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自動二輪車の風防スクリーン
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- 【要約】
【課題】 自動二輪車の風防スクリーンを、身長の異なる広い範囲のライダーに対して、その何れにおいても、高速走行時における風圧からの保護を効果的に行うことができ、且つ、耳元騒音の低減を図ることができて、走行時の快適性を向上させることができるものとする。
【解決手段】 車体の上部前端付近に配設されている風防スクリーン18の上端部近傍に、複数の導風孔18aを貫通する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体の上部前端付近に配設されている風防スクリーンの上端部近傍に、複数の導風孔が貫通されていることを特徴とする自動二輪車の風防スクリーン。
【請求項2】 複数の導風孔のそれぞれが、上下方向で段差の無いスクリーンの面に対して貫通されていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の風防スクリーン。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行中のライダーを前方からの風圧から保護するために、車体の上方前端付近に配設されている、自動二輪車の風防スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】高速タイプの自動二輪車では、車体上部の前端部に設けられたフロントカウルの前側上部から斜上後方に向かって風防スクリーンを一体的に延出させることで、走行中に前方から受ける風を風防スクリーンの前面に沿って導き、ライダーのヘルメット付近に向かって流すことによって、ライダーを前方からの風から保護して風圧によるライダーの疲労を防ぐということが従来から一般的に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような風防スクリーンを備えた自動二輪車では、該スクリーンの前面に沿って導かれた風の流域がヘルメット付近を通ることにより、高速走行時にはライダーの耳元での流体騒音が非常に大きなものとなって、走行時の快適性が損なわれるため、その改善が望まれている。
【0004】ところが、風防スクリーンにより導かれた風の流域がライダーの耳元を通らないように、該スクリーンを斜上後方に向かって更に大きく延ばすと、該スクリーンがライダーの近くまで延びて煩わしいものとなり、また、該スクリーンを単に上方に延ばしてその上端を高くし過ぎると、高速走行時には風の巻き込みによる乱流が生じて不都合なものとなる。
【0005】一方、風防スクリーンを僅かに斜上後方に延ばしただけでは、身長の異なる(スクリーン先端からの耳の位置が異なる)それぞれのライダーの全てに対して改善効果を期待することはできず、例えば、ある身長のライダーに対して耳元騒音を低減できるようにした場合に、身長の異なる他のライダーにとっては却って耳元騒音が増大するというような問題を生じることとなる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような課題を解決するために、上記の請求項1に記載したように、自動二輪車の風防スクリーンにおいて、車体の上部前端付近に配設されている風防スクリーンの上端部近傍に、複数の導風孔が貫通されていることを特徴とするものである。
【0007】また、上記の請求項1に記載した自動二輪車の風防スクリーンにおいて、上記の請求項2に記載したように、複数の導風孔のそれぞれが、上下方向で段差の無いスクリーンの面に対して貫通されていることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の自動二輪車の風防スクリーンの実施形態について図面に基づいて説明する。
【0009】図1は、本発明の風防スクリーンを備えた自動二輪車の一例を示すもので、自動二輪車1には、その車体前部に、メインフレーム2の前端に固着されたヘッドパイプ(図示せず)によって、下端に前輪3を軸架したフロントフォーク4が、ハンドル5の操作により操向可能なように左右揺動自在に枢支されており、その車体後部に、メインフレーム2の後端から下方に延びる左右一対のリアアームブラケット6によって、後端に後輪7を軸架したリアアーム8が上下揺動自在に枢支されている。
【0010】自動二輪車1の車体中央の上部には、メインフレーム2に跨がって燃料タンク9が載置され、燃料タンク9の後方には、メインフレーム2の後部から後方に延びるシートフレーム(図示せず)上に載置された状態でシート10が設置されていて、シート10の下方両側から後方を覆うように、サイドカバー部分を一体的に形成したシートカウル11が設置されている。
【0011】また、燃料タンク9より下方の車体中央下部には、ヘッドパイプから後下方に延びるダウンチューブ12と、メインフレーム2と、リアアームブラケット6とに囲まれた状態でエンジン13が設置されており、エンジン13の前部から車体後方に向けて延ばされたエキゾーストパイプ14の後端にはマフラー15が接続されている。
【0012】そのような自動二輪車1の車体上部の前端には、ヘッドライト16を前側に露出させた状態で、フロントフォーク4の上方付近を前側と両側から覆うように、フロントカウル17が設置されており、このフロントカウル17の前側上部から斜上後方に向かって延びるような風防スクリーン18が、フロントカウル17に対して一体的に取り付けられている。
【0013】この風防スクリーン18は、それ自体によりライダーの前面を完全に覆うことで前方からの風を遮るような高さのものではなく、前方からの風を該スクリーン18の前面に沿って斜上後方に導くことにより、導かれた風の流れによってライダーの上半身を前方からの風圧から保護するものである。
【0014】図2は、そのような自動二輪車の風防スクリーン自体について、本実施形態の風防スクリーン18を従来の風防スクリーンと比較して示すもので、図(A)は本実施形態の風防スクリーン18を示し、図(B)は従来のスタンダードタイプの風防スクリーンを示している。
【0015】図2(A)に示すような本実施形態の風防スクリーン18では、図2(B)に示すようなスタンダードタイプの風防スクリーン20と比べて、一点鎖線で示した位置より上方の部分だけ、上下方向で段差なく平滑に連続した状態で大きく形成されている(なお、風防スクリーン20の幅方向で段差があっても差し支えない。)と共に、当該部分に、スクリーン18の板材を貫通するような導風孔18aが複数個形成されている。
【0016】そのような本実施形態の具体的な一実施例については、図2(B)に示したスタンダードタイプの風防スクリーン20の上端(先端)から下端(基部)までの長さが415mmであるのに対して、図2(A)に示したものでは、風防スクリーン18の上端から下端までの長さが560mmであり、該風防スクリーン18の上端部近傍(図中に一点鎖線で示した位置より上方の部分)に、孔径が20mmの導風孔18aが、4列で合計34個形成されている。
【0017】そして、図2(B)に示したスタンダードタイプの風防スクリーン20を自動二輪車1に配備した場合には、(身長175cmのライダーで)耳の位置からスクリーン先端までの水平距離が584mm,垂直距離が164mmとなるのに対して、図2(A)に示した風防スクリーン18を自動二輪車1に配備した場合には、(同じライダーで)耳の位置からスクリーン先端までの水平距離が500mm,垂直距離が70mmとなる。
【0018】図2(A)に示すような本実施形態の風防スクリーン18によれば、図3に示すように、スクリーン18の前面に沿った風の流れの一部が、各導風孔18aからスクリーン18の後側に導かれることにより、流速の境目がぼかされて流速低下域Xの幅が広がるため、身長の異なる(耳の位置の異なる)それぞれのライダーの何れに対しても、耳元騒音の低減を図ることが可能となる。
【0019】この点に関し、上記の風防スクリーン18の実施例について、比較例(風防スクリーン18自体の形状や大きさが全く同じで、その上端部近傍に導風孔18aを形成していないもの)と共に、身長の異なる3人のライダーA(身長179cm),B(身長170cm),C(身長166cm)に対して、スタンダードタイプの風防スクリーン20を使用した場合と比べた耳元騒音の増減の程度を、100km/hで実走行して計測した結果は下記の表1の通りである。
【0020】
【表1】【0021】上記の表1に示した計測結果から見ると、比較例の風防スクリーンでは、スタンダードタイプの風防スクリーン20と比べて、ライダーBやライダーCでは耳元騒音が低減している反面、ライダーAでは却って耳元騒音が増大しているのに対して、実施例の風防スクリーン18では、比較例の風防スクリーンに複数の導風孔18aを設けたという相違だけで、何れのライダーA,B,Cに対しても耳元騒音の低減効果が得られるものとなっている。
【0022】すなわち、既に述べたような、複数の導風孔18aを設けることで流速低下域の幅が広がるため、異なる身長のライダーに渡って広く耳元騒音の低減効果を得ることができるということが、上記の表1に示した計測結果から実証されているものと考えられる。
【0023】以上、本発明の自動二輪車の風防スクリーンの一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態において実施例として具体的に示したような構造にのみ限定されるものではなく、風防スクリーン18の大きさや、導風孔18aの径や個数など、適宜設計変更可能なものであることはいうまでもない。
【0024】
【発明の効果】以上説明したような本発明の自動二輪車の風防スクリーンによれば、身長の異なる広い範囲のライダーに対して、その何れにおいても、高速走行時における風圧からの保護を効果的に行うことができ、且つ、耳元騒音の低減を図ることができて、走行時の快適性を向上させることができる。
- 【公開番号】特開平10−35563
【公開日】平成10年(1998)2月10日
【発明の名称】自動二輪車の風防スクリーン
- 【出願番号】特願平8−214179
【出願日】平成8年(1996)7月25日
【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 允彦
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