の信号レベルも高くなっている。従って、この信号レベルにより鋼板表面のすり疵欠陥の発生を予知することができる。ここでも鋼板に発生するすり疵は、板厚・板幅・鋼種によって発生形態・発生時期は異なってくる。板厚が厚く板幅が狭い材料では、すり疵は発生しやすい傾向にあり(発生時期もある程度小さいコイル径から発生してくる)、また、板厚が薄く板幅が広い材料では、すり疵は発生するが発生時期は遅くすり疵の程度も比較的軽い傾向にある。また、板の鋼種によってもすり疵の発生形態・時期は異なり、硬い材料ほど発生しやすい傾向にある。このようにすり疵の発生形態・時期は鋼板の板厚・板幅・鋼種によって異なってくるので、すり疵発生の時期を示すしきい値は毎回異なってくる。ここですり疵発生を示すしきい値の決め方としては、ラインの巻き取り装置によって異なってくるのですり疵の発生形態・時期と鋼板の板厚・板幅・鋼種との関係を十分とらまえてからしきい値を決定しなければならない。
【0011】
【実施例】
実施例1.図1は本発明の一実施例の鋼板表面のすり疵欠陥予知方法を実施した装置の構成を示した図である。鋼板1は鋼板巻取装置2に図示のように巻き取られ、鋼板1の端部の板幅方向の位置が位置検出器3により検出される。この位置検出器3は出側の最終デフロール4の直前に配置されており、最終デフロール4の直前の鋼板1の端部の板幅方向の位置を検出している。位置検出器3からの位置検出信号は演算器5に送られ、演算器5は位置検出信号を周波数分析し、巻き取り装置のリールの回転周波数と一致する周波数成分を抽出してその信号レベルを求める。
【0012】図2〜図4は板厚0.2mm、板幅850mmの鋼板を巻き取り装置に巻いている時の位置検出器3により検出されたの位置検出信号を示したタイミングチャートであり、縦軸に位置検出器3の位置検出量、横軸に時間を示している。図2はコイル直径が約2200mmのときに鋼板にすり疵が発生している時の位置検出器3の位置検出信号の状態を示しており、その位置検出信号は電圧で約0.4V(リールの回転周波数0.8Hz)である。図3はコイル直径が約1400mmのときに鋼板にすり疵の発生がない時の位置検出器3の位置検出信号の状態を示しており、位置検出器3の位置検出信号は電圧で約0.08V(リールの回転周波数1.25Hz)である。図4はコイル直径がコイル直径が約1900mmのときにスクラッチ発生直前に現れる位置検出器3の位置検出信号の状態を示しており、その位置検出信号は電圧で約0.15V(回転周波数0.95Hz)である。位置検出器3の位置検出信号が図4の状態(位置検出信号:約0.15V)のレベルに変化していくのを演算器5が検知することにより、鋼板の表面のすり疵欠陥の発生を予知することができる。そして、鋼板の表面のすり疵欠陥の発生を予知した場合には例えば警報を発することにより注意を促す。
【0013】実施例2.図5は本発明の他の実施例の鋼板表面のすり疵欠陥予知方法を実施するための装置を示した図である。鋼板の巻き取り装置2に巻き取られる直前の鋼板1の両端部の板厚方向の板振れ量をレーザー等の変位計6,7を用いて検出し、その板振れ量を演算器5に出力し、演算器5は両端部の板振れの位相を演算する。この実施例においても、変位計6,7は出側の最終デフロール4の直後に配置されて、最終デフロール4の直後の両端部の板振れ量を検出している。
【0014】図6〜図8は板厚0.2mm、板幅850mmの鋼板を巻き取り装置に巻いている時の鋼板エッジの板振れ量を示したタイミングチャートであり、縦軸に板振れ量、横軸に時間を示している。なお、これらの図において、板変位(Op)は変位計7による測定結果であり、板変位(Dr)は変位計6による測定結果である。図6はコイル直径が約2200mmのときに鋼板1にすり疵が発生している時の板振れの状態を示しており、板振れ量は約2.0mmでありその板振れの位相が完全に逆になっている。図7はコイル直径が約1400mmでのときに鋼板1にすり疵の発生がない時の板振れの状態を示しており、板振れ量は約0.7mmで板の振れは同位相で振れている。図8はコイル直径が約1900mmのときにすり疵の発生直前に現れる板振れ状態を示しており、鋼板1の位相が同位相から逆位相へかわりつつある状態が観察され、板振れ量は約1mmで振れている。図7の状態から図8の状態(位相の変化・板振れ量1mm)への鋼板の変化を演算器5が検知することにより鋼板表面のすり疵欠陥の発生を予知することができる。なお、図8において、(b)は(a)の時間軸を拡大して表示したものである。
【0015】実施例3.図9は本発明の1実施例の鋼板表面のすり疵欠陥予知方法を実施した装置の構成を示した図である。鋼板1は鋼板巻き取り装置2に図示のように巻き取られ、コイル状になり、コイル(鋼板)端部の振れ量(移動量)を渦流式距離検出器3aにより検出される。この検出器は鋼板巻き取り装置のリール軸近傍に配置されており、巻いているコイル(鋼板)の端部の振れ量(移動量)を検出している。コイル(鋼板)の端部の振れ量(移動量)からの距離信号は演算器5に送られ、演算器5は距離信号を周波数分析し、その検出されたコイルの振れ量(移動量)から巻き取り装置の回転周波数と一致する周波数成分を抽出してその信号レベルを求める。なお、本実施例においては、測定距離を一定にしてコイルの巻き太り方向の振れ量を検出するため、渦流式距離検出器3aを矢印Aの方向にコイルの巻き太り速度に対応した一定の速度で移動させる。
【0016】図10〜図12は板厚0.2mm、板幅850mmの鋼板を巻き取り装置に巻いている時のコイル(鋼板)の端部の振れ量を検出した距離信号を示したタイミングチャートであり、縦軸にコイル端部の振れ量、横軸に時間を示している。図10はコイル直径が約2200mmのときに鋼板にすり疵が発生している時のコイル端部の振れ量を示しており、その振れ量は約2.1mm(リールの回転周波数0.8Hz)である。図11はコイル直径が約1400mmのときに鋼板にすり疵の発生がない時のコイル端部の振れ量であり、振れ量は約0.7mm(リールの回転周波数1.25Hz)である。図12はコイル直径が約1900mmですり疵発生直前に現れるコイル端部の振れ量であり、その振れ量は約1.0mmで振れている(リールの回転周波数0.95Hz)。コイル端部の振れ量の距離信号が図12の状態のレベルに変化していくのを演算器が検出することにより、鋼板表面のすり疵欠陥の発生を予知することができる。そして、鋼板の表面のすり疵欠陥の発生を予知した場合には例えば警報を発することにより注意を促す。
【0017】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、鋼板の巻き取り装置に挿入される鋼板の端部の板幅方向の位置を検出しそれから特定の周波数成分を抽出し、両端部の板厚方向の板振れ量及びその位相を検出し、或いはコイル端部のコイル巻き太り方向の移動量(振れ量)を検出してそれから特定の周波数成分を抽出して、鋼板表面のすり疵の発生を予知するようにしたので、鋼板の巻き取り装置において発生する慢性欠陥であった鋼板表面のすり疵を確実に予知することができ、すり疵による格落ちが減少し、歩留まり向上につながっている。
- 【公開番号】特開平7−68318
【公開日】平成7年(1995)3月14日
【発明の名称】鋼板表面のすり疵欠陥発生予知方法
- 【出願番号】特願平6−146240
【出願日】平成6年(1994)6月28日
【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 宗治 (外3名)
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