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中空製品押出用ダイス
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- 【要約】
【目的】 内面の一部に突部を有する中空押出形材の押出成形において、表面側にすじ,光沢の違い,凹み等の表面欠陥が生じることなく中空押出形材を押出成形し得るようにする。
【構成】 ダイ1のダイ・ベアリング面3の長さL1 をマンドレル3のマンドレル・ベアリング面4より短く設定する。ダイ1のビレット側側面1aにダイ穴7に近接して突起部20を、成形すべき中空押出形材5の突部に対応して突設する。この突起部20のマンドレル側側面20bはビレット側側面1aと略直交し、突起部20の高さHがダイ穴7から突起部20までの距離Dより大きく設定されている。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 ダイとマンドレルとを備え、内面の一部に突部を有する中空押出形材を押出成形する中空製品押出用ダイスにおいて、前記ダイのダイ・ベアリング面の長さを前記マンドレルのマンドレル・ベアリング面より短く設定すると共に、ダイのビレット側側面のダイ穴近傍部であって、押出成形されるべき前記中空押出形材の突部に対応する箇所に突起部を突設してなり、この突起部のマンドレルと対向する側面は前記ビレット側側面に対して略垂直で、高さがダイ穴から突起部までの距離より大きく設定されていることを特徴とする中空製品押出用ダイス。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミニウム管等の中空製品、特に内面の一部に突部が一体に設けられた異形状の中空押出形材を連続押出加工する際に用いて好適な中空製品押出用ダイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】連続熱間押出加工機による中空押出形材の押出加工に用いられるこの種の成形用ダイスは、一般に図3に示すようにダイ1とマンドレル2とを備え、これらに設けたダイ・ベアリング面3およびマンドレル・ベアリング面4の対向間隙によって中空押出形材5の断面形状を規定するベアリング部6を構成している。中空押出形材5の外形状を規定するダイ・ベアリング面3は、ダイ1に形成されたダイ穴7の穴壁面に設けられている。ダイ穴7は、中空押出形材5の押出方向(矢印方向)に拡径したテーパ穴からなり、その入口形状が中空押出形材5の外形状と等しく、出口側には逃げ部(穴)8が形成されている。この逃げ部8は、ダイ1の補強と、ベアリング部6によって形成された中空押出形材5をスムーズに通る目的で設計されており、その形状はベアリング形状と相似形でこれより大きな形状もしくは相似形に近い形状とされている。一方、マンドレル・ベアリング面4は、マンドレル2の外周面に全周にわたって形成されており、中空押出形材5の内形状を規定する。
【0003】中空押出形材5の押出加工に際しては、通常所定温度に加熱されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるビレット9を円筒状のコンテナ10内に装填し、その一端にダイ1を設置し、反対側から挿入した不図示のラムを前進移動させて押板でビレット9を加圧し、ベアリング部6から押し出すことで行なっている。
【0004】図4はこのようなダイスによって押出成形された中空押出形材5の一例を示す。この中空押出形材5は内面の一部に突設された突部11を有し、この突部11が中空押出形材5の位置決め部やねじ取付部として用いられる。
【0005】ところで、図4に示したように内面の一部に突部11を有する中空押出形材5の押出成形においては、突部11に対応する表面側にすじ,光沢の違い,凹み等の表面欠陥12が発生し易く、このような表面欠陥12は突部11の肉厚が大きい程顕著で、製品の品質を著しく低下させるという問題があった。これはダイ・ベアリング面3に沿って流れるビレット9の流速が、突部11に対応する部分とそれ以外のベアリング部分とで異なることによる。すなわち、突部11に対応するベアリング部分のダイ・ベアリング面3とマンドレル・ベアリング面4の対向間隙が他のベアリング部分より広くなると、この部分を通過するビレット9の流速が間隙中央において速くなり、外側において遅くなることに起因するもので、突部11の肉厚が小さくて突部11に対応する広い対向間隙のベアリング部分の外側部分を流れるビレット9と、突部が形成されない対向間隙の狭いベアリング部分のダイ・ベアリング面に沿って流れるビレット9との流速差が小さい間はすじや光沢の違いを生じ、突部11の肉厚が大きくなり広い対向間隙のベアリング部分の外側部分を流れるビレット9と、突部が形成されない対向間隙の狭いベアリング部分のダイ・ベアリング面に沿って流れるビレット9との流速差が大きくなると、広い対向間隙の外側を流れるビレット9が中央部を流れるビレット9に引き寄せられて凹みを生じる。
【0006】そこで、その対策として突部11のためにダイ・ベアリング面3とマンドレル・ベアリング面4の対向間隙が広くなるベアリング部分の外側を通過するビレット9の流速を速くすると共にダイ・ベアリング面3に沿って流れるビレット9の量を多くしてやればよいわけで、そのため本発明者等は図5および図6に示すようにダイ1の内側面、すなわちビレット側側面1aでダイ穴7の近傍部に截頭角錐形の突起部14を、突部11の形成のためダイ・ベアリング面3とマンドレル・ベアリング面4の対向間隙が広くなるベアリング部分6aに対応して突設した。このような突起部14をダイ1に設けたダイスにあっては、突起部14のマンドレル2と対向する内側面14aがガイド面となってビレット9をベアリング部分6aに導くため、ダイ・ベアリング面3に沿ってベアリング部分6aに流れ込む外側のビレット9の流速を速くすることができ、表面欠陥の発生をある程度まで防止することができることが確認された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、突起部14の内側面14aは斜面のため、この面に沿って流れるビレット9はビレット側側面1aに当たって方向転換されると、その勢いが大であることから、突部11の肉厚が厚くなるにしたがってベアリング部分6aの中央部よりベアリング部内により多く入るため、ダイ・ベアリング面3に沿って流れるビレット9の量が少なくなり、凹み等の表面欠陥の発生を完全には防止することができず、未だ改善の余地があった。
【0008】そこで、本発明は上記したような従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、内面の一部に突部を有する中空押出形材の押出成形に際して、その表面側にすじ,光沢の違い,凹み等の表面欠陥が生じることなく中空押出形材を押出成形し得るようにした中空製品押出用ダイスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、ダイとマンドレルとを備え、内面の一部に突部を有する中空押出形材を押出成形する中空製品押出用ダイスにおいて、前記ダイのダイ・ベアリング面の長さを前記マンドレルのマンドレル・ベアリング面より短く設定すると共に、ダイのビレット側側面のダイ穴近傍部であって、押出成形されるべき前記中空押出形材の突部に対応する箇所に突起部を突設してなり、この突起部のマンドレルと対向する側面は前記ビレット側側面に対して略垂直で、高さがダイ穴から突起部までの距離より大きく設定されているものである。
【0010】
【作用】本発明において、ダイ・ベアリング面はマンドレル・ベアリング面より短く形成されることで抵抗が小さく、ダイ・ベアリング面に沿って流れるビレットの流速を増大させる。突起部のマンドレルと対向する側面はダイのビレット側側面と略直交しているため、斜面の場合と異なり、ビレットがダイス中心方向に向かう勢いを小さくする。したがって、突部の形成のためダイ・ベアリング面とマンドレル・ベアリング面の対向間隙が広くなるベアリング部分において、ダイ・ベアリング面に沿ってベアリング部分に入るビレットの量を多くする。
【0011】
【実施例】以下、本発明に係る中空製品押出用ダイスを図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る中空製品押出用ダイスの一実施例を示す断面図、図2は図1のB矢視図である。なお、図中、図3〜図6に示した構成部材と同一部品のものに対しては同一符号をもって示し、その説明を省略する。これらの図において、本実施例はダイ1のビレット側側面1aでダイ穴7の近傍部に台形の突起部20を、中空押出形材5の内面に突設される突部11(図6)のためダイ・ベアリング面3とマンドレル・ベアリング面4の対向間隙が広くなるベアリング部分6aに対応して突設したものである。前記ダイ・ベアリング面3の長さL1 はマンドレル・ベアリング面4の長さL2 より短く設定されており、マンドレル・ベアリング面4の先端がダイ穴7の出口側開口端と略一致するようマンドレル2がダイ穴7に挿入されている。ダイ・ベアリング面3の傾斜角度αは2〜3°程度とされる。突起部20の上面20aは平坦面で、マンドレル2に対向する側面20bは、ダイス軸線と平行、換言すればダイ1のビレット側側面1aと略直交する垂直面とされ、残り3つの側面20c〜20eは斜面とされる。但し、これら3つの側面20c〜20eは必ずしも斜面でなくてもよい。突起部20の高さHは1.5〜2mm程度で、ダイ穴7から突起部20までの距離Dより大きく設定されている。距離Dは1.5mm程度とされる。
【0012】かくしてこのような構成からなるダイスにおいては、L1 <L2 によりダイ・ベアリング面3のビレット9に対する抵抗がマンドレル・ベアリング面4より小さく、そのためダイ・ベアリング面3に沿って流れるビレット9の流れを阻害することが少なく、マンドレル・ベアリング面4に沿って流れるビレット9より速くすることができる。また、突起部20のマンドレル2と対向する側面20bは、ビレット側側面1aと略直交するため、マンドレル側側面20bに沿って流れてきたビレット9はビレット側側面1aに当たってダイス中心方向に方向転換した際、その勢いが図5に示した截頭角錐形の突起部14の場合に比べて弱く、ダイ・ベアリング面3に沿ってベアリング部分6aに流れ込む。この結果、ベアリング部分6aのダイ・ベアリング面3に沿って流れるビレット9の量が減ったり、流速が遅くなったりすることがなく、突部が形成されない対向間隙の狭いベアリング部分6aのダイ・ベアリング面に沿って流れるビレット9との流速差が殆ど生じず、しかして中空押出形材5の表面側にすじ,光沢の違い,凹み等の表面欠陥が生じるのを確実に防止することができる。
【0013】ここで、突起部20からダイ穴7までの距離Dを大きくし過ぎると、突起部20のマンドレル側側面20bに沿って流れてきたビレット9がダイ1のビレット側側面1aに当たってダイス中心方向に方向転換された後、ダイ・ベアリング面3に沿ってダイ穴7に流れ込む量が減少するため好ましくない。
【0014】なお、中空押出形材5の内面の一部に突設される突部11として図2および図6に台形のものを、図4に台形およびC字型のものを示したが、本発明はこれに何等特定されるものではなく、矩形、円柱状等種々の形状の突部に対してもそのまま適用実施し得るものである。
【0015】
【発明の効果】以上述べたように本発明に係る中空製品押出用ダイスによれば、内面の一部に突部を有する中空押出形材の押出成形に際して従来不可避とされていたすじ,光沢の違い,凹み等の表面欠陥の発生を確実に防止することができ、製品品質を向上させることができる。また、ダイに突起部を設けるだけでよいため、構造が簡単で、既存のダイであっても肉盛りにより突起部を形成すればそのまま使用することができ、経済的効果大である。
- 【公開番号】特開平7−80538
【公開日】平成7年(1995)3月28日
【発明の名称】中空製品押出用ダイス
- 【出願番号】特願平5−252162
【出願日】平成5年(1993)9月16日
【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
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