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自己発振型地上子
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- 【要約】
【目的】 地上子の応動特性を改善する。
【構成】 地上子Eにおける共振回路1を利用して帰還発振を行う帰還発振回路4を付加し、共振回路1の共振周波数に同調した周波数で帰還発振回路4を常時帰還発振させ、帰還発振回路4からの発振を付加させて、変周される距離(応動距離)を増大する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 共振回路と、帰還発振回路とを有する自己発振型地上子であって、共振回路は、同調コイルとコンデンサとからなり、共振現象を生じるものであり、帰還発振回路は、前記共振回路の同調コイルと誘導結合し、該同調コイルを通して入力される信号に基づいて前記共振回路の共振周波数に同調した周波数で常時帰還発振を行うものであることを特徴とする自己発振型地上子。
【請求項2】 前記帰還発振回路は、前記共振回路からの帰還量を調整する機能を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の自己発振型地上子。
【請求項3】 前記帰還発振回路は、前記共振回路からの帰還量を抵抗器により調整するものであることを特徴とする請求項1に記載の自己発振型地上子。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動列車停止装置(ATS),自動列車制御装置(ATC),自動列車運転装置(ATO)あるいは車内警報などに用いる自己発振型地上子に関する。
【0002】
【従来の技術】ATSは、地上信号機の条件を示す地上の部分(地上装置)と、地上の条件を車上に取上げ、所要の動作を行う車上の部分(車上装置)とからなり、地上子は、高周波変調方式の地上装置であり、地上装置と車上装置の共振周波数の変周を利用して、地上と車上の情報連絡を行う方式と、高周波を吸収する方式とが用いられている。
【0003】図4にATS地上子の基本的な回路構成を示す。図において、地上子Eは、同調コイルLと、2つのコンデンサC1,C2とを含む共振回路であり、両コンデンサC1,C2を切替えるスイッチSを設けたものである。スイッチSが閉(オン)のときには、同調コイルL1と両コンデンサC2との並列回路によって103KHzに共振する共振回路が構成される。103KHzの共振回路が形成された地上子E上を通常の列車の車上子Tが通過しても車上装置は何等の動作も行わないが、スイッチSが開(オフ)のときに、地上子Eは、同調コイルLとコンデンサC1とによって123KHzに共振する共振回路が構成され、この上を列車の車上子が通過すると、車上子Tのコイルと電磁結合し、車上装置の発振周波数は、Ziehen現象により、123KHzは、130KHzに変周され、リレー(図示略)が動作し、自動的にブレーキをかけて列車を停止させるものである。ちなみに、前記103KHzは、検測車の車上装置を動作させるための共振周波数である。
【0004】前記スイッチSの開閉操作は、かつては、最寄り駅にケーブルを引き込み、ケーブル端末のスイッチ操作によって行っていたが、ケーブルのインダクタンスが共振周波数に影響することから、現在では、リレー接点が使用され、リレーを地上子に組み込んで電気信号を入力してリレー接点の開閉制御が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、地上子の共振回路の切替えにリレーを用い、しかも、そのリレーを地上子に組み込んだのでは、地上子の大型化が避けられず、また、信頼性を高めるために高精度リレーが必要であるが、リレーの機械的接点をスイッチに用いる以上、接点の動作不足,焼損による不測の事故発生は避けられず、保守,管理を頻繁に行わなければならず、また、比較的短い期間に寿命が尽きるという問題がある。
【0006】また従来は車上発振器が地上子の同調周波数に変周されるだけであるため、変周される距離(応動距離)が短い。そのため、従来地上子の応動距離を増大させるには、地上子自体の寸法を大型化させなければならなかった。
【0007】以上のように地上子の小型化と応動距離の増大とは、相反する柄であり、地上子の小型化を拒む原因となっている。
【0008】本発明の目的は、小型化を図るとともに応動距離を増大させた自己発振型地上子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係る自己発振型地上子は、共振回路と、帰還発振回路とを有する自己発振型地上子であって、共振回路は、同調コイルとコンデンサとからなり、共振現象を生じるものであり、帰還発振回路は、前記共振回路の同調コイルと誘導結合し、該同調コイルを通して入力される信号に基づいて前記共振回路の共振周波数に同調した周波数で常時帰還発振を行うものである。
【0010】また、前記帰還発振回路は、前記共振回路からの帰還量を調整する機能を有するものである。
【0011】また、前記帰還発振回路は、前記共振回路からの帰還量を抵抗器により調整するものである。
【0012】
【作用】本発明においては、地上子に帰還発振路を付加し、前記共振回路を自己発振させるとともに、その共振周波数に同調した周波数で該帰還発振回路を常時帰還発振させ、地上子の応動距離を増大させるとともに地上子の寸法を実質的に小型化する。
【0013】
【実施例】以下に本発明をATSの地上子に適用した場合の実施例を図によって説明する。図1において、本発明に係る地上子Eは、共振回路1と、半導体スイッチ素子2と、制御入力回路3と、帰還発振回路4とを有している。
【0014】共振回路1は、同調コイルL3と、コンデンサC1又はコンデンサC2との組合せによって形成される回路である。同調コイルL3とコンデンサC1との組合せは、車上装置に動作指令を与える123KHzの共振周波数を発生させる回路であり、同調コイルL3にコンデンサC2が接続されたときには、通常の列車の車上装置は反応しない103KHzの共振周波数の共振回路を構成する。103KHzの共振周波数は、検測車の車上装置を動作させるための周波数であることは前述のとおりである。
【0015】半導体スイッチ素子2は、例えばフォト・MOSTであり、共振回路1の同調コイルL3とコンデンサC2間に組込まれ、制御入力回路3の信号を入力とし、同調コイルL3とコンデンサC1又はC2との組合せを切替えることにより、共振回路1の共振周波数を切替えるものである。尚、実施例では、半導体スイッチ素子2として2個のフォト・MOST2a,2bを用い、故障モードの短絡でも、停止現示値となるように考慮している。
【0016】制御入力回路3は、前記半導体スイッチ素子2に共振回路1の共振周波数を切替えるための制御指令信号を入力する回路である。制御指令信号は、構内の信号機の動作に連動して入力するものである。
【0017】帰還発振回路4は、共振回路1の同調コイルL3と誘導結合し、共振回路1の共振周波数に同調した周波数で常時帰還発振を行うものである。
【0018】図1に示す帰還発振回路4は、共振回路1の同調コイルL3に誘導結合させて組込んだ一対の誘導結合用コイルL1,L2と、発振用電源5から常時電源供給を受け、誘導結合用コイルL1を通して帰還させ、共振回路1の共振周波数に同調した周波数で帰還発振を行うものである。尚、本発明においては、帰還発振回路4の発振を監視して共振回路1の故障を検出する監視回路6を付加してもよい。以下、実施例では監視回路6を付加した回路構成のものについて説明する。
【0019】図1に示す実施例に係る帰還発振回路6は、以下の構成になっている。発振用電源5から電源供給を受けて駆動するトランジスタ4gは、自己調整機能をもった時定数回路をなす抵抗器4f及びコンデンサ4cをエミッタ側に有し、ベース側にはコンデンサ4aと誘導結合用コイルL2とからなる共振回路がコンデンサ4bを介して接続され、誘導結合用コイルL2は、共振回路1の同調コイルL3に誘導結合している。4d,4eは分圧用の抵抗器である。またトランジスタ4gのコレクタ側には、トランス4hの2次側コイル4jとコンデンサ4iとからなるコレクタ同調形の共振回路が接続されている。また共振回路1の同調コイルL3に誘導結合した誘導結合用コイルL1は、トランス4hの一次側コイル4kに接続され、コイルL1とコイル4kとにより、共振回路1からコイル4j及びコンデンサ4iの共振回路への帰還回路を構成している。
【0020】さらに、本発明に係る帰還発振回路4は、コイルL1とコイル4kとからなる帰還回路に可変抵抗器7を有しており、可変抵抗器7により共振回路1からの帰還量を調整させている。
【0021】また図1に示す実施例に係る監視回路6は、トランス4hの一次側コイル4lに接続した整流回路6aと、整流回路6aの出力側に接続され、扛上接点6cから故障検知出力を発するリレー6bとからなっている。
【0022】実施例において、制御入力回路3の端子間に制御指令信号例えば、信号機の現示が進めである場合の信号が入力すると、半導体スイッチ素子2が導通し、共振回路1は、同調コイルL3と、コンデンサC2との組合せにより、103KHzの周波数の共振回路を構成し、通常の列車に対しては、地上子E上をそのまま通過させる。
【0023】制御指令信号の入力を断ったとき、例えば信号機の現示が停止に切替ったときに、半導体スイッチ素子2は非導通となり、共振回路1は、同調コイルL3と、コンデンサC1との組合せとなり、123KHzの共振周波数の回路に切替えられ、地上子E上を通過する通常の列車の車上子を動作させて制動指令が発せられ、列車を停車させる。
【0024】一方、帰還発振回路4は、誘導結合用コイルL1,L2が共振回路1の同調コイルL3に誘導結合しており、トランジスタ4gを発振させて誘導結合用コイルL1に電流を流すと相互誘導結合している共振回路1の同調コイルL3に電圧が生じ、共振回路1には共振現象が発生し、半導体スイッチ素子2が導通状態では103KHzの共振周波数で共振し、半導体スイッチ素子2が非導通状態では123KHzの共振周波数で共振している。
【0025】また共振回路1の出力の一部は、コイルL1及びコイル4kを介してコイル4j及びコンデンサ4iの共振回路に帰還されており、コイル4j及びコンデンサ4iの共振回路は、共振回路1からの帰還を受けて、共振回路1の共振周波数(例えば103KHz,123KHz)に同調した周波数で常時帰還発振を行っている。
【0026】従来のように車上発振器が地上子の同調周波数に変周される場合には、図2の■のような応動特性を示す。
【0027】これに対して、本発明では、帰還発振回路4からの発振が共振回路1に付加して自己発振するため、図2の■のように車輌進行方向(図2の左右方向)での応動範囲が拡大されることが実証された。したがって、本発明では、従来の地上子の寸法で応動範囲は図2の■のように拡大されるため、地上子の寸法を実質的に小型化できる。
【0028】また横方向の応動特性は図3に示されるものであり、地上子の取付誤差を考慮しても十分の余裕があり、逆方向運転の車上子が誤動作する心配はない。
【0029】一方、帰還発振回路4が共振回路1の共振周波数に同調して正常に帰還発振を行っている場合には、リレー6bが励磁されているため、その扛上接点6cが落下せず、共振回路1の故障検出信号は出力されない。
【0030】ところで、同調コイルL3と組をなすコンデンサC1又はC2の劣化、或いは同調コイルL3,コンデンサC1,C2を被覆しているエポキシ樹脂の割れ目等から浸入した雨水等によりQ値が低下する。
【0031】この場合、帰還発振回路4は、共振回路1からの帰還を得て、その共振周波数と同調した周波数で帰還発振を行っているため、共振回路1のQ値が低下すると、帰還発振回路4におけるコイル4j及びコンデンサ4iの共振回路に流れる電流が減少するため、監視回路6のリレー6bが励磁されなくなり、扛上接点6cが落下し、共振回路1のQ値が低下したという異常信号を故障検知出力として発する。
【0032】また、共振回路1から帰還発振路4への帰還量は可変抵抗器7で調整され、例えば、共振回路1の設定された正規のQ値を70とした場合に共振回路1の保守基準の限界値を60に設定し、その値を越えたときに即座に監視回路6によって共振回路1のQ値低下を検知される。したがって、共振回路1のQ値の低下の変動幅を微少な範囲に設定することが可能となり、共振回路1のQ値低下を微少な範囲に抑えることができる。
【0033】以上、実施例では本発明をATS(自動列車停止装置)の地上子に適用した例を説明したが、車内警報装置,自動列車制御装置,自動列車運転装置の地上子についても全く同様に適用できる。
【0034】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、地上子における共振回路を利用して帰還発振を行う帰還発振回路を付加し、共振回路の共振周波数に同調した周波数で該帰還発振回路を常時帰還発振させるとともに、共振回路を強制的に発振させるため、従来のように車上発振器が地上子の同調周波数に変周される場合に比べて、帰還発振回路からの発振が付加され、変周される距離を増大させることができ、その増大分だけ地上子の寸法を小型化することができる。
- 【公開番号】特開平8−91216
【公開日】平成8年(1996)4月9日
【発明の名称】自己発振型地上子
- 【出願番号】特願平6−228139
【出願日】平成6年(1994)9月22日
【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 中
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