スポンサード リンク
自動二輪車のトランク構造
スポンサード リンク
- 【要約】
【課題】 トランク内への水の浸入を確実に防止できるとともに、リッド内面の見栄えが向上する自動二輪車のトランク構造を提供する。
【解決手段】 レッグシールド7に、物品を収納するための右側トランク部201および左側トランク部202を設けるとともに、その開口203を開閉するリッド210の下縁をレッグシールド7にヒンジ結合してフロントトランク200を構成する。リッド210は、レッグシールド7の外面に連なる外側リッド220の内側に、隙間251をあけて内側リッド230を固定して構成する。内側リッド230の上縁に、外側リッド220とシール204との間を浸入してくる水を受ける上縁樋部237を形成するとともに、受けた水を隙間251に導く上側導水孔252を形成する。水は、その導水孔252から隙間251に入った後、両リッド220,230の下縁の間の排水隙間250aから外部に排出される。
スポンサード リンク
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動二輪車の車体に設けられ、その内部に物品の収納空間を有するとともに、物品出し入れ用の開口が形成されたトランク本体と、該トランク本体に、シール材を介して前記開口を開閉するよう取り付けられたリッドとを備えた自動二輪車のトランク構造において、前記リッドは、前記開口を閉じた状態で前記トランクの外面を構成し、開口の周囲に自身の周縁部が合わせられる外側リッドと、該外側リッドの内面に、該内面をほぼ覆って、かつ内面との間に排水路となる隙間があけられた状態で外側リッドに固定された内側リッドとを備え、前記外側リッドおよび前記内側リッドの互いに対向する各周縁部の間には、外側リッドとトランク本体との合わせ目から前記隙間に水を導く導水部と、該導水部から前記隙間に浸入した水をトランク外部に排出する排水部とが形成されていることを特徴とする自動二輪車のトランク構造。
【請求項2】 前記内側リッドには、内側リッドと前記外側リッドとの間の前記隙間に水を導く導水孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車のトランク構造。
【請求項3】 前記内側リッドの露出側表面の大部分が、略平滑面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車のトランク構造。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動二輪車の車体に物品を収納するスペースとして設けられるトランク構造に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば従来の自動二輪車には、比較的小さな物品あるいはヘルメット程度の大きさの物品を収納できるトランクが、シートの下方などに設けられている。自動二輪車の場合には、車体の構成から自ずと物品収納スペースの大きさや設置箇所が制限されるのは致し方ないところだが、それでも、使用者にとって物品をなるべく多く収納できれば、それだけ便利であることは言うまでもない。そこで近年では、特に車体が全体的に樹脂製のカバーで覆われたスクータ型自動二輪車において、ハンドルから前輪の上部を覆うフロントカバーの後側であって運転者に対面する位置にも、トランク(フロントトランクと称される)が設けられているものが実用化されている。
【0003】このフロントトランクは、例えば、前記フロントカバーの後側に一体的に固定されて運転者の両足の前方を覆うレッグシールドの中央部に形成された収納凹所と、この収納凹所の開口を開閉するリッドとを備えた構成となっている。リッドは、閉じた状態でレッグシールドと一体感を持たせるためレッグシールドに沿ってやや運転者側に後傾しており、その下縁がレッグシールドにヒンジ結合され、自由端部である上端部が、レッグシールドに係止するようになっている。
【0004】このような構成のフロントトランクにおいては、通常、レッグシールドの開口の周囲であって閉じられるリッドの周縁部との合わせ目に、防水用のシールが設けられ、さらに、リッドの内面には、リッド自体の剛性を確保するためにリブが形成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記フロントトランクにおいては、レッグシールドに対するリッドの取り付け状態にがたが生じたり、シール自体が劣化したりしてシール性が低下すると、例えば雨中走行時に、シールとリッドの間からトランク内に雨水が浸入し、中の収納物が濡れてしまうといった問題が生じていた。また、リッドの内面にはリブが形成されているので、リッドを開けた際のリッド内面の見栄えに劣る上、水や埃がたまりやすく、かつそれらを拭き取りにくいことから汚れが進行し、収納物の汚れを招くといった欠点もあった。
【0006】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、トランク内への水の浸入を確実に防止できるとともに、剛性を高め、リッドの内面の見栄えの向上ならびに収納物への汚れの影響を回避し得る自動二輪車のフロントトランクの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明においては、自動二輪車の車体に設けられ、その内部に物品の収納空間を有するとともに、物品出し入れ用の開口が形成されたトランク本体と、該トランク本体に、シール材を介して前記開口を開閉するよう取り付けられたリッドとを備えた自動二輪車のトランク構造において、前記リッドは、前記開口を閉じた状態で前記トランクの外面を構成し、開口の周囲に自身の周縁部が合わせられる外側リッドと、該外側リッドの内面に、該内面をほぼ覆ってかつ内面との間に排水路となる隙間があけられた状態で外側リッドに固定された内側リッドとを備え、前記外側リッドおよび前記内側リッドの互いに対向する各周縁部の間には、外側リッドとトランク本体との合わせ目から前記隙間に水を導く導水部と、該導水部から前記隙間に浸入した水をトランク外部に排出する排水部とが形成されていることを特徴とする。
【0008】上記構成によると、トランク本体に対するリッドのシール性が低下し、両者の合わせ目から水がトランク内に入った場合、その水は、導水部から外側リッドと内側リッドの間の隙間に導かれ、この隙間を排水路として流れ排水部に達し、この排水部からトランク外部に排出される。したがって、水は内側リッドに遮断されて実質的にトランク内への浸入が防止され、その結果、収納物は濡れない。
【0009】また、内側リッドにより、リッドを開けた際のリッド内面の見栄えが向上するとともに、リッド内面への水や埃による汚れを抑えることが可能となるので収納物への汚れの影響が低減する。また、外側リッドに内側リッドが固定されるためリッド全体の剛性が高まり、該リッドの変形が抑制され、これによってシール性の向上がさらに図られる。
【0010】
【発明の実施の形態】好ましい実施の形態においては、前記内側リッドには、内側リッドと前記外側リッドとの間の前記隙間に水を導く導水孔が形成されていることを特徴とする。また、好ましい実施の形態においては、前記内側リッドの露出側表面の大部分が、略平滑面に形成されていることを特徴とする。
【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本実施例に係るフロントトランクを備えたスクータ型自動二輪車1の側面図である。同図において符号2は車体フレーム、3は動力ユニット、34、52はそれぞれ前輪、後輪、35はハンドル、4は運転者と、その後ろに乗員(タンデムライダー)が着座できるタンデムシート、1aは樹脂製の車体カバーである。
【0012】車体フレーム2は、ヘッドパイプ5と、このヘッドパイプ5の中央部に固着され車体後方かつ斜め下方に延びる1本のメインフレーム11と、このメインフレーム11の下端部にその前端部が固着されて車体後方に延びる左右一対のサイドフレーム12と、ヘッドパイプ5におけるメインフレーム11の接合部よりも下方およびサイドフレーム12の前端部にその前端部が固着され、サイドフレーム12の下方においてサイドフレーム12にほぼ沿いながら車体後方に延びる左右一対のダウンチューブ13と、サイドフレーム12とダウンチューブ13の後端部同士を一体に連結する懸架ブラケット14と、この懸架ブラケット14の後端部にその前端部が固着され、車体後方に延びるリヤフレーム15と、このリヤフレーム15の上部に固着され、リヤフレーム15と略三角形を形成する支持パイプ16等から構成されている。サイドフレーム12とダウンチューブ13とは、それぞれに固着された2本の縦パイプ25によっても互いに連結され、また左右のサイドフレーム12同士は、それぞれに固着された2本の横パイプ26によって互いに連結されている。この車体フレーム2は、鋼材やアルミ等の金属材料からなり、上記各要素同士の固着は、溶接によってなされている。
【0013】前記ヘッドパイプ5には、ステアリングシャフト18が貫通されている。このステアリングシャフト18の上端および下端には、アッパホルダ36およびアンダホルダ17が固定されている。アッパホルダ36には前記ハンドル35が固定され、アンダホルダ17には、左右一対のフロントフォーク33が支持されている。フロントフォーク33の下端部には、前記前輪34が回転自在に支持されている。また、ダウンチューブ13の後端部には、駐車時に車体を安定して支持するスタンド23が取り付けられている。
【0014】前記動力ユニット3は、気筒軸が前傾された水冷式4サイクル型エンジン50に、Vベルト式無段変速機51が接続されたものである。この動力ユニット3は、リンク20を介して前記懸架ブラケット14に揺動自在に支持されている。無段変速機51の後端部には前記後輪52が支持されており、エンジン50の動力が無段変速機51を介して後輪52に伝達されるようになっている。無段変速機51の後端部と前記リヤフレーム15との間には、リヤクッション53が架け渡されている。このリヤクッション53により、動力ユニット3および後輪52の揺動が緩衝される。なお、符号116はエンジンのラジエータである。
【0015】前記シート4は、運転者が着座するメインシート4aの後方に、乗員が着座するタンデムシート4bが形成されてなるもので、前記車体フレーム2の上部に支持されている。後部のタンデムシート4bはメインシート4aより一段高くなっており、両シート4a,4bの間には、バックレスト191が配設されている。このバックレスト191は、主に運転者の腰部を支持することにより乗り心地の向上を図るためのもので、配設位置を、運転者の身長等に応じて前後に調整できるようになっている。シート4は、前端下部が車体フレーム2にヒンジ結合され、その前端部を中心に上下に回動(開閉)自在となっており、閉じた状態で、その後端部に設けられた図示せぬシートロックを介して車体に着脱可能に係合するようになっている。
【0016】シート4におけるメインシート4aの下方には、燃料タンク211が、車体フレーム2に固定されて配設されている。この燃料タンク211は、その前端上部に、斜め前方に突出する給油口211aを有している。前記シート4の前端面には、給油口211aを露出させる給油開口(図示略)が設けられるとともに、この給油開口211aを開閉するフューエルリッド215が取り付けられている。前記車体カバー1aは、前輪34、後輪52およびシート4を除く車体のほぼ全体を覆っている。この車体カバー1aは、ヘッドパイプ5および左右のフロントフォーク33の前方から側方を覆うフロントカバー6と、このフロントカバー6の上方に固定された透明なウインドシールド134と、ハンドル35を覆うハンドルカバー43と、フロントカバー6の後部に配設されヘッドパイプ5やサイドフレーム12等の後部を覆うレッグシールド7と、このレッグシールド7の下方に連続して配設されて車体後方に延び、左右のサイドフレーム12の側方を覆うフートボード8と、このフートボード8の下面に連続して配設されて車体後方に延び、左右のダウンチューブ13の側方を覆うアンダーカバー9と、フートボード8およびアンダーカバー9に連続して配設され、シート4の下方から動力ユニット3の上方を覆うサイドカバー10とから構成されている。
【0017】前記レッグシールド7には、本発明に係るフロントトランク200が設けられており、以下、このフロントトランク200をレッグシールド7と合わせて詳述する。
【0018】図2に示すように、レッグシールド7は、車体前方から後方に向かって若干下方に傾斜するよう形成された上板部7eと、この上板部7eの後端から車体前方かつ下方に向かって形成された縦壁部7aと、縦壁部7aの中央下部に形成された上下方向に延びるトンネル部7bと、このトンネル部7bの下端から左右に延び、足載せ部を構成するフート部7cとが一体成形されたものである。上板部7eの前端と前記ウインドシールド134の間には、スピードメータやタコメータ等のメータ類が設けられたメータパネル7hが組み込まれている。また、メータパネル7hと上板部7eの境界部の中央には、前記ステアリングシャフト18が貫通する貫通孔42が形成されている。トンネル部7bは車体後方に膨出しており、その内部に、前記メインフレーム11およびサイドフレーム13の前端部が収まっている。また、縦壁部7aの上端中央部のやや右側には、略長方形状の取付け座7dが垂直面をなすように凹設されており、この取付け座7dには、エンジン50や電装部品(図示略)のメインスイッチ151が固定されている。
【0019】縦壁部7aの中央部には、車体後方に膨出する仕切り部152aが形成されている。この仕切り部152aは、上下方向に延び、かつ前傾しており、前記ヘッドパイプ5の後側を囲んでいる。そして、この仕切り部152aの両側に、フロントトランク200を構成する右側トランク部(トランク本体)201と左側トランク部(トランク本体)202とが形成されている。また、縦壁部7aには、各トランク部201,202に対して収納物を出し入れするための共通のトランク開口203が形成されているとともに、このトランク開口203を開閉するリッド210が取り付けられている。トランク開口203は、レッグシールド7の縦壁部7aの中央部において、横に長く、両端部がやや上がった長方形状に形成され、さらに、前記取付け座7dに対応する凹部203aを有している。
【0020】右側トランク部201は、レッグシールド7と一体成形されて車体前方に膨出する直方箱体であり、その内部が物品の収納空間となっている。右側トランク部201を構成する天板部152bの中央部は、前記取付け座7dに沿って湾曲形成されている。また、右側トランク部201を構成する底板部152cには、前記ラジエータ116の給水口(図示略)が貫通しており、この給水口は、底板部152cに着脱可能に装着されたキャップ155をあけることにより、右側トランク部201内に臨むようになっている。
【0021】一方、左側トランク部202は、レッグシールド7とは別体のトランク部材154で構成されている。このトランク部材154は、車体前方に膨出し、前方に開口154aを有する直方箱体で、右側トランク部201よりも前方および下方に深く形成され、その内部が、物品の収納空間となっている。左側トランク部202の開口154aは、トランク開口203における左側トランク部202への開口部分よりも大きく、その開口154aの周縁には全周にわたってフランジ154cが一体に形成され、このフランジ154cには、複数のボス154dが間隔をおいて形成されている。トランク部材154は、各ボス154dがレッグシールド7の裏面に一体に形成された図示せぬ突起に嵌合され、かつ溶着等の手段で接着されることにより、レッグシールド7に固着されている。前記仕切り部152aは、閉じられるリッド210の内面よりもやや前方に奥まった位置にあり、したがって、リッド210が閉じられた状態でも、左右のトランク部201,202の内部は、前方において互いに連通するようになっている。
【0022】リッド210は、図2ないし図5に示すように、前記トランク開口203を閉じた状態でフロントトランク200の外面(メインシート4に着座する運転者に対向する面)を構成する外側リッド220と、この外側リッド220の内面に固定された内側リッド230との2枚構造となっている。
- 【公開番号】特開平10−16847
【公開日】平成10年(1998)1月20日
【発明の名称】自動二輪車のトランク構造
- 【出願番号】特願平8−170430
【出願日】平成8年(1996)6月28日
【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 潤
- ※以下のタグをホームページ中に張り付けると便利です。
-
当サイトではIPDL(特許電子図書館)の公報のデータを著作権法32条1項に基づき公表された著作物として引用しております、
収集に関しては慎重に行っておりますが、もし掲載内容に関し異議がございましたらお問い合わせください、速やかに情報を削除させていただきます。