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減衰特性を有する磁性バネを備えた係数励振振動機構
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- 【要約】
【課題】 永久磁石を利用した正、0又は負の減衰特性を有する磁性バネと、この磁性バネを利用した非線形振動機構と係数励振振動機構を提供することにより、安価で簡素な構成の動特性制御系を実現すること。
【解決手段】 互いに離間する少なくとも二つの永久磁石80,82,84間の幾何学的寸法を変化させることにより0又は負の減衰特性を示す磁性バネと、弾性部材86に支承されたストッパ88とを、持続あるいは発散振動にエネルギを変換する構造内に設けた。所定値以下の加速度または振幅がストッパ88に加わると、弾性部材86の弾性変形により摩擦減衰を抑制し、その対向衝撃を利用して磁性バネの反発力不足を補償するとともに、除振性能を向上させた。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに離間する少なくとも二つの永久磁石間の幾何学的寸法を運動行程内機構あるいは外力により変化させることにより0又は負の減衰特性を示す磁性バネと、弾性部材に支承されたストッパとを、持続あるいは発散振動にエネルギを変換する構造内に設け、所定値以下の加速度または振幅が上記ストッパに加わると、上記弾性部材の弾性変形により摩擦減衰を抑制し、その対向衝撃を利用して上記磁性バネの反発力不足を補償するとともに、除振性能を向上させたことを特徴とする係数励振振動機構。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の永久磁石を有する磁性バネに関し、更に詳しくは、複数の永久磁石の反発力を利用した正、0又は負の減衰特性を有する磁性バネ、及び、該磁性バネを有し減衰機能構造を持たないが安定である非線形振動機構あるいは係数励振振動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、負の減衰特性を有する構造系は存在するが、永久磁石を利用して負の減衰特性を示すものはなかった。また、自動車用シートあるいは救急車用ベッドには、車体フロアから伝わる振動を抑制する除振ユニットが取り付けられており、この除振ユニットには例えば金属バネ、エアサスペンション、エアダンパ等が使用されている。最近では、自動車用シートにアクチュエータを取り付け、振動をアクティブ制御することにより着座感を向上したアクティブサスペンションシートも提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、金属バネ、エアサスペンション、エアダンパ等を使用した除振ユニットは、車体フロアから伝わる振動のうち4〜20Hzの振動の周波数を低下させて着座感あるいは使用感をさらに向上させることはできなかった。また、上記アクティブサスペンションシートは重たく高価であるばかりでなく、アクチュエータを常に作動させておく必要があり、アクチュエータをOFFにすると振動がアクチュエータを介して乗員に直接伝わり、着座感が損なわれるという問題があった。
【0004】本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、永久磁石を利用して正、0又は負の減衰特性を有する磁性バネを提供するとともに、この磁性バネを利用し減衰機能構造を持たないが安定である非線形振動機構あるいは係数励振振動機構を提供することにより、安価で簡素な構成の動特性制御系を実現することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、互いに離間する少なくとも二つの永久磁石間の幾何学的寸法を運動行程内機構あるいは外力により変化させることにより0又は負の減衰特性を示す磁性バネと、弾性部材に支承されたストッパとを、持続あるいは発散振動にエネルギを変換する構造内に設け、所定値以下の加速度または振幅が上記ストッパに加わると、上記弾性部材の弾性変形により摩擦減衰を抑制し、その対向衝撃を利用して上記磁性バネの反発力不足を補償するとともに、除振性能を向上させたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。互いに離間し同磁極を対向させた少なくとも二つの永久磁石を有する磁性バネ構造体の場合、離間した永久磁石同士は非接触のため、構造体自体の摩擦損失等を無視すると、その静特性は入力時(行き)と同一ライン上を非線形で出力され(帰り)、さらに、非接触対偶特有の自由度、浮上制御系の不安定度を利用することにより、小さな入力で静磁界(磁石の配置)を変化させることで負の減衰を生じやすい。
【0007】本発明はこの事実に着目してなされたものであり、二つの永久磁石間の幾何学的寸法を運動行程内機構あるいは外力により入力側(行き)と出力側(帰り)で変化させ、その運動系内で反発力に変換させることにより、二つの永久磁石の平衡位置からの入力側の反発力より出力側の反発力を大きくしている。
【0008】以下、その基本原理について説明する。図1は、入力側と出力側における二つの永久磁石2,4の平衡位置を示した模式図で、図2は、いずれか一方の永久磁石に加えられた荷重と、二つの永久磁石の平衡位置からの変位量との関係を示した磁性バネ構造体の基本特性を示している。
【0009】図1に示されるように、永久磁石2に対する永久磁石4の入力側の平衡位置とバネ定数をそれぞれx0,k1とし、出力側の平衡位置とバネ定数をそれぞれx1,k2とすると、x0〜x1の間で面積変換が行われ、各平衡位置では次の関係が成立する。
−k1/x0+mg=0−k2/x1+mg=0k2>k1【0010】従って、その静特性は、図2に示されるように負の減衰特性を示し、位置x1と位置x0におけるポテンシャルの差が発振のポテンシャルエネルギと考えることができる。
【0011】また、図1のモデルを製作し、荷重と変位量との関係を、荷重を加える時間を変えて実測したところ、図3に示されるようなグラフが得られた。これは、二つの永久磁石2,4が最近接位置に近づくと、大きな反発力が作用すること、また、平衡位置からの変位量が微小に変化すると摩擦損失が磁性バネのダンパー効果により発生し、そのことにより減衰項が現れたものと解釈される。
【0012】図3において、(a)は一定荷重を加えた場合のグラフで、(a)、(b)、(c)の順で荷重を加えた時間が短くなっている。すなわち、荷重の加え方により静特性が異なり、荷重を加える時間が長いほど力積が大きい。
【0013】また、希土類磁石は、磁化の強さが磁界に依存しない。つまり、内部磁気モーメントが磁界による影響を受けにくいので、減磁曲線上で磁化の強さはほとんど変化せず、ほぼその飽和磁化の強さの値を保っている。従って、希土類磁石では、端面上に磁荷が均一に分布していると仮定したチャージモデルを用いて、入出力が考えられる。
【0014】図4はその考え方を示しており、磁石を最小単位の磁石の集合と定義し、各単位磁石間の力の関係を三つに分類して計算したものである。
(a)吸引(r,mとも同一なので、2タイプを1つで定義する)
f(1)=(m2/r2)dx1dy1dx2dy2fx(1)=f(1)cosθfz(1)=f(1)sinθ(b)反発fx(2)=f(2)cosθfz(2)=f(2)sinθ(c)反発fx(3)=f(3)cosθfz(3)=f(3)sinθ従って、−fx=2fx(1)−fx(2)−fx(3)−fz=2fz(1)−fz(2)−fz(3)ここで、クーロンの法則は次のように表されるので、F=k(q1q2/r2) r:距離
上記−fx,−fzを磁石の寸法の範囲で積分して力を求めることができる。
【0015】これを図5に示されるように、対向する磁石を各磁気ギャップ毎に完全にラップした状態(x軸移動量=0mm)から完全にずれた状態(x軸移動量=50mm)まで移動させて計算したのが図6のグラフである。ただし、「内部磁気モーメントは一定」と定義してあるが、磁気ギャップが小さいときは磁石の周辺で乱れが生じるので、補正している。
【0016】上記計算結果は実測値とも略一致しており、図2のポイントaからbに移動させる力がx方向荷重で、出力はz方向荷重で表されており、不安定系故の入力<出力の関係が静的に明確になっている。
【0017】また、図7は、図5に示される磁石の離間距離を3mmに保持し、完全にずれた状態から完全にラップした状態まで移動させ、さらにこの状態から完全にずれた状態まで移動した時の関係を表したグラフである。このグラフは、x方向荷重の絶対値は同じで出力方向が逆になって出てくる特性で、完全ラップ状態に近づく場合は抵抗つまり減衰となり、完全ラップ状態から完全にずれた状態に移行する場合は加速されることを示している。この特性を非接触ダンパに活用することで、従来のダンパでは達成できなかった人が認知できる低・中・高周波領域(0〜50Hz)の振動エネルギの低減つまり振動伝達率の改善が可能になった。
【0018】また、図8に示されるように、対向する磁石の回転角度を変化させると、図9に示されるようなグラフが得られた。当然のことながら、対向面積が減少すると最大荷重が減少し、所定の入力を加えることによる面積変換を介して出力を変化させることが可能なことを示している。
【0019】図10は、永久磁石としてネオジム系磁石を採用した場合の磁石間距離と荷重との関係を示すグラフであり、反発力は質量増加とともに増加する。ここで、反発力Fは、F∝Br2×(幾何学的寸法) Br:磁化の強さで表され、幾何学的寸法とは、対向する磁石の離間距離、対向面積、磁束密度、磁界の強さ等により決定される寸法を意味する。磁石材料が同一の場合、磁化の強さ(Br)は一定であるので、幾何学的寸法を変化させることにより磁石の反発力を変えることができる。
【0020】図11は、永久磁石2,4の対向面積を変化させることにより幾何学的寸法を変化させるようにした第一の具体的な磁性バネモデルを示している。図11において、互いに平行に延在する基台6と頂板8とは、2本のリンク10a,10bからなる左右一対のXリンク10により互いに接続されている。リンク10a,10bの一端は、基台6と頂板8にそれぞれ枢着されるとともに、リンク10a,10bの他端は、頂板8に摺動自在に取り付けられた上部スライダ12と、基台6に摺動自在に取り付けられた下部スライダ14にそれぞれ枢着されている。
【0021】また、基台6にはリニアウェイ16が固定され、永久磁石2が載置された磁石載置台18がリニアウェイ16に摺動自在に取り付けられる一方、もう一つの永久磁石4が頂板8に固定されている。基台6にはさらに支持台20が固定され、この支持台20に第1アーム22aと第2アーム22bからなるL字状レバー22の中央部が枢着されている。第1アーム22aの一端は磁石載置台18に枢着されるとともに、第2アーム22bにはバランスウェイト24が取り付けられている。
【0022】上記構成において、基台6にある入力が加えられ、基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により磁石載置台18はリニアウェイ16に沿って図中右方向に移動する。その結果、二つの永久磁石2,4の対向面積が徐々に増加して、永久磁石2,4の最近接位置あるいはこの位置を過ぎた位置で最大反発力が発生するとともに、反発力により基台6は下方に移動する。基台6が頂板8に対し一往復する間に、図11の磁性バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。なお、バランスウェイト24は基台6に対し多少の位相遅れがあるので、最大反発力が発生する位置は、入力に応じてバランスウェイト24を第2アーム22bに対して移動させることにより適宜調節することができる。また、永久磁石4を上部スライダ12と連動させることにより、タイミング、対向面積の調節も可能である。
【0023】図12は、二つの永久磁石2,4を基台6と頂板8にそれぞれ固定し、他の二つの永久磁石26,28間のギャップ(離間距離)を可変とすることにより、幾何学的寸法を変化させるようにしたものである。図12において、永久磁石28は、永久磁石4とは逆にS極を下方に向けた状態で頂板8に固定される一方、永久磁石26は、永久磁石2とは逆にS極を上方に向けた状態で揺動レバー30の一端に固定されている。揺動レバー30は、その中央部が支持台20に揺動自在に取り付けられ、永久磁石26の反対側の揺動レバー30にはバランスウェイト24が取り付けられている。
【0024】上記構成において、基台6に取り付けられた二つの永久磁石2,26は逆磁極を対向させているので、永久磁石2,26間に吸引力が働き、この吸引力がバランスバネとして作用する。基台6にある入力が加えられ、基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により、永久磁石26は永久磁石2との吸引力に抗して上方に向かって揺動する。その結果、永久磁石26,28間のギャップが徐々に変化して、その最近接位置あるいはこの位置を過ぎた位置で最大反発力が発生するとともに、反発力により基台6は下方に移動する。基台6が頂板8に対し一往復する間に、図12の磁性バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。なお、最大反発力が発生する位置は、入力に応じてバランスウェイト24を揺動レバー30に対して移動させることにより適宜調節することができることは図11のモデルと同様である。
【0025】図13は、回転レバーを使用して対向する二つの永久磁石2,4の幾何学的寸法を変化させるようにしたものである。図13において、永久磁石2は基台6に固定され、この永久磁石2に対向する永久磁石4は、基台6上に立設されたフレーム32に摺動自在に取り付けられた取付台34に固定されている。取付台34にはリンク36の一端が枢着され、その他端は、下部スライダ14の片側に固定された第1支持台38に枢着されている。
【0026】また、下部スライダ14の反対側には第2支持台40が固定され、第2支持台40に一端が枢着されたレバー42の他端にはピン44が取り付けられている。このピン44は、リンク36の中間部に穿設された長孔36aに遊挿されるとともに、頂板8に枢着されたアーム46の下端に取り付けられている。
【0027】上記構成において、基台6にある入力が加えられ基台6が頂板8に向かって移動すると、レバー42が図中矢印方向に回転し、二つの永久磁石2,4は互いに接近する。永久磁石2,4は同一磁極を対向させているので、レバー42の回転とともに反発力が徐々に増大し、永久磁石2,4が最近接位置を通過すると、その反発力により永久磁石2,4は互いに離反する。基台6が頂板8に対し一往復する間に、図13の磁性バネはレバー比が変わることで図3に示されるような負の減衰特性を示す。
【0028】図14は、永久磁石の極変換を利用して幾何学的寸法を変化させるようにした磁性バネを示している。図14において、基台6に回動自在に取り付けられた永久磁石2には小径プーリ48が一体的に固定されており、このプーリ48は、基台6に回動自在に固定された大径プーリ50にベルト52で連結されている。プーリ50の中心にはリンク54の一端が固定されるとともに、リンク54の他端にはバランスウェイト24が取り付けられたレバー56が固定されている。なお、バランスウェイト24の下端位置は、頂板8にブラケット58を介して取り付けられたバネ部材60により規制されている。
【0029】上記構成において、基台6にある入力が加えられ基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により、大径プーリ50が図中矢印方向に回転し、ベルト52を介して永久磁石2が同一方向に回転する。その結果、永久磁石2のS極が、頂板8に固定された永久磁石4のN極に引き寄せられるが、バランスウェイト24が多少の位相遅れの後追随すると、永久磁石2が矢印の逆方向に回転することとなり、永久磁石2のN極が対向する。同一磁極が対向することにより反発力が発生し、基台6が頂板8から離反するように下降するが、基台6が一往復する間に、図14の磁性バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。
【0030】図15は、永久磁石の磁束密度を変化させることにより幾何学的寸法を変化させるようにした磁性バネを示している。図15において、基台6に固定された第1支持プレート62と、この第1支持プレート62と所定距離離間して平行に延在する第2支持プレート64に、複数の遮蔽板66の両端がそれぞれ枢着されている。第2支持プレート64の一端は、アーム68を介してL字状レバー70の中間部に枢着されるとともに、L字状レバー70の一端は、基台6に固定された支持台72に枢着され、その他端側にはバランスウェイト24が取り付けられている。
【0031】上記構成において、基台6にある入力が加えられ基台6が頂板8に向かって移動すると、バランスウェイト24の慣性力により、第2支持プレート64が図中矢印方向に移動し、永久磁石2の上方が遮蔽板66によりある程度遮蔽される。その結果、基台6に取り付けられた永久磁石2の磁束密度が低下し、頂板8に取り付けられた永久磁石4との反発力が減少する。
【0032】バランスウェイト24が多少の位相遅れの後追随すると、第2支持プレート64は矢印の逆方向に移動するので、永久磁石2の上方が開放されて永久磁石2,4の反発力が増大し、基台6が頂板8から離反するように下降するが、基台6が一往復する間に、図15の磁性バネは図3に示されるような負の減衰特性を示す。
【0033】次に、上記磁性バネの動特性を図16に示される簡略化した基本モデルを状態方程式で説明する。図16の入力Fが、永久磁石の面積変換等の幾何学的寸法変化によってもたらされた力である。図16において、バネ定数をk、減衰係数をr、質量mに入力される調和振動をF(t)とすると、その状態方程式は、【数1】と表される。
【0034】ここで、平衡位置をx0、平衡位置からの変位をyとすると、【数2】【0035】ここで、k/x02=k′とおくと、【数3】【0036】調和振動をF(t)=Feiωtとおき、y=xeiωtとおくと、【数4】ここで、φは位相遅れを示す。
【数5】従って、共振周波数ω0は、【数6】【0037】ここで、式(2)はさらに、次のように表すこともできる。
【数7】yをxとおいて、3次の項まで考慮すると、【数8】【0038】式(3)には、2次の項に−bx2という減衰項が表れているが、式(3)をさらに簡単なイメージに置き換えると、【数9】【0039】ここで、x=x0cosωtとおくと、【数10】【0040】つまり、微小振動領域では、周期的な外力に対して、絶えず一定の反発力((b/2)x02)が加わっていて、その力で周期的外力を減衰させることになる。
【0041】そこで、図17の装置を使用して、磁石単体の動特性を調べたところ図18及び図19に示されるような結果が得られた。
【0042】図17の装置は、二つの永久磁石2,4を互いに対向せしめ、面積変換することなくXリンク10を介してその離間距離を変更するようにした装置である。
【0043】また、図18及び図19において、横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸は振動伝達率(G/G)を示している。また、図18において、(a),(b),(c),(d),(e),(f)はそれぞれ、50×50×10mm,50×50×15mm,50×50×20mm,75×75×15mm,75×75×20mm,75×75×25mmの磁石を使用して、同じ負荷30kgを加えているのに対し、図19においては、50×50×20mmの同じ磁石を使用して、53kgと80kgの異なる負荷を加えたものである。
【0044】図18及び図19は磁性バネの非線形特性を示したもので、両図から、同じ負荷の場合は、磁石サイズが大きいほど共振点は低周波域へ移行し、磁石サイズが同じ場合には、負荷が変わっても共振点は変化せず、負荷の軽重で共振点における振動伝達率に大小が生ずることがわかる。
【0045】また、図20は比較例としての、従来の乗用車シートの動特性を示すグラフであり、振動伝達率が全体として高く、負荷の変動にともない共振点及び振動伝達率はともに変動している。
【0046】ところで、上記式(1)において、対向する永久磁石間の幾何学的寸法を運動行程内機構あるいは外力により変化させると、バネ定数kは、図21に示されるように、時間とともに変化する長方形波k(t)であって、周期T=2π/ωにおいて、+k’と−k’の値を1/2周期毎に交互にとる。従って、式(1)は次のように表される。
【数11】(i)0<t<π/ωにおいて、【数12】(ii)π/ω≦t<2π/ωにおいて、【数13】【0047】ここで、0<t<π/ωの時の平衡位置をx0、平衡位置からの変位をy1とすると、【数14】【0048】ここで、(n−k’)/x02=k1′とおくと、【数15】【0049】調和振動をF(t)=Feiωtとおき、y1=xeiωtとおくと、【数16】ここで、φは位相遅れを示す。
【数17】従って、共振周波数ω0は、【数18】【0050】同様に、π/ω≦t<2π/ωの時、【数19】従って、y1<y2で、発散することとなる。
【0051】一般に、自励振動系は負の粘性減衰を有するバネ−質量系と置き換えることができ、振動中に外部から振動エネルギが導入されるが、実際に発生する振動は、質点に空気抵抗や各種の抵抗が発生し、エネルギを消失する。
【0052】しかしながら、本発明の負の減衰特性を有する磁性バネに外力として振動エネルギが導入されると、上記したように、y1<y2で発散し、発散し続けると振幅が次第に増大し系が破壊されるか、あるいは、変位の増大とともに大きくなる減衰項を上記状態方程式に追加することにより、正の減衰が作用し負の減衰と釣り合った状態で定常的な振動を行うようになる。すなわち、バネ定数k(t)と同様、減衰係数も可変で、式(1)はさらに次のように書き直すこともできる。
【数20】【0053】本発明の磁性バネを有する振動系は、持続振動、発散振動を誘発するエネルギ変化・変換系が振動系内部に存在しており、上記状態方程式に正の減衰項を機構的に加えることにより、さらに次の状態方程式を得ることができる。
【数21】【0054】この状態方程式は、r2≠0の時、xが増大すると左辺3項が大きくなり、かつ、バネ項の減衰項により正の減衰が働く。従って、永久磁石による内部励振特性として、変位が小さい時は負の減衰で、変位の増大とともに正の減衰が働き、正と負の減衰がつりあう振幅で振動が定常的になる。
【0055】また、振動系の質量、減衰係数、バネ定数のうち一つ以上について、その大きさが時間とともに変化する場合、これによって生じる振動を係数励振振動と呼ばれているが、上記式(4),(5),(6)は励振源自体が振動する係数励振振動となっており、系内の非振動的エネルギが系内部で振動的な励振に変換されて振動を発生させる。
【0056】通常は供給エネルギは動力エネルギの一部が変換したものであるから、動力エネルギに上限があると供給エネルギにも限りがあり、これが消費エネルギに等しくなった時点で振幅が抑えられる。永久磁石によるポテンシャルエネルギは、その系の動力エネルギとは独立しており、消費エネルギとの格差を広げることができるが、永久磁石の質量当たりの最大エネルギ積が増大すれば、さらにこの格差を大幅に広げることも可能で、1サイクル中で、負の減衰による供給エネルギを減衰による消費エネルギよりも大きくすることにより、振動エネルギは増大する。
【0057】前述したように、式(1)において、減衰係数r及びバネ定数(係数)kは自由に制御することが可能で、例えば図1の模式図において、永久磁石4が最下端にある時、永久磁石2との対向面積を最大とすることで振幅を減衰でき、磁力ブレーキ、動吸振器等に応用することができる。また、最下端から最上端に向かって永久磁石4が離れ出してから対向面積を最大にすることで反発力を増大することができるので、発電機やアンプ等に応用することもできる。
【0058】また、上記状態方程式の解から分かるように、本発明の係数励振振動系は、負荷の変動によって固有振動数が変化しても、励振振動数を移動させることで振幅の変動を少なくすることができる。すなわち、励振振動数を可変とし、手動又は自動的に共振振動数を追尾させて、常に周波数特性の共振振動数が低下するところで動作させることが可能で、自動車用シートの除振装置として使用することにより、振動絶縁性が向上でき、その個別性能を改善することができる。例えば、共振点を4Hz以下に下げることもできる。また、負の減衰を利用することによる低周波の改善と永久磁石の持つ非線形特性を特化させることによる体重差の吸収が可能となる。
【0059】ここで、ウレタンとファイバを組み合わせたパッドあるいは本発明の磁性バネ構造を採用したベッド型除振ユニットを使用して振動実験を行ったところ、図22に示されるような結果が得られた。
【0060】図22のグラフからわかるように、パッドとともに本発明の磁性バネ構造を採用したものは、パッドのみを採用したものに比べ、共振周波数が半分以下の3Hzまで減少し、除振ユニットとして極めて有効であることが認められた。さらに、セミアクティブ制御を行うことにより、共振点における振動伝達率を1/3程度に減少することができた。
【0061】さらに、図23のマグレブ(magnetic levitation:磁気浮上)ユニットの動特性を調べたところ、図24のような結果が得られた。
【0062】図23のマグレブユニットは、基台74の上に複数の揺動レバー76を介してシート78を揺動自在に支承し、基台74の上面に二つの永久磁石80,82を所定距離離間せしめて固定する一方、この永久磁石80,82に対し同磁極が対向する永久磁極84をシート78の下面に固定している。なお、永久磁極80,82,84としては、75×75×25mmのものを使用した。
【0063】このマグレブユニットに53kg,75kg,80kgの異なる負荷を加えたが、図24に示されるように、負荷の変動による振動伝達率の差を小さく抑えることができるとともに、共振点を略一致させることができた。
【0064】また、乗用車用シート、サスペンションシートA、サスペンションシートB、及び、本発明にかかるマグレブユニットの乗り心地評価を調べたところ、図25のような結果が得られた。なお、マグレブユニットの負荷は53kgとし、75×75×25mmの永久磁石を使用した。また、図中、「固定」はシートをサスペンションに固定しただけの状態を示すとともに、ウレタン、ゲル、スチレンはユニットの上に取り付けたクッション材を示している。
【0065】ここで、乗り心地評価定数として、”SAE paper 820309”に記載され次式で表される乗り心地指数R(Ride Number)を使用した。
R=K/(A・B・fn)
変数A,B,fnはシートの伝達関数(T.F.)から求められ、それぞれ次の値を示している。
A: T.F.の最大値B: 10HzにおけるT.F.値fn:共振周波数あるいはAが現れた周波数K: 全く異なったシートを表現する乗り心地係数(多様なシートを使用したので、K値は"1”と定めた)
ISO乗り心地評価は小さい数値で乗り心地が良いことを表すのに対し、上記乗り心地指数Rはその数値が大きいほど良い乗り心地を意味している。
【0066】図25からわかるように、乗り心地評価をしたシートのうち、乗用車用シートは0.2〜0.3(オールウレタン系)、0.3〜0.5(バネ系)、体重調整を行ったサスペンションシートは0.5〜0.7の値を示し、本発明のマグレブユニットの乗り心地は他のシートより良く、53kgの負荷に対して0.75〜1.60の乗り心地評価定数が得られた。
【0067】また、図26は負荷を変えた場合のマグレブユニットの乗り心地評価定数を示しており、この図からわかるように、どの負荷に対しても0.7以上の乗り心地評価定数が得られ、本発明にかかるマグレブユニットの乗り心地の良さを示している。
【0068】また、図27は、乗用車用シート、サスペンションシートA、サスペンションシートB、及び、本発明にかかるマグレブユニットの動特性を示しており,図中、(a)は乗用車用シート、(b),(c)はサスペンションシートAにそれぞれ53kg及び75kgの負荷を加えたもの、(d),(e)はサスペンションシートBにそれぞれ45kg及び75kgの負荷を加えたもの、(f),(g)は本発明にかかるマグレブユニットにおいてクッション材を変えたもの、(h)は本発明にかかるマグレブユニットをセミアクティブ制御したものをそれぞれ示している。
【0069】図27からわかるように、マグレブユニットの共振点は2〜3Hzの間にあり、低・高周波領域の振動伝達率も小さいことがわかる。さらに、セミアクティブ制御を行うことにより、共振点をさらに減少させることができるとともに、その振動伝達率を広範囲の周波数領域において低減できることが確認できた。
【0070】また、本発明の非線形振動系あるいは係数励振振動系に衝突振動を活用することもできる。衝突は、摩擦とともに代表的な機械系の非線形現象であり、衝突を生ずると物体の変形抵抗のように急に運動を妨げるものが作用するので、急速に減速して非常に大きな加速度を生ずる。磁性バネも衝突と同一の現象(疑似)を起こしている。
【0071】物体がある運動エネルギを持って衝突すると接触部の変形、すなわち、塑性変形仕事、接触表面の摩擦仕事、物体内部への弾性波動、外部への音響エネルギとして散逸し、残りが弾性エネルギに変換し、運動エネルギに再変換される。前述したように、磁性バネの場合、非接触のため大きな損失がなく、その静特性として同一ライン上を非線形で帰り、負の減衰を生じさせやすい。
【0072】例えば、マグレブユニットでストッパに当たらない場合は、加速度に変換され+αの反発力で自励させたり、非接触故の低減衰振動ながら、人体に悪影響を与えない振動特性を示す。さらに、金属バネとの組合せにより、加速度が減衰を越える場合ハードバネによる完全弾性衝突を誘発させ自励させて、2次共振を防ぐこともできる。エネルギ損失分は磁場のポテンシャルエネルギの変換によって補うこともできる。
【0073】また、一般的な防振の基本原理として、質量効果、振動絶縁、振動減衰、振動干渉、伝播の指向性を考慮する必要があり、弾性支持すると、上下動や横揺れを惹起するので、防振基礎を重たくかつ大きくし、支持スパンを長くとればよい。また、粘性ダンパ、摩擦ダンパの併用で減衰を与えると、衝撃によって与えられたエネルギをダンパ等で次の衝撃までに速やかに消散して振れを減衰させることができる。
【0074】さらに、摩擦減衰を抑えるために、ストッパを弾性支持することにより対向衝撃を利用して防振とエネルギ変換を行い、磁性バネの反発力不足を補うこともできる。
【0075】図28は、ストッパを弾性支持した場合のモデルを示しており、弾性支持部材のバネ定数kを所定の加速度あるいは振幅を吸収可能で、かつ、可変とし、バネ定数kを適宜調節して共振点を調節できるようにしたものである。
【0076】また、図29は、図28のモデルの具体的構成を示しており、図23のマグレブユニットの基台74後部に弾性支持部材86で支承されたストッパ88がブラケット90を介して取り付けられている。
【0077】この構成は、所定値以下の加速度あるいは振幅がストッパ88に加わると、弾性支持部材86が弾性変形することにより摩擦減衰を抑制し、その対向衝撃を利用して磁性バネの反発力不足を補償するとともに、除振性能を向上させることができる。
【0078】このマグレブユニットにおいて、45kgの負荷に対し、シート78後部の突設部92とストッパ88間の離間距離を8mmと15mmに設定し、動特性を調べたところ、図30のような結果が得られた。
【0079】図30のグラフによれば、離間距離15mmではストッパ88が突設部92に当接せず、3.4〜3.5Hzに2次共振が現れる(図30のA)のに対し、離間距離8mmではストッパ88が突設部92に当接し、2次共振点の振動伝達率が減少する(図30のB)とともに、乗り心地指数Rが1.4から1.6に上昇し、除振性能が向上している。
【0080】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。対向する少なくとも二つの永久磁石間の幾何学的寸法を入力側と出力側で変化させるとともに、持続あるいは発散振動にエネルギを変換する構造内に弾性部材に支承されたストッパを設けたので、所定値以下の加速度または振幅がストッパに加わると、摩擦減衰が抑制され、その対向衝撃を利用して磁性バネの反発力不足の補償、防振、エネルギ変換等が行われる。
- 【公開番号】特開平10−47429
【公開日】平成10年(1998)2月20日
【発明の名称】減衰特性を有する磁性バネを備えた係数励振振動機構
【発明者】
【氏名】藤田 悦則
【氏名】誉田 浩樹
- 【出願番号】特願平8−210097
【出願日】平成8年(1996)8月8日
【出願人】
【識別番号】594176202
【氏名又は名称】株式会社デルタツーリング
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
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