自転車用テールランプ
- 【要約】
【目的】 自転車の走行中、後方に向けて発光ダイオードを点滅させて夜間での識別手段とする。
【構成】 リアフォークの前方側に発電コイルを内蔵した本体を取付け、一方、後車輪のスポークに磁石を取付ける。車輪が回転したとき、磁石が本体の近くを接近、通過するように配置して発電を行い、本体内蔵の発光ダイオードを点灯させる。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 (ア)発電コイル(4)およびこれに接続された発光ダイオード(5)を内蔵する本体(1)と、(イ)後車輪のスポーク(11)に取付けられた磁石ユニット(2)、および(ウ)車体のリアフォーク(12)にはめ込まれたクランプ状の取付具(3)から構成され、本体(1)は外周の取付ラグ(10)を取付具(3)に取付ねじで結合することでリアフォーク(12)に取付けられ、かつ、本体(1)は、その取付け位置として、磁石ユニット(2)が車輪と共に回転する度に、所定のコイルギャップ(13)をもって、本体(1)の近くを接近、通過するように取付けられ、さらに、取付ラグ(10)を本体外周の上半分側に設けることによって本体(1)がリアフォーク(12)の前方側に取付けられるようにしたことを特徴とする自転車用テールランプ。
【請求項2】 請求項1に加えて、取付ラグ(10)の車輪側端面の底辺部に所定の大きさのくさび状の切込み(14)を設けることによって、本体(1)が回転中のスポークと衝撃を伴う接触を起こした場合には取付ラグが切断されることで、最終的に、後車輪の急停止が起こらないようにしたことを特徴とする自転車用テールランプ。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は夜間、後方からの自転車の識別を容易にするために装着する自転車用のテールランプに関する。特に前照灯とは独立して作動する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自転車用のテールランプを点灯する手段としては前照灯用発電機からの給電によって点灯する方法がすでに実用されている。しかし、この方法は前照灯の点灯を忘れるとテールランプも点灯しないという欠点があり、かつ、車体の後方までの配線も行わねばならない。一方、電池を使用する方法においても点、消灯用のスイッチ回路が必要であるし、運用中の電池交換も必要である。従って、自転車用のテールランプとしては前照灯とは独立しており、かつ、走行開始によって自動的に作動する装置であることが望ましい。これに対応して従来の前照灯用発電機とは異なった簡易な発電方式が提案されている。すなわち、発電コイルを車体側に、磁石を車輪側に取り付け、車輪が回転して磁石が発電コイルの近くを通過するときに発電コイルに発生するパルス状の電力でランプを点灯させるという発電子分離方式の発想である。これに関連して次のような構想が開示されている。すなわち、実開昭60−62872、実開昭63−89889、実開昭63−107446、実開昭63−279982、特開平2−293228、特開平4−78677、特開平5−319333、実開平5−55774、特開平7−25372、実開平7−35278などに関連の構想を見ることができる。この方式では一般に発生電力が極めて小さいので白熱電球を点灯するには適当でないが、自転車用テールランプなどのように所要電力が発光ダイオードを点滅させる程度でよい場合には充分、実用可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の発電方式によってテールランプを実用化するには、なお、次の課題を解決せねばならない。発電コイルを車体側に、磁石を車輪側に取付け、車輪の回転に伴う両者の接近、通過によって発電しようとする本方式においては、コイルや磁石の小型化の他に、両者の取付方法や最接近時の両者の間げき、すなわち、コイルギャップの設定が極めて重要である。この方式の実際的な装着形態としては発電コイルを車体のリアフォークに、磁石を後車輪のスポークに取付けることが望ましく、かつ、コイルギャップは5ミリ程度以下に保つことが必要となる。すなわち、自転車の走行中には高速で回転する磁石が5ミリ以下の小さな間げきをもって発電コイルの近くを通過せねばならず、当然、両者が接触するようなことがあってはならない。もし、何らかの原因で走行中に両者が接触した場合には、夫々が損傷するだけでなく、場合によっては、接触に誘発されて発電コイル側の本体が回転するスポークの間に噛み込まれてしまう事故も起り得る。この場合は後車輪が急停止する結果、自転車が不意に転倒するので深刻な人身事故となる可能性が予想される。
【0004】さらに、この方式のテールランプは現実には、装置が自転車の製造工場で装着されて出荷されるのでなく、ユーザーがキット部品を購入して自身で取付けを行なうのが普通であるから、ユーザーの作業にミスがあったり、保守、点検が必ずしも充分でないことも予想せねばならない。従って、仮にユーザーの作業にミスがあったとしても、少なくとも、上記の噛み込み事故は起こらないような対策が必要である。すなわち、本装置を実用品として完成するためには、このような安全性上の問題の解決が必要とされる。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題に対して、本装置では次のような手段によって解決を図る。本装置は発電コイルと、これに接続した発光ダイオードを内蔵する本体と、これを車体に取付けるための取付具、および車輪に取付ける磁石ユニットで構成する。本体は車体のリアフォークに、磁石ユニットは後車輪のスポークに取付ける。これらは自転車の構造の中で最も剛性が大きい部材なので、本体と磁石ユニットを取付け、所要のコイルギャップを保持するための基本部材として最適である。
【0006】第2の手段として、本体をリアフォークの前方側、すなわち、後車輪のスポークが前進側に回転し、リアフォーク位置を通り越して進む側に取付ける。このような配置によれば、リアフォークに取付けられた本体が取付けミスやその他の原因で車輪側へ回転してスポークに接触したとしても、スポークの回転運動によって外側へ押し返されるので本体がスポークの間に噛み込まれることはあり得ない。もし、本体がリアフォークの後方側に取付けられていてスポークとの接触が起きた場合には、接触したスポークが本体を車輪の内側方向へ押し進めるから必ず噛み込み事故が発生する。
【0007】第3の安全対策としては、本体の取付ラグの底辺部にくさび状の切込みを設けることで大きな衝撃力に対してのヒューズ機能をもたせる。切込みを設けた取付ラグは静的な荷重に対しては充分な強度をもつが、大きな衝撃力が加わると切断される。その結果、本体とスポークの間で大きな衝撃力を伴う接触が起きた場合には本体がリアフォークから切り離されるので噛み込み事故を積極的に防ぐことができる。
【0008】
【作用】本装置では後車輪が回転して磁石が発電コイルの近くを通過する度に発光ダイオードが点滅する。本装置では車輪が回転する度に、スポークに取付けた磁石ユニットがリアフォークに固定した本体の近くを接近、通過するが、もし両者が接触しても、本体がスポークの間に噛み込まれるような重大事故は起こらない。
【0009】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。本装置は本体(1)、磁石ユニット(2)、および取付具(3)で構成する。図1は本装置を取付けた自転車の後輪部の右側面図である。本体(1)はリアフォーク(12)に取付具(3)を使って取付け、磁石ユニット(2)はスポーク(11)に取付ける。
【0010】図2は本体(1)および取付具(3)の斜視図である。本体(1)は発電コイル(4)、および発光ダイオード(5)を内蔵し、かつ、外周の上半分側に取付ラグ(10)を設ける。取付具(3)はクランプ状の取付材で、クランプ部をリアフォークにはめ込み 、取付ねじ(7)で締め込んで固定する。このとき同時に、本体取付ラグ(10)にも同じ取付ねじをねじ込むことによって本体の取付ラグ、取付具、およびリアフォークを共締めし、これらを一体化する。
【0011】図3は磁石ユニット(2)の取付部の詳細である。磁石ユニット(2)は磁石(8)を内蔵し、押え板(9)とねじによってスポークに取付ける。本体(1)と磁石ユニット(2)との相対位置は図4に示すように、スポークが回転する度にコイルギャップ(13)をもって磁石(8)が発電コイル(4)に接近し通過するように配置する。
【0012】図4は本体(1)の横断平面図であり、発電コイル(4)および発光ダイオード(5)の配置を示す。また、本体に最接近した磁石(8)と発電コイルとの相対位置も示す。図の矢印A(15)が自転車の前進方向である。発電コイルには発生電圧を高めるため、必要に応じて鉄心を加える。発生電圧は鉄心のほか、コイルの巻数が大きいほど、コイルと磁石の相対速度が大きいほど、また、コイルギャップが小さいほど大きくなる。
【0013】図5は発電コイルと発光ダイオードの接続回路である。発電コイルの両端に2個の発光ダイオードを極性を逆にして並列に接続する。発光ダイオードの前面には必要に応じて、図4のように光源像拡大用のレンズ(6)を取付ける。
【0014】以上のような構成と配置によれば、自転車が走行して磁石(8)が本体(1)の近くを接近、通過する度に発電コイル(4)にパルス状電圧が発生し、接続された発光ダイオードが短時間、点灯する。このパルス電圧は磁石が通過する前後に極性が反転するので順方向側の発光ダイオードが1個ずつ点灯するが、実際には両方が同時に点灯するように見える。
【0015】図6は本体取付部の右側面図で、矢印A(15)が自転車の前進方向である。本体(1)は取付ねじ(7)を使い、取付ラグ(10)と取付具(3)を共締めすることによってリアフォーク(12)に固定される。このとき取付ラグ(10)は本体外周の上半分側に設けられているので本体(1)は自動的にリアフォークの前方側、すなわち、自転車の前進方向側に取付けられる。
【0016】図7は図6のA−A視図であり、あわせて車輪スポーク部の断面も書き加えている。図の矢印A(15)が自転車の前進方向である。本体(1)と磁石ユニット(2)との間げき、すなわち、コイルギャップは取付ラグ(10)と取付具(3)との間にシムをはさむか、本体(1)をリアフォークのまわりに回転させるかして調節する。コイルギャップは発生電圧を高めるには小さい方がよいが、本体と磁石ユニット、あるいはスポークとの接触の可能性を減らすため5ミリ程度に設定する。
【0017】図8は本体(1)がリアフォークのまわりに意図せぬ回転を起してスポークに接触した場合のA−A視図である。このような意図せぬ接触事故は取付けミスや材質の劣化のために取付具の締付けがゆるんだ場合や、本体が人体や荷物などで強く押された場合に起り得る。しかし、このような場合でも、本体(1)はスポークの回転運動によって矢印B(16)の方向、すなわち、回転面の外側へ押し返されるので接触が解消し、本体(1)がスポークの間に噛み込まれるようなことは起り得ない。
【0018】図9は図6と同じく本体取付部の右側面図である。しかし、図9は図6とは反対に、本体(1)がリアフォークの後方側に取付けられた場合である。取付ラグ(10)が本体外周の下半分側に設けられていると本体は必然的にリアフォークの後方に取付けられて、このような形態となる。図10は図9のB−B視図で、条件は図7の場合と同じであり、矢印A(15)は自転車の前進方向である。
【0019】図11は図8と同様に本体(1)が意図せぬ回転を起してスポークに接触した場合のB−B視図である。この場合は図8の場合と違って、回転するスポークが本体(1)を矢印B(16)の方向、すなわち、車輪の内側方向へ押し進めるから、必然的に、本体がスポークの間へ噛み込まれてしまう。その結果、後車輪が不意に急停止し、従って転倒事故をもたらすから、この取付形態は安全対策上、好ましくない。
【0020】本体の噛み込み事故を防ぐための、さらに積極的な手段としては図12に示すように、取付ラグ(10)の底辺部に、くさび状の切込み(14)を設ける方法が有効である。図12は前方から見た本体(1)の正面図であり、切込み(14)は取付ラグ底辺部の車輪側端面に設ける。この手段では、取付ラグの静強度は充分、もたせるが、切込み部には局部的な応力集中部をつくっておく。従って、接触による衝撃が大きいと切込み部の応力が許容限度を超えるので取付ラグが切断される。その結果、本体(1)がリアフォークから脱落するが、その代わり、噛み込みが起らず、また、車輪側の損傷も防ぐことができる。切込みの大きさは接触時の最大応力を測定して設定する。
【0021】
【発明の効果】本装置を取付けた自転車が走行すれば発光ダイオードが自動的に点滅するので夜間、後方から自転車の走行を容易に識別することができる。本装置の作動のための電池や前照灯からの配線は不要である。また、何らかの原因で本体が車輪のスポークと接触するような事態が起きた場合でも、本体がスポークの間に噛み込まれるような事故は起り得ないから極めて安全性が高い。
- 【公開番号】特開平10−7052
【公開日】平成10年(1998)1月13日
【発明の名称】自転車用テールランプ
- 【出願番号】特願平8−181185
【出願日】平成8年(1996)6月21日
【出願人】
【識別番号】591051715
【氏名又は名称】
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