スポンサード リンク
自動二輪車の走行速度検出装置
スポンサード リンク
- 【要約】
【課題】 センサの検出部と被検出物との間隔が規定範囲内に入るようにしながら部品数を削減してコストダウンを図る。
【解決手段】 クランクケース3に磁束の変化を検出するセンサ18を取付ける。クランクケース3が支持するミッション6の入力軸7に設けられかつ後輪とともに回転する磁性材製歯車12Bの歯に前記センサ18の検出部18aを対向させた。
スポンサード リンク
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンのクランクケースに磁束の変化を検出するセンサを取付け、前記クランクケースが支持する回転軸に設けられかつ後輪とともに回転する磁性材製歯車の歯に前記センサの検出部を対向させたことを特徴とする自動二輪車の走行速度検出装置。
【請求項2】 請求項1記載の自動二輪車の走行速度検出装置において、センサをクランクケースの上壁におけるシリンダより車体後側に取付けたことを特徴とする自動二輪車の走行速度検出装置。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁束の変化を検出するセンサを用いる自動二輪車の走行速度検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の走行速度検出装置としては、例えば特開平4−163286号公報に開示されたものがある。この公報に示された走行速度検出装置は、後輪とともに回転するミッションの出力軸の回転を、磁束の変化を検出するセンサによって検出する構造を採っている。
【0003】詳述すると、この走行速度検出装置は、エンジンのミッションケースにおけるミッションの出力軸が突出する部分にブラケットを取付け、このブラケットに前記センサを取付けている。このセンサは、前記出力軸に係合してこれとともに回転する永久磁石製円板と、この円板の外周面に対向するピックアップICとを備え、出力軸が回転することによって電気パルスが生じるように構成している。
【0004】また、この走行速度検出装置は、前輪が跳ね上げた小石や泥水などからセンサを保護するためのカバーを前記ミッションケースに取付けている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、このように構成した従来の走行速度検出装置は、出力軸の回転を検出するための部品数が多く、コスト低減を図るにも限界があった。回転検出用部品としては、永久磁石製円板、この円板を出力軸に係合させる部品および前記円板を回転自在に支持する部品などである。なお、センサを保護するカバーを設けなければならないという点もコストアップの原因になっている。
【0006】このような不具合は、前記出力軸の軸端に永久磁石製円板を固定することによって、ある程度は解消することができる。しかしながら、ピックアップICとミッションケースとの間にブラケットが介在していることから、ミッションケースが軸承する出力軸に固定した永久磁石製円板に対してピックアップICの位置がずれ易くなるという新たな問題が生じる。すなわち、製造誤差などによってミッションケースに対するブラケットの取付位置およびブラケットに対するピックアップICの取付位置がそれぞれ僅かずつ設計位置からずれ、ピックアップICと永久磁石製円板との間隔が規定範囲から外れてしまうと、このセンサによって検出した走行速度は精度が低下する。
【0007】なお、磁束の変化を検出するセンサとしては、上述したように永久磁石を回転させる構造のものの他に、回転体表面の凹凸に検出部を対向させる構造のものもあるが、この種のセンサを前記走行速度検出装置に流用しても同じ問題が生じる。
【0008】本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、センサの検出部と被検出物との間隔が規定範囲内に入るようにしながら部品数を削減してコストダウンを図ることができる自動二輪車用走行速度検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】第1の発明に係る自動二輪車の走行速度検出装置は、クランクケースに磁束の変化を検出するセンサを取付け、クランクケースが支持する回転軸に設けられかつ後輪とともに回転する磁性材製歯車の歯に前記センサの検出部を対向させたものである。本発明によれば、一つのクランクケースにセンサと磁性材製歯車とを支持させることができる。また、センサに検出される被検出物としての磁性材製歯車は、クランクケース内の歯車を利用して構成することができるから、専ら回転を検出するためにのみ使用される回転体を必要としない。
【0010】第2の発明に係る自動二輪車の走行速度検出装置は、第1の発明に係る自動二輪車の走行速度検出装置において、センサをクランクケースの上壁におけるシリンダより車体後側に取付けたものである。本発明によれば、前輪によって跳ね上げられた小石や泥水がセンサに当たるのをシリンダが遮る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る自動二輪車の走行速度検出装置の一実施の形態を図1ないし図3によって詳細に説明する。図1は本発明に係る走行速度検出装置の側面図で、同図はエンジンの一部を破断して描いてある。図2は要部を拡大して示す縦断面図、図3はミッション部の横断面図である。なお、図3では図1および図2の破断位置をII−II線で示している。
【0012】これらの図において、符号1はこの実施の形態による自動二輪車用2サイクルエンジンを示し、2はこのエンジン1の車体前側に配設したシリンダを示し、3はクランク軸4を回転自在に支持するクランクケースを示す。このクランクケース3は、左右分割式のものを採用し、前記シリンダ2より車体後側にバランサ軸5と、ミッション6の中間軸7および出力軸8とを回転自在に支持している。また、このクランクケース3の上部に設けた符号9で示すものは気化器である。
【0013】前記バランサ軸5は、この実施の形態ではクランクケース3の左右方向の両側壁に横架させた断面半円形の柱状体が回転する構造を採り、車体右側の端部に固定した従動歯車10をクランク軸4側の駆動歯車11に噛合させている。前記ミッション6は、中間軸7の車体右側の端部にクラッチ(図示せず)を介してクランク軸4の回転が伝達され、かつ出力軸8の車体左側の端部から後輪(図示せず)へ回転が伝達される公知の構成を採り、図2および図3に示すように、ドッグクラッチを有する歯車群12を備えている。なお、図2中に符号6a,6bで示すものは、前記ドッグクラッチを駆動するためのシフトフォークである。この実施の形態では、ミッション6は変速段数が6速のものを採用している。
【0014】前記中間軸7および出力軸8は、軸受13〜16によってクランクケース3の左側半部3aおよび右側半部3bに両端部をそれぞれ回転自在に支持させている。中間軸7は、クラッチを連結するために車体右側の端部を前記右側半部3bから側方へ突出させている。また、出力軸8は、車体左側の端部を前記左側半部3aから側方へ突出させ、この突出端部にスプロケット17を取付けている。このスプロケット17に後輪駆動用チェーン(図示せず)が巻掛けられる。すなわち、出力軸8が回転するときには後輪も共に回転する。
【0015】前記歯車群12は、中間軸7や出力軸8にスプライン嵌合しかつ前記シフトフォーク6a,6bが軸方向へ移動させる移動式歯車12a〜12cと、軸方向への移動が規制されかつ中間軸7や出力軸8に対して回転自在な位置固定式歯車12A〜12Fなどから構成している。これらの歯車のうち、出力軸8に設けた移動式歯車12cに噛合する中間軸7側の位置固定式歯車12Bの上方かつ前記シフトフォーク6a,6bとは反対側(上方)に、この自動二輪車の走行速度を検出するためのセンサ18を配設している。前記位置固定式歯車12Bは、鋼材などの磁性材によって形成し、中間軸7に軸装した歯車のうちで径が最も大きくなるように形成している。すなわち、この歯車12Bは、このミッション6では6速ピニオンを構成している。
【0016】前記センサ18は、円柱状の検出部18aの先端面を通る磁束の変化を検出して電気パルスを発生させる構成のセンサであり、前記検出部18aの先端面を前記歯車12Bの歯に径方向の外側から対向するようにクランクケース3の前記左側半部3aに取付けている。センサ取付部は、前記左側半部3aの上壁19における気化器9の下方かつシリンダ2およびバランサ軸5より車体後側となる部位に前下がりに延びる筒状部20を形成し、この筒状部20内に検出部18aを嵌合させる構造を採っている。
【0017】前記筒状部20を前下がりに傾斜させたのは、前記歯車12Bの上方に位置付けられたバランサ軸5とセンサ18との干渉を避けながら検出部18aの先端面を歯車12Bの歯先に接近させるためである。また、この実施の形態では、検出部18aと他の歯車(図3に示す出力軸8側の位置固定式歯車12F)との干渉を避けるために、検出部18の先端部を先端に向かうにしたがって次第に細くなるように形成している。
【0018】センサ18をクランクケース3に固定するには、センサ上部のフランジ18bを前記上壁19の上面に対接させ、このフランジ18bを図示してない固定ボルトで上壁19に締付ける構造を採っている。なお、前記フランジ18bの下面には、前記上壁19に装着したOリング21を圧接させている。
【0019】この実施の形態では、上述したようにセンサ18をクランクケース3に固定した状態で前記先端面と歯車12Bの歯先との間隔が所定の規定範囲に入るように構成している。
【0020】上述したようにセンサ18をクランクケース3に取付けると、走行時、すなわちミッション6の出力軸8が回転するときに、出力軸8にスプライン嵌合する移動式歯車12cとともに入力軸7側の位置固定式歯車12Bが回転し、前記検出部18bの先端面を通る磁束が変化する。センサ18は、この磁束の変化を電気パルスに変換し、配線22(図1および図2参照)を介して図示してない走行速度演算・表示装置に出力する。
【0021】また、被検出物である歯車12Bは、クランクケース3が軸承する入力軸7に回転自在に支持させているので、一つのクランクケース3にセンサ18と、前記歯車12Bとを支持させることができる。したがって、センサ18の取付位置が前記歯車12Bに対してずれることがなく、両者の間隔が規定範囲内に確実に入る。
【0022】さらに、被検出物としての歯車12Bは、クランクケース3内に設けるミッション6の構成部品であるから、回転を検出するためにのみ使用される回転体を設けることなくセンサ18によって回転を検出することができる。すなわち、部品の共有化を図ることができる。さらにまた、センサ18をクランクケース3の左側半部3aの上壁におけるシリンダ2より車体後側に取付けたため、図示してない前輪によって跳ね上げられた小石や泥水がセンサ18に当たるのをシリンダ2によって遮ることができる。その上、センサ18を気化器9の下方に配設しているから、センサ18は気化器9によって上方が覆われてこれによって保護される。
【0023】加えて、ここで示したように歯車12Bに検出部18bを対向させる構成を採ると、この歯車12Bは、6速ピニオンを構成していることから相対的に大径であり、歯車12Bが噛合する移動式歯車12cの径が小さいので、センサ18の検出部18aとこれに隣接する移動式歯車12cとの間隔が広くなってセンサ18の配置スペースを広くとることができる。また、歯先とクランクケース3の前記上壁19との間隔が他の歯車に較べて狭いから、小型のセンサを使用することができる。しかも、この歯車12Bは相対的に車体左側に位置付けられているから、これとは反対側に設けられるクラッチとは大きく離間することになり、センサ18の取付座面の加工が容易である。
【0024】なお、この実施の形態では、ミッション6の6速ピニオンとなる歯車12Bにセンサ18の検出部18aを対向させる構成を採っているが、検出部18aを対向させる歯車は出力軸8とともに回転するものであればどれでもよい。すなわち、図3中に符号12A,12b,12cで示す歯車の回転をセンサ18が検出する構成を採ることもできる。例えば相対的に小径な歯車12b,12cの回転をセンサで検出する構成を採る場合には、この実施の形態で示したセンサ18より全長が長いセンサを使用する。加えて、センサ18は歯車の歯先に対向させなくてもよく、歯車の歯の軸方向の端面に対向させることもできる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように第1の発明に係る自動二輪車の走行速度検出装置によれば、一つのクランクケースにセンサと磁性材製歯車とを支持させることができるから、センサの取付位置が前記歯車に対してずれることがなく、両者の間隔が規定範囲内に確実に入る。このため、走行速度を高精度に検出することができる。また、センサに検出される被検出物としての磁性材製歯車は、クランクケース内の歯車を利用しているので、従来のように専ら回転を検出するためだけにのみ使用される回転体を設けなくてよいから、部品数が少なくなる。
【0026】したがって、センサと被検出物との間隔が規定範囲内に入るようにしながら部品数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0027】第2の発明に係る自動二輪車の走行速度検出装置によれば、前輪によって跳ね上げられた小石や泥水がセンサに当たるのをシリンダが遮るから、センサを前記飛散物から保護するためのカバーを設けなくてよい。したがって、製造コストをより一層低く抑えることができる。
- 【公開番号】特開平10−24881
【公開日】平成10年(1998)1月27日
【発明の名称】自動二輪車の走行速度検出装置
- 【出願番号】特願平8−179027
【出願日】平成8年(1996)7月9日
【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
- ※以下のタグをホームページ中に張り付けると便利です。
-
当サイトではIPDL(特許電子図書館)の公報のデータを著作権法32条1項に基づき公表された著作物として引用しております、
収集に関しては慎重に行っておりますが、もし掲載内容に関し異議がございましたらお問い合わせください、速やかに情報を削除させていただきます。