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収納ボックスを備えた自動二輪車
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- 【要約】
【課題】本発明は、収納ボックスの内部にロック装置を無理なく収容でき、しかも、ロック装置のがたつきや倒れを防止できる自動二輪車を得ることにある。
【解決手段】自動二輪車は、シート38の下方に配置された収納ボックス25を備えている。収納ボックスの前壁28は、収納ボックスの底から開口29の方向に進むに従い前方に張り出す方向に傾斜され、この前壁の上端部には、前方に向けて突出されたシート支持部33が形成されている。シート支持部には、シート38が上下方向に開閉可能に支持されている。収納ボックスの前壁には、車輪7,17の回り止めをなすロック装置が取り出し可能に収容される収容部61が形成されている。収容部は、収納ボックスの前方に突出されるとともに、前壁に沿うように傾斜されており、しかも、この収容部は、ロック装置を取り外し可能に保持するための保持壁65a,65b を備えている。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 乗員が着座するシートと;このシートの下方に配置され、上記シートと向かい合う上端に開口を有する収納ボックスと;を備えており、上記収納ボックスは、上記開口と向かい合う底壁と、この底壁から上記開口の方向に進むに従い前方に張り出す方向に傾斜された前壁を含む周壁と、この前壁の上端部から前方に向けて突出され、上記シートの前端部を回動可能に支持するためのシート支持部と、を有し、上記シートは、その前端部を支点に上記収納ボックスの開口を覆う第1の位置と、上記収納ボックスの開口の上方に離脱される第2の位置とに亘って回動可能に上記収納ボックスに支持され、このシートの回動により上記収納ボックスの開口を開閉する自動二輪車において、上記収納ボックスの前壁に、車輪の回り止めをなすロック装置が取り出し可能に収容される収容部を形成し、この収容部は、上記収納ボックスの前方に向けて突出されるとともに、上記前壁に沿うように傾斜され、かつ、この収容部は、上記ロック装置を取り外し可能に保持するための保持手段を備えていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】 請求項1の記載において、上記ロック装置は、複数の金属製の棒状体を回動可能に連結して構成され、また、上記収容部は、上記前壁に沿って傾斜された前面壁と、この前面壁の下端に連なる底面壁と、を有するとともに、上記保持手段は、上記底面壁から上向きに延びる保持壁を有し、この保持壁は、上記前面壁と協同して上記ロック装置の端部を取り出し可能に保持していることを特徴とする自動二輪車。
【請求項3】 請求項2の記載において、上記収容部の底面壁は、上記収納ボックスの下方に向けて開口された通孔を有し、この通孔は、上記収容部に収容されたロック装置の端部と向かい合うことを特徴とする自動二輪車。
【請求項4】 請求項1の記載において、上記収容部は、上記収納ボックスの内側の収納スペースに連なっていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項5】 請求項1の記載において、上記収納ボックスは、上記開口と向かい合う底壁を有し、この底壁に上記ロック装置が取り出し可能に収容される格納凹部を形成したことを特徴とする自動二輪車。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シートの下方にヘルメットのような物品を収納するための収納ボックスを備えた自動二輪車に係り、特にその収納ボックスの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】スクータ形の自動二輪車は、シートの下方にヘルメットや雨具のような物品を収納するための合成樹脂製の収納ボックスを備えている。収納ボックスは、シートと向かい合う上端が開口された形状をなしており、この開口を通じて上記物品が出し入れされるようになっている。
【0003】また、この種の収納ボックスは、上記開口に連なる前端部にシート支持部を有している。シート支持部は、収納ボックスと一体化されており、このシート支持部にヒンジを介して上記シートの前端部が回動可能に支持されている。
【0004】このため、シートは、その前端部を支点として上記収納ボックスの開口を覆うように水平に倒される第1の位置と、上記収納ボックスの上方に離脱するように起立される第2の位置とに亘って回動可能となっており、このシートによって上記収納ボックスの開口が開閉されるようになっている。そして、スクータ形の自動二輪車では、上記シートを第1の位置にロックし得るような構成が採用されており、このシートのロックによって収納ボックスに収納した物品の盗難が阻止されるようになっている。
【0005】一方、最近では、自動二輪車の盗難を防止するため、駐車時に車輪に装着して使用するロック装置が種々製品化されている。この種のロック装置として、U形の本体と、棒状のロッドとを回動可能に連結して構成したものが知られている。このロック装置は、ロッドの一端にキーシリンダが連結されており、このキーシリンダに上記本体の先端を係止させることで、ロック装置がループ状に組み立てられるようになっている。
【0006】そのため、U形の本体を車輪のホイールを跨ぐように挿通した後、この本体の先端をキーシリンダに係止させれば、車輪のホイールをロック装置によって取り囲むことができ、車輪の回り止めがなされる。
【0007】このような盗難防止用のロック装置は、未使用時には車輪から取り外す必要があるため、その収納が問題となってくる。この場合、上記のような収納ボックスを備えたスクータ形の自動二輪車では、この収納ボックスを利用してロック装置を収容することが考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の収納ボックスは、ヘルメットのような比較的形状の大きな物品を収納することを前提に設計されている。そのため、収納ボックスの内面は、凹凸の少ないフラットな面となっていることが多く、上記ロック装置を保持し得るような構成を備えていない。
【0009】したがって、ロック装置を収納ボックスの定位置に保持しておくことができず、自動二輪車の走行中の振動によってロック装置が収納ボックスの内部でがたついたり、飛び跳ねることがあり得る。この結果、収納ボックスの内面が損傷したり、ロック装置が収納ボックスに収容されている物品と干渉し合い、この物品が傷付くといった問題がある。
【0010】また、ロック装置を収容したことにより、収納ボックスの内部のスペースが減じられるため、この収納ボックスにヘルメットのような比較的大きな物品を収容できなくなる虞があり、収納ボックス本来の機能が失われるといった不具合がある。
【0011】本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、その目的は、収納ボックスの容量を減じることなく、この収納ボックスの内部にロック装置を無理なく収容することができ、しかも、収納ボックスの内部でのロック装置のがたつきや倒れを防止できる自動二輪車を得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、乗員が着座するシートと;このシートの下方に配置され、上記シートと向かい合う上端に開口を有する収納ボックスと;備えており、上記収納ボックスは、上記開口と向かい合う底壁と、この底壁から上記開口の方向に進むに従い前方に張り出す方向に傾斜された前壁を含む周壁と、この前壁の上端部から前方に向けて突出され、上記シートの前端部を回動可能に支持するためのシート支持部と、を有し、上記シートは、その前端部を支点に上記収納ボックスの開口を覆う第1の位置と、上記収納ボックスの開口の上方に離脱される第2の位置とに亘って回動可能に上記収納ボックスに支持され、このシートの回動により上記収納ボックスの開口を開閉する自動二輪車を前提としている。そして、上記収納ボックスは、その前壁に車輪の回り止めをなすロック装置が取り出し可能に収容される収容部を有し、この収容部は、上記収納ボックスの前方に向けて突出されるとともに、上記前壁に沿うように傾斜され、しかも、この収容部は、上記ロック装置を取り外し可能に保持するための保持手段を備えていることを特徴としている。
【0013】この構成によると、ロック装置を収容する収容部は、収納ボックスの前壁の前方に張り出しているので、収納ボックス本来の収納スペースを減じることなく、この収納ボックスにロック装置を収容できる。しかも、収容部は、シート支持部の下方に位置するので、このシート支持部の下方に生じるデッドスペースを利用して収納ボックスの前壁を前方に突出させることができ、収納ボックスの周囲の部品と干渉し合うことはない。
【0014】また、上記収容部は、前上がりに傾斜されているから、ロック装置は、収容部に寄り掛かかるような姿勢で保持される。そのため、ロック装置の倒れやがたつきを確実に防止することができ、収納ボックスの内面の損傷や収納された物品とロック装置との干渉を回避することができる。
【0015】請求項2によれば、上記請求項1に記載されたロック装置は、複数の金属製の棒状体を回動可能に連結して構成され、また、上記収容部は、上記前壁に沿って傾斜された前面壁と、この前面壁の下端に連なる底面壁とを有するとともに、上記保持手段は、上記底面壁から上向きに延びる保持壁を有し、この保持壁は、上記前面壁と協同して上記ロック装置の端部を取り出し可能に保持していることを特徴としている。
【0016】この構成によると、収容部に保持されたロック装置を収納ボックスから取り出すには、ロック装置を開口の方向に向けて引き上げ、保持壁と前面壁との間から引き出す。この際、保持壁は、ロック装置の端部を保持しているにすぎないので、底面壁からの立上がり高さが低く抑えられる。そのため、ロック装置を収容部から取り出したり、逆に収容部に収容する際に、保持壁が邪魔となることはなく、ロック装置の出し入れを容易に行うことができる。
【0017】その上、保持壁の高さが低くなるので、ロック装置を収容部から取り出した状態では、この収容部の多くが収納ボックスの内部に開放され、この収容部を収納ボックスの一部として活用することができる。
【0018】請求項3によれば、上記請求項2に記載された収容部の底面壁は、上記収納ボックスの下方に向けて開口された通孔を有し、この通孔は、上記収容部に収容された上記ロック装置の端部と向かい合うことを特徴としている。
【0019】この構成によると、車輪から取り外したロック装置に水分あるいは泥等の異物が付着しているような場合に、このロック装置を収容部に装着すると、上記水分や異物等は、ロック装置を伝って落下し、上記通孔を通じて収納ボックスの外方に排出される。そのため、収容部に水分や異物が滞留し難くなり、収容部の汚損を防止できる。
【0020】請求項4によれば、上記請求項1に記載の収容部は、上記収納ボックスの内側の収納スペースに連なっていることを特徴としている。この構成によると、収容部からロック装置を取り出した状態では、この収容部を収納スペースの一部として利用することができる。そのため、収納ボックスの収納スペースが広がり、物品を無理なく収容することができる。
【0021】請求項5によれば、上記請求項1に記載された収納ボックスは、上記開口と向かい合う底壁を有し、この底壁に上記ロック装置が取り出し可能に収容される格納凹部を形成したことを特徴としている。
【0022】この構成によると、収納ボックスの底部にロック装置を収容することができる。しかも、この場合、ロック装置が収まる格納凹部は、収納ボックスの底壁よりも下向きに凹んでいるので、ロック装置が収納ボックスの内側の収納スペースに大きく張り出すことはない。そのため、収納ボックスのスペースを減じることなく二つのロック装置を収容することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を、スクータ形の自動二輪車に適用した図面にもとづいて説明する。図1は、スクータ形の自動二輪車1を示している。この自動二輪車1のフレーム2は、ヘッドパイプ3と、このヘッドパイプ3に連なる一本のダウンチューブ4と、このダウンチューブ4に連なる一対のメインパイプ5a,5bとを備えている。
【0024】ヘッドパイプ3は、フレーム2の前端に位置されている。このヘッドパイプ3には、フロントフォーク6を介して前輪7が支持されている。ダウンチューブ4は、ヘッドパイプ3から下向きに延びている。このダンチューブ4の下端部には、後方に向けて延びる延長部4aが形成されている。
【0025】メインパイプ5a,5bは、車幅方向に互いに離間して配置されている。これらメインパイプ5a,5bは、延長部4aから後方に向けて延びる第1の部分8と、この第1の部分8の後端部から後方斜め上向きに延びる第2の部分9と、この第2の部分9の上端部から後方に延びる第3の部分10とを有している。メインパイプ5a,5bにおける第2の部分9から第3の部分10に亘る箇所には、下向きに張り出すエンジンブラケット11が取り付けられている。また、第3の部分10の後端部には、上向きに延びる支持ステー12が取り付けられている。支持ステー12は、メインパイプ5a,5bの間に跨がって配置されており、この支持ステー12の上端には、平坦な荷重受け部12aが形成されている。荷重受け部12aは、上記ヘッドパイプ3の上端と略同一高さに位置されている。
【0026】エンジンブラケット11には、ユニットスイング式のパワーユニット13が支持されている。パワーユニット13は、強制空冷式のエンジン14と、このエンジン14の一側部から後方に延びる伝動ケース15とを備えている。伝動ケース15の後端部は、油圧緩衝器16を介して上記フレーム2に懸架されている。伝動ケース15の後端部には、後輪17が支持されている。この後輪17は、伝動ケースに収容されたVベルト変速機(図示せず)を介して駆動されるようになっている。
【0027】図1に示すように、スク−タ形の自動二輪車1は、運転者の足置きとなるフートボード19を有している。フートボード19は、ダウンチューブ4の延長部4aおよびメインパイプ5a,5bの第1の部分8に支持されており、上記パワーユニット13の前方に位置されている。また、フレーム2のダウンチューブ4には、レッグシールド20が支持されている。レッグシールド20は、フートボード19の前端から上向きに延びており、上記ヘッドパイプ3やダウンチューブ4を覆い隠している。
【0028】上記メインパイプ5a,5bの第3の部分10には、収納ボックス25が支持されている。収納ボックス25は、図1や図3に示すように、主にヘルメット22のような比較的大きな物品を収納するためのもので、少なくともヘルメット22の帽体23を収納し得るような大きさの収納スペース25aを有している。
【0029】図2や図3に示すように、収納ボックス25は、底壁26と、この底壁26から上向きに延びる前壁28を含む周壁27とを有している。周壁27は、収納ボックス25の左右の側部から後部に亘っており、この収納ボックス25を平面的に見た場合に円弧状に湾曲されている。前壁28は、底壁26の前端に連なっており、この前壁28は、車幅方向に延びる略平坦な板状をなしている。
【0030】周壁27および前壁28の上端縁部は、平面視略卵形の開口29を構成している。開口29は、収納ボックス25の上端に位置され、この開口29を通じてヘルメット22が出し入れされるようになっている。この場合、ヘルメット22は、帽体23の頂部を下向きにした姿勢で収納ボックス25に収納されるようになっており、この帽体23の下部が収納ボックス25の開口29側に位置されている。この帽体23の下部は、収納ボックス25の開口29から突出されている。
【0031】収納ボックス25は、合成樹脂材料を射出成型することで構成されている。この収納ボックス25を射出成型するに当たっては、収納ボックス25の高さ方向に分割可能な上型と下型とを有する成型金型(図示せず)が用いられる。そのため、収納ボックス25の周壁27は、底壁26から開口29の方向に進むに従い所定の抜き勾配を有して傾斜されている。同様に前壁28も底壁26から開口29の方向に進むに従い前向きに傾斜されており、この前壁28の傾斜角度は、周壁27の傾斜角度よりも大きく定められている。
【0032】図2に示すように、収納ボックス25の底部は、上記メインパイプ5a,5bの第3の部分10の間に位置されている。収納ボックス25の底壁26は、下向きに突出する一対のボックス支持部31a,31bを有している。ボックス支持部31a,31bは、車幅方向に離間して配置されている。これらボックス支持部31a,31bは、メインパイプ5a,5bの間に架設した図示しないクロスメンバに固定されている。
【0033】収納ボックス25の周壁27の後端部には、後方に向けて略水平に延びるフランジ部32が形成されている。フランジ部32は、上記支持ステー12の荷重受け部12aに重ねられ、この荷重受け部12aにボルトを介して固定されている。そのため、収納ボックス25は、上記パワーユニット13の上方に位置されている。
【0034】図2や図3に示すように、収納ボックス25の前壁25の上端部には、前方に向けて略水平に突出するシート支持部33が形成されている。シート支持部33の車幅方向の両端部には、一対の支持壁35a,35bが形成されている。
【0035】図4に示すように、収納ボックス25の上方には、シート38が配置されている。このシート38は、上記収納ボックス25の開口形状よりも大きな平面形状を有している。シート38は、シート底板39と、このシート底板39に積層されたクッション材40と、このクッション材40を覆うシート表皮41とを備えている。シート底板39の前端部には、ヒンジ金具43が取り付けられている。ヒンジ金具43は、シート底板39の下方に張り出しており、このヒンジ金具43がヒンジ軸44を介して上記シート支持部33の支持壁35a,35bに回動可能に連結されている。
【0036】そのため、シート38は、そのシート底板39の前端部を支点に、略水平に倒される第1の位置と、略垂直に近い角度に起立される第2の位置とに亘って回動可能に収納ボックス25に支持されている。シート38が第1の位置に回動された状態では、図4に示すように、シート底板39が収納ボックス25の上端と向かい合い、その開口29を閉じている。また、シート38が第2の位置に回動された状態では、図5に示すように、シート底板39が収納ボックス25の上端から前方に離脱し、収納ボックス25の開口29が上方に向けて開放されるようになっている。
【0037】シート底板39の後部には、下向きに突出する一対の支持凸部45(一方のみを図示)が形成されている。支持凸部45は、シート38の幅方向に離間して配置され、このシート38を第1の位置に回動させた時に、上記収納ボックス25のフランジ部32に重なり合うようになっている。シート底板39には、下向きに突出するロックピン46が連結されている。ロックピン46は、上記支持凸部45の間に配置され、シート38を第1の位置に回動させた時に、フランジ部32および支持ステー12の荷重受け部12aを貫通するようになっている。
【0038】荷重受け部12aの下面には、シートロック装置47が支持されている。シートロック装置47は、シート38を第1の位置にロックするためのもので、このシート38を第1の位置に回動させた時に、上記ロックピン46の下端部が取り外し可能に係合されるようになっている。
【0039】シートロック装置47は、図示しないメインスイッチをロック解除位置にキー操作することで、ロックピン46との係合が解除されるようになっている。そのため、メインスイッチをロック解除位置に操作しない限り、シート38は第1の位置にロックされており、上記収納ボックス25に収納されたヘルメット22の盗難が防止されるようになっている。
【0040】なお、図4に示すように、上記シート底板39は、上向きに凹む逃げ部48を有している。逃げ部48は、シート38を第1の位置に回動させた時に、収納ボックス25の開口29と向かい合い、この逃げ部48に上記ヘルメット22の帽体23の下部が入り込むようになっている。
【0041】ところで、スクータ形の自動二輪車1は、図11の(A)(B)に示すような盗難防止用のロック装置51を標準装備している。ロック装置51は、前輪7又は後輪17に装着することで、前輪7又は後輪17の回り止めをなすものである。このロック装置51は、機械構造用炭素鋼あるいはクロムモリブデン鋼のような耐破壊強度に優れた金属材料にて構成されている。
【0042】ロック装置51は、U形に曲げられた棒状体からなる本体52と、真っ直ぐな棒状体を用いたロッド53と、これら本体52とロッド53とを連結する継手54とを備えている。本体52は、互いに平行をなす一対のアーム部52a,52bと、これらアーム部52a,52bの間に跨がるU形の連結部52cとを有し、一方のアーム部52aの先端が上記継手54を介してロッド53の一端に回動可能に連結されている。また、上記ロッド53は、円筒状のロックシリンダ55を備えている。このロックシリンダ55は、ロッド53の他端に溶接等の手段により結合されている。
【0043】本体52の他方のアーム部52bの先端には、係止部56が形成されている。係止部56は、ロックシリンダ55の周面を貫通して、このロックシリンダ55に取り外し可能に係合されるようになっており、この係合により、ロック装置51がループ状に組み立てられるようになっている。係止部56は、ロックシリンダ55を施錠することにより、このロックシリンダ55に抜き出し不能にロックされる。
【0044】このようなロック装置51を用いて前輪7又は後輪17の回り止めを行うには、まず、ロックシリンダ55の施錠を解除し、本体52の係止部56をロックシリンダ55から引き抜く。そして、本体52のアーム部52a,52bの間に前輪7又は後輪17のリムおよびタイヤを通したならば、ロッド53を本体52に向けて回動させ、係止部56をロックシリンダ55に係止させる。次に、ロックシリンダ55を施錠し、本体52のアーム部52bをロックシリンダ55から抜き出し不能にロックする。
【0045】このことにより、前輪7又は後輪17のリムおよびタイヤがロック装置51により取り囲まれ、前輪7又は後輪17の回り止めがなされる。この種のロック装置51は、未使用時には前輪7又は後輪17から取り外されるために、上記収納ボックス25は、上記ロック装置51を取り出し可能に収容するための収容部61を備えている。
【0046】図2、図6および図7に示すように、収容部61は、収納ボックス25の前壁28に一体に形成されている。この収容部61は、上記前壁28を前方に向けて部分的に突出させることで構成され、本実施形態の場合は、上記ロック装置51の本体52が入り込むような略逆U字形をなしている。
【0047】この収容部61の形状について具体的に述べると、図8や図9からも明らかなように、収容部61は、前壁28に沿って上下方向に延びる溝状の第1および第2の凹部61a,61bと、これら凹部61a,61bの上端部間に跨がる第3の凹部61cとを有している。これら第1ないし第3の凹部61a〜61cは、収納ボックス25の内側の収納スペース25aに向けて開放されている。第1および第2の凹部61a,61bは、ロック装置51の本体52のアーム部52a,52bを取り出し可能に収容するためのもので、車幅方向に互いに離間して配置されている。第3の凹部61cは、上記本体52の連結部52cを取り出し可能に収容するためのもので、収納ボックス25の開口29の前端に連なっている。
【0048】第1および第3の凹部61a〜61cは、互いに同一面上に位置する前面壁62を有している。前面壁62は、収納ボックス25の前壁28に沿うような角度に傾斜されており、その上端が開口29の前端に連なっている。第1および第2の凹部61a,61bは、前面壁62の下端に連なる底面壁63を有している。この底面壁63は、図6から明らかなように、収納ボックス25の底壁26に連なっている。
【0049】第1および第2の凹部61a,61bに臨む底壁26の前端部には、夫々保持壁65a,65bが一体に形成されている。保持壁65a,65bは、底壁26から上向きに延びており、これら保持壁65a,65bの底壁26からの突出高さHは、第1および第2の凹部61a,61bの長さの半分にも満たないような小さな値に定められている。
【0050】保持壁65a,65bは、前面壁62と略平行をなすように前上がりに傾斜されており、これら保持壁65a,65bは、前面壁62と協同して上記ロック装置51のアーム部52a,52bおよびロッド53を取り外し可能に保持するようになっている。そのため、本実施形態の場合は、保持壁65a,65bがロック装置51を収容部61に保持するための保持手段を構成している。
【0051】図2や図6に示すように、第1および第2の凹部61a,61bの底面壁63には、通孔66a,66bが形成されている。通孔66a,66bは、収納ボックス25の下方に向けて開放されており、これら通孔66a,66bは、上記保持壁65a,65bの下方に位置されている。この場合、保持壁65a,65bは、収容部61の前面壁62に沿うように前上がりに傾斜されているため、これら保持壁65a,65bの下部がアンダカットとなる。このことから、上記通孔66a,66bは、保持壁65a,65bを射出成型する際の下型の型抜き孔を兼ねている。
【0052】図2や図7に示すように、第3の凹部61cの前面壁62には、円弧状に湾曲された凹所68が形成されている。この凹所68は、上記ロック装置51のロックシリンダ55が入り込むもので、上記第1凹部61aの延長線上に位置されるとともに、上記収納ボックス25の開口29に連なっている。
【0053】また、収納ボックス25の底壁26の略中央部には、格納凹部70が形成されている。格納凹部70は、例えば工具のような物品を収容するためのもので、図10に示すように、上記メインパイプ5a,5bの第3の部分10の間を通して収納ボックス25の下方に向けて突出されている。格納凹部70は、収納ボックス25に収納されたヘルメット22の頂部よりも下方に位置されており、この格納凹部70の底には、水抜き用の小さな孔71が開口されている。
【0054】格納凹部70は、上記ロック装置51を収容し得るような平面形状を有している。この場合、このロック装置51は、本体52の係止部56をロックシリンダ55に係止させたループ状の形態で上記格納凹部70に水平に置かれるようになっており、この本体52とロッド53とで囲まれる空間部分がヘルメット22の頂部と向かい合っている。
【0055】なお、このロック装置51の収容形態は、ループ状に制約されるものではなく、例えばロッド53を本体52の一方のアーム部52aに重ね合わせ、ロックシリンダ55を本体52の連結部52cに隣接させた形態として、上記格納凹部70に収容しても良い。
【0056】収納ボックス25やフレーム2のメインパイプ5a,5b、エンジンブラケット11および支持ステー12は、ボディカバー73によって覆われている。ボディカバー73は、上記フートボード19やシート38に連なっており、このボディカバー73の前端、フートボード19およびレッグシールド20とで囲まれる部分は、乗員の足を収めるための広い空間75となっている。
【0057】図1に示すように、収納ボックス25の前端下部とエンジン14との間には、オイルタンク76が配置されている。オイルタンク76は、メインパイプ5a,5bの第2の部分9の間に入り込んでおり、上記ボディカバー73の前部によって覆い隠されている。また、収納ボックス25の後方には、図示しない燃料タンクが配置されており、この燃料タンクは、ボディカバー73の後部によって覆い隠されている。
【0058】このような構成のスクータ形の自動二輪車1において、ロック装置51を収納ボックス25の収容部61に収容する手順について説明する。まず、シート38を第1の位置から第2の位置に回動させ、収納ボックス25の開口29を上向きに開放させる。次に、ロック装置51の係止部56をロックシリンダ55から引き抜き、図11の(B)に示すように、ロッド53を本体52の一方のアーム部52aに重なり合うような位置まで回動させる。この回動により、ロックシリンダ55が本体52の連結部52cに隣接して位置される。
【0059】この状態で、アーム部52a,52bの先端を下向きにした姿勢でロック装置51を保持し、このロック装置51を収納ボックス25の開口29を通じて保持部61に差し入れる。このことにより、本体52のアーム部52a,52bが第1および第2の凹部61a,61bに入り込むとともに、本体52の連結部52cが第3の凹部61cに入り込み、かつロックシリンダ55が凹所68に入り込む。そのため、一方のアーム部52aとロッド53の下端部は、前面壁62と保持壁65aとで挾み込まれ、他方のアーム部52bの下端部は、前面壁62と保持壁65bとの間に介在される。したがって、ロック装置51は、前壁28に沿うような姿勢で収容部61に保持される。
【0060】このような構成によれば、ロック装置51を保持する収容部61は、収納ボックス25の前壁28から前方に突出されているので、この収容部61が収納スペース25aに張り出すことはない。このため、収納ボックス25の収納スペース25aを減じることなく、収納ボックス25の内部にロック装置51を収容することができ、ヘルメット22の収納が妨げられずに済む。
【0061】また、収容部61は、前壁28の上端から前方に張り出すシート支持部33の下方に位置するので、このシート支持部33の下方に生じるデッドスペースを利用して配置することができる。そのため、収容部61を前壁28の前方に突出させても、この収容部61が収納ボックス25の周囲に位置するフレーム2のような他の部品と干渉し合うことはなく、収納ボックス25の前壁28に収容部61を無理なく形成することができる。
【0062】しかも、上記構成によると、上記収容部61は、収納ボックス25の前壁28に沿うように前方斜め上向きに傾斜されているので、ロック装置51は、収容部61の前面壁62に寄り掛かるような姿勢で収容部61に収められる。それとともに、ロック装置51のアーム部52a,52bやロッド53の下部は、前面壁62と保持壁65a,65bとの間で保持されるので、このロック装置51をしっかりと支えることができ、収納ボックス25に自動二輪車の走行中の振動が加わっても、収容部61内でのロック装置51の倒れやがたつきを確実に防止することができる。
【0063】したがって、収納ボックス25の内面の損傷を防止できるとともに、ロック装置51とヘルメット22との干渉を回避することができ、ヘルメット22の損傷を防止できる。
【0064】また、上記保持壁65a,65bは、その底壁26からの突出高さHが低く抑えられ、ロック装置51のアーム部52a,52bやロッド53の下部を押えているだけであるから、ロック装置51を収容部61から取り出したり、逆に収容部61に収める際に、保持壁65a,65bが邪魔となることはない。そのため、収容部61に対するロック装置51の出し入れを操作を容易に行うことができる。
【0065】それとともに、保持壁65a,65bの高さHが低くなるので、収容部61からロック装置51が取り出されている状態では、この収容部61の多くが収納ボックス25の収納スペース25aにそのまま開放される。この結果、収容部61を収納スペース25aの一部として有効利用することができる。
【0066】上記ロック装置51は、前輪7又は後輪17に装着するために、このロック装置51の使用中は、その本体52あるいはロッド53が路面や地面に接触し、これら本体52あるいはロッド53に泥や水分が付着し易くなる。そのため、前輪7又は後輪17から取り外したロック装置51を収容部61に収容すると、泥や水分が収容部61に入り込んでしまう虞があり得る。
【0067】しかるに、上記構成によると、収容部61における第1および第2の凹部61a,61bの底面壁63には、収納ボックス25の下方に向けて開口された通孔66a,66bが形成されているので、上記のようにロック装置51を収容部61に収容すると、ロック装置51に付着した泥や水分は、本体52のアーム部52a,52bやロッド53を伝って落下し、第1および第2の凹部61a,61bの底部に至る。そのため、ロック装置51に付着した泥や水分は、通孔66a,66bを通じて収納ボックス25の外方に排出され、この収納ボックス25の内部に滞留し難くなる。よって、収納ボックス25の内部の汚損を防止できるとともに、泥や水分が収納ボックス25に収納したヘルメット22に付着することもない。
【0068】また、収容部61は、収納ボックス25の収納スペース25aに開放されているので、収容部61からロック装置51が取り出されている状態では、収容部61を収納スペース25aの一部として利用することができる。そのため、収納ボックス25の収納スペース25aが広くなり、物品を無理なく収容することができる。
【0069】なお、上記実施の形態に開示されたロック装置は、U形の本体と真っ直ぐなロッドとを回動可能に組み合わせることで構成したが、このロック装置の構成は上記実施の形態に特定されるものではなく、例えば数多くのロッドを回動可能に連結した、いわゆる多関節形のものや、チェーンあるいはケーブルを合成樹脂製のチューブ内に挿通した構造のものであっても良い。
【0070】また、ロック装置を収納ボックスに収容するに当って、このロック装置の収容部と収納スペースとの間に、柔軟なマットあるいはシートを介在させ、収容部をマットやシートで覆うようにしても良い。
【0071】
【発明の効果】以上詳述した本発明によれば、収納スペースを減じることなく収納ボックスの内部にロック装置を収容することができる。しかも、ロック装置は、収容部に寄り掛かかるような姿勢で保持されるので、収納ボックスに自動二輪車の走行中の振動が加わっても、ロック装置の倒れやがたつきを確実に防止することができる。したがって、収納ボックスの内面の損傷を防止できるとともに、この収納ボックスに収納された物品とロック装置との干渉を回避できるといった利点がある。
- 【公開番号】特開平10−16848
【公開日】平成10年(1998)1月20日
【発明の名称】収納ボックスを備えた自動二輪車
- 【出願番号】特願平8−158441
【出願日】平成8年(1996)6月19日
【出願人】
【識別番号】592115892
【氏名又は名称】台湾山葉機車工業股▲ふん▼有限公司
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
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