自転車用発電機とその取り付け方法
- 【要約】
【課題】 車種に拘らず、容易に取り付けることのできる自転車用発電機を得る。
【解決手段】 発電機は、それぞれが円環状に構成されて互いに同心に組み合わされたステータ4とロータ3とを備える。上記ステータ4は、車軸1若しくはフォークに固定される。上記ロータ3は、、ハブ体2に対してその回転中心を上記車輪の回転中心に一致させた状態で、上記ハブ体2に固定される。これとともに、このロータ3の側面とこの側面に対向する上記ハブ体2の側面との間に、このハブ体2の回転力を上記ロータ3に伝達自在な弾性材製の伝達部材13を設ける。この伝達部材13は、ロータ3の側面及び上記ハブ体2の側面とに摩擦係合する。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 車軸に対して回転自在に設けたハブ体と、上記車軸を支持する一のフォークとの間に設置される、それぞれが円環状に構成されて互いに同心に組み合わされたステータとロータとを備えた自転車用発電機であって、上記ステータは、上記車軸若しくはフォークに固定されており、上記ロータは、その回転中心を上記車輪の回転中心に一致させた状態で、上記ハブ体に固定されており、且つ、上記ロータの側面とこの側面に対向する上記ハブ体の側面との間には、このハブ体の回転力を上記ロータに伝達自在な弾性材製の伝達部材を、上記ロータの側面及び上記ハブ体の側面とに摩擦係合する状態で設けて成る、自転車用発電機。
【請求項2】 ハブ体に固定の部材とロータとの間に、上記ハブ体の回転力をロータに伝達自在な補助伝達部材を設け、弾性材製の伝達部材と補助伝達部材とにより、上記ハブ体の回転力を上記ロータに伝達自在として成る、請求項1に記載の自転車用発電機。
【請求項3】 ロータと弾性材製の伝達部材との間に、対向する部材の側面に摩擦係合するスペーサを設けて成る、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の自転車用発電機。
【請求項4】 それぞれが円環状に構成されて互いに同心に組み合わされたステータとロータとを備えた自転車用発電機を、車輪の中心部に位置する車軸に対して回転自在に設けたハブ体と、上記車軸を支持する一のフォークとの間に取り付ける、自転車用発電機の取り付け方法であって、上記ハブ体の回転力を上記ロータに伝達自在な弾性材製の伝達部材を、上記車軸に挿通した後、上記自転車用発電機をこの車軸に挿通し、上記ステータを上記車軸若しくはフォークに固定するとともに、上記ロータを上記伝達部材に摩擦係合させた状態で、上記ハブ体に固定する、自転車用発電機の取り付け方法。
【請求項5】 ロータのハブ体への固定とステータの車軸若しくはフォークへの固定とに加え、ハブ体に固定の部材とロータとの間に、上記ハブ体の回転力を上記ロータに伝達自在な補助伝達部材を組み込む、請求項4に記載の自転車用発電機の取り付け方法。
【請求項6】 ロータと弾性材製の伝達部材との間に、対向する部材の側面に摩擦係合するスペーサを設ける、請求項4乃至請求項5のいずれかに記載の自転車用発電機の取り付け方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の自転車用発電機とその取り付け方法は、自転車の車輪の回転力を利用して発電し、例えば照明装置等、自転車に付設した各種装置を駆動させるのに利用する自転車用発電機と、この自転車用発電機を自転車に取り付けるための取り付け方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】自転車に付設した照明装置等に電力を供給すべく、車輪の回転によって発電する自転車用発電機が広く普及している。このような自転車用発電機としては各種構造のものが存在するが、そのうち、車輪を支持する車軸部分に取り付けられる構造のものが、例えば特表昭63−502652号公報、或いは実公平1−23900号公報に記載されているように、従来から知られている。上記各公報のうち、特表昭63−502652号公報に記載された自転車用発電機は、コイルによって構成されるステータと、磁石によって構成されるロ−タとを軸受部材を介して組み合わせて成る。そして、上記ステータを自転車を構成する一のフォークに固定するとともに、上記ロータを自転車の車輪を構成するスポークに固定する。このため、自転車を運転すれば、車輪の回転に伴って上記ロータが回転し、このロータ及び上記ステータを含んで構成される発電機が作動する。尚、発電機自体の基本的な構造は、従来知られた発電機と同様である。
【0003】又、上記実公平1−23900号公報に記載された自転車用発電機は、ステータとロータとを軸受部材を介して組み合わせて成る発電機を、車輪の車軸部分に取り付けるもので、上記ステータをこの車軸に固定するとともに、上記ロータを、車軸に対する回転自在に設けられてスポークが固設されるハブ体に結合固定している。従って、この構造においても、自転車を運転すれば、ハブ体の回転に伴って上記ロータが回転し、発電することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した各公報に記載された自転車用発電機においては、それぞれ以下に述べるような不都合が存在する。すなわち、特表昭63−502652号に記載された構造の場合、ロータをスポークに固定するため、取り付け強度に難がある。すなわち、上記スポークは細い線状であるため、このようなスポークに上記ロータを固定した場合、耐久性の向上を図れない。一方、上記実公平1−23900号公報に記載された構造の場合、ロータをハブ体に固定するため、上述のような取り付け強度に関する不都合はないが、車種によっては、ロータとハブ体とがうまく固定されないといった不都合が生じる。すなわち、この構造の場合、発電機は、車輪を支持するためのフォークと上記ハブ体との間に取り付けるが、車種の違いに伴って一のフォークとハブ体との位置関係(間寸法等)は異なる。このため、車種によって発電機を構成するロータと上記ハブ体との位置関係にばらつきが生じ、著しい場合には、発電機を取り付けることができない。本発明の自転車用発電機とその取り付け方法は、上述した不都合をいずれも解消すべく、考えたものである。
【0005】
【課題を解決する為の手段】本発明の自転車用発電機とその取り付け方法のうち、請求項1に記載した自転車用発電機は、車軸に対して回転自在に設けたハブ体と、上記車軸を支持する一のフォークとの間に設置されるもので、前述した従来構造と同様、それぞれが円環状に構成されて互いに同心に組み合わされたステータとロータとを備える。特に、本発明の自転車用発電機においては、上記ステータは、上記車軸若しくはフォークに固定されており、上記ロータは、その回転中心を上記車輪の回転中心に一致させた状態で、上記ハブ体に固定されている。これとともに、上記ロータの側面とこの側面に対向する上記ハブ体の側面との間には、このハブ体の回転力を上記ロータに伝達自在な弾性材製の伝達部材を、上記ロータの側面及び上記ハブ体の側面とに摩擦係合する状態で設けている。
【0006】更に、必要に応じて、請求項2に記載したように、ハブ体に固定の部材とロータとの間に、ハブ体の回転力をロータに伝達する補助伝達部材を設け、弾性材製の伝達部材と補助伝達部材とにより、上記ハブ体の回転力を上記ロータに伝達自在としたり、請求項3に記載したように、ロータと弾性材製の伝達部材との間に、対向する部材の側面に摩擦係合するスペーサを設けることができる。
【0007】又、請求項4に記載した自転車用発電機の取り付け方法は、それぞれが円環状に構成されて互いに同心に組み合わされたステータとロータとを備た自転車用発電機を、車軸に対して回転自在に設けたハブ体と、車軸を支持する一のフォークとの間に取り付けるための自転車用発電機の取り付け方法に関する。このような本発明の自転車用発電機の取り付け方法においては、先ず、上記ハブ体の回転力を上記ロータに伝達自在な弾性材製の伝達部材を、上記車軸に挿通する。その後、上記自転車用発電機をこの車軸に挿通し、上記ステータを車軸若しくはフォークに固定するとともに、上記ロータを上記伝達部材に摩擦係合させた状態で、上記ハブ体に固定する。補助伝達部材を設ける場合(請求項5)は、これらステータ及びロータの固定作業とともに、この補助伝達部材の取り付け作業を行う。又、上記ロータと弾性材製の伝達部材との間に、対向する部材の側面に摩擦係合するスペーサを設ける(請求項6)場合は、上記弾性材製の伝達部材を車軸に挿通した後、所望枚数のスペーサを、車軸に挿通する。
【0008】
【作用】上述した本発明の取り付け方法により取り付けられる、本発明の自転車用発電機が、この発電機を取り付けた自転車を運転することに伴って発電する際の作用自体は、前述した従来知られた構造の場合と同様である。特に、本発明に係る自転車用発電機においては、ロータとハブ体との間に、このハブ体の回転力をロータに伝達自在な弾性材製の伝達部材を設けているため、車種の違い等に起因して、上記ハブ体とフォークとの間寸法にばらつきがあっても、上記弾性材製の伝達部材が圧縮することにより、上記ばらつきを吸収する。従って、異なる車種に対しても、本発明の自転車用発電機を容易に組み込むことができる。又、上記ロータは、ハブ体に固定されるため、取り付け強度に不安はない。更に、自転車の運転中に、衝撃等により車輪に振動が生じた場合でも、この振動は上記弾性材製の伝達部材に吸収されるため、このような振動が発電機自体にまで伝達されにくい。この結果、発電機の耐久性が向上する。
【0009】尚、自転車の走行状態等によっては上記弾性材製の伝達部材の圧縮量が小さくなる等により、ハブ体の回転力が上記ロータに充分に伝わらなくなる場合が考えられる。このような場合に対処すべく、補助伝達部材を設けることもできる。補助伝達部材を設けた場合、上記ハブ体の回転力を、上記弾性材製の伝達部材と上記補助伝達部材との協働によって確実に伝達できるようになる。又、上記ハブ体とフォークとの間寸法が著しく大きい場合、弾性材製の伝達部材とロータとの間に所望数のスペーサを介在させることにより対処できる。尚、このような本発明の自転車用発電機は、工場等で自転車を組み立てる際においては勿論、組み立てられた自転車に後から取り付けること(いわゆる、外付け或いは後付け)も、容易に行なえる。本発明に係る取付け方法は、このような外付けを行なう場合を対象にしている。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の自転車用発電機の実施の態様の第1例を示している。本発明に係る自転車用発電機は、自転車を構成する車軸1を支持するための1対のフォーク(図示せず)のうちの一方のフォークと、この車軸1に回転自在に支持された、車輪を構成するハブ体2との間に設けられる。このような本発明の自転車用発電機は、円環状のロータ3の内径側に、やはり円環状のステータ4を組み込むことで構成されている。すなわち、一端側(図1の左端側)が開口する有底円筒状で、中心部に上記車軸1を挿通する孔5を設けたロータ用ケース6の内周面に、円環状の磁石7を固定することにより、ロータ3を構成している。該ロータ3は、車軸1に対して回転自在とされており、上記孔5の少なくとも内周面を、ポリアミド樹脂等の滑り易い合成樹脂等によって造ることにより、滑り軸受けを構成しても良い。
【0011】またこのロータ3は、その回転中心を上記車軸1の回転中心に一致させた状態で上記ハブ体2に対して固定されている。特に本発明の自転車用発電機においては、上記ロータ3の側面(図1の右側面)とこの側面に対向する上記ハブ体2の側面(図1の左側面)との間にハブ体2の回転力を上記ロータ3に伝達させるための弾性力を有する伝達部材13が介在されており、上記ロータ3の側面及び上記ハブ体2の側面とに対して摩擦係合する状態とされている。具体的には、伝達部材13をその中心に孔14を有する円環状に形成し、この中心孔14に車軸1を挿通した状態で、その一端面(図1の右側面)を上記ハブ体2の一端面(図1の左側面)に設けたフランジ部15に当接させ、他端面(図1の左側面)をロータケース6の底面(側面)に当接させている。ちなみに伝達部材13を構成する伝達部材としては、ノーマルブタンジェンコム(NBR)等のゴム、或いはスポンジ部材などを使用できる。
【0012】一方、ステータ4はコイル10とコイル10を内包する金属性ヨーク9とから構成されている。そして上記ステータ4の金属性ヨーク9の中心には車軸1が挿通される孔11形成されている。このステータ4は車軸1に対して固定されているが、これらについては後に詳しく説明する。また、ロータ3とステータ4との間には複数個のベヤリング8が介在しており、ロータ3のステータ4に対する回転を潤滑にさせる役割を果たしている。具体的には、上記ベヤリング8は金属性のヨーク9に対して圧入されて一体化されたステータ側ベヤリングカップ9aとロータ用ケース6に対して圧入して一体化されたロータ側ベヤリングカップ6aとの間に介在するように構成されている。
【0013】以上本発明の発電機を構成する各部材について説明したが、図1に示すこれらを自転車に対して取り付けた状態について簡単に補足説明する。同図に示すように、車軸1には伝達部材13、発電機(ロータ3及びステータ4)及びホーク1aが順に挿通しており、車軸1の先端にはナット12が締結さている。よって、発電機と伝達部材13とホーク1aとはナット12とハブ体2のフランジ部15とによって強く挟持された状態とされている。これにより、ステータ4はホーク1aに対して一体固定され、ステータ4に対して回転自在であるロータ3は伝達部材13及びハブ2に対して一体化される。
【0014】上述のように構成される本発明の自転車用発電機によって発電する際の作用自体は、前述したような従来知られた自転車用発電機と同様である。特に、本発明に係る自転車用発電機においては、ロータ3とハブ体2との間に、このハブ体2の回転力をロータ3に伝達自在な弾性材製の伝達部材13を設けているため、車種の違い等に起因して、上記ハブ体2とフォークとの間寸法にばらつきがあっても、上記弾性材製の伝達部材13が圧縮することにより、上記ばらつきを吸収する。従って、異なる車種に対しても、本発明の自転車用発電機を容易に組み込むことができる。特に上述した第1実施例の場合、ロータ3とステータ4との間にベヤリング8を設けているが、ベヤリング8を適切に機能させるためにはロータ3とステータ4の位置関係を所要の位置関係に保った方がよい(車種が異なってもロータ3とステータ4の位置関係は変えない方が良い)ので、その観点からも伝達部材13によるばらつきの吸収は有効である。上記ロータ3は、ハブ体2に固定されるため、取り付け強度が不足することはない。
【0015】更に、上述のように構成される本発明の自転車用発電機の場合、運転中に衝撃等により車輪に振動が生じた場合でも、上記弾性材製の伝達部材13が、このような振動を吸収する。すなわち、自転車の運転中には、衝撃等により図1に矢印Aで示す方向の振動が生じる場合がある。本発明構造の場合、このような振動が生じても、上記伝達部材13が吸収するため、上記振動が発電機本体にまで伝わりにくい。このため、発電機の耐久性が向上する。
【0016】次に、図2に示す、本発明の実施の形態の第2例について説明する。本例の構造は、ハブ体2とフォーク(図示せず)との間寸法が大きい車種に、本発明の発電機を取付ける場合に適用した例を示している。すなわち、上述した弾性材製の伝達部材13と、発電機を構成するロータ3との間に、所望数(図示の例の場合、2個)のスペーサ16を設けている。
【0017】上記スペーサ16は、図3に示すように、円環状で、その一面(図3(A)の表面、図3(B)の左面)側に、円周方向等間隔に複数の(図示の例の場合、3個の)凹部17を設けるとともに、その他面(図3(C)の表面、図3(B)の右面)側で、上記凹部17形成位置に整合する位置に、上記凹部17とほぼ同径或いはやや小径の凸部18を設けている。このようなスペーサ16は、例えば合成樹脂の射出成形により造ることができる。
【0018】このようなスペーサ16を介在させる場合、図2に示すように、スペーサ16の凸部18形成側を上記伝達部材13に対向させた状態で設ける。従って、上記ロックナット12を緊締した状態では、ハブ体2側のスペーサ16の凸部18は、上記伝達部材13に食い込んだ状態となるとともに、ロータ3側のスペーサ16の凸部18は、ハブ体2側のスペーサ16の凹部17に嵌入する。又、ロータ3側のスペーサ16の端面と上記ロータ3とは、上記ロックナット12の緊締により、摩擦係合する。この結果、上記ハブ体2の回転が、伝達部材13及びスペーサ16を介して、上記ロータ3に伝達される。尚、上記ロータ用ケース6の端面に、スペーサ16に設ける凸部18と同様の凸部を、上記凹部17に整合するように形成しておき、このロータ用ケース6の凸部とスペーサ16の凹部17とを係合させるように構成することもできる。ロータ用ケース6は、このスペーサ16と同様、合成樹脂の射出成形等により造れるため、このような凸部を一体形成することは、容易に行なえる。その他の構成並びに作用については、上述した第1例の場合と同様である。
【0019】次に、図4は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の構造の場合、前述した第1例の構造に加えて、補助伝達部材19を設けている。すなわち、図4(A)に示すように、ロータ3を構成するロータ用ケース6の端面の一部に、車輪を構成するスポーク20の内径部分に対向するように係合突部21を固定する。この係合突部21は、その基端部(図4(A)の下端部)をロータ用ケース6に固定(ねじ止め)した腕部22の先端部に突片23を形成して成る。一方、上記スポーク20のうち、互いに隣接するスポーク20の間部分に、図4(A)(B)に示すような係合受部24を固定している。上記スポークがハブ体に固定の部材である。この係合受部24は、金属薄板24の中間部にゴム部材26を外嵌することにより構成されており、その中間部に上記係合突部21の突片23を嵌入自在な通孔27を設けている。この通孔27に代えて凹部を形成しても良い。又、この係合受部24の両端部には透孔28を形成している。このような係合受部24を、上記隣接するスポーク20間に固定する場合、上記ゴム部材26を圧縮させつつ、このスポーク20間に嵌め込む。更に、上記係合突部21の腕部22に形成した透孔(図示せず)と、上記係合受部24に形成した透孔28とを整合させ、これら各透孔を挿通させたビスにナットを螺合させることにより、固定する。
【0020】このように、係合突部21と係合受部24とにより構成される補助伝達部材19を設けることにより、上記ハブ体2の回転は、弾性材製の伝達部材13とこの補助伝達部材19とによって伝達される。その他の構成並びに作用は、前述した第1例の場合と同様である。
【0021】尚、このような補助伝達部材19を設けるのは、以下のような理由による。すなわち、上記弾性材製の伝達部材13によるハブ体2の回転力の伝達は、圧縮された伝達部材13の反発力に基づいて、この伝達部材13とロータ3とが一体化されて行なわれる。回転力の伝達を確実に行なえるようにするためには、上記反発力を大きくすれば良く、このためには、伝達部材13の圧縮量を大きくしたり、或いは伝達部材13を硬い弾性材により造ることが効果がある。しかしながら、上記反発力をいたずらに増大させた場合、ロータの回転軸に相当する孔5に過大な負担が加わるため、好ましくない。従って、上記反発力は、必要最小限となるよう調整する必要がある。しかしながら、上記反発力を必要最小限となるよう調整した場合、自転車の走行状態等の各種条件によっては、上記反発力が不足する事態が生じることも考えられる。このような場合に対処すべく、上記補助伝達部材19を設け、この補助伝達部材19によっても上記ハブ体2の回転力を上記ロータ3に伝達自在とする。
【0022】尚、このような補助伝達部材19を設けない構造の場合、前記実公平1−23900号公報に記載された、ロータ3とハブ体2とを直接連結固定した構造に比べ、ハブ体2の回転力を伝達する伝達部材13とロータ3との結合強度は小さい(勿論、実用上、何らかの支障が生じることはない)。これに対して、本例の構造とすれば、ロータ3とハブ体2との連結強度が向上し、回転力伝達の確実性、安定性が向上する。
【0023】尚、図5に示すように、ロータ3に突起29を設けるとともに、この突起29をスポーク20に係合させることにより、ハブ体2の回転力を伝達する技術が、例えば、特開昭63−502562号公報に記載されている。このように、ハブ体2の回転力を、単に上記スポーク20に係合する突起29により行なう場合、ロータ3とステータ4との間に生じる吸引力に基づくコギングの影響を受けて車輪から著しい振動、騒音が発生する。又、上記突起29に断続的な剪断力が加わるため、強度上の信頼性に乏しい。
【0024】これに対して本例の構造の場合、回転力の伝達は、主に弾性材製の伝達部材13が行ない、上記補助伝達部材19による回転力の伝達は補助的なものである。従って、上記振動、騒音の発生、強度上の信頼性の欠如は、解消されている。次に、図6は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合、隣接するスポーク20の間に、係合突部21aを設けるとともに、ロータ3に、1対の板片30から成る係合受部24aを設けることにより、補助伝達部材19aを構成している。補助伝達部材19aを図示のように構成した以外の構成並びに作用については、上述した第3例の場合と同様である。
【0025】次に、図7は、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合、ロータ3を構成するロータ用ケース6の底面に、図7(B)に示すような、略王字状(「王」なる文字を横転させた如き形状)の突片23bを形成し、この突片23bに、ゴム部材31を外嵌することにより、係合突部21bを形成している。そして、この係合突部21bを、図7(A)(B)に示すように、隣接するスポーク20の間に嵌合させている。このように補助伝達部材19bを構成している以外の構成並びに作用については、前述した第3例の場合と同様である。
【0026】次に、図8は、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合、補助伝達部材19cを、図8(A)に示すように、1対の板片32の基端部(図8の)下端部)同士を上記ロータ用ケース6の底面に固定するとともに、これら1対の板片32の先端部(図8の上端部)を、それぞれ隣接するスポーク20に、固定している。これら各固定方法は、図示のように、小ねじとナットとを用いてねじ止めしたり、嵌着手段による等、従来知られた各種固定方法を採用する。
【0027】特に、本例の構造の場合、上記板片32を図8(A)に示すように、クランク状に曲げ形成することにより、ハブ体2とロータ3との間寸法に拘らず固定することができる。その他の構成並びに作用については、前述した第2例及び第3例の場合と同様である。
【0028】次に、図9は、本発明の実施の形態の第7例を示している。本例の場合、ロータ3を構成するロータ用ケース6の底面に、図9(A)(B)に示すような、入口側が狭く、奥側が広い係合片33を固定するとともに、この係合片33に、その両端部をそれぞれ隣接するスポーク20に係合させた、図9(C)に示すような連結部材34を係合させている。この連結部材34は、金属製の線材を略U字形に加工するとともに、この線材の両端部を上記スポーク20に係合自在な形状に加工することにより、図9(C)に示すように構成している。これらの加工は、プレス等により、容易に行なえる。又、上記連結部材34を上記係合片33に係合させる場合、上記係合片33の入口部分を弾性変形させつつ、この連結部材34を押し込むことで行なう。上記両端部に形成する、スポーク20と係合自在な形状も、上記係合片33と同様構成とし、上記スポーク20と係合自在とする。これら係合片33と連結部材34とが、補助伝達部材19dを構成する。その他の構成並びに作用については、前述した第3例の場合と同様である。
【0029】次に、上述した本発明に係る自転車用発電機を、自転車に後付けする場合について、簡単に説明する。本発明に係る発電機を自転車に取り付ける場合、先ず、ロックナット12を外し、1対のフォークのうちの発電機取り付け側のフォークを外す。次いで、弾性材製の伝達部材13を車軸1に嵌挿する。スペーサ16を介在させる場合は、上記伝達部材13を嵌挿後、所望数のスペーサ16を同じく車軸1に嵌挿する。そして、上記自転車用発電機を構成するロータ用ケース6の孔5と、ステータ用ヨーク9の中心孔11とを、この車軸1に挿通する。上記補助伝達部材を設ける場合には、この状態でこれら補助伝達部材を、上記ロータ用ケース6及びスポーク20に固定する。補助伝達部材の固定を終えた場合、及びこのような補助伝達部材を設けない場合には、次いで、取り外しておいたフォークを上記車軸1に挿通し、更にロックナット12を、この車軸1の先端部に形成したおねじ部に螺合し、このロックナット12を緊締する。この緊締作業により、上記伝達部材13が圧縮され、ハブ体2の回転力を伝達自在となる。
【0030】尚、このような取り付け作業を容易化するため、ロータ用ケース6と、スペーサ16と、伝達部材13とを、それぞれ図10に示すように構成することもできる。すなわち、ロータ用ケース6の一面側(図10の上面側)の円周方向複数箇所に、等間隔に係合凹部35を形成する。又、スペーサ16と伝達部材13とに、それぞれ直径方向外方に突出する係合突部36を形成する。これら各部材6、16、13を自転車に取り付ける場合には、予め、上記係合凹部35にスペーサ16及び伝達部材13の係合突部36を係合させることで一体化しておく。前述したように、スペーサ16と伝達部材13とには、軸方向に亙る凹部17及び凸部18が形成されているが、これらも互いに係合させておく。このように各部材13、16、6を予め一体化しておくことにより、取り付け作業が著しく容易に行なえるようになる。更に、上記スペーサ16として、厚さ寸法が異なる複数種類(例えば3種類)のものを設け、厚さ調整を細かく行なうようにもできる。この場合には、上記係合突部36の形状をスペーサ16の種類ごとに変えておくとともに、上記係合凹部35の形状も、これに対応して複数種類設け、各形状の係合凹部35について、それぞれ円周方向等間隔に形成することができる。そして、選択したスペーサ16の係合突部36は、所定の係合凹部35にのみ係合するようにすれば、取り付け作業を容易且つ確実に行なえる。尚、上記スペーサ16を単一の厚さのもののみ製造し、これらを適宜の個数だけ組み合わせるようにすることもできる。この場合には、伝達部材13の圧縮量が最適値(必要最小限の圧縮量)から若干ずれる場合がある。このようにスペーサn枚とn+1枚の間に最適値がある場合には、係合凹部35の底(図10の斜線部)の深さを3段階に設定しておき、最適な深さをもつ係合凹部35に係合突部を嵌め合わせることで対応が可能となる。又、図10に示す伝達部材13の場合、ハブ体2側(図10の上側)を弾性材により造り、ロータ側(図10の下側)を合成樹脂等により造ることができる。
【0031】尚、このような取り付け作業を行なうに際し、予め、ハブ体2のフランジ状部15から、車軸1の先端部でロックナット12が進出する位置までの寸法を測定し、この寸法によって上記スペーサ16の種類或いは個数を選択する。これにより、上記伝達部材13の圧縮量を最適な(或いは最適に近い)ものにできる。尚、上述した各例においては、ステータ4を車軸1に固定した例について説明しているが、これに代えてスポーク20に固定するように構成することもできる。
【0032】
【発明の効果】本発明の自転車用発電機とその取り付け方法は、上述のように構成され作用するため、車種の違い等に起因して、上記ハブ体とフォークとの間寸法にばらつきがあっても、自転車用発電機を容易に組み込むことができる。上記ロータは、ハブ体に固定されるため、取り付け強度に不安はない。更に、自転車の運転中に、衝撃等により車輪に振動が生じた場合でも、この振動は上記弾性材製の伝達部材に吸収されるため、このような振動が発電機自体にまで伝達されがたい。この結果、発電機の耐久性が向上する。
- 【公開番号】特開平10−35560
【公開日】平成10年(1998)2月10日
【発明の名称】自転車用発電機とその取り付け方法
- 【出願番号】特願平8−192561
【出願日】平成8年(1996)7月22日
【出願人】
【識別番号】591043569
【氏名又は名称】パイオニア精密株式会社
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 信淳
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