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組合せオイルリングおよびそれとピストンとの組合せ
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- 【要約】
【課題】 油掻き機能を良好に発揮でき、ウェブの強度を高くでき、薄幅化でき、製作も容易であるオイルリングを実現する。
【解決手段】 組合せオイルリングはオイルリング1とコイルエキスパンダ2とからなる。オイルリング1は断面略I字形をなし、上下のレール3,4とこれらを連結する薄肉のウェブ5とからなる。ウェブ5に油窓は形成せず、下側のレール4の外周面に一定幅、一定深さで上下方向に開放されている切り欠き14を円周方向に等間隔をおいて複数個形成する。ピストン30のオイルリング溝31の下面32とピストン外周面33との角部に、断面三角形状の油溜まり34を全周にわたって形成し、この油溜まり34とピストン30の内側とを連通する半径方向の油戻し孔35をピストン30に形成する。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダの内周面と摺動する摺動面を外周にそれぞれ有している上下一対のレールがウェブで連結されているオイルリングと、このオイルリングを半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダとからなる組合せオイルリングにおいて、前記オイルリングの上下の摺動面の間の外周側に形成されている油溝と、前記オイルリングの内周側に形成されているコイルエキスパンダ収容溝とが前記ウェブにより隔離されて非連通状態とされており、かつ、前記オイルリングの下レールの外周面に上下方向に開放されている切り欠きが形成されていることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項2】 前記切り欠きが、オイルリングの円周方向に複数個形成されていることを特徴とする請求項1記載の組合せオイルリング。
【請求項3】 シリンダの内周面と摺動する摺動面を外周にそれぞれ有している上下一対のレールがウェブで連結されているオイルリングと、このオイルリングを半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダとからなる組合せオイルリングにおいて、前記オイルリングの上下の摺動面の間の外周側に形成されている油溝と、前記オイルリングの内周側に形成されているコイルエキスパンダ収容溝とが前記ウェブにより隔離されて非連通状態とされており、かつ、前記オイルリングの合口端部の下面に半径方向に開放されている切り欠きが形成されていることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項4】 請求項1、2または3記載の組合せオイルリングが装着されているピストンのオイルリング溝の下面とピストン外周面との角部に油溜まりが形成されていることを特徴とするピストンと組合せオイルリングとの組合せ。
【請求項5】 前記油溜まりがピストンの全周にわたって形成されていることを特徴とする請求項4記載のピストンと組合せオイルリングとの組合せ。
【請求項6】 前記油溜まりとピストン内側とを連通する半径方向の油戻し孔がピストンに形成されていることを特徴とする請求項4または5記載のピストンと組合せオイルリングとの組合せ。
【請求項7】 前記油戻し孔がオイルリング溝の下面のオイルリング内周側に開口していることを特徴とする請求項6記載のピストンと組合せオイルリングとの組合せ。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、往復動内燃機関に使用する組合せオイルリングおよびそれを装着したピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】往復動内燃機関のピストンには、通常2〜3本の圧縮リングと1本のオイルリングが装着される。このオイルリングとして、2ピースの組合せオイルリングが使用される場合がある(例えば特公平3−29979号参照)。
【0003】この種の組合せオイルリングは、・シリンダの内周面と摺動する摺動面を外周にそれぞれ有している上下一対のレール、・これらのレールを連結するウェブ、・上下の摺動面の間の外周側に形成されており、レール部で掻き落とされた潤滑油を溜めるための油溝、・ウェブに形成されている油窓、・内周側に形成されているコイルエキスパンダ収容溝とを有しているオイルリングと、コイルエキスパンダとからなっている。
【0004】そして、ピストンの上昇時、下レールで掻き上げられた潤滑油、およびピストンの下降時、上レールで掻き落とされた潤滑油は、外周側の油溝に溜まり、ウェブに形成されている油窓を通って内周側に流れ、オイルリング溝底とピストンの内側とを連通する油戻し孔を通じて、オイルパンに戻る。
【0005】オイルリング溝底とピストンの内側とを連通する油戻し孔を持たず、代わりにオイルリング溝の下面とピストン外周面とに開口し、半径方向にピストンの内側まで延びる油戻し孔を持つ別のピストンもある。この場合も、潤滑油は、外周側の油溝→ウェブの油窓→オイルリング内周側→油戻し孔およびピストン外周面とシリンダ内周面との間の隙間を通ってオイルパンに戻る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、ピストンの上昇時、下レールで掻き上げられた潤滑油、およびピストンの下降時、上レールで掻き落とされた潤滑油は、外周側の油溝に溜まる。油溝において潤滑油の圧力が上がると、シリンダ内周面とレール摺動面との間の油膜の厚さが増加し、油掻き作用が阻害される。したがって、2本のレールを有するオイルリングに、ウェブに形成されている油窓は必須と考えられていた。そして、潤滑油消費量と油窓の総面積の関係あるいは油窓の大きさに興味が持たれてきた。
【0007】ところが、ウェブに油窓を形成することは、以下の不都合をもたらす。
・油窓が衝撃破壊や疲労破壊の起点となる。
・油窓の総面積を大きくすると、上下のレールを連結するウェブの強度が低下する。
・油窓が円周方向に断続的に存在するので、リングの円周方向に沿って曲げの変形抵抗が変化する。このため、オイルリング素線をリング状にコイリング加工する際、多角形状の変形を生じる。これによって、外周面の研磨加工の取り代の増加、レールの当り幅のばらつきの増加あるいはシール性の低下が生じる。
・同様に、窒化処理等においては、リングの上下面にうねり変形が生じる。このことは上下面の研磨加工の取り代の増加を招く。
・さらに、オイルリングの軸方向幅が薄いリングを実現する場合、オイルリングの素線におけるウェブに油窓をパンチ加工する工程において、孔明けが困難となる。
【0008】一方、2本のレールはオイルリングの姿勢を安定させる作用を果たすと考えられている。また、オイルリングは上下対称に形成されているのが一般的で、組み付け時の上下方向は決まっていない。そこで、2本のレールの摺動面の段差を小さくすること、特に上レールがシリンダ内周面に完全に接触していることが重要視されてきた。
【0009】本発明の組合せオイルリングの課題は次の通りである。
・油掻き機能を良好に発揮できる。
・ウェブの強度を高くする。
・薄幅化を行える。
・製作が容易である。
【0010】また、本発明のピストンの課題は次の通りである。
・潤滑油のオイルパンへの油戻し機能を良好にして、オイルリングの油掻き機能を良好に維持する。
・ピストンの製作を容易にする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の組合せオイルリングは、断面略I字形のオイルリングと、これを半径方向外方に押圧付勢するコイルエキスパンダとからなっている。
【0012】オイルリングは、シリンダの内周面と摺動する摺動面を外周にそれぞれ有している上下一対のレールと、これらのレールを連結するウェブとからなり、前記上下の摺動面の間の外周側に形成されている油溝と、内周側に形成されているコイルエキスパンダ収容溝とが前記ウェブにより隔離されて非連通状態とされている。すなわち、ウェブには油窓が形成されておらず、外周側の油溝に溜まった潤滑油をオイルパンに戻すために、下レールの外周面に上下方向に開放されている切り欠きが形成されている。これらの切り欠きはリングの円周方向に複数個形成するのがよい。上記切り欠きに代えて、オイルリングの合口端部の下面に半径方向に開放されている切り欠きを形成するようにしてもよい。
【0013】上記組合せオイルリングを装着するピストンは、オイルリング溝の下面とピストン外周面との角部に油溜まりを形成するのがよい。そして、油溜まりとピストン内側とを連通する半径方向の油戻し孔をピストンに形成するのがさらに好ましい。油戻し孔はオイルリング溝の下面のオイルリング内周側に開口しているのが好ましい。
【0014】上記オイルリングは、ウェブに油窓が形成されていないので、次の作用を生じる。まず、ウェブの強度が高い。さらに、リング素線のコイリング工程で生じるレール外周面の多角形状の変形や、熱処理・窒化処理工程で生じる上下面のうねり変形が少ないので、シール性が良好なリングを容易に製作できる。また、油窓の孔明け加工がなくなるので、薄幅のオイルリングの製作が容易である。
【0015】また、上記オイルリングは切り欠きが形成されている。これにより、ピストンの上昇時、下レールで掻き上げられ、ピストンの下降時、上レールで掻き落とされ、外周側の油溝に溜まった潤滑油は、切り欠き→ピストン外周面とシリンダ内周面との間の隙間を経由して、オイルパンに戻る。したがって、外周側の油溝における油圧が上昇して、上レールが浮き上がることがなく、油掻き機能は良好に維持される。そして、下レールは、切り欠き以外の部分でシリンダ内周面と接触するから、オイルリングの姿勢も正しく保たれる。
【0016】ピストンのオイルリング溝の下面とピストン外周面との角部に油溜まりが形成されていると、オイルリングの外周側の油溝に溜まった潤滑油は、切り欠きを通って、ピストンの油溜まりに流入し、ピストン外周面とシリンダ内周面との間の隙間を経由してオイルパンに戻るため、外周側の油溝における油圧の上昇を防ぐ点で好ましい。油溜まりとピストン内側とを連通する油戻し孔がピストンにさらに形成されていると、油溜まりに流入した潤滑油が油戻し孔からも排出するためさらに好ましい。ピストンにドリル孔加工による油戻し孔を設けない場合は、ピストンの製作が容易となる。上記油戻し孔がオイルリング溝の下面のオイルリング内周側に開口していると、オイルリング内周側に流入した潤滑油が油戻し孔を通じて排出される。オイルリング下面に半径方向に開放されている切り欠きが形成されている場合には、オイルリング内周側に流入した潤滑油が切り欠きを通じて外周側に流出する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図1〜図3によって説明する。組合せオイルリングは図1に示されているように、鋼製のオイルリング1と、コイルエキスパンダ2とからなり、ピストン30のオイルリング溝31に装着されている。
【0018】オイルリング1は図1〜図3に示されているように、断面略I字形をなし、上下のレール3,4と、これらを連結する薄肉の真っ直ぐなウェブ5とからなっている。上側のレール3の外周側突起部6は、シリンダ内周面38と接触する外周摺動面7と、これに連なる上下の傾斜面8,9とからなる断面略台形状をなし、外周側に向かって幅は狭くなっている。
【0019】下側のレール4は、上側のレール3とは切り欠き14を有している点でのみ相違し、他の構成は同一であり、10は外周側突起部、11は外周摺動面、12,13は上下の傾斜面である。切り欠き14は下側のレール4の外周面に円周方向に等間隔をおいて複数個形成されている。すなわち、下側のレール4には、外周側突起部10の外周面に、一定幅、一定深さで上下方向に開放されている切り欠き14が円周方向に等間隔をおいて複数個形成されている。切り欠き14の形状は平面視で円弧形状に形成したものを示したが、その他の形状でもよい。
【0020】切り欠き14の半径方向深さは0.05〜0.5mmの範囲が適切である。この下限を下回ると、後述する油溝15における油圧が上昇して潤滑油消費量が増加する。また、上限を上回ると、多角形状の変形によるシール性の低下が問題となる。切り欠き14の半径方向深さのより好ましい範囲は0.1〜0.4mmである。
【0021】複数個の切り欠き14の円周方向の総長さは、オイルリング2の周長の10〜60%とするのが適切である。この下限を下回ると、後述する油溝15における油圧が上昇して潤滑油消費量が増加する。また、上限を上回ると、下レール4の摩耗速度の上昇や、オイルリング2の姿勢の不安定を招く。
【0022】上下のレール3,4の外周側突起部6,10とウェブ5とで、油溝15が上下の外周摺動面7,11の間に形成されている。この油溝15は上下のレール3,4で掻き取ったシリンダ内周面38の潤滑油の受容溝である。
【0023】上下のレール3,4の内周側突起部16,17も断面略台形状をなし、それらとウェブ5とでコイルエキスパンダ収容溝18が形成される。この溝18内にコイルエキスパンダ2が内周側突起部16,17の内側の対向する傾斜面19,20に接触するようにして配設され、オイルリング1を半径方向外方に押圧付勢し、オイルリング1の外周摺動面7,11をシリンダ37の内周面38に押接させる。コイルエキスパンダ2は線材をコイル状に巻いたものを環状に形成したもので、図では円の一部を切り欠いた断面の線材を示しているが、線材の断面形状は円やその他の形状でもよい。
【0024】オイルリング2には、少なくとも外周摺動面7,11に窒化や硬質Crめっき等の硬質の表面処理が施されている。
【0025】ピストン30のオイルリング溝31の下面32と、ピストン30の外周面33との角部には、断面三角形状の油溜まり34が全周にわたって形成されている。そして、オイルリング溝31の下面32と油溜まり34とに開口し、半径方向にピストン30内側まで延びる油戻し孔35がピストン30に形成されている。油戻し孔35はオイルリング溝31の下面32において外周端からオイルリング1の内周側まで開口されている。
【0026】これにより、ピストン30の上昇時、下レール4で掻き上げられ、ピストン30の下降時、上レール3で掻き落とされ、オイルリング1の外周側の油溝15に溜まった潤滑油は、下レール4の切り欠き14→ピストン30の油溜まり34→ピストン30の油戻し孔35およびピストン外周面33とシリンダ内周面38との間の隙間を経由して、図示外のオイルパンに戻る。また、上レール3で掻き上げられ、オイルリング溝31の上面36と上レール3の上面との間を通ってオイルリング1の内周側に流入した潤滑油は、油戻し孔35を通ってオイルパンに戻る。
【0027】図4は本発明の実施の別の形態Bを示し、上記実施の形態Aと相違する点は、油戻し孔35が形成されておらず、ピストン30のオイルリング溝31の下面32とピストン外周面33との角部に形成されている油溜まり34が、上記実施の形態Aで示したものよりも断面積が大きなものとなっている点である。この実施の形態Bにおいて、ピストン30に形成されている油溜まり34は断面矩形形状に形成されている。このように、油溜まり34を大きなものとすれば、油戻し孔35を設けなくとも油戻し機能は確保できる。
【0028】上記実施の2つの形態A,Bにおけるオイルリング1の具体的な寸法の一例を示すと次の通りである。
オイルリング外径 :110mm軸方向幅 :4mm半径方向厚:2.4mm切り欠きの半径方向深さ:0.3mm円周方向長さ:10mmピッチ :30mm【0029】次に、本発明(上記実施の2つの形態A,Bで説明した組合せオイルリングとピストンとの組合せ)と、従来技術(下レールに切り欠きがなく、ウェブに油窓が形成されている従来の組合せオイルリングと上記実施の形態Aで示したピストンとの組合せ)におけるエンジンの潤滑油消費量を比較した結果を説明する。
【0030】測定条件は以下の通りである。
中型ディーゼルエンジン(排気量:4l)
高速・全負荷【0031】結果は図5に示す。図5において、(a)における本発明は実施の形態Aで説明した組合せオイルリングとピストンとの組合せ、(b)における本発明は実施の形態Bで説明した組合せオイルリングとピストンとの組合せである。図5に示されているように、本発明は、従来技術の潤滑油消費性能に劣らないものであった。
【0032】図6および図7は本発明のさらに別の実施の形態を示し、上記実施の形態Bとは、切り欠きが相違している。この実施の形態では、オイルリング1の両合口端部の下面にそれぞれ半径方向に開放されている切り欠き14Aが形成されている。切り欠き14Aは各合口端部において半径方向から見て1/4円弧形状に形成されており、両方の切り欠き14Aで半円形状をなしている。切り欠き14Aは下レール4のみならずウェブ5まで形成されており、切り欠き14Aの最大深さはオイルリング1の軸方向幅の略1/2である。切り欠き14Aの周方向幅lは2mm以上とされる。
【0033】これにより、ピストン30の上昇時、下レール4で掻き上げられ、ピストン30の下降時、上レール3で掻き落とされ、オイルリング1の外周側の油溝15に溜まった潤滑油は、切り欠き14A→ピストン30の油溜まり34→ピストン外周面33とシリンダ内周面38との間の隙間を経由して、図示外のオイルパンに戻る。また、上レール3で掻き上げられ、オイルリング溝31の上面36と上レール3の上面との間を通ってオイルリング1の内周側に流入した潤滑油は、切り欠き14Aを通って外周側に流出して、オイルパンに戻る。
【0034】切り欠き14Aの半径方向から見た形状は上記のような円弧形状に限ることはなく、その他の形状でもよい。他の形状の一例を図8に示す。図8は切り欠き14Aを四角形状に形成したものを示している。図6および図7に示した切り欠き14Aに比べて、切り欠き14Aの深さは浅く、ウェブ5に少しかかる程度とされており、周方向幅lは長くされている。
【0035】上記実施の3つの形態において、ピストン30の油溜まり34の断面形状は三角形や矩形形状に限らず、その他の形状でもよい。
- 【公開番号】特開平9−42450
【公開日】平成9年(1997)2月14日
【発明の名称】組合せオイルリングおよびそれとピストンとの組合せ
【発明者】
【氏名】山岡 正治
- 【出願番号】特願平7−211060
【出願日】平成7年(1995)7月27日
【出願人】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】帝国ピストンリング株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 健一
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