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海藻種苗の増殖方法
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- 【要約】
【課題】環境変化に対する適応能力が大きく対病性にも優れ、生育管理が簡便であって、水深に対する適用範囲も広い海藻種苗を選択し、その海藻種苗に適合した、より確実で生産性のよい増殖方法を提供して、海中林の造成などに適合する良質の海藻種苗の大量供給を図る。
【解決手段】コンブ目コンブ科に属するツルアラメの親株から伸長した匍匐体の生長点を含む先端部分を垂直方向に切れ目を入れて複数に分割し、海水等に浸漬してそれらの分割部分を生長点として増殖する。コンブ目コンブ科に属するツルアラメの親株から伸長した匍匐体を適宜の部分から切断し、海水等に浸漬して前記匍匐体の切断部から新たな複数の匍匐体を出芽させることにより増殖する。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンブ目コンブ科に属するツルアラメの親株から伸長した匍匐体の生長点を含む先端部分を垂直方向に切れ目を入れて複数に分割し、海水等に浸漬してそれらの分割部分を生長点として増殖させることを特徴とする海藻種苗の増殖方法。
【請求項2】 コンブ目コンブ科に属するツルアラメの親株から伸長した匍匐体の生長点を含む先端部分を垂直方向に切れ目を入れて複数に分割して海水等に浸漬し、それらの分割部分が生長して葉状体が形成された後、切離して独立の種苗を形成することを特徴とする海藻種苗の増殖方法。
【請求項3】 コンブ目コンブ科に属するツルアラメの親株から伸長した匍匐体を適宜の部分から切断し、海水等に浸漬して前記匍匐体の切断部から新たな複数の匍匐体を出芽させることを特徴とする海藻種苗の増殖方法。
【請求項4】 コンブ目コンブ科に属するツルアラメの親株から伸長した匍匐体を適宜の部分から切断して海水等に浸漬し、その切断部から出芽した新たな匍匐体が生長して葉状体が形成された後、切離して独立の種苗を形成することを特徴とする海藻種苗の増殖方法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海藻種苗の増殖方法に関する。特に海藻類を中心とする海中林の造成において核となる種苗源として供給する場合に好適な海藻種苗の増殖方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、我国においては沿岸漁業の振興が重要な課題であり、魚貝、海藻の増殖及び養殖が図られている。しかるに沿岸部においては種々の原因によって藻場が消滅し、藻場を生活の場としていた魚貝類が激減する、いわゆる磯焼け現象が各地に拡大している。一般に海藻は比較的浅い海底の岩石上に着生、繁殖するが、磯焼け海域では岩石が石灰藻で覆われ、海藻が着生し難く生育状態がきわめてわるい。また、砂泥質の海域の場合には海藻が殆ど生育していない。したがって、このような磯焼け海域や砂泥海域などの藻場造りや、造成された海中林の維持管理には大量の海藻種苗の補給が必要である。しかしながら、従来のコンブやワカメなどの有用海藻の養殖ないし増殖は生殖細胞によるものであるため、生産効率や確実性の点で問題が多く、また種苗の種類としても、環境変化に対する適応能力や対病性、生育管理のし易さなどの点で、海中林造成用として必ずしも適当ではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のような従来の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、環境変化に対する適応能力が大きく対病性にも優れ、生育管理が簡便であって、水深に対する適用範囲も広い海藻種苗を選択し、その海藻種苗に適合した、より確実で生産性のよい増殖方法を提供することにより、海中林の造成などに適合する良質の海藻種苗の大量供給を図る点にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】幾多の実験によりコンブ目コンブ科に属するツルアラメは海中林造成用の海藻種苗として要求される前述の条件によく適合することを確認するとともに、その根系の一部が伸長して、あたかも高等植物におけるストロン(匍匐体)による栄養繁殖のごとく増殖することを確認した。本発明は、そのツルアラメの特性に着目して次の増殖方法を採用した。すなわち、請求項1の発明においては、ツルアラメの親株から伸長した匍匐体の生長点を含む先端部分を垂直方向に切れ目を入れて複数に分割し、海水等に浸漬してそれらの分割部分を生長点として増殖させるという増殖方法を採用した。なお、前記匍匐体の先端部分の分割部に増殖作用により葉状体が形成された場合には、その分割部をそのままの状態でまとめて用いることも可能であるが、請求項2の発明においては、その分割部から切離してそれぞれ独立の海藻種苗として用いるようにした。
【0005】さらに、実験を継続する中で、前記ツルアラメの匍匐体が何らかの外的要因によって切断された場合には、その切断部から新たに数本ないし十数本程度の複数の匍匐体が出芽し、しばらくしてそれらの新たな匍匐体から葉状体が形成されることが確認された。この現象は、おそらく、ツルアラメの匍匐体の断面の細胞が傷痍ホルモン様の物質を分泌し、その作用により生起される細胞分裂によるものと推測される。そして、新たに出芽した匍匐体の先端部にはやがて葉状器官と仮根部が形成され、葉状体を形成するとともに、さらに匍匐体として伸長を続けることになる。請求項3の発明においては、このツルアラメの特性を利用し、匍匐体を適宜部分から積極的に切断することにより増殖を図るという技術手段を採用した。なお、切断方法は特に限定されず、刃物を用いて切断しても、刃物等は用いずに折ることにより切断してもよい。なお、切断部から出芽した匍匐体の増殖作用により新たな葉状体が形成された場合には、そのまま種苗として用いることも可能であるが、請求項4の発明においては、匍匐体の部分から適宜の大きさの個体に切離してそれぞれ独立の海藻種苗として用いるようにした。
【0006】
【発明の実施の形態】請求項1及び2の本発明の実施に当っては、前記ツルアラメの親株の根部が伸長してその先端部分が膨らみ明らかに生長点の発達が行われつつある匍匐体を利用して行う。すなわち、ツルアラメは、図1の正面図及び図2の平面図に示したように、親株1の葉状体2の下部の仮根部3から一部が伸長して多数の匍匐体4を形成する性質を有する。また、その匍匐体4の先端部分には、やがて生長点5が形成される。生長点5の生長に伴い、匍匐体4の先端部分は、図示のように膨らみ、その下部には、将来の仮根の基である根生6が形成されるので、容易に識別することができる。そして、その後の通常の過程においては、生長点5の上部からその生長に伴って新たな葉状体が形成されるとともに、下部の前記根生6は仮根に生長し、横部から更に匍匐体が伸長することになる。
【0007】前記匍匐体4の先端部分が膨らんで生長点5が形成されたら、その生長部5を拡大して示した図3に示すように、将来的に葉状体、根部、匍匐体になるそれぞれの生長点を含むように、端部から匍匐体4に沿って垂直方向に3〜4個程度の切れ目7を入れ、海水等の水槽内などで養生する。この場合、用水としては、海水あるいは海水と同等に調製された塩水などが用いられ、海洋あるいは陸上の水槽内などにおいて養生されることになる。また、水槽内などは海中と同様の通常の自然環境を維持する程度で足り、水温の上昇やごみの除去に気を配る程度でよい。そして、所定の養生期間が経過すると、やがて前記切れ目7により分割された各部分が伸長し、あるいは分割した部分の組織が修復された後、それぞれ葉状体が形成される。この葉状体が適度に生長した場合には、その分割部をそのままの状態でまとめて海藻種苗として用いてもよいし、分割部から切離して複数の独立の海藻種苗として用いてもよい。また、分割された各部分から葉状体が形成された後も、引続きそのまま養生を継続して、必要に応じて更に以上の操作を繰返えすことによって増殖を図ることも可能である。なお、生長点部分の分割において切断された部分の周囲にできる癒傷組織の増殖や分化を促進するための手段としては、サイトカイニン、カイネチン、ジベレリン、インドール酢酸等の植物生長調整物質を用い、これらの溶液に分割した部分を浸す方法が好適である。
【0008】請求項3の発明は、図4及び図5に示したように、前記親株1の葉状体2の下部の仮根部3から一部が伸長して形成された匍匐体4の適宜の部分、例えば切断部8,9から切断することによって実施される。この場合、前述のように、その切断手段は特に限定されない。前記切断部8,9から切断された親株1は、前述の場合と同様に、適宜の海水等の水槽内などにおいて養生され、やがて図6に示すように切断部8,9から新たな匍匐体10が多数出芽する。そして、新たな匍匐体10は次第に生長し、その先端部にはやがて葉状器官及び仮根の基となる根生が形成され、葉状体が形成されることになる。その葉状体が適度に生長した場合には、更に前記匍匐体10の適宜の部分から切断して以上の操作を繰返すことにより継続的に増殖作業を実施ことができる。なお、以上の増殖操作の際、親株1として葉状体2を少なくとも1個以上有するものを用いれば、その葉状体2を介して光合成等による栄養補給が確実に行われるので、より効率的かつ確実な増殖作用を得ることができる。さらに、2個以上の葉状体2を有する場合には、その中間の匍匐根4を切断することにより、双方を親株1として用いることができる。
【0009】図7及び図8は以上の増殖方法をより具体的に示したものである。図中、11は海洋における海藻の養殖等において一般的に用いられている海藻保持用のロープで、本例では、図示のようにそのロープ11上にツルアラメの親株12,13を保持して海洋や水槽内で養生する手法が採用されている。図7に示すように、親株12は、前述の親株1と同様に、葉状体14の下方の仮根部15から伸長した匍匐体16の先端部分に生長点17が形成され、その部分が膨らんだ状態にある。また、親株13は、葉状体18の下方の仮根部19から伸長した匍匐体20の先端部分から葉状体21が形成された状態にある。このような状態において、本例では、それぞれ1個の葉状体14,18を残した状態で、匍匐体16は切断部22から、また匍匐体20は切断部23,24から切断している。この場合、切断により分離された前記葉状体21は独立の種苗として用いられる。図8は図7の状態から所定の養生期間を経過した状態を示したもので、前記切断部22〜24にはそれぞれ新たな匍匐体25〜27が出芽し、それらの先端部分に葉状体の幼体28〜30が形成された状態を示したものである。
【0010】以上のようにして増殖されたツルアラメの種苗は、海藻を中心とする海中林の造成用として用いられる海藻種苗として好適である。すなわち、ツルアラメは、環境変化に対する適応能力が大きく対病性にも優れ、水深が約200mの海域から数mの浅い海域に至る広い海域で生育し得ることが確認されており、したがって、海中林造成用の海藻種苗としてきわめて適合性がよい。また、水槽等での養生にも対応でき、特に成熟体の場合には水槽内において高密度状態での保存にも十分耐え、腐敗しにくいことが判明している。この性質は一般のアラメやカジメなどには見られないもので、大規模な海中林を形成するために必要な多量の海藻種苗を準備する上できわめて有効である。
【0011】前述の増殖方法により所定の養生期間が経過して、前記匍匐体4の先端部分に入れた切れ目7の部分あるいは匍匐体4の切断部8,9,22〜24に葉状体が形成され、その葉状体が適度に生長した場合には、更に適宜の大きさの個体に細かく分割し、あるいは、そのまま分割しないで、また必要に応じて更に海中等において養生した後、木片等の小片からなる担持基体などに固着して海藻種苗として提供することができる。この場合、担持基体への固着は、匍匐体4の部分を例えばステープルや結束バンド等を用いて固定することができるため作業がし易く、安定した固定状態が容易に得られる。そして、その担持基体を介してコンクリートブロック等の造成用の構造体に付設して海中に沈設した場合には、担持基体部分に仮根をしっかり張り、次第に前記構造物の表面に匍匐体を広げて増殖し、仮根をしっかりと張りながら生長していくため、藻体の保持状態がよく海中の海流や波浪により造成用構造物側から離脱することなく順調に生育する。
【0012】以上のようにツルアラメは海中林造成用の海藻種苗として優れた適合性を有するとともに、前述のように簡便な増殖方法によって、より確実かつ効率的に大量の海藻種苗を提供できるので、本増殖方法は海中林造成用の海藻種苗の増殖方法としてきわめて有効であるが、他の用途の海藻種苗の増殖方法として用いることも可能であることはいうまでもない。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)前記匍匐体の先端部分に切れ目を入れたり、匍匐体の適宜部分から切断するだけで、より確実な生産性のよい増殖結果が得られるので、海藻種苗の大量供給が可能である。しかも、ツルアラメはアラメやカジメなどの他の海藻種苗と比べて環境変化に対する適応能力が大きく対病性にも優れているので、生育管理がきわめて簡便である。
(2)ツルアラメは環境変化に対する適応能力が大きく、高密度状態での保存や運搬にも十分耐え得るので、良質の海藻種苗を大量に供給する場合にきわめて有効である。
(3)ツルアラメは、環境変化に対する適応能力が大きく、水深に対する適応能力がきわめて大きいので、特に海中林造成用の海藻種苗としての適合性がきわめてよい。しかも、仮根部や匍匐体を介して巻付けたり、ステープル等を用いて簡便に前記担持基体などの取付部に固着できるので、その固着作業がし易く安定した固着状態が容易に得られるとともに、海中に沈設された場合には、匍匐体を介して広範囲に仮根を張るので、海中の海流や波浪により離脱することなく良好な生育が得られる。
- 【公開番号】特開平10−42
【公開日】平成10年(1998)1月6日
【発明の名称】海藻種苗の増殖方法
【発明者】
【氏名】白木 靖美
【氏名】林 裕一
- 【出願番号】特願平8−227761
【出願日】平成8年(1996)8月10日
【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 英一
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