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ケーシングの連結構造
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- 【要約】
【課題】 連結および取り外しが容易であって溶接設備等を要することがなく、取り外し後にそのまま再使用可能なケーシングの連結構造を提供する。
【解決手段】 掘削工具によって掘削された削孔内に複数の円筒状のケーシングをその軸線O方向に連結して挿入するためのケーシングの連結構造であって、互いに連結される一対のケーシング1A,1Bを、一方のケーシング1Aの連結端部2が他方のケーシング1Bの連結端部3に嵌挿可能とするとともに、これらの連結端部2,3の互いに対向する内外周面2a,3aには、連結端部2,3が嵌挿された状態で互いに対向する凹溝4,7をこれら内外周面2a,3aの周方向に延びるようにそれぞれ形成し、これらの凹溝4,7が対向して画成される凹孔9に、内外周面2a,3aの周方向に沿って、コイルばね31とその内部に挿入したワイヤロープ32とによって構成した連結部材10を挿入する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 掘削工具によって掘削された削孔内に複数の円筒状のケーシングをその軸線方向に連結して挿入するためのケーシングの連結構造であって、互いに連結される一対のケーシングは、一方のケーシングの連結端部が他方のケーシングの連結端部に嵌挿可能とされるとともに、これらの連結端部の互いに対向する内外周面には、該連結端部が嵌挿された状態で互いに対向する凹溝がこれら内外周面の周方向に延びるようにそれぞれ形成されており、これらの凹溝が対向して画成される凹孔に、上記内外周面の周方向に沿って連結部材が挿入されていることを特徴とするケーシングの連結構造。
【請求項2】 上記連結部材は、可撓性を有する軸状部材であることを特徴とする請求項1に記載のケーシングの連結構造。
【請求項3】 上記凹孔には、上記連結部材の端部を収容して係止する係止部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーシングの連結構造。
【請求項4】 上記連結端部の内外周面には、複数の上記凹孔が上記軸線方向に並んで画成されるように、それぞれ複数の上記凹溝が形成されるとともに、これら複数の凹孔に挿入される上記連結部材同士は、その端部の位置が周方向に互いにずらされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のケーシングの連結構造。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、掘削工具によって掘削された削孔内に複数の円筒状のケーシングをその軸線方向に連結して挿入するためのケーシングの連結構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】掘削工具によって地盤等を掘削する場合、掘削された削孔内に周囲の地盤が崩落して削孔が埋められてしまったりするのを防ぐため、掘削工具の前進とともに削孔内に円筒状のケーシングを挿入することが行われる。ここで、削孔がケーシングの長さ以上の深さとなる場合には、複数のケーシングを用意して、先のケーシングが削孔内に挿入される度に次のケーシングを軸線方向に順次連結してゆくようにしている。そして、このように複数のケーシングをその軸線方向に連結してゆく場合、従来は、先に挿入されたケーシング後端の連結端部に次のケーシング先端の連結端部を突き合わせ、あるいは嵌合させた上で、両端部を溶接することによりこれらのケーシングを連結するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような連結構造では、削孔の掘削現場に溶接のための設備を用意しておかなければならず、しかも連結のための溶接作業に多くの時間が費やされてしまうことが避けられない。また、このように削孔にケーシングを挿入しながら掘削を行なう場合には、削孔が所定の深さまで形成された後にケーシングを引き抜いてしまうこともあり、その際には引き抜かれたケーシングを順次取り外すために溶接された連結端部を再び加熱して溶断したりしなければならず、やはり所要の設備と多くの作業時間とを要する結果となる。さらに、こうして溶接、溶断されたケーシングは、その連結端部が変形していたり、熱によって変質していたりすることが多く、そのままの状態ではこれを再度削孔への挿入に使用することはできないという問題もある。
【0004】本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、連結および取り外しが容易であって溶接設備等を要することがなく、しかも取り外した後にそのまま再使用することが可能なケーシングの連結構造を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、掘削工具によって掘削された削孔内に複数の円筒状のケーシングをその軸線方向に連結して挿入するためのケーシングの連結構造であって、互いに連結される一対のケーシングを、一方のケーシングの連結端部が他方のケーシングの連結端部に嵌挿可能とするとともに、これらの連結端部の互いに対向する内外周面には、該連結端部が嵌挿された状態で互いに対向する凹溝をこれら内外周面の周方向に延びるようにそれぞれ形成し、これらの凹溝が対向して画成される凹孔に、上記内外周面の周方向に沿って連結部材を挿入することを特徴とする。従って、このような構成の連結構造によれば、ケーシングを連結する際には上記凹孔に連結部材を挿入するだけでよく、また連結を解除してケーシングを取り外す際にも凹孔から連結部材を取り出せばよく、しかも取り外し後のケーシングの連結端部に変形や変質が生じることもない。
【0006】ここで、上記連結部材として、例えば金属線を螺旋状に巻回したコイルばねや、金属線を撚り上げたワイヤロープ、あるいは適度な太さおよび柔軟性を持つ金属製のピアノ線など、さらにはこれらを複合した形態として、例えばコイルばねの内部にワイヤロープあるいはピアノ線等を挿入したもの等、可撓性を有する軸状部材を採用することにより、円筒状のケーシングの周方向に湾曲するように延びる上記凹孔への連結部材の挿入および凹孔からの取り出し(引き抜き)が容易になる。また、この凹孔に、上記連結部材の端部を収容して係止する係止部を形成することにより、削孔にケーシングを挿入する際や削孔からケーシングを引き抜く際に連結部材の端部が削孔に引っ掛かったり、あるいはこうして端部が引っ掛かった連結部材が凹孔から外れてしまったりするような事態を防止することができる。さらに、上記ケーシングの連結強度の向上を図るには、上記連結端部の内外周面に、複数の上記凹孔が上記軸線方向に並んで画成されるように、それぞれ複数の上記凹溝を形成するのが望ましく、この場合、これら複数の凹孔に挿入される上記連結部材同士を、その端部の位置が周方向に互いにずらされるようにして挿入すれば、一層の連結強度の向上を図ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】図1ないし図4は、本発明の第1の実施形態を示すものである。これらの図において符号1A,1Bで示すのは、互いにその軸線O方向に連結される一対の円筒状のケーシングであって、これらのケーシング1A,1Bの互いに連結される端部には、それぞれ該ケーシング1A,1Bよりも若干外径の大きな環状の連結端部材2A,3Aが軸線Oに同軸に溶接されて取り付けられることにより、連結端部2,3が形成されている。
【0008】ここで、これらの連結端部2,3のうち、一方のケーシング(図2において下側のケーシング)1Aの連結端部2は、その開口部側の内周面2aが一段拡径するように形成されており、この内周面2aには、上記軸線Oを中心に周回する断面半円状の2条の凹溝4,4が該軸線O方向に並ぶように形成されている。また、この連結端部2には、その外周面に周方向に延びる長円形状に開口する一対の窓部5,5が、それぞれに上記凹溝4,4に貫通するように、かつ軸線Oを挟んで互いに反対側に位置するように形成されるとともに、これらの窓部5,5に対して該連結端部2の周方向の一方の側(図1においては軸線Oを中心とした時計回り方向側)に隣接した位置には、この連結端部2の外周面に円形に開口する一対の取付孔6,6が、やはりそれぞれに上記凹溝4,4に貫通するように、かつ互いに軸線Oを挟んで反対側に位置するように形成されている。
【0009】一方、上記ケーシング1A,1Bのうちの他方のケーシング(図2において上側のケーシング)1Bの連結端部3は、その開口部側の外周面3aが段部3bを介して一段縮径するように形成されており、この外周面3aを上記一方のケーシング1Aの連結端部2の上記内周面2aに密着させて対向させるようにして、該連結端部2内に嵌挿可能とされている。また、この連結端部3の外周面3aには、上述のように該連結端部3を上記連結端部2に嵌挿して上記段部3bを連結端部2の端面2bに当接させた状態において、この連結端部2の内周面2aに形成された上記一対の凹溝4,4に軸線O方向に対応する位置に、これら凹溝4,4と同径の半円断面をなす一対の凹溝7,7が、上記軸線Oを中心に周回するように形成されている。さらに、この他方のケーシング1Bの連結端部3には、その内周面から上記凹溝7,7にそれぞれ貫通する一対の通し孔8,8が軸線Oを挟んで互いに反対側に形成されており、これらの通し孔8,8の断面は上記取付孔6よりも僅かに径の大きな円形に形成されている。
【0010】そして、上述のように連結端部2内に連結端部3を嵌挿した状態で、上記凹溝4,4と凹溝7,7とが対向して画成される断面円形の凹孔9,9には、上記窓部5,5からそれぞれ連結部材10,10が挿入され、この連結部材10に凹溝4および凹溝7が係合することによって連結端部2,3は上記軸線O方向に一体化され、ケーシング1A,1Bが連結される。また、このとき連結端部2,3は周方向については、図3に示すように上記取付孔6,6と通し孔8,8とが互いに同軸となるように配置され、かつ各取付孔6にはそれぞれスプリングピン11が装着されて上記通し孔8内に挿通されており、このスプリングピン11によって凹孔9の一部が閉塞されるようになされている。ここで、上記取付孔6に対して通し孔8が僅かに大径とされるのに伴い、この取付孔6の取り付けられるスプリングピン11の外径に対しても通し孔8の内径は僅かに大径とされ、スプリングピン11と通し孔8との間には僅かな間隙が明けられることとなる。なお、取付孔6の孔径が大きい場合などには、このスプリングピン11を二重にしたりしてもよい。
【0011】ここで、本実施形態では、上記連結部材10として可撓性を有する軸状部材が用いられており、より具体的には金属線を螺旋状に巻回してなるコイルばね12が使用されていて、その外径は上記凹孔9の内径よりも僅かに小さくされている。そして、このコイルばね12は、上述のように窓部5から取付孔6側とは反対の上記周方向の他方の側(図1においては軸線Oを中心とした反時計回り方向側)に向けて上記凹孔9内に挿入され、該凹孔9に沿って連結端部2,3の間を軸線O回りに略一周したところで、図1に示すようにその先端が上記スプリングピン11に当接する。その後、さらにコイルばね12を凹孔9内に押し込むと、コイルばね12は圧縮されてその後端部12aまでが窓部5から凹孔9内に挿入されるので、この時点で押し込み力を開放してコイルばね12を伸長させると、このコイルばね12の後端部12aは凹孔9内を窓部5から上記周方向の一方の側に向けて伸びてスプリングピン11に上記先端とは反対側から当接し、図3に示すようにこのスプリングピン11と窓部5との間の凹孔9内に収容されて係止される。従って、本実施形態では、この間の凹孔9部分が、上記連結部材10の端部を収容して係止する係止部13とされる。
【0012】しかるに、このように構成されたケーシングの連結構造によれば、上述のように連結端部2,3を嵌挿させてスプリングピン11を取り付け、連結部材10を凹孔9内に挿入するだけでケーシング1A,1Bの連結が可能であり、従来の溶接による連結構造のように掘削現場に溶接設備を必要とすることがなく、しかも短時間に容易に連結作業を行うことができる。また、削孔からケーシングを引き抜いて順次取り外してゆく場合でも、この連結部材10を凹孔9から抜き出してスプリングピン11を外すだけで、連結端部2,3の連結を解除してケーシング1A,1Bを取り外すことが可能であり、やはり従来の溶接による連結構造に対し、連結端部を溶断する設備が不要で、しかも短時間に容易に取り外しを行うことができる。さらに、こうして取り外されたケーシング1A,1Bは連結前と同じ状態であるので、そのままこれを順次連結して削孔内に挿入することが可能であり、ケーシングの有効利用を図ることが可能となる。
【0013】また、本実施形態では上記連結部材10が金属線を螺旋状に巻回したコイルばね12であって可撓性を有する軸状部材であり、円筒状のケーシング1A,1Bの周方向に湾曲して延びるように円環状の連結端部2,3の間に形成される凹孔9に対し、このような凹孔9に沿って連結部材10を撓ませながら挿入することが可能であるので、かかる連結部材10の挿入および抜き出しを一層容易とすることができ、ケーシング1A,1Bの連結および取り外しに要する時間をさらに短縮することが可能となる。しかも、本実施形態における連結部材10としてのコイルばね12は、その軸線方向に圧縮して上記螺旋状に巻回された金属線を密着させることにより、該軸線に対する径方向からの負荷に十分な強度を確保することができ、特にケーシングを引き抜く際に作用する負荷にも抗してケーシング1A,1Bの連結端部2,3を確実に連結することができる。その一方で、かかるコイルばね12は部分的に大きく湾曲させることが比較的容易であるので、このコイルばね12の後端部12aを上記係止部13に収容する際や係止部13から取り出す際の取り扱いも簡単であるという利点を有する。
【0014】さらに本実施形態では、このように連結部材10の端部としてのコイルばね12の後端部12aを収容して係止する係止部13が、凹孔9の上記窓部5とスプリングピン11との間の部分に画成されており、これにより連結部材10の端部が連結端部2,3の外周側に突出したりすることがなくなるので、削孔にケーシングを挿入する際や削孔からケーシングを引き抜く際にこの端部が削孔内周に引っ掛かったり、あるいはこうして引っ掛かった端部に引っ張られて連結部材10が凹孔9から引き抜かれたりするような事態を未然に防止することができる。しかも本実施形態では、この係止部13を画成するスプリングピン11が挿通される連結端部3の通し孔8がスプリングピン11よりも僅かに大径とされて、両者の間には図3に示すように僅かな間隙が明けられており、このため連結端部2,3が軸線O回りに捻られるような力を受けたりしても、これによってスプリングピン11が剪断されてしまうような事態を防止することができる。
【0015】さらにまた、本実施形態では、ケーシング1A,1Bの連結端部2,3の内外周面2a,3aにそれぞれ2条の凹溝4,4および凹溝7,7が軸線O方向に並ぶように形成されており、これらにより連結端部2内に連結端部3を嵌挿した状態で2つの凹孔9,9が画成されるようになされている。そして、これらの凹孔9,9のそれぞれに上記連結部材10,10が挿入されてケーシング1A,1Bが連結されるので、本実施形態によれば、凹孔9や連結部材10が一つである場合に比べて個々の連結部材10に作用する力の分散を図ることができ、ケーシング1A,1Bの連結強度の向上を図ることができる。なお、本実施形態ではこのように2つの凹孔9,9が軸線O方向に並んで画成されるようにしているが、上記連結端部2,3の内外周面2a,2aの軸線O方向の幅を大きくできない場合や、こられの連結端部2,3に作用する力が小さい場合などには凹孔9を一つとしてもよく、逆に上記内外周面2a,3aの幅を大きく確保できる場合や連結端部2,3に作用する力が大きい場合などには、3つ以上の凹孔9…が画成されるようにしてもよい。
【0016】さらに、本実施形態では、上記2つの凹孔9,9に連通する上記窓部5,5や、これら窓部5,5に隣接する取付孔6,6、通し孔8,8およびスプリングピン11,11が、上記軸線Oを挟んで互いに反対側に位置するように設けられており、これに伴いこれらの凹孔9,9に挿入される上記連結部材10,10同士も、その端部の位置が周方向に互いにずらされるようにして配置されることとなる。すなわち、本実施形態においては、上記窓部5によって連結端部2が切り欠かれることになる部分や、上記連結部材10の端部同士が対向する部分など、連結強度が損なわれるおそれのある部分が、周方向にずらされていて軸線O方向に並ぶことがないため、ケーシング1A,1Bの削孔への挿入時や削孔からの引き抜き時に軸線O方向に作用する力がこれらの部分に集中して連結端部2,3に破損が生じるような事態を防止することができ、上述したように複数の連結部材10,10によって連結端部2,3が連結されることとも相俟って、一層の連結強度の向上を図ることができる。
【0017】なお、本実施形態では、このように2つの凹孔9,9に連結部材10,10を挿入するに際して、該連結部材10,10の端部を、軸線Oを挟んで互いに反対側に位置するように配置しているが、上述のように連結端部2,3に3つ以上の凹孔9…を画成するようにして、そのそれぞれに連結部材10…を挿入するような場合には、これらの連結部材10の端部が周方向に等間隔に位置するように、例えば3つの凹孔9…を画成するようにして連結部材10…を挿入する場合には、各連結部材10の端部が周方向に120°ずつずらされるようにして配置すればよい。また、本実施形態では、1つの凹孔9に1つの連結部材10を挿入するようにしているが、例えば1つの凹孔9に周方向に分割された複数の連結部材10…を挿入するようにしてもよく、この場合でも、複数の凹孔9…を軸線O方向に並ぶように画成したときには、これらの凹孔9…に挿入された連結部材10…の端部の位置は、各凹孔9…同士の間で周方向にずらされるように配置されるのが望ましい。
【0018】一方、上記第1の実施形態では、上記連結部材10に用いられる可撓性を有する軸状部材としてコイルばね12を採用しているが、この種の可撓性を有する軸状部材として他には、例えば図5ないし図7に示す本発明の第2の実施形態のような多数の金属線を撚り上げてなるワイヤロープ21や、あるいは適度な柔軟性を有する金属製のピアノ線などを用いることが可能である。ただし、この図5ないし図7に示す第2の実施形態において、図1ないし図4に示す第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。
【0019】ここで、この第2の実施形態における連結部材10としてのワイヤロープ21は、その後端部21aが輪をなすように丸め込まれた上でカシメ部材22によって束ねられ、このカシメ部材22を押し潰してかしめることにより、図7に示すように環状に形成されている。なお、この押し潰されたカシメ部材22が太すぎる場合は、その外周を削り取るなどすればよい。一方、この第2の実施形態における窓部23は、図7に示すように連結端部2の外周面に長方形状に開口するように形成されており、その軸線O方向(図5および図7における上下方向)の幅は、ワイヤロープ21の環状に丸められた上記後端部21aの外径よりも小さく、またその周方向(図7における左右方向)の長さは該後端部21aの外径と略同等とされている。
【0020】さらに、この連結端部2の内周面2aには、上記窓部23の裏側に、該内周面2a側から見て上記軸線O方向の幅が上記ワイヤロープ21の環状に丸められた後端部21aの外径と略等しい幅で、上記周方向の長さが上記窓部23よりも大きな長円状または楕円状をなし、かつ上記ワイヤロープ21の後端部21aを収容可能な深さとされた凹部が、この内周面2aに形成される凹溝4および上記窓部23に連通するように形成されており、この凹部と連結端部3の外周面3aとの間に画成される空間が当該第2の実施形態における係止部24とされる。なお、この係止部24は、上記第1の実施形態と同様に、連結端部2の内周面2aに軸線O方向に並ぶように形成される2条の凹溝4,4のそれぞれに一つずつ、軸線Oを挟んで周方向に互いに反対側に位置するように形成されている。
【0021】しかるに、このように構成された第2の実施形態においては、上記第1の実施形態と同様に、一方のケーシング1Aの連結端部2に他方のケーシング1Bの連結端部3を嵌挿して凹孔9を画成し、この凹孔9に上記窓部23から連結部材10としての上記ワイヤロープ21を挿入することにより、ケーシング1A,1Bが連結される。また、この第2の実施形態において、上記ワイヤロープ21の後端部21aは、当該後端部21aがなす輪が上記軸線O方向に偏平するように撓められた状態で窓部23から上記係止部24内に押し入れられ、この係止部24内で軸線O方向に拡がって係止される。従って、この第2の実施形態の連結構造によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0022】また、この第2の実施形態においては、連結部材10として金属線を撚り上げてなるワイヤロープ21が用いられており、第1の実施形態における連結部材としてのコイルばね12に比べて中実であるため、可撓性を維持しつつも強度がより高く、ケーシング1A,1Bの一層確実な連結を図ることが可能となる。さらに、かかる連結部材10として上述したピアノ線を用いれば、ワイヤロープ21よりもさらに中実であるため、より一層確実にケーシング1A,1Bを連結することが可能となる。
【0023】なお、上記第2の実施形態の連結端部2のように窓部23および係止部24を形成した場合において、連結部材10として上述したコイルばねやピアノ線を用いることも可能であり、この場合には、コイルばねやピアノ線の係止部24に収容される端部を予め係止部24と略同幅のフック状に折り曲げて形成するなどしておき、これを撓めた状態で窓部23から係止部24内に押し入れて係止部24内で拡げさせることにより、該係止部24に連結部材10の端部を収容して係止させることができる。また、上記第1、第2の実施形態では、ケーシング1A,1Bの連結される端部に連結端部材2A,3Aを溶接して取り付けることにより上記連結端部2,3を形成しているが、例えばケーシング1A,1Bの肉厚が十分に確保されている場合などには、ケーシング自体の端部の内外周面を段状に形成するとともにこれらに凹溝を形成して、連結端部を直接ケーシングに形成するようにしてもよい。
【0024】さらに、上記第1及び上記第2の実施の形態では、上記連結部材10に用いられる可撓性を有する軸状部材として、それぞれ、金属線を螺旋状に巻回してなるコイルばね12と多数の金属線を撚り上げてなるワイヤロープ21を採用しているが、両者を組み合わせて使用することも可能である。以下に、本発明の第3の実施の形態について、図8ないし図11を参照しながら説明する。図8は本発明の第3の実施形態を示すケーシング1A,1Bの連結端部2,3の一部破断平面図であり、図9は連結部材10を破断して示した部分斜視図であり、図10はケーシング1A,1Bの連結端部2,3の拡大縦断面図であり、図11は図10におけるW―W線横断面図である。なお、図1ないし図7に示す第1及び第2の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を簡略もしくは省略する。
【0025】本実施の形態では、上記連結部材10は、金属線を螺旋状に巻回してなるコイルばね31と、多数の金属線を撚り上げてなるワイヤロープ32から構成されている。コイルばね31は、その外径が凹孔9の内径よりも僅かに小さくされており、ワイヤロープ32は、その外径がコイルばね31の内径よりも僅かに小さくされており、図9に示したように、コイルばね31の内部にはコイルばね31と略同軸にワイヤロープ32が挿入されている。さらに、図11に示したように、コイルばね31とワイヤロープ32は凹孔9内に収容されているとともに、コイルばね31の先端と後端、及びワイヤロープ32の先端と後端のそれぞれが、スプリングピン11を両側から挟み込むようにしてスプリングピン11に当接している。
【0026】しかるに、このように構成された第3の実施形態においては、上記第1及び第2の実施形態と同様に、一方のケーシング1Aの連結端部2に他方のケーシング1Bの連結端部3を嵌挿して凹孔9を画成し、この凹孔9に上記窓部5から連結部材10としてのコイルばね31及びワイヤロープ32を挿入することにより、ケーシング1A,1Bが連結される。
【0027】また、この第3の実施形態においては、連結部材10として金属線を螺旋状に巻回してなるコイルばね31と、金属線を撚り上げてなるワイヤロープ32との双方が用いられているため、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。これに加えて、コイルばね31の内部に中実とされたワイヤロープ32が挿入されているために、コイルばね31に径方向からの負荷が加えられた際にも、コイルばね31が径方向に潰れることを防いでおり、特にケーシングを引き抜く際に作用する負荷にも抗してケーシング1A,1Bの連結端部2,3をより一層確実に連結することができる。
【0028】なお、この第3の実施形態においては、金属線を螺旋状に巻回してなるコイルばね31の内部に、金属線を撚り上げてなるワイヤロープ32を挿入することによって連結部材10を形成したが、これに限定されず、コイルばね31の内部に鋼線やピアノ線等を挿入することによって連結部材10を形成してもよい。また、本実施の形態では、上記第1の実施形態と同様に、スプリングピン11と窓部5との間の凹孔9内を、上記連結部材10の端部を収容して係止する係止部13としたが、上記第2の実施形態と同様の係止部24を採用してもよい。この場合には、ワイヤロープ32の後端部32aが輪をなすように丸め込まれた上でカシメ部材22によって束ねられ、このカシメ部材22を押し潰してかしめることにより、環状に形成されていればよく、コイルばね31の後端部31aは、カシメ部材22若しくはワイヤロープ32の環状に丸められた後端部32aの外周部に当接して係止される。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、連結端部を嵌挿させて画成される凹孔に連結部材を挿入することによってケーシングを連結することが可能であり、またケーシングを取り外す場合も連結部材を凹孔から引き抜くだけで連結端部が抜脱可能となるので、ケーシングの連結作業および取り外し作業を容易かつ短時間に行うことができて作業効率の向上を図ることができ、また従来のような溶接設備や溶断設備を要することもなく作業コストの削減を促すことができて経済的である。しかも、こうして取り外されたケーシングは、削孔への挿入前の元の状態のままであるので、そのまま再利用することが可能であり、一層効率的かつ経済的な作業を促すことができる。
- 【公開番号】特開2000−17983(P2000−17983A)
【公開日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【発明の名称】ケーシングの連結構造
- 【出願番号】特願平10−319657
【出願日】平成10年11月10日(1998.11.10)
【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外9名)
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