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金属線材の伸線方法
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- 【要約】
【目的】 本発明は、金属線材の湿式によるダイス方式において、潤滑性を高めて伸線の引抜力を向上し、作業の効率化を図る伸線方法を提供する。
【構成】 高圧化した液体を複数のダイス間に設けた高圧室に供給し、1段目のダイスの前段に孔径を漸減するテーパーを付したガイドを連結し、線材とともにガイド側から導入した潤滑剤をガイドと1段目ダイスとの間の潤滑剤保持室に導入し、保持室内での潤滑剤圧力を増加させながら線材を後段のダイスに導入潤滑を行う伸線方法において、ダイスユニット全体に伸線方向に超音波振動を加えて伸線加工する金属線材の伸線方法である。
【効果】 潤滑剤の界面への導入が促進され、潤滑性はよくなって引抜き抵抗の減少,伸線速度の増加を図り得る。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 高圧化した液体をポンプにより複数のダイス間に設けた高圧室に供給し、かつ1段目のダイスの前段に加工する線材より若干大きめの孔径を有し、線材の進入方向に向かって孔径を漸減するようにテーパーを付したガイドを連結し、線材とともにガイド側から導入した潤滑剤をガイドと1段目ダイスとの間の潤滑剤保持室に導入し、保持室内での潤滑剤圧力を増加させながら線材を後段のダイスに導入潤滑を行って伸線加工する金属線材の伸線方法において、前記ガイド,ダイスから成るダイスユニット全体に伸線方向に超音波振動を加えて伸線加工することを特徴とする金属線材の伸線方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ストランド状金属線材を湿式によるダイス方式により冷間伸線する線材の伸線方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、デスケーリングに続いて行われる金属線材の伸線加工としては、乾式あるいは湿式伸線による方法が採用されているが、ダイス加工面の潤滑膜厚が厚くなり、かつ引き抜き速度を高速化できる乾式伸線がよく行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし乾式伸線は、伸線時の鋼線温度上昇に対して充分な冷却ができず、鋼線の歪時効脆化の危険がある。従って、ダイスを直列に複数個配置して伸線する連続伸線工程では、各ダイス間のキャプスタン構造の貯線ドラムに鋼線を巻付け、空気を吹きつけて冷却する方法等が取られているが、その効果は小さく、線材表面に付着した潤滑剤を吹き飛ばして作業環境を悪化させる問題も発生する。
【0004】これに対して湿式潤滑剤による強制潤滑は、現在広く用いられている乾式潤滑に比べ引抜抵抗および伸線後線材温度を低減する点で、通常の鋼線には有効であり、本出願人が特願平3−349797号で提案した潤滑性を向上させる金属線材の伸線方法および装置においても、抗張力100kgf/mm2 以上の硬鋼線に対しては、現在の実用的な高圧ポンプの常用圧力が4000kgf/cm2 であるために、潤滑剤への圧力付与の効果が充分に得られず、良好な効果が期待できなかった。
【0005】また超音波を利用した引抜加工方法または装置として、特開昭48−71763号公報,特開昭49−95300号公報が開示されているが、高圧強制湿式潤滑による伸線に超音波を利用した例は見当たらない。
【0006】本発明は上記課題に鑑み、湿式伸線において高抗張力の硬鋼線に対しても潤滑性を高めて伸線の引抜抵抗を減少させ、伸線作業の効率化を図る金属線材の伸線方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、高圧化した液体をポンプにより複数のダイス間に設けた高圧室に供給し、かつ1段目のダイスの前段に加工する線材より若干大きめの孔径を有し、線材の進入方向に向かって孔径を漸減するようにテーパーを付したガイドを連結し、線材とともにガイド側から導入した潤滑剤をガイドと1段目ダイスとの間の潤滑剤保持室に導入し、保持室内での潤滑剤圧力を増加させながら線材を後段のダイスに導入潤滑を行って伸線加工する金属線材の伸線方法において、前記ガイド,ダイスから成るダイスユニット全体に伸線方向に超音波振動を加えて伸線加工することを特徴とする金属線材の伸線方法である。
【0008】
【作用】湿式によるダイス方式により冷間伸線する線材の伸線方法において、潤滑性を乾式潤滑以上に高めて太径線材の高速伸線をも可能とするために、従来からこれを多段ダイス式の強制潤滑方式とし、ガイドを設けることにより導入部のテーパーのくさび効果により導入される潤滑剤圧力を上昇させ、また平行部においては線材との隙間で潤滑剤保持室内の圧力を保持する手段が採用されている。
【0009】そして大気圧での潤滑となる1段目のシールダイスには、前記高められたシールダイス前段の湿式潤滑剤によりより多くの潤滑剤が導入され、1段目以降の各ダイスの潤滑性を高めるものである。
【0010】ここで本発明では、湿式伸線において高抗張力の硬鋼線に対しても、さらに潤滑性を高め伸線の引抜抵抗を減少して伸線作業の効率化を図るために、ダイスユニット全体に伸線方向に超音波振動を与えるものである。
【0011】このように伸線加工中に伸線方向にユニット全体を振動させることにより、ダイスのテーパー部と線材間に微小隙間が生じ、この隙間に潤滑剤が流入する。さらにダイスの振動によるポンプ作用により流入した潤滑剤の伸線界面への導入が促進される。
【0012】この界面への潤滑剤の円滑な導入により、伸線引抜抵抗の減少,伸線速度の増加等を図ることができ、高圧ポンプの圧力を4000kgf/cm2 以上の超高圧に高める必要はなく、良好な伸線状況を保つことができる。
【0013】またこの振動により、ダイス加工面での線材とダイスの接触時間を減少させるとともに、振動による衝撃力と振動力により線材の塑性変形を促進させ、伸線速度の増加を図り得る。
【0014】伸線引抜きの場合の抵抗値は、振動数が高くなると減少して伸線速度の増加等を図ることができるが、振動数が10kHz未満ではあまり顕著ではなく、また50kHzを超過するとその効果は飽和するので、10〜50kHzが好ましい振動範囲である。
【0015】
【実施例】以下本発明の一実施例を、図面に基づいて説明する。
【0016】図1は本発明の伸線方法を実施するに最適の伸線用ダイスユニットの側断面図を示し、ダイスユニットは、1段目のダイス5の前段に加工する被伸線材1より若干大きめの孔径を有し、かつ線材1の進入方向に向かって孔径を漸減するように、テーパー11を付したガイド4を連結し、ダイス5との間に潤滑剤保持室8を形成する。またガイド4の上流側には、潤滑剤の貯溜槽10内にダイスホルダー12に接して振動ホーン3を介して超音波振動を発生する振動子2を取り付ける。
【0017】1段目のダイス5の後段側には2段目のダイス6が設けられ、1段目のダイス5との間に高圧室9を形成し、また該高圧室9には高圧ポンプ7から超高圧化した水と潤滑剤の混合液等の液体が供給される。被伸線材1は1段目のダイス5で軽伸線,2段目のダイス6で主伸線される。
【0018】このダイスユニットを使用し、先ず上流側より導入された被伸線材1は、潤滑剤の貯溜槽10を通過して潤滑剤が塗布され、線材1とともに潤滑剤は、その粘性と被伸線材1の速度によりガイド4を通過し、潤滑剤保持室8へ導入される。
【0019】この際ガイド4は、導入部のテーパー11のくさび効果により導入される潤滑剤圧力を上昇させることと、平行部においては、線材1との隙間で潤滑剤保持室8内の圧力を保持させる機能を分担する。
【0020】潤滑剤保持室8の中は密閉状態であり、潤滑剤が排出される構造とはなっていないために、導入される潤滑剤によって潤滑圧力が上昇し、この圧力上昇作用により線材1とともに1段目のダイス5へ導入される潤滑剤を増加し、高圧室9の内部まで潤滑剤を導入する。
【0021】ここでダイスユニットは、振動子2により超音波振動を発生し、これをホーン3により増幅してダイスホルダー12を振動させる。これによりダイス5,6が伸線方向に振動し、線材1表面をその衝撃力と振動力により線材の塑性変形を促進させるとともに、ダイス5,6加工面における潤滑剤の導入を促進することで、超高圧潤滑伸線との相乗効果を得る。
【0022】表1は上記図1に示すダイスユニットにより、高圧ポンプよりの供給圧力を4000kgf/cm2 とし、振動子2によって超音波振動を加えながら6.4mmφの硬鋼線を5.9mmφに伸線を行った場合の引抜抵抗を計測した結果を示す。
【0023】この結果から判るように、超高圧潤滑伸線のみの場合に比して超音波振動を加えた場合は引抜抵抗値は大幅に減少し、この場合10〜50kHzの超音波周波数の範囲において超音波出力が大となるほど、また周波数が高くなるほど引抜抵抗値は小さくなる。
【0024】
【表1】【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、超高圧潤滑伸線においてダイスユニット全体に伸線方向に超音波振動を加えることにより、潤滑剤の伸線界面への円滑な導入が促進され、伸線時の潤滑性はよくなって引抜抵抗の減少,伸線速度の増加等を図ることができ、高圧ポンプを超高圧に高める必要はなく良好な伸線状況を保つことができる。
【0026】またこの振動により、ダイス加工面での線材とダイスの接触時間を減少させるとともに、振動による衝撃力と振動力により線材の塑性変形を促進させ、伸線速度の増加を図り得る。
【0027】さらに冷却効果も向上して潤滑剤の温度上昇が抑えられ、太径線材に対しても円滑に高速伸線加工が可能となり、伸線加工効率が向上し、またダイスにかかる負荷も軽減できるため、伸線々材の品質,ダイス寿命向上を図り得る。
- 【公開番号】特開平7−80537
【公開日】平成7年(1995)3月28日
【発明の名称】金属線材の伸線方法
- 【出願番号】特願平5−247321
【出願日】平成5年(1993)9月9日
【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】秋沢 政光 (外1名)
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