自動二輪車
- 【要約】
【目的】 ヘッドライトの放熱性を高めることができる自動二輪車を提供すること。
【構成】 車体フレームのヘッドパイプの左右両側にフロントフォーク9を配し、同車体フレームのヘッドパイプから斜め後下方に延出するメインフレーム部を有し、該メインフレーム部の上方に燃料タンクを配し、ハンドル11の前方を含む車体前方を覆うカウリング12の前面にヘッドライト13を配して構成される自動二輪車において、前記ヘッドライト13を複数設け、各ヘッドライト13の間に該ヘッドライト13の縦寸法L以上の間隔B(≧H)を設ける。本発明によれば、ヘッドライト13を複数設けて各ヘッドライト13の間に該ヘッドライト13の縦寸法H以上の間隔Bを設けたため、発熱源である各ヘッドライト13の放熱性が高められる。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体フレームのヘッドパイプの左右両側にフロントフォークを配し、同車体フレームのヘッドパイプから斜め後下方に延出するメインフレーム部を有し、該メインフレーム部の上方に燃料タンクを配し、ハンドルの前方を含む車体前方を覆うカウリングの前面にヘッドライトを配して構成される自動二輪車において、前記ヘッドライトを複数備え、各ヘッドライトの間にヘッドライトの縦寸法以上の間隔を設けたことを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】 隣接する2つのヘッドライトの間に走行風導入口を開口せしめたことを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】 前記走行風導入口を車幅方向中央に開口せしめ、該走行風導入口から取り入れられた走行風を走行風導入通路を経てエアクリーナ、ラジエータ又はオイルクーラに導くよう構成したことを特徴とする請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】 隣接する2つのヘッドライトのボディの間にメータを配設したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の自動二輪車。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数のヘッドライトを備える自動二輪車に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の自動二輪車にあっては、図8に示すように、車体の最先端中央部に単一の一体型ヘッドライト113が配置されており、該ヘッドライト113を避けてこれの下方に走行風導入口141が配置されていた。或は、図8に鎖線にて示すように、ヘッドライト113の両側に走行風導入口142を配置したり、不図示のラジエータの上方位置に走行風導入口143を配置することが行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の自動二輪車にあっては、単一の一体型ヘッドライト113が設けられていたため、該ヘッドライト113のボディも一体型となって発熱源であるヘッドライト113の放熱性が悪いという問題があった。
【0004】従って、本発明の目的とする処は、ヘッドライトの放熱性を高めることができる自動二輪車を提供することにある。
【0005】又、温度の低い走行風をキャブレタに取り入れるため或は走行風圧を利用して混合気を過給するための走行風導入口141〜143が風圧の最も高い位置(ヘッドライト113が配置されている位置)を避けて配置されているため、温度の低い走行風を走行風導入口141〜143から効率良く取り入れることができず、或は最大風圧を有効に利用して過給圧を高めることができず、エンジン出力を最大限に高めることができなかった。
【0006】従って、本発明の目的とする処は、温度の低い走行風を効率良く取り入れることができるとともに、最大風圧を有効に利用して過給圧を高め、以てエンジン出力の向上を図ることができる自動二輪車を提供することにある。
【0007】更に、従来の自動二輪車にあっては、一体型のヘッドライト113の上方にメータ140が配置されていたため、カウリング112の形状に制約を伴う他、メータ140の配置位置がライダーに近いために遠方を視認する際とメータ140を視認する際のライダーの目の焦点距離の差が大きく、ライダーの目が疲労の軽減が望まれていた。。
【0008】従って、本発明の目的とする処は、カウリング形状の自由度を高めて該カウリングを空気抵抗の小さな形状とすることができるとともに、ライダーの目の疲労を軽減することができる自動二輪車を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車体フレームのヘッドパイプの左右両側にフロントフォークを配し、同車体フレームのヘッドパイプから斜め後下方に延出するメインフレーム部を有し、該メインフレーム部の上方に燃料タンクを配し、ハンドルの前方を含む車体前方を覆うカウリングの前面にヘッドライトを配して構成される自動二輪車において、前記ヘッドライトを複数設け、各ヘッドライトの間にヘッドライトの縦寸法以上の間隔を設けたことを特徴とする。
【0010】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、隣接する2つのヘッドライトの間に走行風導入口を開口せしめたことを特徴とする。
【0011】請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記走行風導入口を車幅方向中央に開口せしめ、該走行風導入口から取り入れられた走行風を走行風導入通路を経てエアクリーナ、ラジエータ又はオイルクーラに導くよう構成したことを特徴とする。
【0012】請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明において、隣接する2つのヘッドライトのボディの間にメータを配設したことを特徴とする。
【0013】従って、請求項1記載の発明によれば、ヘッドライトを複数設けて各ヘッドライトの間に該ヘッドライトの縦寸法以上の間隔を設けたため、発熱源である各ヘッドライトの放熱性が高められる。
【0014】請求項2記載の発明によれば、走行風圧の最も高い車体前面の隣接する2つのヘッドライトの間に走行風導入口を開口せしめたため、温度の低い走行風が走行風導入口から車体内部に効率良く導入される。
【0015】請求項3記載の発明によれば、走行風導入口から導入された温度の低い走行風がエアクリーナ、ラジエータ又はオイルクーラの冷却に有効に利用される。
【0016】請求項4記載の発明によれば、隣接する2つのヘッドライトのボディの間にメータが配設されるため、該メータの設置位置が従来よりも低くなってカウリング形状の自由度が高められ、該カウリングを空気抵抗の小さな理想的な形状とすることができるとともに、メータの位置が車体前方に寄ってライダーから遠ざかるために遠方を視認する際とメータを視認する際のライダーの目の焦点距離の差が小さく抑えられてライダーの目の疲労が軽減される。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】<実施の形態1>図1は本発明の実施の形態1に係る自動二輪車の側面図、図2は同自動二輪車の正面図、図3は同自動二輪車のヘッドパイプ周りの破断正面図、図4は走行風過給システムの構成を示す自動二輪車前部の模式的平断面図、図5は同自動二輪車の車体フレームの模式的側断面図、図6は図4のA部拡大詳細図である。
【0019】先ず、図1及び図2に示す自動二輪車1の概略構成を説明すると、図中、2は矩形断面を有する中空状の車体フレームであって、該車体フレーム2の前方の部位にはヘッドパイプ3が一体に形成されている。そして、図3に示すように、ヘッドパイプ3にはパイプ状のステアリングシャフト4が挿通しており、該ステアリングシャフト4の上下はベアリング5,6によってヘッドパイプ3に回動自在に支持されている。
【0020】而して、上記ステアリングシャフト4のヘッドパイプ3から突出する上下端部にはトップブリッジ7及びボトムブリッジ8を介してフロントフォーク9の上部が支持されており、図1に示すように、該フロントフォーク9の下端部には前輪10が回転自在に軸支されている。尚、フロントフォーク9の上端部には、図1に示すハンドル11が結着されている。
【0021】ところで、前記メインフレーム2は、図4に示すように、ヘッドパイプ3から左右に分岐して車体後方に向かって斜め下方に延出する左右一対のメインフレーム部2aと、ヘッドパイプ5から車幅方向中央を車体前方に向かって延出する単一のエアダクト部2bを一体に有しており、エアダクト部2bはカウリング12の前面中央に開口している。尚、車体フレーム2のメインフレーム部2a内のヘッドパイプ3の後方には縦リブ2cが設けられており、この縦リブ2cによって車体フレーム2のヘッドパイプ3周りの剛性が高められる。
【0022】而して、本実施の形態に係る自動二輪車1においては、図2に示すように、車体前面の前記カウリング12の左右には2つのヘッドライト13が該ヘッドライト13の縦寸法H以上の所定の間隔Bを隔てて並設され、各ヘッドライト13のボディ13aは各々別体に構成されており、これらのボディ13aも所定の間隔を設けて配置されている。そして、カウリング12の左右のヘッドライト13で挟まれる空間に前記メインフレーム2のエアダクト部2bの前端が開口している。尚、図1において、40はメータである。
【0023】一方、図1に示すように、車体フレーム2の各メインフレーム部2aの端部には中空状のリヤアームブラケット14が結着されており、各リヤアームブラケット14の底部には、図5に示すように、水抜き孔15が開口している。
【0024】更に、図1に示すように、車体フレーム2のメインフレーム部2aの下方であって、且つ、車体中央下部には、水冷4サイクルの並列4気筒エンジン16が搭載されており、該エンジン16の前方にはラジエータ17が、上方には燃料タンク18がそれぞれ配設され、該燃料タンク18の後方にはシート19が配設されている。
【0025】又、左右一対の前記リヤアームブラケット14にはリヤアーム20の前端部がピボットシャフト21によって上下に揺動自在に枢着されており、該リヤアーム20の後端部には後輪22が回転自在に軸支されている。そして、リヤアーム20とこれに軸支された後輪22はリヤクッション23を介して車体側に懸架されている。尚、後輪22に結着されたホイールスプロケット24とミッションケース25の出力軸26に結着された小径のドライブスプロケット27との間には無端状のチェーン28が巻装されている。
【0026】而して、本実施の形態に係る自動二輪車1は走行風過給システムを備えるものであって、該走行風過給システムの一部は車体フレーム2によって構成されている。即ち、本実施の形態においては、車体フレーム2の内部が走行風導入通路を構成しており、図4及び図5に示すように、車体フレーム2の左右一対のメインフレーム部2aの内側壁の相対向する部位には円形の走行風排出口29が形成されている。
【0027】他方、前記エンジン16には、図4に示すように、4つの気筒16aが横方向(車幅方向)に並設されており、各気筒16aにはキャブレタ30がそれぞれ接続されている。そして、エンジン16の上方にはエアクリーナ31が配設されており、このエアクリーナ31には前記キャブレタ30がそれぞれ接続されている。又、このエアクリーナ31の前部左右にはファンネル31aが突設されており、各ファンネル31aは車体フレーム2のメインフレーム部2aに形成された前記走行風排出口29を貫通して車体フレーム2内の走行風導入通路に開口している。尚、図1に示すように、エンジン16の各気筒16aからは排気管32が導出しており、その端部にはマフラー33が接続されている。
【0028】ここで、エアクリーナ31の車体フレーム2への組付構造の詳細を図6に示すが、本実施の形態においては、前記ファンネル31aはエアクリーナ31とは別体に構成され、これは車体フレーム2に予め組み込まれている。そして、上下に2分割されたエアクリーナ31に形成されたフランジ部31bでファンネル31aを挟み込むようにしてフランジ部31bを締着することによって、エアクリーナ31がファンネル31aを介して車体フレーム2に組み付けられる。
【0029】ところで、本実施の形態に係る走行風過給システムにおいては、車体フレーム2内に形成される走行風導入通路の途中に水切り手段が設けられている。即ち、図4及び図5に示すように、車体フレーム2のエアダクト部2b内底部のヘッドパイプ3よりも上流側位置には高さの低い衝立リブ34が全幅に亘って突設されるとともに、メインフレーム部2a内の壁面であって、且つ、前記走行風排出口29が開口する部位近傍の上流側には邪魔板状の衝立リブ35がファンネル31aの開口部を覆い隠すように斜めに突設されており、これらの衝立リブ34,35によって水切り手段が構成されている。
【0030】又、図5に示すように、車体フレーム2のメインフレーム部2a内のファンネル31aが開口する部位よりも下流側には、金網又は樹脂ネットで構成されるメッシュ部材36が設けられている。
【0031】而して、自動二輪車1の走行時においては、車体前面に開口する車体フレーム2のエアダクト部2bから走行風が流入し、この走行風は図4及び図5に矢印にて示すように車体フレーム2内の走行風導入通路を車体後方に向かって流れ、ヘッドパイプ3の周囲を通って左右に分岐した後、各ファンネル31aからエアクリーナ31内に導入される。そして、エアクリーナ31内においては、走行風の動圧分が静圧に変換されるためにエアクリーナ31の内圧(静圧)が高められ、圧力の高い新気が各キャブレタ30に供給されて各キャブレタ30において圧力の高い混合気が形成されるため、エンジン16の各気筒16aには多量の混合気が供給(過給)されて各気筒16aにおける混合気の充填効率が高められ、この結果、エンジン16の出力向上が図られる。尚、本実施の形態では、温度の低い走行風を混合気の過給に利用したが、温度の低い走行風をラジエータ17或は不図示のオイルクーラー等に導いて冷却水やオイルの冷却に供するようにしても良い。
【0032】ところで、雨天等において雨水等の水滴が走行風と共に走行風導入通路に侵入しても、水滴は先ず衝立リブ34によって分離されて除去され、衝立リブ34を通過した水滴は更に衝立リブ35によって分離されて除去されるため、水滴がファンネル31aを通ってエアクリーナ31内に侵入することがなく、エアクリーナ31内には走行風(新気)のみが導入される。尚、衝立リブ34によって分離された水滴は車体フレーム12の前端開口部から排出され、衝立リブ35によって分離された水滴はリヤアームブラケット14の底部に開口する水抜き孔15から外部に排出される。
【0033】以上のように、本実施の形態においては、自動二輪車1に左右一対のヘッドライト13を設け、各ヘッドライト13のボディ13aを各々別体としてこれらの間に所定の間隔Bを設けたため、発熱源である各ヘッドライト13の放熱性が高められる。
【0034】又、本実施の形態においては、走行風圧の最も高い車体前面の隣接する2つのヘッドライト13の間に走行風導入口を構成するメインフレーム2のエアダクト部2bを開口せしめたため、最大風圧が有効に利用されて高い過給圧が確保され、エンジン16の充填効率が高められて該エンジン16の出力向上が図られる。尚、走行風過給システムを備えていない自動二輪車であっても、走行風導入口を本実施の形態のように走行風圧が最大となる位置に開口せしめれば、温度の低い(密度の高い)走行風が走行風導入口から効率良く取り入れられてキャブレタでの混合気形成に供されるため、エンジンの充填効率が高められてエンジン出力の向上が図られる。
【0035】<実施の形態2>次に、本発明の実施の形態2を図7及び図8に基づいて説明する。尚、図7は本発明の実施の形態2に係る自動二輪車の正面図、図8は同自動二輪車のヘッドライト周辺の構成を示す部分側面図であり、これらの図においては図1乃至図6に示したと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての説明は省略する。
【0036】本実施の形態においても、図7に示すように、車体前面のカウリング12の左右に2つのヘッドライト13が所定の間隔を隔てて並設され、各ヘッドライト13のボディ13aは各々別体に構成されており、これらのボディ13aも所定の間隔を設けて配置されている。そして、カウリング12の左右のヘッドライト13で挟まれる空間にはメインフレーム2のエアダクト部2bの前端が扁平な走行風導入口として開口している。又、カウリング12の内側の左右のヘッドライト13のボディ13aで囲まれる空間であって、メインフレーム2のエアダクト部2bの上方位置には2つのメータ40が並設されている。
【0037】而して、本実施の形態においては、隣接する左右のヘッドライト13のボディ13aの間にメータ40が配設されている、該メータ40の設置位置が従来よりも低くなってカウリング12の形状の自由度が高められ、該カウリング12を空気抵抗の小さな理想的な形状とすることができる。
【0038】又、メータ40の位置が車体前方に寄ってライダーから遠ざかるため、遠方を視認する際とメータ40を視認する際のライダーの目の焦点距離の差が小さく抑えられ、これによってライダーの目の疲労が軽減される。その他、本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様の効果が得られるこことは勿論である。
【0039】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、請求項1記載の発明によれば、ヘッドライトを複数設けて各ヘッドライトの間に該ヘッドライトの縦寸法以上の間隔を設けたため、発熱源である各ヘッドライトの放熱性が高められるという効果が得られる。
【0040】請求項2記載の発明によれば、走行風圧の最も高い車体前面の隣接する2つのヘッドライトの間に走行風導入口を開口せしめたため、温度の低い走行風が走行風導入口から車体内部に効率良く導入されるという効果が得られる。
【0041】請求項3記載の発明によれば、走行風導入口から導入された温度の低い走行風がエアクリーナ、ラジエータ又はオイルクーラの冷却に有効に利用されるという効果が得られる。
【0042】請求項4記載の発明によれば、隣接する2つのヘッドライトのボディの間にメータが配設されるため、該メータの設置位置が従来よりも低くなってカウリング形状の自由度が高められ、該カウリングを空気抵抗の小さな理想的な形状とすることができるとともに、メータの位置が車体前方に寄ってライダーから遠ざかるために遠方を視認する際とメータを視認する際のライダーの目の焦点距離の差が小さく抑えられてライダーの目の疲労が軽減されるという効果が得られる。
- 【公開番号】特開平10−35559
【公開日】平成10年(1998)2月10日
【発明の名称】自動二輪車
- 【出願番号】特願平8−199439
【出願日】平成8年(1996)7月29日
【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
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