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スパイラル鋼管の成形方法及びその装置
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- 【要約】
【目的】ピラミッド型成形ロールを用いるスパイラル鋼管製造方法において、適正溶接条件を確保し、高速製造できるようにする。
【構成】成形ロール2、3、4を、成形鋼管10の中心角α=30度だけ素材1の入側に移動し、鋼管内面溶接位置を成形鋼管10の軸心11を通る鉛直線12と鋼管円周との交点13より素材入側で中心角約10度の位置に設定する。溶接欠陥のない優れたビードをもつ鋼管内面溶接が可能となる。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 ピラミッド型成形ロールを用いるスパイラル鋼管製造方法において、曲げ成形位置を成形鋼管中心鉛直線に対して素材入側に偏倚させて巻管することを特徴とするスパイラル鋼管の成形方法。
【請求項2】 ピラミッド型成形ロールを用いるスパイラル鋼管製造装置において、成形ロールの素材出側ロールの作用点が少なくとも成形鋼管中心鉛直線に対して素材入側に位置するように成形ロールの位置を素材入側に偏倚させて配設したことを特徴とするスパイラル鋼管の成形装置。
【請求項3】 成形ロールの偏倚位置が成形鋼管中心角で5〜90度であることを特徴とする請求項2記載のスパイラル鋼管の成形装置。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スパイラル鋼管の成形方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】スパイル鋼管は、帯状ストリップを素材とし、これをスパイラル製管機に送り込んで螺旋円筒状に曲げ、ストリップの縁部を突合わせ、その突き合わせ部をサブマージアーク溶接により、管内外から溶接して製造される。スパイラル製管機の基本型式を図2に示した。図2(a)はピラミッド型成形ロールと外面ガイドロール方式の製管機である。素材1は3個の成形ロール2、3、4によって所望の曲率に曲げられ、多数の外面ガイドロール5によって円筒形に保持される。素材1は成形ロール2、3、4の近傍で、縁部を鋼管内面側からサブマージアーク溶接して接合し、スパイラル鋼管10となる。図2(b)はピラミッド型成形ロールと内面ガイドロール方式の製管機である。素材1は3個の成形ロール2、3、4によって所望の曲率に曲げられ、多数の内面ガイドロール6によって円筒形に保持される。成形ロール2、3、4の近傍で、湾曲した素材の縁部を管内面側からサブマージアーク溶接する。図2(c)は逆ピラミッド型成形ロールとスタンドロール方式の製管機である。素材1スパイラル鋼管10の上側から供給され、3個の成形ロール2、3、4が形成する逆ピラミット型成型ロールによって曲げ加工される。スパイラル鋼管10は下方の支持ロール7によって支持されている。
【0003】以上のいずれの方式でも3本の成形ロール2、3、4により素材1を曲げ、その縁部を溶接接合する。従来の成形ロール2、3、4は図2(a)、(b)に示すピラミッド型も図2(c)に示す逆ピラミッド型も、3個の成形ロールの中心(中央の成形ロール3の中心)がスパイラル鋼管10の軸心を通る鉛直線上又はその近傍に配置されていた。
【0004】スパイラル鋼管の曲げ成形工程における成形ロール2、3、4と素材1とのロール位置関係を図3に示した。また、曲げ成形工程の曲率の変化を図4に示した。図3において、矢印8方向から進入してきた素材1は、成形ロール2、3、4によって曲げ加工される。このとき、中央の成形ロール3と入側の成形ロール2、出側の成形ロール4との作用点間の距離xをそれぞれL1 、L2 とし、この区間における素材1の曲率の変化を図4に示した。図4は次の条件下における例である。
【0005】管径1219.2φ×肉厚12.7(mm)
降伏応力σY =25kgf/mm2ヤング率E=20、000kgf/mm2成形ロールの水平距離L1 、L2 =100mm成形ロールの半径r=55mm図4から明らかなように、素材1の曲率の変化は入側成形ロール2から中央の成形ロール3の間では、中央の成形ロール3の近傍で曲率が急激に変化して、中央の成形ロール3の作用点で最大値(1/ρ0 )となる。ついで、出側の成形ロール4の作用点近傍までスプリングバックして所定の成形曲率(1/ρ)にいたる。
【0006】次に、曲げ成形された素材の溶接について図5を参照して説明する。矢印8の方向から進入してきた素材1は、点21から点22までの間の区間で鋼管内面を溶接し、点23から点24までの間の区間で鋼管外面を溶接する。鋼管内面溶接の場合、溶接位置が図5に示す区間aにある時は、溶接ビードは上り坂となり、例えば溶接点21では、溶接ワイヤは−θ1 だけ先行姿勢となる。溶接位置が区間bにあるときは、溶接ビードは下り坂となり例えば溶接点22では溶接ワイヤはθ2 だけ後行姿勢で溶接を行うこととなる。なお、鋼管の外面溶接は、点23から点24までの区間であるから、いずれも溶接ビードが下り坂となる。
【0007】図6に溶接位置とビードの形状との関係を示した。鋼管の内面溶接と外面溶接のそれぞれ位置A、B、Cにおけるビードの断面形状は図示のとおりである。内面溶接では、位置Aでは溶接ビードが下り坂となるので、図6中の内面Aの欄に示すように、溶け込みも浅く、溶融池の溶鋼が流れて凹形になり、オーバーラップを生じる形状となる。この様子は図7の(a)(b)に示すとおりである。図7(a)は素材1の溶接部に溶接ワイヤ31でフラックス33を用いて矢印32の方向に進行して溶接する場合を示している。溶接ビード34は下り坂となるので、溶融池の溶鋼は下方に流れる傾向を示し、図7(b)に示すように、凹形となる。
【0008】図6に示す内面溶接の位置Cでは、溶接ビードが上り坂となるので、図6中の内面Cの欄に示すように、溶け込みも深く、ビードはアンダーカットやオーバーラップなどの欠陥のない優れた形状を呈する。この状態は図7(c)(d)に示したとおりである。図7(c)において、素材1の溶接部に溶接ワイヤ31でフラックス33を用いて矢印35の方向に進行して溶接すると、溶接ビード34は上り坂となるので、溶接ビードは図7(d)に示すように、溶け込みが深く、上部が山形となり、ややアンダーカット気味になる。
【0009】しかし、図6に示す内面溶接位置Cでは、先に図4で説明したように、素材1は曲率が小さく、隣接する成形済みの素材と形状が一致しておらず、溶接中に素材の形状が変化している状況であり溶接条件から好ましくないものである。すなわち、ピラミッド型成形ロールを用いるスパイラル鋼管製造方法において、スパイラル管製造時の溶接は、傾斜溶接となり、図6、図7に示すように溶接位置とビード形状の関係より、溶接ビードが上り坂の位置で行うことが好ましい。しかし従来の成形方法及び装置では、素材の形状から上り坂の位置で溶接することは不都合であり、成形条件と溶接条件とは互いに相反する条件となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】近年溶接電源、溶接用素材の改善により溶接速度は速くなる一方で、特にスパイラル鋼管の高速造管時の適正溶接条件を確保する技術が必要となっている。本発明はこのような実情と要求に対応する技術を開発したもので、上記の相反する条件を満足するスパイラル鋼管の成形方法及びその装置を提供することを目的とする。すなわち、スパイラル鋼管の溶接におけるビード形状を改善し、溶接欠陥を防止すると同時に、高速造管が達成可能な成形方法及びその装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明方法は、上記目的を達成するために、ピラミッド型成形ロールを用いるスパイラル鋼管製造方法において、曲げ成形位置を成形鋼管中心鉛直線に対して素材入側に偏倚させて巻管することを特徴とするスパイラル鋼管の成形方法である。この方法を容易に実施することができる本発明の装置は、ピラミッド型成形ロールを用いるスパイラル鋼管製造装置において、成形ロールの素材出側ロールの作用点が少なくとも成形鋼管中心鉛直線に対して素材入側に位置するように成形ロールの位置を素材入側に偏倚させて配設したことを特徴とするスパイラル鋼管の成形装置である。また、成形ロールの偏倚位置を成形鋼管中心角で5〜90度とするとよく、好ましくは10〜45度である。
【0012】
【作用】本発明では、従来、成形ロールの位置が成形鋼管の軸心を通る鉛直線の位置にあったのを、素材入側方向に偏倚した位置に変更することによって、鋼管内面溶接を素材の成形が完了した条件にて行うことが可能となった。従って、高速でも良好な溶接品質を得ることが可能となった。
【0013】成形ロールを素材入側に偏倚する量は、溶接位置が少なくとも成形ロールの中央のロールより素材出側であってしかも溶接ビードが上り坂である条件を満足することが必要である。好ましくは、成形ロールによる曲げが完了した後に溶接すると好適であり、成形ロールの素材出側ロールの作用点が少なくとも成形鋼管中心鉛直線に対して素材入側に位置するように成形ロールの位置を素材入側に偏倚させて素材が最終曲率に到達した後、ビードが上り坂となる位置で溶接をするのがよい。本発明の装置は、このような要件を充足するものとした。
【0014】このような装置は、成形ロールの位置が、素材入側方向へ成形鋼管中心角で最大180度未満までとなるが、実際には、成形ロールの偏倚位置を成形鋼管中心角で5〜90度とするとよい。90度を越えると成形ロールの配列、素材の進入方向等の点で設備配置、設備設計上困難性が大きくなるので実際的でない。好ましくは10〜45度である。
【0015】
【実施例】図1に本発明の実施例の要部を示した。直径800mmφのスパイラル鋼管製造装置において、成形ロール2、3、4を、成形鋼管10の中心角α=30度だけ素材1の入側に移動して設けた。鋼管内面溶接位置は、成形鋼管10の軸心11を通る鉛直線と鋼管円周との交点12より素材入側約10度の位置に設定した。レベラを経て巻き癖を除去して平にした素材1を、ガイドロール9によって方向を変換し、成形ロール2、3、4に供給しスパイラル鋼管10を製造した。内面溶接は、溶接欠陥のない優れたビードを形成することができた。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、スパイラル鋼管の適正溶接条件を確保することが可能となり、スパイラル鋼管の高速製造に対応することができるようになった。
- 【公開番号】特開平7−88544
【公開日】平成7年(1995)4月4日
【発明の名称】スパイラル鋼管の成形方法及びその装置
- 【出願番号】特願平5−233057
【出願日】平成5年(1993)9月20日
【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 佳男 (外2名)
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