核反応装置用電極材料
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- 【要約】
【課題】 重水の電気分解を利用した固体内核反応の再現性を向上する。
【解決手段】 核反応装置用電極材料は、パラジウムPdの基板1と、基板1の表面に形成された酸化カルシウムCaO−パラジウムPdの混合薄膜3と、酸化カルシウムCaO−パラジウムPdの混合薄膜3の表面に形成された1μm未満の厚さのパラジウムPd層5を備えて構成され、使用時にはパラジウムPd層5が電解溶液に接するように配置される。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 水素吸蔵合金製基材にカルシウムCaを含有させてなることを特徴とする核反応装置用電極材料。
【請求項2】 前記水素吸蔵合金製基材の電解溶液接液側に酸化カルシウムCaO−水素吸蔵合金混合層を含有してなることを特徴とする請求項1記載の核反応装置用電極材料。
【請求項3】 前記水素吸蔵合金はパラジウムPdであることを請求項1又は請求項2記載の核反応装置用電極材料。
【請求項4】 パラジウムPd基材と、同基材の表面に形成された酸化カルシウムCaO−パラジウムPd混合層と、該酸化カルシウムCaO−パラジウムPd混合層の表面に形成された1μm未満の厚さのパラジウムPd層を備えてなり、前記パラジウムPd層が電解溶液に接するように配置されることを特徴とする核反応装置用電極材料。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電極材料に関し、特に電気分解を利用した固体内核反応装置用電極材料に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、パラジウム電極を用いて重水の電気分解を行うと、陰極のパラジウム電極で核反応が生ずるという技術報告がある。そして、この核反応を熱発生装置、核反応生成物(中性子、トリチウム、X線等)発生装置に利用しようという提案がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の核反応は未だ再現性が低く、実用に供するには難がある。本発明者は、再現性が低い原因の一つが電極の構成にあると考え、鋭意探求した結果、核反応の再現性を著しく向上した電極構造を提供できる見通しを得たものである。従って、本発明の課題は、高い再現性で核反応を発生し得る核反応装置用電極材料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】如上の課題を解決するため、本発明によれば、核反応装置用電極材料は、パラジウムPdやチタンTi等の水素吸蔵合金を基材とし、これににカルシウムCaを含有させて構成される。好適には、水素吸蔵合金としてパラジウムPdを使用し、パラジウムPd製基材の電解溶液接液側に酸化カルシウムCaO−水素吸蔵合金混合層を含有して構成される。更に好適には、核反応装置用電極材料は、パラジウムPd基材と、同基材の表面に形成された酸化カルシウムCaO−パラジウムPd混合層と、その酸化カルシウムCaO−パラジウムPd混合層の表面に形成された1μm未満の厚さのパラジウムPd層を備えて構成され、前記パラジウムPd層が電解溶液に接するように配置される。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、板状電極として構成する場合の電極材料の断面を概念的に示したもので、水素吸蔵合金であるパラジウムPdの基板1の表面に酸化カルシウムCaOとパラジウムPdの混合薄膜(混合層)3が成膜され、更に混合薄膜3を覆ってパラジウムPd層5が成膜されて構成される。好ましくは、混合薄膜3の厚さは、数100Åから数1000Åの範囲であり、パラジウムPd層は1μm未満である。尚、電極をロッド状に形成する場合は、図2に示すように、パラジウムPd棒11の外周面に酸化カルシウムCaOとパラジウムPdの混合薄膜13が形成され、更にその外面にパラジウムPd層15が成膜されて構成される。混合薄膜13及びパラジウムPd層15の厚さは、前述の混合薄膜3及びパラジウムPd層5のものと同じである。
【0006】本発明の電極材料の作用効果を確認するため後述の手順で3個の試料を作成し、実験に供した。試料の作成手順は次の通りである。
a.パラジウムPd板をアセトン中で超音波洗浄し、その後温度900℃で10時間真空加熱処理する。このときの真空度は、1×10−7Torr以下である。
b.このパラジウムPd板を表面不純物除去のため、重王水でエッチングする。
c.パラジウムPdと酸化カルシウムCaOをアルゴンイオンビームで同時スパッターし、前記パラジウムPd板上にパラジウムPd中のカルシウムの割合が約10%の比率で、酸化カルシウムCaOとパラジウムPdの混合層を成膜する。
d.前述の酸化カルシウムCaOとパラジウムPdの混合層の上にパラジウムPdをアルゴンイオンビームでスパッターし、パラジウムPd層を形成する。
以上の手順で作成した試料の諸元は次のとおりである。
基板 Ca−Pd混合層の厚さ Pd層の膜厚 試料1 Pd板25×25×1mm 1000Å 400Å (Pd:99.9%)
試料2 同 上 3000Å 400Å 試料3 同 上 1000Å 1μm【0007】以上の3試料を図3に示す固体内核反応装置20の陰極電極として使用して実験を行った。固体内核反応装置20の構成は、基本的には特願平6−312045号のものと同じであるが、簡単に説明すると電解セル21と真空容器23が組合わさって構成されている。電解セル21は内部に電解溶液25を蓄えるようになっていて、その中に陽極電極27と陰極電極29が配設され、これらは電源31に接続されている。電解セル21内には、更に触媒33と電解溶液冷却用冷却管35が配設され、又計測用として熱電対37と圧力計39が取り付けられている。一方、真空容器23には真空排気用ポンプ41が接続され、所定の真空状態を保持できるようになっている。陰極電極29は、図示のように電解セル21と真空容器23との境界部に気密的に配置され、一面が電解溶液25に接するようになっていて、これを取り囲むようにX線検出器43,45,47が配設されている。実験では、陰極電極29として前述の試料1、試料2及び試料3を順次交換して使用し、電解溶液25として1mol/lのLiOD重水溶液を使用し、アルゴンガスでバブリング後、図4に示すような電流値制御で電気分解を行った。
【0008】次に前述の実験結果を説明する。図5は、試料1を使用した実験におけるX線検出器43,45によるX線計測結果を示し、図6は同じ実験における過剰熱計測結果を示している。詳述すると、図5において、横軸は電気分解開始後の時間hを示し、縦軸はX線のカウント数を示すが、電気分解開始後15時間経過時点及び255時間経過時点で2点鎖線で囲んで示すようにX線の間欠的放出が測定されている。又、図6において、横軸は同じであるが、縦軸は過剰熱(セルから放出されるエネルギからセルに投入するエネルギを引いた値)を表している。図6において2点鎖線で囲んで示すように、過剰熱は電気分解開始後30時間経過時点付近で増大し、50時間経過時点では放出されなくなるが、100時間経過時点から再び増大し、150時間経過時点では最大2.5Wに達している。尚、前述のX線は、X線検出器47では検出されなかったが、これは核反応が試料1からなる陰極電極29の電解溶液接液側で発生するが、X線のパラジウムPd中での減衰が相対的に大きいため、減衰してしまい、計測されなかったものと判断される。
【0009】図7は、試料2を使用した実験におけるX線検出器43,45によるX線計測結果を示し、図9は同じ実験における過剰熱計測結果を示している。尚、図8は、図7のX線計測結果のうち電気分解開始後156.8時間から157.4時間までの分を拡大して示したものである。図7及び図8に示すように、電気分解開始後20時間、40時間、90時間及び157時間に試料1の実験の場合と同様にX線の放出が計測されている。図9においては、電気分解開始後20時間から45時間までの間と60時間から電源を切る140時間までの間で過剰熱の発生が認められる。更に、図10は試料3を使用した実験におけるX線検出器43,45によるX線計測結果を示し、図11は同じ実験における過剰熱計測結果を示している。そして、図10に示すように、X線カウント数は統計変動の範囲内にあってX線の放出は認められず、又図11に示すように過剰熱も計測誤差範囲内にあって過剰熱発生は認められていない。
【0010】前述のように、X線の発生及び過剰熱の発生があると、核反応の発生があったと判断されるが、試料1については3回同じ実験を行い、いずれの実験でも前述のようなX線の発生及び過剰熱の発生が認められた。試料2については、前述の実験を2度行ったが2度共前述のようなX線の発生及び過剰熱の発生が認められた。そして前述のように試料3を使用した実験では、X線の発生及び過剰熱の発生が認められなかった。更に、通常のパラジウムPd電極を陰極電極として用い特願平6−312045号の装置を使用した実験では、X線の発生及び過剰熱の発生の再現率は10%であった。
【0011】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に属する試料1及び試料2を陰極電極として使用した電解実験では、5回の実験で5回ともX線の発生及び過剰熱の発生が認められ、核反応の再現率が100になったので、本発明による電極材料は、その再現率を大幅に向上することができる。
- 【公開番号】特開平11−38169
【公開日】平成11年(1999)2月12日
【発明の名称】核反応装置用電極材料
【発明者】
【氏名】伊藤 岳彦
【氏名】岩村 康弘
【氏名】後藤 信朗
- 【出願番号】特願平9−190268
【出願日】平成9年(1997)7月15日
【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
- 【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外4名)
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