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掘削装置および掘削工法
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- 【要約】
【課題】 特に泥岩層や軟岩層のような柔らかい地層に、拡径ビットを用いることなくケーシングパイプを建て込む。
【解決手段】 ケーシングパイプ13の内周部先端側に、後端側よりも一段縮径する段部16を形成するとともに、掘削工具1の外周には、その掘削方向に向けて段部16に当接可能な当接部12を設け、この当接部12の外径をケーシングパイプ13の内周部後端側の内径よりも小さくすることにより、掘削工具1を、その掘削方向に向けてケーシングパイプ13と係合して一体的に前進可能、かつこの掘削方向の後方側にケーシングパイプ13に対して後退可能とし、掘削工具1の先端部2とケーシングパイプ13の先端縁とによって掘削部9,17を構成し、この掘削部9,17によって掘削孔を形成しつつ、この掘削孔にケーシングパイプ13を建て込む。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 円筒状のケーシングパイプ内に、回転打撃力が与えられる掘削工具が挿入されてなる掘削装置であって、上記ケーシングパイプの内周部先端側には、後端側よりも一段縮径する段部が形成されるとともに、上記掘削工具の外周には、該掘削工具の掘削方向に向けて上記段部に当接可能な当接部が設けられ、この当接部の外径は上記ケーシングパイプの内周部後端側の内径よりも小さくされており、この掘削工具の先端部と上記ケーシングパイプの先端縁とによって掘削孔を形成する掘削部が構成されていることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】 上記段部は上記ケーシングパイプの周方向に点在して形成されるとともに、上記掘削工具の外周には、この掘削工具の先端面から後端側に延びる第1の凹溝と、この第1の凹溝から上記掘削工具の回転方向の後方側に延びる第2の凹溝とが、それぞれ上記段部が挿通可能に形成されており、このうち上記第2の凹溝は、上記回転方向側を向く壁面と上記掘削方向を向く壁面とを備えていて、この上記掘削方向を向く壁面が上記当接部とされていることを特徴とする請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】 上記ケーシングパイプの先端縁は、上記掘削方向に出没する凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の掘削装置。
【請求項4】 円筒状のケーシングパイプ内に、回転打撃力が与えられる掘削工具を、該掘削工具の掘削方向に向けて上記ケーシングパイプと係合して一体的に前進可能、かつこの掘削方向の後方側に該ケーシングパイプに対して後退可能に挿入し、上記掘削工具の先端部と上記ケーシングパイプの先端縁とによって掘削孔を形成しつつ、この掘削孔に上記ケーシングパイプを建て込むことを特徴とする掘削工法。
【請求項5】 上記掘削工具を、該掘削工具の回転方向に向けて上記ケーシングパイプと係合して一体的に回転可能とするとともに、この回転方向の後方側に向けては上記ケーシングパイプに対して非係合状態とされて、この非係合状態において上記掘削方向の後方側に該ケーシングパイプに対して後退可能とすることを特徴とする請求項4に記載の掘削工法。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アンカー工事、各種さく井工事、基礎杭工事などの土木工事において土砂、岩石等の掘削に用いられる掘削装置、およびかかる掘削装置を用いた掘削工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の掘削装置としては、いわゆる拡径ビットと称される掘削工具が円筒状のケーシングパイプに挿入されたものが知られている。すなわち、かかる掘削装置においては、回転打撃力を受ける掘削工具の先端に複数のブロックが回動自在に設けられ、これらのブロックは、その先端面に多数のチップが設けられるとともに、掘削時の掘削工具の回転に伴い該掘削工具の回転軸線からの外径が拡径する方向に回転し、互いの側面同士が当接したところでその外径が上記ケーシングパイプの外径よりも拡径して位置決めされ、かつ掘削時とは逆方向に掘削工具を回転させることにより、ブロックも逆方向に回転してその外径がケーシングパイプの内径よりも縮径するようになされている。
【0003】そして、このような掘削装置では、上記ブロックをケーシングパイプ先端から突出させた状態で掘削工具をケーシングパイプ内に挿入し、この掘削工具にハンマ等によって回転打撃力を与えることにより、上記ブロックを拡径させてその先端面の上記チップで土砂や岩石等を破砕して掘削孔を形成しつつ、ケーシングパイプを伴って掘削工具を前進させ、この掘削孔にケーシングパイプを建て込んでゆく。また、こうしてケーシングパイプが所定の深さまで建て込まれた後は、掘削工具を逆方向へ回転させて上記ブロックを縮径させ、掘削工具をケーシングパイプ内から引き抜くことにより、ケーシングパイプのみを地中に埋設することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ここで、上記掘削装置の掘削工具においてその先端のブロックを拡径・縮径可能としているのは、上述の通り、掘削時には上記ブロックをケーシングパイプの外径よりも拡径させて、このケーシングパイプが掘削に関与するのを避けるとともに、掘削が終了した後には掘削工具をケーシングパイプから引き抜き可能として、ケーシングパイプのみを残して埋設するためである。しかしながら、このようにブロックを拡径・縮径可能とするには、掘削工具の構造が複雑化することが避けられない。その一方で、本発明の発明者等は、様々な掘削試験を重ねた結果、例えば泥岩層や軟岩層のような比較的柔らかい地層に掘削孔を形成する場合には、ケーシングパイプに打撃力や回転力を与えることにより、このケーシングパイプの先端縁をも掘削に関与させることが可能であるとの知見を得た。
【0005】本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、特に泥岩層や軟岩層のような柔らかい地層に、上述のような拡径ビットを用いることなくケーシングパイプを建て込むことが可能な掘削装置および掘削工法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記知見に基づいて、このような目的を達成するために、本発明の請求項1に係る掘削装置は、円筒状のケーシングパイプ内に、回転打撃力が与えられる掘削工具が挿入されてなる掘削装置であって、ケーシングパイプの内周部先端側に、後端側よりも一段縮径する段部を形成するとともに、掘削工具の外周には、該掘削工具の掘削方向に向けて上記段部に当接可能な当接部を設け、この当接部の外径を上記ケーシングパイプの内周部後端側の内径よりも小さくして、この掘削工具の先端部とケーシングパイプの先端縁とによって掘削孔を形成する掘削部を構成したことを特徴とし、また本発明の請求項4に係る掘削工法は、このような掘削装置を用いるなどして、掘削工具を、その掘削方向に向けてケーシングパイプと係合して一体的に前進可能、かつこの掘削方向の後方側にケーシングパイプに対して後退可能とし、掘削工具の先端部とケーシングパイプの先端縁とによって掘削孔を形成しつつ、この掘削孔にケーシングパイプを建て込むことを特徴とする。
【0007】すなわち、上記知見に基づけば、上述したような柔らかい地層においては、掘削時に掘削工具がその回転打撃力によって掘削孔を形成する際に、この掘削孔の内周が特に掘削工具の外周縁から衝撃を受けることにより、ある程度脆くなって崩れやすくなる。そこで、上記構成のように、ケーシングパイプに設けた段部に掘削工具の当接部を当接させるなどして、ケーシングパイプと掘削工具とを掘削方向に一体に前進可能とし、掘削工具に与えられる打撃力をケーシングパイプの先端縁にも伝播させることにより、このケーシングパイプの先端縁をも掘削に関与する掘削部として、崩れやすくなった掘削孔の内周を掘削してケーシングパイプを建て込んで行くことが可能となるのである。従って、このような掘削装置および掘削工法によれば、掘削工具を拡径させたり縮径させたりする必要がないので、その構造の簡略化を図ることができる。
【0008】ここで、上記掘削装置において、上記段部をケーシングパイプの周方向に点在して形成するとともに、上記掘削工具の外周に、この掘削工具の先端面から後端側に延びる第1の凹溝と、この第1の凹溝から上記掘削工具の回転方向の後方側に延びる第2の凹溝とを、それぞれ上記段部が挿通可能に形成し、このうち上記第2の凹溝に、上記回転方向側を向く壁面と上記掘削方向を向く壁面とを備え、この上記掘削方向を向く壁面を上記当接部とするなどして、上記掘削工法において、掘削工具を、その回転方向に向けてケーシングパイプと係合して一体的に回転可能とするとともに、この回転方向の後方側に向けてはケーシングパイプに対して非係合状態として、この非係合状態において上記掘削方向の後方側に該ケーシングパイプに対して後退可能となるようにすれば、このケーシングパイプの掘削部となる上記先端縁には、打撃力に加えて回転力も伝播されることになるので、より効率的な掘削を図ることができる。また、このケーシングパイプの先端縁を上記掘削方向に出没する凹凸状に形成すれば、このケーシングパイプ先端縁の掘削部による掘削性能の向上を図ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1および図2は、本発明の掘削装置の第1の実施形態を示すものである。この実施形態の掘削装置において、掘削工具1は、従来公知のいわゆるダウンザホールビットと略同様の構成を採るものであり、すなわち概略大径円盤状をなす先端部2に小径の軸部3が同軸かつ一体に形成されて、先端から後端側に向かうに従い縮径する略多段円柱状をなしている。この軸部3は、当該掘削工具1に回転打撃力を与えるハンマHに取り付けられる部分であって、その先端側の外周部には、上記ハンマHからの回転力を受ける複数の突条部4…が、それぞれ掘削工具1の中心軸線Oに沿う方向に延びるように、周方向に等間隔に形成されている。また、この軸部3の後端からは、上記軸線Oに沿って先端側に向かうように排気孔5が形成されており、この排気孔5は上記先端部2において3つに分岐させられている。
【0010】そして、この先端部2の先端面6と外周面7の先端側縁部とには、超硬合金等の硬質材料よりなる多数のチップ8…が植設されて、この掘削工具1における掘削部9が構成されている。また、この先端部2の外周面7には、周方向に等間隔に複数条(この実施形態では6条)の凹溝10…が、それぞれこの掘削工具1の軸線O方向に沿って延びるように形成される一方、上記先端面6には軸線Oに対する径方向に延びる3条の凹溝11…が周方向に等間隔に形成され、これらの凹溝11…の外周側は、上記凹溝10…のうち周方向に1つおきの3条に連通するとともに、該凹溝11…の内周側の底面には、3つに分岐した上記排気孔5…がそれぞれ開口されている。さらに、この先端部2の外周面7の後端縁は、この外周面7から一段拡径する段状に形成されており、本実施形態における当接部12とされている。
【0011】一方、このような掘削工具1が挿入されるケーシングパイプ13は、円筒状のケーシング本体14と、その先端に溶接される円環状のケーシングトップ15とから構成されている。ここで、このケーシング本体14の内径は、上記掘削工具1において最も外径が大きくなる先端部2の上記当接部12の外径よりも僅かに大きく設定されており、これによって掘削工具1はケーシング本体14内に挿入可能とされている。また、ケーシングトップ15は、その外径が後端側に向けて一段縮径する多段状に形成されており、先端側の大径部の外径はケーシング本体14の外径と等しく設定される一方、後端側の小径部の外径はケーシング本体14内に嵌挿可能な大きさとされている。そして、ケーシング本体14とケーシングトップ15とは、ケーシングトップ15の上記小径部をケーシング本体14の先端側から該ケーシング本体14に嵌挿させた上で、上記大径部の後端縁とケーシング本体14の先端縁とが溶接されることにより、一体化されている。
【0012】さらに、このケーシングトップ15の内径は、上記小径部の厚さ分だけケーシング本体14の内径よりも小さくなることとなり、その大きさは、掘削工具1の上記当接部12の外径よりも小さく、かつこの当接部12以外の上記先端部2の外径よりは大きく設定されている。従って、掘削工具1をケーシングパイプ13の後端側から先端側に向けて挿入した際には、このケーシングトップ15の小径部の後端縁に、上記先端部2の当接部12が当接することとなり、すなわち本実施形態ではこのケーシングトップ15の後端縁部が、ケーシングパイプ13の内周部先端側に設けられる段部16とされる。なお、こうしてケーシングパイプ13の段部16に掘削工具1の当接部12を当接させた状態で、掘削工具1先端の上記掘削部9は、ケーシングパイプ13の先端縁よりも突出するようになされている。そして、このケーシングパイプ13の先端縁には、外周側に平坦面が形成されるとともに、その内周には内周側に向かうに従い漸次後退するテーパ面が形成されており、この先端縁によって本実施形態におけるケーシングパイプ13の掘削部17が構成されている。
【0013】次に、このような構成の掘削装置を用いて、例えば泥岩層や軟岩層等の比較的柔らかい地層に掘削孔を形成してケーシングパイプ13を建て込む場合の、本発明の掘削工法の第1の実施形態について説明する。上記構成の掘削装置では、上述のようにケーシングパイプ13の後端側から掘削工具1を挿入して前進させると、その先端部2の当接部12がケーシングパイプ13の内周に形成された段部16に当接し、これにより掘削工具1はケーシングパイプ13と軸線O方向先端側に係合して一体に前進可能とされる。そこで、この状態でハンマHから掘削工具1に回転打撃力を与えることにより、まず先行する掘削工具1先端の掘削部9のチップ8…によって掘削孔が形成されるとともに、この掘削孔の内周部は掘削工具1からの回転打撃力によって崩れやすい状態となる。
【0014】そして、このように崩れやすくなった掘削孔の内周部を、上記当接部12から段部16を介して打撃力が与えられつつケーシングパイプ13が前進することにより、このケーシングパイプ13先端縁の掘削部17の特に外周側角部によって上記掘削孔内周部が削り落とされて掘削され、これに伴いケーシングパイプ13が掘削孔内に建て込まれて行く。さらに、こうしてケーシングパイプ13が所定の深さまで建て込まれたならば、ハンマHごと掘削工具1を後端側に引き抜くことにより、ケーシングパイプ13のみを掘削孔内に残して地中に埋設することができる。なお、この掘削中には、ハンマHから上記排気孔5を介して圧縮空気が掘削工具1の先端側に供給されており、掘削工具1の掘削部9により掘削されたくり粉は、上記凹溝10…および凹溝11…を介してケーシングパイプ13内に送られ、後端側に排出される。また、ケーシングパイプ13先端縁の掘削部17により掘削されたくり粉も、その内周側のテーパ面から上記凹溝11…に送られて排出される。
【0015】このように、上記構成の掘削装置および該掘削装置を用いた掘削工法では、特に泥岩層や軟岩層等の柔らかい地層を掘削する際に、掘削工具1の先端部に設けられた掘削部9は勿論、ケーシングパイプ13の先端縁をも掘削部17として、このケーシングパイプ13の先端縁を掘削工具1の外径よりも外周側に突き出させた状態のまま、掘削孔を形成してケーシングパイプ13を建て込むことができる。そして、このケーシングパイプ13から掘削工具1を引き抜く際も、上記段部16におけるケーシングパイプ13の内径は、ケーシングパイプ13先端に突出する掘削工具1の先端部2の外径よりも大きくされ、またこの段部16より後端側のケーシングパイプ13の内径は、掘削工具1の最大外径となる上記当接部12の外径よりも大きくされているので、上述のようにハンマHごと掘削工具1をそのまま後退させればよい。
【0016】従って、本実施形態の掘削装置および掘削工法によれば、従来の拡径ビットを用いた掘削装置や掘削工法のように、掘削時や引き抜き時に掘削工具先端のブロックを拡径させたり縮径させたりする必要がなく、上述した通り従来公知のダウンザホールビットを略そのまま流用して、ケーシングパイプ13の掘削孔への建て込みおよび掘削工具1の引き抜きを行うことが可能となり、これにより掘削工具1の構造が複雑化するのを避けることができる。このため、掘削工具1の構造の複雑化に伴う故障の可能性や耐久性劣化のおそれを低減することができ、より確実な掘削作業を促すことができるとともに、比較的安価にケーシングパイプ13の建て込みを行なうことが可能となる。
【0017】ところで、上記第1の実施形態の掘削装置では、ハンマHから掘削工具1に与えられる回転打撃力のうち、掘削工具1の軸線O方向先端側への打撃力だけを、上記当接部12から段部16を介してケーシングパイプ13に伝達するようにしているが、これを、例えば図3および図4に示す本発明の掘削装置の第2の実施形態のように、上記打撃力に加えて回転力をも掘削工具21からケーシングパイプ13に伝播されるようにして掘削を行ってもよい。ただし、これら図3および図4に示す第2の実施形態においては、図1および図2に示した第1の実施形態と共通する部分には、同一の符号を配して説明を省略する。
【0018】すなわち、この第2の実施形態の掘削装置においては、ケーシングパイプ13の内周部先端側に設けられる段部22が、該ケーシングパイプ13の内周側に突出する凸部として周方向に点在するように形成されており、特に本第2の実施形態では、この段部22…は、掘削工具21の先端部2の外周面7に形成される上記凹溝(第1の凹溝)10…と同じく、6つの段部22…が周方向に等間隔となるように形成されている。ここで、この段部22は、軸線O方向先端側から見て図4に鎖線で示すように、その高さおよび周方向の幅が上記凹溝10の深さおよび幅よりも小さくされて、この凹溝10内を軸線O方向に挿通可能とされており、これによって掘削工具21は、段部22…と凹溝10…とを周方向に合わせた状態で、上記第1の実施形態と同様に後端側に引き抜き可能とされている。
【0019】一方、上記掘削工具21の先端部2の外周面7には、上記各凹溝10…にそれぞれ連通して当該掘削工具21の掘削時の回転方向Tの後方側に延びるように、第2の凹溝23…が形成されている。この第2の凹溝23は、図3および図4に断面で示すように、その深さおよび軸線O方向の幅が上記段部22の高さおよび軸線O方向の幅よりも大きくされて、該段部22がこの第2の凹溝23内を周方向に挿通可能とされている。さらに、これらの第2の凹溝23…は、掘削工具21の上記回転方向T側の凹溝10から、回転方向Tの後方側に隣接する凹溝10までの間の途中で止められた止まり溝状に形成されており、これによりこの第2の凹溝23の回転方向Tの後方側には、回転方向T側を向く壁面24が形成されることになる。一方、この第2の凹溝23の上記軸線O方向先端側を向く壁面25は、この第2の実施形態において上記段部22に当接する当接部とされる。なお、この第2の実施形態では、第1の実施形態の掘削工具21の先端部2外周に設けられたような一段拡径する当接部12は設けられておらず、この先端部2の外径が上記ケーシングパイプ13後端側のケーシング本体14の内径よりも僅かに小さくなるように設定されている。
【0020】次に、このように構成された第2の実施形態の掘削装置を用いてケーシングパイプ13を建て込む場合の、本発明の掘削工法の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態の掘削装置では、上述のようにケーシングパイプ13の段部22…と掘削装置21の凹溝10…との位置を周方向に一致させることにより、これら段部22…が凹溝10…に挿通可能となるので、まずこの状態のまま、段部22…と第2の凹溝23…との軸線O方向の位置が一致するように、掘削工具21をケーシングパイプ13内に挿入して前進させる。なお、この段部22…と凹溝10…との位置が周方向に一致した状態では、掘削工具21とケーシングパイプ13とは、掘削方向にも、回転方向Tにも非係合状態である。
【0021】そして、この状態から掘削工具21を上記回転方向Tに回転させると、上記段部22…が第2の凹溝23…内に挿入されて、第2の凹溝23の先端側を向く壁面25が段部22に当接可能となり、すなわち掘削工具21がケーシングパイプ13と掘削方向に係合して一体に前進可能となり、さらに段部22が凹溝23の回転方向T側を向く壁面24に当接すると、掘削工具21はこの回転方向Tにもケーシングパイプ13と係合して一体に回転可能となる。従って、この係合状態においてハンマHから掘削工具21に回転打撃力を与えると、上記壁面25から段部22を介してケーシングパイプ13に掘削方向への打撃力が伝えられるとともに、上記壁面24からも段部22を介してケーシングパイプ13に回転方向Tへの回転力が与えられることとなり、これによりケーシングパイプ13の先端縁の掘削部17には、掘削工具21先端の掘削部9と同様の回転打撃力が与えられることとなる。なお、ケーシングパイプ13から掘削工具21を引き抜くには、上記とは逆に掘削工具21を回転方向Tの反対側に回転させて上記段部22…と凹溝10…とを周方向に一致させ、そのまま軸線O方向後方側に掘削工具21を真っ直ぐ後退させればよい。
【0022】このように、上記第2の実施形態の掘削装置および掘削工法によれば、ケーシングパイプ13の先端縁に設けられる掘削部17にも回転打撃力を与えることができるので、掘削工具21の掘削部9により掘削孔内周が崩れやすくなることとも相俟って、より効率的な掘削を図ることが可能となる。ここで、上記第2の実施形態の掘削工具21では、上述のように第1の実施形態に見られた掘削工具1の先端部2の外周面7から突出する当接部12は設けられていないが、本第2の実施形態においても、このような当接部12を設けるとともに、ケーシングパイプ13側にもこの当接部12が当接する段部16を設けるようにしてもよく、その際、この段部16に当接部12が当接した状態で、上記段部22…と第2の凹溝23…との軸線O方向の位置が一致するようにしておけば、掘削工具1とケーシングパイプ13とが係合状態となるように容易に位置決めすることが可能となる。
【0023】また、上記第2の実施形態の掘削装置では、6条の上記凹溝10…が形成されるのに合わせて、6つの段部22…をケーシングパイプ13に点在するように形成するとともに、該凹溝10…のそれぞれに第2の凹溝23…を連通するように形成しているが、例えば段部22…を1つおき、あるいは2つおき等に形成したり、これに合わせて第2の凹溝23…も1つおき、あるいは2つおき等に形成したりしてもよい。すなわち、この第2の実施形態では、掘削工具21を回転方向Tに回転させた際に、全ての段部22が第2の凹溝23に挿通されて掘削工具21とケーシングパイプ13とが係合すればよいのであり、この条件が満足されるのであれば、例えば段部22は第2の凹溝23より少なくてもよく、また凹溝10…の数や配置についても適宜に設定してよい。
【0024】さらに、上記第1、第2の実施形態の掘削装置においては、図1や図3に示すように、ケーシングパイプ13の掘削部17となるケーシングトップ15の先端縁を、側面視に軸線Oに垂直な方向に延びるように形成しているが、例えばこの先端縁を、図5や図6に示すように周方向に向けて上記掘削方向に出没する凹凸状に形成するようにしてもよい。この場合、この掘削部17がなす凹凸形状は、図5に示すような三角形の鋸刃状でもよく、また図6に示すような波形形状でもよく、さらに他の形状であってもよい。しかるに、このような構成を採った場合には、このケーシングパイプ13の掘削部17による掘削効果が向上し、特に上記第2の実施形態のようにケーシングパイプ13にも回転力が与えられるときには、この凹凸形状によって掘削孔の内周がより崩されやすくなるので効果的である。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の掘削装置および掘削工法によれば、特に泥岩層や軟岩層等の柔らかい地層にケーシングパイプを建て込む際に、拡径ビットのような構造の複雑な掘削工具を用いることなく、確実かつ比較的安価に掘削を行うことが可能となる。
- 【公開番号】特開2000−17982(P2000−17982A)
【公開日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【発明の名称】掘削装置および掘削工法
- 【出願番号】特願平10−189492
【出願日】平成10年7月3日(1998.7.3)
【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外9名)
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