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熱間圧延設備のロールギャップ制御装置
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- 【要約】
【目的】 熱間圧延設備におけるピンチロールのギャップ零点の自動化を図ることができるようにする。
【構成】 仕上圧延機により仕上圧延を行った材料をピンチロールで所定の張力を付与し、さらにラッパーロールで押圧しながらマンドレルに捲取る圧延設備において、前記ピンチロールの一対のロール間および前記マンドレルとラッパーロール間に速度差を持たせて回転駆動しながら(ステップ102)、前記ピンチロールのギャップを縮め(ステップ103)、その過程におけるピンチロールモータの電流値を監視し(ステップ104)、その電流変化が所定値以上であるとき(ステップ105)のギャップに基づいてギャップ零点を決定する(ステップ106)。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 仕上圧延機により仕上圧延を行った材料をピンチロールで所定の張力を付与し、さらにラッパーロールで押圧しながらマンドレルに捲き取る圧延設備において、前記ピンチロールの一対のロール間および前記マンドレルと前記ラッパーロール間に速度差を持たせて回転駆動しながら前記ピンチロールのギャップを縮め、その過程におけるピンチロールモータの電流値を監視し、その値が所定値以上のときのギャップに基づいてギャップ零点を決定する制御手段を設けたことを特徴とする熱間圧延設備のロールギャップ制御装置。
【請求項2】 前記監視電流の所定値はロール空転時モータ電流値を上回る値とし、そのときのギャップ値、ピンチロール押圧値、マンドレルの回転速度およびラッパーロール押圧値に基づいてギャップ零点を決定することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延設備のロールギャップ制御装置。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱間圧延設備において製品を巻取るためのピンチロールおよびラッパーロールのギャップを最適に設定するためのロールギャップ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱間圧延設備は、粗圧延を行う粗圧延機、この圧延機より搬送されてくる板材に対して最終的な仕上圧延を行う仕上圧延機のほか、その出側温度を所望値にするための注水装置、圧延の完了した板材を捲取る捲取装置などを備えて構成されている。
【0003】さらに、仕上圧延機から捲取装置に至る構成について説明すると、仕上圧延機の後段にはホットランテーブル(以下、Hテーブルという)が配設され、このHテーブルの後段には所定間隔に複数のピンチロールが配設され、その各ロールの前後には捲取ガイド(サイドガイド)が設けられている。そして、最終段には板材を巻取るための芯になる複数のマンドレルが配設されている。
【0004】ところで、材料をマンドレルに捲取るに際しては、ピンチロールにおける噛み込みが最適に行われる必要があり、これによりマンドレルへの捲取を綺麗に行うことができる。具体的には、ピンチロールの一対のロール間に材料およびギャップが無い状態をギャップ零点とし、これを基に材料の噛み込みに対するピンチロールのギャップ設定を手動により行っている。
【0005】このようなことから、ピンチロールの厚み方向のギャップの把握が重要になり、通板する材料の厚みに応じてギャップ設定が行われる。特に、ピンチロールは使用に伴って摩耗が進み、このために、ギャップが徐々に広がるため、随時、ギャップ位置を把握しておく必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した従来技術にあっては、ピンチロールのギャップ設定を手動により行っているため、オペレータの負担が大きく、また直行率の低下も招いている。したがって、品質の向上および省力化を図るためには、ギャップ零点の自動化が望まれる。
【0007】そこで、本発明の目的は、ピンチロールのギャップ零点の自動化を図ることが可能な熱間圧延設備のロールギャップ制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、この発明は、仕上圧延機により仕上圧延を行った材料をピンチロールで所定の張力を付与し、さらにラッパーロールで押圧しながらマンドレルに捲き取る圧延設備において、前記ピンチロールの一対のロール間および前記マンドレルと前記ラッパーロール間に速度差を持たせて回転駆動しながら前記ピンチロールのギャップを縮め、その過程におけるピンチロールモータの電流値を監視し、その値が所定値以上のときのギャップに基づいてギャップ零点を決定する制御手段を設けるようにしている。
【0009】そして、前記監視電流の所定値はロール空転時モータ電流値を上回る値とし、そのときのギャップ値、ピンチロール押圧値、マンドレルの回転速度およびラッパーロール押圧値に基づいてギャップ零点を決定することができる。
【0010】
【作用】上記した手段によれば、ロールの電流変化を検出するためにロール間に速度差を持たせ、ロール相互の接触時の電流変化を監視し、その変化が設定値をこえた時のギャップを基にギャップ零点が決定される。したがって、ギャップ零点の決定を自動的に行うことが可能になり、オペレータの負担を軽減し、品質の向上および省力化を図ることが可能になる。
【0011】また、ギャップ零点を決定するための基準がロール空転時のモータ電流値を上回る値に取られ、そのときのロール状態に基づいてギャップ零点を決定することで、簡単な演算を行うのみで、自動化を容易に達成することができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0013】図1は本発明の熱間圧延設備のロールギャップ制御装置の処理例を示すフローチャートである。また、図2は本発明にかかるロールギャップ制御装置およびその周辺設備を示す構成図である。
【0014】複数のスタンド(ここでは一部、F4〜F7の4基のみを図示)を有する仕上圧延機1の後段にはHテーブル2が設置され、その後段の上部には捲取ガイド3、ピンチロールルおよび捲取ガイド5が配設されている。さらに、Hテーブル2の後段にピンチロール6,7,8が順次配設され、このピンチロール間には捲取ガイド9,10が配設されている。ピンチロール6,7,8の各々の斜め下方には、マンドレル11,12,13が配設され、その各々にはラッパーロール14,15,16が接離自在に配設されている。
【0015】このほか、ロールギャップ零点制御および圧延に必要な各種の制御を行うために制御装置17が設けられている。この制御装置17は、工場全体を管理する不図示のホストコンピュータ(プロセスコンピュータ)の下位コンピュータとして位置づけられ、ホストコンピュータの管理の基に作動する。そして、ロール速度検出器18(ピンチロール6,7,8の各々の上ピンチロールおよび下ピンチロールの各回転速度を検出)、ロール電流検出器19(ピンチロール6,7,8の各々の上ピンチロールおよび下ピンチロールの各モータ電流を検出)、ギャップ位置検出器20(ピンチロール6,7,8の各々の上ピンチロールおよび下ピンチロールのギャップ位置を検出)の各出力は、入力信号として制御装置17に取り込まれる。また、本発明によるロールギャップ制御を開始させるための起動ボタン21(コンドール等に設けられる)およびラッパーロールの押圧力を検出するロール押圧センサ22が制御装置17に接続されている。
【0016】次に、図1を参照して本発明のロールギャップ零点について説明する。このロールギャップ零点制御は、図2の制御装置17によって実行される。なお、図中の“S”はステップを意味している。また、以下においては、説明を簡単にするため、ピンチロール6についてのみ説明する。
【0017】まず、ピンチロール6の上下のロール間には間隔が設けられている。この状態で自動零点調整起動ボタン21を押下する(S101)と、ピンチロール6の上下のロール間およびマンドレル11との間で回転に所定の速度差が設定され(S102)、この速度差で各ロールが制御装置17により回転制御される。さらに、ピンチロール6の上下のロールのギャップを徐々に締め込む制御が開始される。(S103)。
【0018】この締め込み過程で、ピンチロール6の上ロールと下ロールが接触すると、ロール間に速度差があるために摩擦抵抗を生じ、各々のロールのモータ電流が急激に増大する。このときの電流変化をロール電流検出器19で検出し(S104,105)、その電流変化率が所定値以上になったことに基づいてギャップ零点を決定する(S106)。
【0019】ギャップ零点の決定は、「空転電流値(材料を噛み込んでいない状態におけるモータ電流)+α」にスレッショルドレベルを設け、このスレッショルドレベルよりも電流が上回った時の電流値をギャップxとする。この時、速度検出器18、ギャップ位置検出器20およびロール押圧センサ22から出力されるピンチロール押圧値、マンドレル速度およびラッパーロール押圧値に基づいてギャップ零点が決定される。この決定によるギャップ零点に基づいてギャップ位置検出器20が自動的に較正される(S107)。ついで、ギャップ零点調整が完了すると、ロールギャップおよびロール速度は元の値に戻される(S108)。
【0020】ところで、ピンチロールギャップは、通板される材料の板厚+αに初期設定されるが、この設定値により薄厚の材料を通板すると蛇行が発生する。このため、現状ではオペレータがピンチロールのモータ電流を監視しながら、ピンチロールが材料表面にタッチするぎりぎりの位置までギャップを上昇させている。このため、オペレータに多大な負担を強いている。
【0021】そこで、本発明においては、図3に示す処理を行っている。
【0022】まず、マンドレル11のロードリレーおよびタイマーが起動することにより本制御が開始され、ピンチロール6の微張力設定変更(=尻抜け時のピンチロール張力+α)が行われる(S301)。ついでピンチロール6のギャップが上昇方向(ギャップ開方向)に駆動される(S302)。この後、「板厚+α」または、ピンチロール6のモータ電流平均値が「設定張力+β」まで減少した時点でギャップ駆動制御を停止する(S303)。さらに、ピンチロール6のギャップが下降方向になるように駆動する(S304)。そして、ギャップ実績が「板厚−x」で、かつピンチロール6の上ロールのモータ電流平均値が「設定張力+γ」以下の時点でギャップ駆動を停止する(S305)。また、板厚、板幅、板引っ張り強度別にギャップ補正を行い(S306)、処理を終了する。
【0023】なお、異常時には、ギャップ制御中に「仕上最終スタンド−y」を材料が抜けた後、元のギャップになるように再度ピンチロールを駆動する。また、「仕上最終スタンド−y」を抜ける瞬間のギャップが「板厚−z」以上の場合には、同様に元のギャップへ再度ピンチロールを駆動する。
【0024】図4は本発明の効果を示す説明図である。図4は、本発明を実施した場合の材料ボトム部のテレスコ巻き直しコイルの発生状況を示しており、本発明を適用した後(図の縦の点線以降)の場合、巻き直し発生本数の低減していることがわかる。
【0025】また、図5は本発明の実施前と実施後の手動介入の頻度を比較した説明図であり、本発明の適用前は手動介入頻度が約95%でオペレータを拘束していたのに対し、本発明の適用により手動介入頻度を約10%にすることができた。この結果、オペレータは監視業務を主にすることが可能になり、負担は大幅に軽減されることがわかる。
【0026】
【発明の効果】請求項1の熱間圧延設備のロールギャップ制御装置によれば、仕上圧延機により仕上圧延を行った材料をピンチロールで所定の張力を付与し、さらにラッパーロールで押圧しながらマンドレルに捲取る圧延設備において、前記ピンチロールの一対のロール間および前記マンドレルと前記ラッパーロール間に速度差を持たせて回転駆動しながら前記ピンチロールのギャップを縮め、その過程におけるピンチロールの電流値を監視し、その値が所定値以上のときのギャップに基づいてギャップ零点を決定する制御手段を設けるようにしたので、ギャップ零点の決定を自動的に行うことが可能になり、オペレータの負担を軽減し、品質の工場および省力化を図ることが可能になる。
【0027】請求項2の熱間圧延設備のロールギャップ制御装置によれば、前記監視電流の所定値はロール空転時のモータ電流値を上回るとし、そのときのギャップ値、ピンチロール押圧値、マンドレルの回転速度およびラッパーロール押圧値に基づいてギャップ零点を決定するようにしたので、簡単な演算を行うのみで、自動化を容易に達成することができる。
- 【公開番号】特開平7−75825
【公開日】平成7年(1995)3月20日
【発明の名称】熱間圧延設備のロールギャップ制御装置
- 【出願番号】特願平5−243510
【出願日】平成5年(1993)9月6日
【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】田北 嵩晴
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