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押出プレスにおける脱気押出制御方法
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- 【要約】
【目的】 コンテナ内のビレットを押出す前にコンテナ内の空気を全て吸引してダイスからビレットを押出す前に、バープサイクルと呼んでいる前記ガス抜き工程のない脱気押出制御方法を提供する。
【構成】 押出コンテナとビレットの間の空間の空気をビレットの押出しを開始する前に、コンテナをダイスに接触する直前で一時停止させる一時停止機構を設ける。そして、予め登録しておいた脱気、アプセット、コンテナシールの各出力特性曲線と、実測して得られたコンテナシール完了時のビレット押出作用面のアプセット圧か真空度の出力特性曲線とを比較して少なくとも1つが許容範囲を越えた場合は警報信号を出す。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 押出コンテナをダイスに接触させる前にコンテナを一時停止させて前記押出コンテナとビレット間の空気を押出開始する前までに真空化させ、コンテナシール完了後にビレットの押出しを行なうに際し、脱気、アプセット、コンテナシールの所望する出力特性曲線を制御装置に予め登録しておき、次いで実測して得られたコンテナシール完了時のビレット押出作用面のアプセット圧か真空度の出力特性曲線とを比較して少なくとも1つが許容範囲を越えた場合に異常の警報信号を出すようにしたことを特徴とする押出プレスにおける脱気押出制御方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミニウム合金等の押出プレスによる押出成形に際して、コンテナ内からダイスを通ってビレットが押出される前に、コンテナとビレット間の空気をコンテナの外に放出し、ビレットを効果的に無駄なく押出すための改善された押出プレスにおける脱気押出制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンテナ内径よりも少し小径のビレットをコンテナ内に入れた後、コンテナ内でビレットをビレット後方のステムで押してダイスに押当て、いわゆるアプセットすると、ビレットが押しつぶされ、コンテナとビレットの間の空気が圧縮される。この圧縮された空気を放出するために、ステムとコンテナをわずかに後退させ、ダイスとコンテナの隙間から上記の圧縮空気を抜いて、再度コンテナとステムを前進させて押出しを開始する。このようにして圧縮された空気を抜くガス抜き工程をバープサイクルと呼んでいるが、この工程が有ることにより、押出サイクルに無駄な時間が発生する。
【0003】また、この方法だと、バープサイクルで脱気してコンテナをダイスに押付けた時、コンテナ内面とビレット外面の間に、皮1枚程度の薄い状態で空気が大気圧で残っており、充分な脱気は行われていない。さらに、コンテナライナ端面とダイス端面には、しばしばアルミニウムかすが付着する。均一な膜状に付着すればシールした時に空気の侵入は無いはずだが、一般的にはかすが不均一に付着する。このため、せっかくコンテナ内を脱気しても、ビレットのアプセットが完了するまでに再び空気が侵入しバープサイクルを行ったとしても完全でなく、ブリスタが発生していた。そこで、最近コンテナとビレット間の空気を連続して脱気することも考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうした空気抜き方法では、ビレットの後端側がつぶれる前に脱気を行うと、ビレット後端側より空気が侵入して高真空に保持することができず、また逆に充分アプセットされた状態で脱気しても脱気効果がなく、脱気とアプセットおよびコンテナシール間の相関関係がデータに基づいて定量的に充分解明されていないといった問題があり、従来より試行錯誤によって脱気押出制御が行われていた。
【0005】したがって、本発明は上記したような従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、コンテナ内のビレットを押出す前にコンテナ内の空気を全て吸引してダイスからビレットを押出す前に、バープサイクルと呼んでいる前記ガス抜き工程の必要のない脱気押出制御方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するためになされたもので、押出コンテナをダイスに接触させる前にコンテナを一時停止させて前記押出コンテナとビレット間の空気を押出開始する前までに真空化させ、コンテナシール完了後にビレットの押出しを行なうに際し、脱気、アプセット、コンテナシールの所望する出力特性曲線を制御装置に予め登録しておき、次いで実測して得られたコンテナシール完了時のビレット押出作用面のアプセット圧か真空度の出力特性曲線とを比較して少なくとも1つが許容範囲を越えた場合に異常の警報信号を出すようにした。
【0007】
【作用】コンテナに装填したビレットをビレット後方の押出ステムで押込んでビレットをダイスに押当てるとビレットが押しつぶされるが、この時、コンテナとビレットの間の空気も同時に脱気する。押出製品中のブリスタを少しでもなくするように所望する出力特性曲線に沿った脱気押出制御を行ない実測して得られた出力特性曲線と比較して許容範囲を越える時は警報信号を出して無駄な押出製品を防止することができる。なお、コンテナのダイス側から空気を吸引する際には、ビレットをコンテナ内に装填完了した基準点を設け、この基準点から一定時間経過した後にダイスとコンテナ間の微小な間隔を通して空気を吸引する。そして、アプセット完了直前にコンテナシールを完了しておく。
【0008】
【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1は脱気、アプセット、コンテナシールの組合せによる脱気押出制御曲線、図2は脱気、アプセット、コンテナシールの各脱気押出制御曲線、図3は脱気、アプセット、コンテナシールの各脱気押出制御曲線、図4は本発明に係る押出コンテナ用脱気装置の一実施例を示す断面図、図5はダイスとコンテナ間の微小間隔を通して空気を吸引する吸引部の要部拡大断面図、図6はコンテナ内で加圧されるビレットのつぶれ方を示す概念図である。
【0009】図4のエンドプラテン32に設置され、コンテナタイヤ2とコンテナ1を摺動させるコンテナシリンダ33のピストンヘッド側のA部の要部は移動ストッパブロック34とストッパを兼ねるヘッドブロック35等からなり、移動ストッパブロック34が移動する範囲の最大距離でピストン37はコンテナ1のダイス3側端面をダイス3面と例えば2〜3mm程度の隙間(ギャップ)6のある状態で急速一時停止できるような一時停止機構30を有した構造とになっている。図1で36はシリンダ本体の一部を構成するシリンダチューブ、35はシリンダ本体の後部にあるヘッドブロック、37はピストン、38はピストンロッドである。
【0010】符号3はダイスであって、ダイス3の外周をダイリング5の内周面に嵌合保持してある。6は隙間(ギャップ)であってコンテナシリンダ33内に設けた一時停止機構によってコンテナ1とダイス3やダイリング5との間には例えば2〜3mmの隙間(ギャップ)6があいているようになっている。31はコンテナの内周面とビレット13の外周面との間の隙間であり、脱気空間でもある。
【0011】一方、ビレット13を押込む押出ステム14の先端部にコンテナ1内面と密接し得るフィックスダミイブロック15が設けられている。フィックスダミイブロック15は押出ステム14内の軸心部に固定して設けられた管状部材16の先端部にねじで取付けられているダミイブロック後部部材17、この後部部材17の先端外周部にねじで取付けられていて、その先端部が外径方向に広がってコンテナ1の内周面に密接し得る外側リング18である。なお、14aはステムホルダ、14bはクロスヘッドである。
【0012】本実施例では、図5に示す如くコンテナタイヤ2のダイス3側端面にコンテナ1と同芯状のアウタリング10がボルトによって固設されている。アウタリング10の断面は略L字形をしており、一端を前記したようにコンテナ1側に固定してあり、他端をダイリング5の外周面にシールリング12を介して接触している。コンテナ1とダイス3に例えば2〜3mmの隙間を残してコンテナ1を一時停止した時、ダイリング5側に面したアウタリング10の内周面上を一部凹部状に刻設して、ここに伸縮自在なシールリング12が配設してあり、ダイリング5の径が温度低下によって縮径してもシールリング12が追従するため外気の侵入が防止可能なようになっている。
【0013】アウタリング10の上方には、例えば脱気穴7が2ヶ所あり、そこから配管8や電磁切替弁9を介して真空タンク20や真空ポンプ21に連結されている。22はモータ、24はアウタリング10とコンテナタイヤ2間から空気の侵入を防止するメタル中空リングである。
【0014】次に、前記装置の作用について説明する。まず、コンテナ1のダイス3側端面をダイス3面と例えば2〜3mm程度の隙間(ギャップ)6のある状態で停止させている。この状態でコンテナ1の中へビレット13を図示しないサイドシリンダ装置による押出ステム14の前進動作で装填し、ビレット13の先端面をダイス3に当てる。この状態を図4(または図6(1))に示す。この時、コンテナ1とビレット13の脱気空間31には空気がある。
【0015】この動作が終了したビレット13の押込み限の直後に引続く押出ステム14の前進動作によって図6(2)のようにビレット13の後端部がつぶれ、図1中の■に示すように一時的にP1 (kg/mm2 )まで昇圧した後、すぐ降圧する挙動を示すことになる。この時のP1 (kg/mm2 )点をビレット13をコンテナ1内へ装填完了した基準点Xとする。この後、前記基準点Xからアプセットが開始されるまでのTu時間(例えば0.8秒)までに押出ステム14の前進動作をサイドシリンダ装置(図示なし)からメインシリンダ装置(図示なし)に切換えると油タンク(図示なし)からプレフィルバルブ(図示なし)を介して前記メインシリンダ内に圧油が供給される。
【0016】そして、前記プレフィルバルブを閉状態にした後前記油圧ポンプから圧油をメインシリンダ内に供給すると押出ステム14は再駆動され、図1中の■に示すようにアプセットが開始される。
【0017】前記した基準点Xから押出ステム14の再前進によるアプセット動作が開始されるまでのTu時間の間に、これらアプセット動作と併行して前記基準点Xから例えば0.2秒経過したTv時間後から真空タンク20の作用で、ダイス3側より脱気空間31の空気は吸引開始される。この時、吸引されたダイス3側の空気は、隙間(ギャップ)6を通りコンテナ1に取付いているアウタリング10の一部に設けられている脱気穴7を通り、そこから配管8でコンテナ1上面の電磁切替弁9へと導かれる。
【0018】事前に真空タンク20と電磁切替弁9までの配管内は例えば5〜10torrに真空引きされており、ビレット13とダイス3が接触すると同時に電磁切替弁9が開いて、シールリング12の脱気穴7を通して脱気空間31は素早く充分に脱気される。押出ステム14は休むことなく前進を続けビレット13は押しつぶされる。
【0019】また、コンテナシール動作(図1中の■)については、前記した脱気動作とアプセット動作と併行する形で、前記基準点Xから例えば1.1秒経過したTc時間後からコンテナシールが開始される(図6(3))。そして吸引脱気し始めてからも、押出ステム14は休むことなく前進を続け、ビレット13をつぶす。そして、図1中の■に示すようにコンテナ1内にビレット13を充満させ、アプセットを完了する直前に前記コンテナシールを完了する(図6(4))。こうして、コンテナ1とビレット13の間の脱気空間31は押出ステム14でダイス3方向にビレット13がS1 からS3 まで順次加圧されていけば、この脱気空間31はダイス3側に押しせばめられるのが図6より分かる。脱気は、例えば、約10〜50torrの真空度で、0.5秒程度で行える。
【0020】次に引続いて押出しに入り、ダイス3から製品が押出される(図1中の■)。なお、コンテナ1の内部の脱気空間31が所定の真空度に到達した時点でコンテナ1はダイス3側へ前進し、コンテナ1のダイス3側端面はダイス3面に当り、ダイス3面との隙間(ギャップ)6をゼロとし、押出開始直後まで脱気を続ける。
【0021】本実施例では前記作用を基本として次のように行なわれる。すなわち、所望する脱気、アプセット、コンテナシールの各出力特性曲線およびTv、Tu、Tcなどをコンピュータに登録しておくとともに、図1に示すような脱気、アプセット、コンテナシールの組合せによる脱気押出制御曲線の画面表示が可能になっている。次いで前述した一連の脱気押出動作途中において、例えば図2(1)中の■に示すように実測によるアプセットの出力特性曲線Aが破線で示す方向に移動した場合、これは所望のアプセット完了時間より早くアプセットが完了したことを示すコンテナシール完了点c′は変らないもののアプセット完了点がc点からb点への移動により、例えばα秒アプセット完了が早まることになる。このためコンテナシール完了の前にアプセットが完了することとなり、ダイス3とコンテナ1間でビレット13がはみ出すいわゆるバリが生じる原因となる。従って、バリを防止するため本実施例では図2(1)中の■に示す破線を限界の出力特性曲線として少しでも右側に移動する(時間なら所定時間よりα秒以上短くなる)ような実測の出力動作曲線になった場合には警報信号を出すようになっている。
【0022】次に、図2(2)に示すように実測によるアプセットの出力特性曲線Bが点線で示す方向に移動した場合(これは所望のアプセット完了時間より遅くアプセットが完了したことを示す)、コンテナシール完了点c′は変らないもののアプセット完了点がc点からa点への移動により例えばα秒アプセット完了が遅くなる。このため、コンテナシール完了から少し時間が経過してアプセットが完了することとなり、脱気空間31の空気が充分に脱気できず空気が残留することになる。従って、残留空気をなくするため本実施例では図2(2)中の■に示す破線を限界の出力特性曲線として少しでも左側に移動する(時間なら所定時間よりα秒以上長くなる)ような実測の出力特性曲線になった場合には警報信号を出すようになっている。このことにより押出製品中に多くのブリスタを生じることになる。
【0023】さらに、図3(1)に示すように脱気時に外部から空気が侵入して真空度が低下すると、脱気の出力特性曲線Cが破線で示す方向にd点からe点へ移動し、図3(1)中の■に示す破線を限界の出力特性曲線として少しでも上方に移動する(圧力なら10〜20torr高くなり真空度が低下する)ような実測の出力特性曲線になった場合には警報信号を出すようになっている。このことにより押出製品中に多くのブリスタを生じることになる。
【0024】前記実施例は数多くある中で1例について述べたものであり、Tv(基準点Xから脱気開始までの所要時間)、Tu(基準点Xからアプセット開始までの所要時間)、Tc(基準点Xからコンテナシール開始までの所要時間)については■ビレットの材質、■ビレットの径、■ビレットの長さ、■ビレットの加熱温度、■押出製品の形状と大きさ等によって種々変化するため、これらデータの蓄積と定量的な解明によって容易に所望する押出製品を得ることが可能である。
【0025】
【発明の効果】以上説明したことからも明らかなように、本発明に係る押出プレスにおける脱気押出制御方法は、押出コンテナをダイスに接触させる前にコンテナを一時停止させて前記押出コンテナとビレット間の空気を押出開始する前までに真空化させ、コンテナシール完了後にビレットの押出しを行なうに際し、脱気、アプセット、コンテナシールの所望する出力特性曲線を制御装置に予め登録しておき、次いで実測して得られたコンテナシール完了時のビレット押出作用面のアプセット圧か真空度の出力特性曲線とを比較して少なくとも1つが許容範囲を越えた場合に異常の警報信号を出すようにしたことにより、空気の残留がほとんどなく、脱気時間が短くてすむためアプセット速度を速くすることができる。所定の真空度に到達してコンテナシールした後も、ダイス側からの脱気行為は押出開始まで続けているので、空気が再びシール面から逆流して入り込む恐れはない。また、異常時に警報信号が出るため不良押出製品を続けて生産することはなくなり、生産性が向上する。
- 【公開番号】特開平7−80540
【公開日】平成7年(1995)3月28日
【発明の名称】押出プレスにおける脱気押出制御方法
- 【出願番号】特願平5−223022
【出願日】平成5年(1993)9月8日
【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
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