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三点接触玉軸受
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- 【要約】
【課題】 精度に関する寿命を長期化することができる三点接触玉軸受を提供することにある。
【解決手段】 三点接触玉軸受10はラジアル玉軸受を構成し、該ラジアル玉軸受は外輪2と内輪3との間に保持されている鋼球1を有する。外輪2には、半径ro の円弧状の断面形状を有する軌道溝2aが形成され、内輪3にはゴシックアークの断面形状を有する軌道溝3aが形成されている。鋼球1は外輪2の軌道溝2aに対し一点Po で接触するようにかつ内輪3の軌道溝3aに対し二点Pi1,Pi2で接触するように外輪2と内輪3との間に保持されている。鋼球1の外輪2に対する接触角は角度αである。鋼球1の内輪3の2点Pi1,Pi2に対する接触角の一方は接触角αから所定角度βを減算した角度α−βであり、その他方の接触角は接触角αに所定角度βを加算した角度α+βである。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼球が外輪、内輪の各軌道輪の内の一方の軌道輪に対し一点で接触するようにかつ他方の軌道輪に対し二点で接触するように前記各軌道輪間に保持されている三点接触玉軸受において、前記鋼球の前記一方の軌道輪の一点に対する接触角をαとすると、前記鋼球の前記他方の軌道輪に対する二点の接触角の内の一方を前記接触角αに所定角度βを加算した角度とし、該二点の接触角の他方を前記接触角αから前記所定角度βを減算した角度とすることを特徴とする三点接触玉軸受。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼球が外輪、内輪の各軌道輪の内の一方の軌道輪に対し一点で接触するようにかつ他方の軌道輪に対し二点で接触するように各軌道輪間に保持されている三点接触玉軸に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、玉軸受は、外輪、内輪、およびそれらの間に保持されている鋼球から構成されている。この玉軸受の一例としてはラジアル玉軸受があり、ラジアル玉軸受においては、通常、鋼球が外輪、内輪のそれぞれに対し一点で接触しながら回転(公転、自転)することにより、外輪と内輪とが相対的に回転するように構成されている。
【0003】このラジアル玉軸受の構成について図11ないし図13を参照しながら説明する。図11は従来の玉軸受の構成を示す図、図12は図11のラジアル玉軸受の正規の位置関係にあるときの鋼球と外輪、内輪との間の接触状態を示す図、図13は図11のラジアル玉軸受における鋼球と外輪、内輪との間で作用する摩擦力による接触角αのずれを説明するための図である。
【0004】ラジアル玉軸受100は、図11に示すように、外輪101と、内輪102と、外輪101と内輪102との間に保持されている鋼球1とを有し、外輪101は支持台に103に固定されている。これに対し、内輪102は回転軸104に固定され、該内輪102には、X軸の周りに回転する回転軸104による予圧および自重を含む負荷Qが掛けられている。
【0005】外輪101には、図12に示すように、半径ro の円弧状の断面形状を有する軌道溝101aが形成され、この軌道溝101aの径は直径Do に設定されている。内輪102には半径ri の円弧状の断面形状を有する軌道溝102aが形成され、この軌道溝102aの径は直径Di に設定されている。鋼球1は直径dを有する球体からなり、該球体は外輪101の軌道溝101a、内輪102の軌道溝102aのそれぞれに対し一点で接触するように外輪101と内輪102との間に保持されている。
【0006】鋼球1の外輪101、内輪102に対する接触角は角度αであり、この接触角αは、鋼球1、外輪101間の接触点Po と鋼球1の中心点Os とを結ぶ直線と、鋼球1の中心点Os を通りX軸に直交するY軸とが成す角度である。同様に、鋼球1、内輪102間の接触点が点Pi とY軸とが成す角度はこの接触角αになる。この接触角αは外輪101の軌道溝101aの直径Do と内輪102の軌道溝102aの直径Di とで決定される。本図から分かるように、外輪101の軌道溝101aとの接触点Po から鋼球1の中心点Os を通り内輪102の軌道溝102aとの接触点Pi を結ぶ直線l上には各軌道溝101a,102aの断面中心が位置し、このような位置関係は、正規の位置関係と呼ばれる。
【0007】しかし、実際には、図13に示すように、鋼球1と外輪101、内輪102との間で作用する摩擦力により接触角αが角度Δα分ずれる。すなわち、各接触点が点Po ,Pi が、各点Po',Pi'に移動する。この接触角αが角度Δα分ずれることは、接触角αに対し直角な方向に距離Δ分ずれたことになり、この距離Δ分ずれた状態による各接触点Po',Pi'の位置関係を保持しながら鋼球1は外輪101、内輪102の間に安定して保持されることになる。このことは鋼球1の直径dが見掛上さらに大きい直径になることに相当し、その差分Δdは次の(1)式により表される。
【0008】
Δd=d−d´={r−(d/2)}μ2 …(1)
なお、上記式中のμは、鋼球1と外輪101、内輪102との間の摩擦係数を示し、rは軌道溝の半径を示すものとする。
【0009】例えば、軌道溝の半径rを1.06mm、鋼球1の直径dを2.0mm、摩擦係数μを0.01〜0.02の間の値とすると、上記(1)式により差分Δdは摩擦係数μが0.01〜0.02の間で6nm〜24nmとなる。このような範囲内にある差分Δdの値は一般的な装置に使用する際には問題を生じないが、ハードディスク装置、精密工作機械に使用する場合には、これらの装置では必要精度をnmのオーダとしているので、上述のラジアル玉軸受を使用して数十nmのオーダの精度を確保することは困難である。
【0010】そこで、上述のラジアル玉軸受に代わるものとして、三点接触玉軸受が考えられる。この三点接触玉軸受は、例えば、外輪と内輪との間に鋼球を外輪に対し一点で接触するようにかつ内輪に対し二点で接触するように保持するように構成されている。
【0011】この三点接触玉軸受の構成を図を参照しながら説明する。図14は従来の三点接触玉軸受の構成を示す図、図15は図14の三点接触玉軸受の内輪の軌道溝の加工方法を説明するための図である。
【0012】三点接触玉軸受200は、図14に示すように、支持台に103に固定されている外輪201と、回転軸104に固定されている内輪202と、外輪201と内輪202との間に保持されている鋼球1とを有する。外輪201には、半径ro の円弧状の断面形状を有する軌道溝201aが形成され、内輪102にはゴシックアークの断面形状を有する軌道溝202aが形成されている。鋼球1は直径dを有する球体からなり、該球体は外輪201の軌道溝201aに対し一点で接触するようにかつ内輪202の軌道溝202aに対し二点で接触するように外輪201と内輪202との間に保持されている。
【0013】鋼球1の外輪201に対する接触角は角度αであり、その接触点は点Po である。これに対し、鋼球1の内輪202の2点に対する接触角の一方は角度γ1 であり、その接触点点Pi1である。鋼球1の内輪202に2点に対する接触角の他方は角度γ2 であり、その接触点は点Pi2である。
【0014】上述の内輪202の軌道溝202aの断面形状を決定する方法について図15を参照しながら説明する。
【0015】まず、図15(a)に示すように、リング状の2つの構成部材202bをアーバーなどのより一体に合わせて内輪部材を形成し、この内輪部材の外周面に対しY軸上の鋼球1の中心位置Os からΔY離れた点Oi を中心とした半径ri の円弧状の軌道溝202cが形成される。軌道溝202cの形成後、内輪部材は各構成部材202bに分離され、各構成部材202bの合わせ面がそれぞれ幅ΔXc分カットされる。このカット後、図15(b)に示すように、各構成部材202bは、再度一体的に合わせられる。このカット後の各構成部材202bを一体的に合わせることによって、ゴシックアークの断面形状を有する軌道溝202aが形成されている内輪202が得られる。
【0016】このように、三点接触玉軸受では、鋼球1が外輪201の軌道溝201aに対し一点で接触するようにかつ内輪202の軌道溝202aに対し二点で接触するように外輪201と内輪202との間に保持されているので、鋼球1と外輪201、内輪202との間で位置関係が摩擦に関係なく一定に保持され、必要精度例えばnmのオーダの精度を容易に確保することができる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来の三点接触玉軸受では、図14に示すように、接触点Po における接線lo (鋼球1の中心点Os と接触点Po とを結ぶ直線に対し直角な直線)と、鋼球1と内輪202の軌道溝202aとの間の各接触点Pi1,Pi2を通る直線li との交点をPoiとすると、この交点Poiは回転中心となるX軸(回転軸)上に位置せず、この交点PoiとX軸間のY軸に沿う方向の距離は大きい。また、各接触点Pi1,Pi2における接線をli1,li2とすると、接線li1と直線li とが成す角度は接触角γ1 に、接線li2と直線li とが成す角度は接触角γ2 にそれぞれ等しくなり、接線li1と直線li とが成す角度および接線li2と直線li とが成す角度は大きくなる。よって、各接触点Pi1,Pi2におけるすべりすなわち接触楕円内でのすべりが大きくなり、軸受寿命が短いなどの問題が生じ、特に、ハードディスク装置、精密工作機械などに使用する場合には、短期間に回転精度、振動精度などが低下することが問題となる。
【0018】本発明の目的は、精度に関する寿命を長期化することができる三点接触玉軸受を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、鋼球が外輪、内輪の各軌道輪の内の一方の軌道輪に対し一点で接触するようにかつ他方の軌道輪に対し二点で接触するように前記各軌道輪間に保持されている三点接触玉軸受において、前記鋼球の前記一方の軌道輪の一点に対する接触角をαとすると、前記鋼球の前記他方の軌道輪に対する二点の接触角の内の一方を前記接触角αに所定角度βを加算した角度とし、該二点の接触角の他方を前記接触角αから前記所定角度βを減算した角度とすることを特徴とする。
【0020】請求項1記載の三点接触玉軸受では、鋼球の一方の軌道輪の一点に対する接触角をαとすると、鋼球の他方の軌道輪に対する二点の接触角の内の一方を接触角αに所定角度βを加算した角度とし、該二点の接触角の他方を接触角αから所定角度βを減算した角度とするので、鋼球と他方の軌道輪との間の各接触点におけるそれぞれの接線と各接触点を結ぶ直線とが成す角度はそれぞれ小さくなり、鋼球と他方の軌道輪との間の各接触点におけるすべりすなわち接触楕円内でのすべりが小さくなる。よって、従来の三点接触玉軸受に比して精度に関する寿命を長期化することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】(実施の第1形態)図1は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第1形態における主要部を示す構成図である。
【0023】三点接触玉軸受10は、図1に示すように、ラジアル玉軸受を構成し、該ラジアル玉軸受は、外輪2と、内輪3と、外輪2と内輪3との間に保持されている鋼球1とを有する。外輪2には、半径ro の円弧状の断面形状を有する軌道溝2aが形成され、内輪3にはゴシックアークの断面形状を有する軌道溝3aが形成されている。鋼球1は直径dを有する球体からなり、該球体は外輪2の軌道溝2aに対し一点で接触するようにかつ内輪3の軌道溝3aに対し二点で接触するように外輪2と内輪3との間に保持されている。鋼球1の外輪2に対する接触角は角度αであり、その接触点は点Po である。この接触角αは、上述した従来のラジアル玉軸受と同じ角度に設定されている。これに対し、鋼球1の内輪3の2点に対する接触角の一方は接触角αから所定角度βを減算した角度α−βであり、その接触点は点Pi1である。鋼球1の内輪3の2点に対する接触角の他方は接触角αに所定角度βを加算した角度α+βであり、その接触点は点Pi2である。
【0024】次に、所定角度βの設定方法について図2を参照しながら説明する。図2は図1の三点接触玉軸受における所定角度βの設定方法を説明するための図である。
【0025】上記所定角度βは、外輪2の倒れにより生じる外輪2と鋼球1との位置ずれによる鋼球1の外輪2に対する接触角αからのずれ角度をΔα´とし、鋼球1と外輪2との間の摩擦により生じる鋼球1の位置ずれによる鋼球1の外輪2に対する接触角αからのずれ角度をΔαとすると、ずれ角度Δα´とずれ角度Δαとを加算した角度より大きくかつ可能な限り小さい角度となるように設定されている。
【0026】具体的には、図2に示すように、外輪2の倒れがあると、外輪2と鋼球1との間で位置ずれが生じ、この位置ずれにより接触角は接触角αから角度Δα´分ずれる。この外輪2の倒れをΔθとし、鋼球1のピッチ径をDp とし、鋼球1の直径をdとし、外輪2の軌道溝2aの半径をro とすると、Δα´は次の(2)式により算出される。
【0027】
Δα´=[Dp /{2(ro −d/2)cos α}−1]Δθ …(2)
ここで、Δθ=ΔH/Dp とし、ΔHは外輪2の傾斜量を示す。
【0028】また、上述した従来のラジアル玉軸受と同様に、鋼球1と外輪2との間の摩擦により鋼球1の位置ずれが生じ、この位置ずれにより鋼球1の外輪2に対する接触角は接触角αから角度Δα分ずれる。このずれ角度Δαと、鋼球1、外輪2間の摩擦係数μとの間では、次の(3)および(4)の関係式が成立することにより、ずれ角度Δαは(5)式により求められる。
【0029】
tan Δα=μ …(3)
Δα<<1 …(4)
Δα≒μ …(5)
よって、所定角度βは次の(6)式の条件を満足する中で可能な限り小さい角度になるように設定される。
【0030】
β>Δα´+Δα …(6)
例えば、鋼球1のピッチ径Dp を9.0mmとし、鋼球1の直径dを2.0mmとし、外輪2の軌道溝2aの半径ro を1.06mmとし、接触角αを20度とし、外輪2の傾斜量を25μm(想定値)とすると、上記(2)式によりずれ角度Δα´は12.6度となる。また、摩擦係数μを0.1とすると、上記(5)式よりずれ角度Δαは6度となる。よって、所定角度βは、上記(6)式から18.6度(12.6度+6度)より大きくかつ可能な限り小さい角度になるという条件を満足するように、19度に設定される。
【0031】次に、内輪3の軌道溝3aの断面形状を決定するためのオフセット量の算出方法について図3を参照しながら説明する。図3は図1の三点接触玉軸受における内輪の軌道溝の断面形状を決定するためのオフセット量の算出方法を説明するための図である。
【0032】内輪3の軌道溝3aは、上述したように、鋼球1の内輪3の軌道溝3aに対する各接触角(α−β,α+β)が得られるように、ゴシックアークの断面形状を有する。このゴシックアークの断面形状は、図3に示すように、半径ri の2つの円弧で規定され、この円弧の中心位置Oi1,Oi2は、鋼球1の中心位置Os を通りY軸に対し接触角αを成す直線ls に対しオフセットされる。この円弧の中心位置Oi1,Oi2の直線ls に対するオフセット量は、直角な方向への距離を示すオフセット量ΔXと、鋼球1の中心位置Os から直線ls に沿う方向への距離を示すオフセット量ΔYとで表され、各オフセット量ΔX,ΔYは次の(7),(8)式により算出される。
【0033】
ΔX=(ri −d/2)sin β …(7)
ΔY=(ri −d/2)cos β …(8)
例えば、鋼球1の直径dを2.0mmとし、内輪3の軌道溝3aの半径ri を1.06mmとし、所定角度βを20度とすると、上記(7)式によりオフセット量ΔXは21μmになり、上記(8)式によりオフセット量ΔYは56μmになる。
【0034】このように、各オフセット量ΔX,ΔYを算出することによって、軌道溝3aのゴシックアークの断面形状を規定する半径ri の2つの円弧の中心位置Oi1,Oi2が求められ、鋼球1の内輪3の軌道溝3aに対する各接触角(α−β,α+β)が得られるゴシックアークの断面形状を有する軌道溝3aを形成することが可能になる。
【0035】以上より、本実施の形態では、鋼球1が外輪2の軌道溝2aに対し一点で接触するようにかつ内輪3の軌道溝3aに対し二点で接触するように外輪2と内輪3との間に保持されているので、鋼球1と外輪2、内輪3との間で位置関係が摩擦に関係なく一定に保持され、必要精度例えばnmのオーダの精度を容易に確保することができる。
【0036】また、鋼球1の内輪3の二点に対する接触角の内の一方を接触角αに所定角度βを加算した角度とし、鋼球1の内輪3に対する接触角の他方を接触角αから所定角度βを減算した角度としたので、鋼球1と内輪3との間の各接触点Pi1,Pi2におけるそれぞれの接線li1,li2と各接触点Pi1,Pi2を結ぶ直線li とが成す角度γ1 はそれぞれ小さくなり、鋼球1と内輪3との間の各接触点Pi1,Pi2におけるすべりすなわち接触楕円内でのすべりが小さくなる。よって、従来の三点接触玉軸受に比して精度に関する寿命を長期化することができる。
【0037】さらに、所定角度βが、外輪2の倒れにより生じる外輪2と鋼球1とのずれによる鋼球1の外輪2に対する接触角αからのずれ角度Δα´と、鋼球1と外輪2との間の摩擦により生じる鋼球1の位置ずれによる鋼球1の外輪2に対する接触角αからのずれ角度Δαとを加算した角度より大きくかつ可能な限り小さい角度となるように設定されているので、鋼球1と内輪3との間の各接触点Pi1,Pi2におけるそれぞれの接線li1,li2と各接触点Pi1,Pi2を結ぶ直線li とが成す角度γ1 はさらに小さくなり、鋼球1と内輪3との間の各接触点Pi1,Pi2におけるすべりすなわち接触楕円内でのすべりがさらに小さくなる。
【0038】なお、本実施の形態では、鋼球1が外輪2の軌道溝2aに対し一点で接触するようにかつ内輪3の軌道溝3aに対し二点で接触するように外輪2と内輪3との間に保持されている構成を説明したが、鋼球1が外輪2の軌道溝2aに対し二点で接触するようにかつ内輪3の軌道溝3aに対し一点で接触するように外輪2と内輪3との間に保持されている構成の場合においても、鋼球1の内輪3の一点に対する接触角αに対し、鋼球1の外輪2の二点に対する接触角の内の一方を接触角αに所定角度βを加算した角度とし、鋼球1の外輪2に対する接触角の他方を接触角αから所定角度βを減算した角度とすることにより、同様の効果が得られる。
【0039】(実施の第2形態)次に、本発明の実施の第2形態について図4を参照しながら説明する。図4は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第2形態における主要部を示す構成図である。
【0040】本実施の形態における三点接触玉軸受20は、図4に示すように、ラジアル玉軸受を構成し、該ラジアル玉軸受では、鋼球1の外輪2の一点に対する接触角αに対し、鋼球1の内輪3の二点に対する接触角の内の一方を接触角αに所定角度β1を加算した角度とし、鋼球1の内輪3に対する接触角の他方を接触角αから所定角度β2を減算した角度とし、鋼球1と外輪2との接触点Po における接触角αに対する接線lo と鋼球1と内輪3との各接触点Pi1,Pi2を通る直線liとがX軸上の同一の点で交差するように、所定角度β1と所定角度β2とをそれぞれ設定している。
【0041】この所定角度β1,β2の設定においては、まず、鋼球1と外輪2との接触点Po における接触角αに対する接線lo を図中のX,Y軸の座標系の関数で表す。この接線lo は次の(9)式で表される。
【0042】
Y=aX+b …(9)
なお、a=−{Dp /2+d/(2cos α)}
/[{Dp /(2cos α)+d/2}/sin α−Dp tan α/2]
b=Dp /2+d/(2cos α)
接線lo がX軸と交差する点Poiは、上記(9)式にY=0を代入することによって求められ、 Poi=(xp,0)
xp=[{Dp /(2cos α)+d/2}/sin α−Dp tan α/2]
となる。
【0043】次いで、鋼球1と内輪3との各接触点Pi1,Pi2をX,Y軸の座標系の座標で表し、以下のように定義する。
【0044】
Pi1=(x1,y1)
Pi2=(x2,y2)
ここで、x1=−dsin (α−β1)/2y1=Dp /2−dcos (α−β1)/2x2=−dsin (α+β2)/2y2=Dp /2−dcos (α+β2)/2各接触点Pi1,Pi2を通る直線li は、次の(10)式で表される。
【0045】
Y={(y1−y2)/(x1−x2)}(X−x1)+y1…(10)
直線li が直線lo とX軸上の同一の点で交差するための条件、すなわち直線li が直線lo とX軸との交点Poiを通る条件は、上記(10)式に交点Poiを代入することによって得られる条件式で表され、この条件式は次の(11)式となる。
【0046】
{ Dp −dcos(α−β1)}{ sin(α−β1) −sin(α+β2)}d = {cos(α+β2) −cos(α−β1)}d ×[ Dp {1/(cos αsin α) −tan α} +{ sin(α−β1) −1/sin α} d] …(11)
上記(11)式において、鋼球1の直径d、鋼球1のピッチ径Dp 、接触角αを定数とすると、(11)式は、所定角度β1と所定角度β2との関係を得るための条件式となる。また、所定角度β1と所定角度β2との間には、β1>β2の関係が成立する。よって、所定角度β1,β2を決定する際には、上述の実施の第2形態における所定角度βを設定する手法を用いて所定角度β2をまず決定し、この決定した所定角度β2を上記(11)式に代入することによってβ1>β2の関係を満足するような所定角度β1を決定する手法が用いられる。
【0047】このように所定角度β1,β2が決定されると、決定された所定角度β1,β2から鋼球1の内輪3の軌道溝に対する各接触角(α−β1,α+β2)が得られるように内輪3の軌道溝におけるゴシックアークの断面形状が規定されることになる。
【0048】以上より、本実施の形態では、鋼球1の外輪2の一点に対する接触角αに対し、鋼球1の内輪2の二点に対する接触角の内の一方を接触角αに所定角度β1を減算した角度とし、鋼球1の内輪に3対する接触角の他方を接触角αから所定角度β2を加算した角度とし、鋼球1と外輪2との接触点Po における接触角αに対する接線lo と鋼球1と内輪3との各接触点Pi1,Pi2を通る直線li とがX軸上の同一の点で交差するように、所定角度β1と所定角度β2とをそれぞれ設定しているので、鋼球1と内輪3との間の各接触点Pi1,Pi2におけるすべりすなわち接触楕円内でのすべりが小さくなり、従来の三点接触玉軸受に比して精度に関する寿命を長期化することができる。
【0049】(実施の第3形態)次に、本発明の実施の第3形態について図5を参照しながら説明する。図5は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第2形態における主要部を示す構成図である。
【0050】本実施の形態における三点接触玉軸受30は、図5に示すように、ラジアル玉軸受を構成し、該ラジアル玉軸受では、鋼球1の内輪3の一点に対する接触角αに対し、鋼球1の外輪2の二点に対する接触角の内の一方を接触角αに所定角度β1を加算した角度とし、鋼球1の外輪2に対する接触角の他方を接触角αから所定角度β2を減算した角度とし、鋼球1と内輪3との接触点Pi における接触角αに対する接線li と鋼球1と外輪3との各接触点Po1,Po2を通る直線loとがX軸上の同一の点Poiで交差するように、所定角度β1と所定角度β2とをそれぞれ設定している。
【0051】本実施の形態の場合においても、上述の実施の第2形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】(実施の第4形態)次に、本発明の実施の第4形態について図6を参照しながら説明する。図6は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第4形態における主要部を示す構成図である。
【0053】本実施の形態における三点接触玉軸受40は、図6に示すように、スラスト玉軸受を構成し、該スラスト玉軸受では、鋼球1の外輪41の一点に対する接触角αに対し、鋼球1の内輪42の二点に対する接触角の内の一方を接触角αに所定角度βを加算した角度となるように、鋼球1の内輪42に対する接触角の他方を接触角αから所定角度βを減算した角度となるようにそれぞれ設定している。
【0054】このように、本実施の形態では、精度に関する寿命を長期化することができるスラスト玉軸受が得られる。
【0055】また、本実施の形態において、上述した実施の第1形態と同様に、所定角度βを、外輪41の倒れにより生じる外輪41と鋼球1とのずれによる鋼球1の外輪41に対する接触角αからのずれ角度Δα´と、鋼球1と外輪41との間の摩擦により生じる鋼球1の位置ずれによる鋼球1の外輪41に対する接触角αからのずれ角度Δαとを加算した角度より大きくかつ可能な限り小さい角度となるように設定することによって、鋼球1と内輪42との間の各接触点Pi1,Pi2におけるすべりすなわち接触楕円内でのすべりをさらに小さくすることができる。
【0056】(実施の第5形態)次に、本発明の実施の第5形態について図7を参照しながら説明する。図7は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第5形態における主要部を示す構成図である。
【0057】本実施の形態では、図7に示すように、本発明の三点接触玉軸受の原理を適用してボールねじ50を構成し、該ボールねじ50は、ねじ軸51と、ナット52と、ねじ軸51とナット52との間に保持されている複数の鋼球1とを有する。ねじ軸51には、所定半径の円弧状の断面形状を有する軸溝51aが形成され、ナット52にはゴシックアークの断面形状を有するナット溝52aが形成されている。鋼球1は、ねじ軸51の軸溝51aに対し一点Po で接触するようにかつナット52のナット溝52aに対し二点Pi1,Pi2で接触するようにナット52とねじ軸51との間に保持されている。鋼球1のねじ軸51の軸溝51aの点Po に対する接触角は角度αであり、鋼球1のナット52のナット溝52aの二点Pi1,Pi2に対する接触角の内の一方は接触角αに所定角度βを加算した角度となるように、鋼球1の軸溝51aに対する接触角の他方は接触角αから所定角度βを減算した角度となるようにそれぞれ設定されている。
【0058】よって、精度に関する寿命を長期化することができるボールねじ50が得られる。
【0059】(実施の第6形態)次に、本発明の実施の第6形態について図8を参照しながら説明する。図8は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第6形態における主要部を示す構成図である。
【0060】本実施の形態では、図8に示すように、本発明の三点接触玉軸受の原理を適用してボールガイド60を構成し、該ボールガイド60は、軌道台61と、移動体62と、移動体62を軌道台61に沿って案内するための複数の鋼球1とを有する。軌道台61にはゴシックアークの断面形状を有するレール溝61aが形成され、移動体62には円弧状の断面形状を有するベアリング溝62aが形成されている。鋼球1は、移動体62の移動に応じて移動体62のベアリング溝62aと軌道台61のレール溝61aとの間で移動体62内の循環穴62bを介して循環しながら回転運動をする。
【0061】鋼球1は、移動体62のベアリング溝62aに対し一点Po でかつ軌道台61のレール溝61aに対し二点Pi1,Pi2で接触しながら回転運動する。鋼球1の移動体62のレール溝62aの点Po に対する接触角は角度αであり、鋼球1の軌道台61のレール溝61aの二点Pi1,Pi2に対する接触角の内の一方は接触角αに所定角度βを加算した角度となるように、鋼球1のレール溝61aに対する接触角の他方は接触角αから所定角度βを減算した角度となるようにそれぞれ設定されている。
【0062】よって、精度に関する寿命を長期化することができるボールガイド60が得られる。
【0063】なお、移動体62のベアリング溝62aに対して二点接触としかつ軌道台61のレール溝61aに対して一点で接触するように構成してもよい。
【0064】(実施の第7形態)次に、本発明の実施の第7形態について図9を参照しながら説明する。図9は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第7形態における主要部を示す構成図である。
【0065】本実施の形態では、図9に示すように、本発明の三点接触玉軸受の原理を適用してボールガイド70を構成し、該ボールガイド70は、軌道台71と、移動体72と、移動体72を軌道台71に沿って案内するための複数の循環列の鋼球1とを有する。軌道台71にはゴシックアークの断面形状を有するレール溝71a,71bが鋼球1の各循環列毎に形成され、移動体72には円弧状の断面形状を有するベアリング溝72a,72bが鋼球1の各循環列毎に形成されている。
【0066】上段に位置する鋼球1の循環列に対しては、レール溝71aとベアリング溝72aとが組み合わされ、この循環列の鋼球1は、移動体72の移動に応じて移動体72のベアリング溝72aと軌道台71のレール溝71aとの間で移動体72内の循環穴72cを介して循環しながら回転運動をする。下段に位置する鋼球1の循環列に対しては、レール溝71bとベアリング溝72bとが組み合わされ、この循環列の鋼球1は、移動体72のベアリング溝72bと軌道台71のレール溝71bとの間で移動体72内の循環穴72dを介して循環しながら回転運動をする。
【0067】鋼球1は、移動体72のベアリング溝72a,72bに対し一点Po でかつ軌道台71のレール溝71a,71bに対し二点Pi1,Pi2で接触しながら回転運動する。鋼球1の移動体72のレール溝72a,72bの点Po に対する接触角は角度αであり、鋼球1の軌道台71のレール溝71a,71bの二点Pi1,Pi2に対する接触角の内の一方は接触角αに所定角度βを加算した角度となるように、鋼球1のレール溝71a,71bに対する接触角の他方は接触角αから所定角度βを減算した角度となるようにそれぞれ設定されている。
【0068】また、上段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po は斜め上方位置に、接触点Pi1,Pi2は斜め下方位置にそれぞれある。これに対し、下段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po は斜め下方位置に、接触点Pi1,Pi2は斜め上方位置にそれぞれある。このように、上段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po および接触点Pi1,Pi2と下段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po および接触点Pi1,Pi2との位置関係は、移動体72の移動方向(紙面に垂直な方向)に直交する水平方向の軸に対し対称である。よって、モーメントに対する剛性は小さいが、移動体72と軌道台71との間の干渉は非常に小さくなる。
【0069】以上より、本発明の三点接触玉軸受の原理を適用した複数の循環列のボールガイド70を得ることができる。
【0070】なお、本実施の形態では、鋼球1が移動体72のベアリング溝72a,72bに対し一点Po でかつ軌道台71のレール溝71a,71bに対し二点Pi1,Pi2で接触するようにしているが、鋼球1が軌道台71のレール溝71a,71bに対し一点でかつ移動体72のベアリング溝72a,72bに対し二点で接触するように構成することもできる。
【0071】(実施の第8形態)次に、本発明の実施の第8形態について図10を参照しながら説明する。図10は本発明に係る三点接触玉軸受の実施の第8形態における主要部を示す構成図である。
【0072】本実施の形態では、図10に示すように、本発明の三点接触玉軸受の原理を適用してボールガイド80を構成し、該ボールガイド80は、軌道台81と、移動体82と、移動体82を軌道台81に沿って案内するための複数の循環列の鋼球1とを有する。軌道台81にはゴシックアークの断面形状を有するレール溝81a,81bが鋼球1の各循環列毎に形成され、移動体82には円弧状の断面形状を有するベアリング溝82a,82bが鋼球1の各循環列毎に形成されている。
【0073】上段に位置する鋼球1の循環列に対しては、レール溝81aとベアリング溝82aとが組み合わされ、この循環列の鋼球1は、移動体82の移動に応じて移動体82のベアリング溝82aと軌道台81のレール溝81aとの間で移動体82内の循環穴82cを介して循環しながら回転運動をする。下段に位置する鋼球1の循環列に対しては、レール溝81bとベアリング溝82bとが組み合わされ、この循環列の鋼球1は、移動体82のベアリング溝82bと軌道台81のレール溝81bとの間で移動体82内の循環穴82dを介して循環しながら回転運動をする。
【0074】鋼球1は、移動体82のベアリング溝82a,82bに対し一点Po でかつ軌道台81のレール溝81a,81bに対し二点Pi1,Pi2で接触しながら回転運動する。鋼球1の移動体82のレール溝82a,82bの点Po に対する接触角は角度αであり、鋼球1の軌道台81のレール溝81a,81bの二点Pi1,Pi2に対する接触角の内の一方は接触角αに所定角度βを加算した角度となるように、鋼球1のレール溝81a,81bに対する接触角の他方は接触角αから所定角度βを減算した角度となるようにそれぞれ設定されている。
【0075】また、上段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po は斜め下方位置に、接触点Pi1,Pi2は斜め上方位置にそれぞれある。これに対し、下段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po は斜め上方位置に、接触点Pi1,Pi2は斜め下方位置にそれぞれある。このように、上段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po および接触点Pi1,Pi2と下段に位置する鋼球1の循環列における接触点Po および接触点Pi1,Pi2との間の位置関係は移動体82の移動方向(紙面に垂直な方向)に直交する水平方向の軸に対し対称である。
【0076】よって、モーメントに対する剛性が大きい複数の循環列のボールガイド80が得られる。
【0077】なお、本実施の形態では、鋼球1が移動体82のベアリング溝82a,82bに対し一点Po でかつ軌道台81のレール溝81a,81bに対し二点Pi1,Pi2で接触するようにしているが、鋼球1が軌道台81のレール溝81a,81bに対し一点でかつ移動体82のベアリング溝82a,82bに対し二点で接触するように構成することもできる。
【0078】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の三点接触玉軸受によれば、鋼球の一方の軌道輪の一点に対する接触角をαとすると、鋼球の他方の軌道輪に対する二点の接触角の内の一方を接触角αに所定角度βを加算した角度とし、該二点の接触角の他方を接触角αから所定角度βを減算した角度とするので、鋼球と他方の軌道輪との間の各接触点におけるそれぞれの接線と各接触点を結ぶ直線とが成す角度はそれぞれ小さくなり、鋼球と他方の軌道輪との間の各接触点におけるすべりすなわち接触楕円内でのすべりが小さくなる。よって、従来の三点接触玉軸受に比して精度に関する寿命を長期化することができる。
- 【公開番号】特開平11−13750
【公開日】平成11年(1999)1月22日
【発明の名称】三点接触玉軸受
【発明者】
【氏名】佐藤 忠一
- 【出願番号】特願平9−187210
【出願日】平成9年(1997)6月30日
【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 敏彦
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