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切刃片がすぐれた圧縮強さを有する掘削工具
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- 【要約】
【課題】 切刃片がすぐれた圧縮強さを有する切削工具を提供する。
【解決手段】 合金鋼製ビット本体の先端面に複数の炭化タングステン基超硬合金製ポストが所定の配列で固着され、前記ポストの先方側面に焼結ダイヤモンド製切刃片が直接ろう付けされた構造の掘削工具において、前記切刃片を、10〜50μmの粒径を有し、かつ平均粒径が20〜30μmのダイヤモンド粗粒:80〜90容量%、7μm以下の粒径を有し、かつ平均粒径が2〜4μmのダイヤモンド細粒:50〜10容量%、Mg、Ca、Sr、およびBaの炭酸塩および酸化物のうちの1種または2種以上からなる焼結助剤成分および不可避不純物:残り、からなる組成を有すると共に、上記ダイヤモンド粗粒が相互に隣接結合し、前記ダイヤモンド粗粒間に上記焼結助剤成分が存在し、かつ前記焼結助剤成分中に上記ダイヤモンド細粒が分散分布した組織を有する焼結ダイヤモンドで構成する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 合金鋼製ビット本体の先端面に複数の炭化タングステン基超硬合金製ポストが所定の配列で固着され、前記ポストの先方側面に焼結ダイヤモンド製切刃片が直接ろう付けされた構造の掘削工具において、上記切刃片を、10〜50μmの粒径を有し、かつ平均粒径が20〜30μmのダイヤモンド粗粒:80〜90容量%、7μm以下の粒径を有し、かつ平均粒径が2〜4μmのダイヤモンド細粒:50〜10容量%、Mg、Ca、Sr、およびBaの炭酸塩および酸化物のうちの1種または2種以上からなる焼結助剤成分および不可避不純物:残り、からなる組成を有すると共に、上記ダイヤモンド粗粒が相互に隣接結合し、前記ダイヤモンド粗粒間に上記焼結助剤成分が存在し、かつ前記焼結助剤成分中に上記ダイヤモンド細粒が分散分布した組織を有する焼結ダイヤモンドで構成したことを特徴とする切刃片がすぐれた圧縮強さを有する切削工具。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、切刃片が高い圧縮強さを有し、したがって高圧縮負荷のかかる高速掘削にも切刃片に欠けやチッピング(微小欠け)などの発生なく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する掘削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に、例えば石油などの掘削に、図1(a)および(b)にそれぞれ概略斜視図および概略正面図で示される通り、合金鋼製ビット本体の先端面に、複数の炭化タングステン基超硬合金製ポスト(以下、超硬ポストと云う)が所定の配列でろう付けや焼きばめなどの手段により固着され、前記超硬ポストの先方側面に焼結ダイヤモンド製切刃片が直接ろう付けされた構造の掘削工具が用いられていることは良く知られるところである。また、上記掘削工具を構成する切刃片が、容量%(以下、%は容量%を示す)で、平均粒径が3〜30μmのダイヤモンド粒:85〜99.9%、Mg、Ca、Sr、およびBaの炭酸塩および酸化物(以下、それぞれMgCO3 、CaCO3 、SrCO3 、BaCO3 、MgO、CaO、SrO、およびBaOで示す)のうちの1種または2種以上からなる焼結助剤成分および不可避不純物:残り、からなる組成を有すると共に、上記ダイヤモンド粒が相互に隣接結合し、これに前記焼結助剤成分が分散分布した組織を有する焼結ダイヤモンドで構成されていることも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の石油はじめ、各種の掘削装置の高性能化および高出力化はめざましく、かつ掘削作業の省力化および省エネ化に対する要求も強く、これに伴い、掘削作業は高速化の傾向にあるが、上記の従来掘削工具においては、特にこれの切刃片を構成する焼結ダイヤモンドのもつ圧縮強さが十分でないために、高速掘削時に発生する高圧縮負荷に耐えられず、このため前記切刃片には欠けやチッピングなどが発生し易く、これによって摩耗進行が促進されるようになることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、上述のような観点から、掘削工具を構成する焼結ダイヤモンド製切刃片に着目し、高速掘削時に発生する高圧縮負荷にも十分満足に耐えることのできる圧縮強さを焼結ダイヤモンド製切刃片に具備せしめるべく研究を行った結果、切刃片を構成する焼結ダイヤモンドにおけるダイヤモンド粒を、10〜50μmの粒径を有し、かつ平均粒径が20〜30μmのダイヤモンド粗粒と、7μm以下の粒径を有し、かつ平均粒径が2〜4μmのダイヤモンド細粒で構成すると、この結果の焼結ダイヤモンドは、前記ダイヤモンド粗粒が相互に隣接結合し、前記ダイヤモンド粗粒間に焼結助剤成分が存在し、かつ前記焼結助剤成分中に上記ダイヤモンド細粒が分散分布した組織をもつようになり、このような組織をもった焼結ダイヤモンドで切刃片を構成した掘削工具は、高速掘削でも前記焼結ダイヤモンドが高い圧縮強さをもつようになることから、切刃片に欠けやチッピングなどの発生なく、長期に亘ってすぐれた掘削性能を発揮するようになるという研究結果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果にもとづいてなされたものであって、合金鋼製ビット本体の先端面に複数の超硬ポストが所定の配列で固着され、前記ポストの先方側面に焼結ダイヤモンド製切刃片が直接ろう付けされた構造の掘削工具において、上記切刃片が、10〜50μmの粒径を有し、かつ平均粒径が20〜30μmのダイヤモンド粗粒:80〜90%、7μm以下の粒径を有し、かつ平均粒径が2〜4μmのダイヤモンド細粒:50〜10%、Mg、Ca、Sr、およびBaの炭酸塩および酸化物のうちの1種または2種以上からなる焼結助剤成分および不可避不純物:残り、からなる組成を有すると共に、上記ダイヤモンド粗粒が相互に隣接結合し、前記ダイヤモンド粗粒間に上記焼結助剤成分が存在し、かつ前記焼結助剤成分中に上記ダイヤモンド細粒が分散分布した組織を有する焼結ダイヤモンドで構成してなる、切刃片がすぐれた圧縮強さを有する掘削工具に特徴を有するものである。
【0006】つぎに、この発明の掘削工具の切刃片を構成する焼結ダイヤモンドにおけるダイヤモンド粗粒およびダイヤモンド細粒の粒径および平均粒径、さらに含有割合を上記の通りに限定した理由を説明する。
(A)ダイヤモンド粗粒(a)粒径ダイヤモンド粗粒の粒径は、経験的に定めたものであって、その粒径を10〜50μmとすることにより、この発明の焼結ダイヤモンドのもつ組織、すなわち相互に隣接結合したダイヤモンド粗粒間に焼結助剤成分が存在し、かつ前記焼結助剤成分中に上記ダイヤモンド細粒が分散分布した組織の形成が可能となり、このダイヤモンド粗粒の相互隣接結合によって所望の高い圧縮強さを確保するようにしたものであり、したがって粒径が10μm未満のものや、50μmを越えたものが存在すると、この部分での上記組織の形成が困難になるばかりでなく、この部分の強度低下が避けられず、この部分が欠けやチッピングの起点となることから、その粒径を10〜50μmと定めた。
(b)平均粒径その平均粒径が20μm未満になると、相対的に細粒組織となりすぎ、耐摩耗性に低下傾向が現れるようになり、一方その平均粒径が30μmを越えると反対に粗粒組織となり、特に切刃片に欠けやチッピングが発生し易くなることから、その平均粒径を20〜30μmと定めた。
(c)含有割合その含有割合が80%未満になると、耐摩耗性が急激に低下するようになり、一方その含有割合が90%を越えると、耐欠損性が低下するようになることから、その含有割合を80〜90%と定めた。
【0007】(B)ダイヤモンド細粒(a)粒径ダイヤモンド細粒の粒径も経験的に定めたものであって、その粒径が7μmを越えると、焼結助剤成分中に分散分布する密度が比例的に低くなって、所望のすぐれた圧縮強さを確保することができなくなることから、その粒径を7μm以下と定めた。
(b)平均粒径その平均粒径も同じく経験的に定めたものであり、その平均粒径が2μm未満になると、耐摩耗性の低下傾向が避けられず、一方その平均粒径が4μmを越えると、圧縮強さの低下が避けられなくなることから、その平均粒径を2〜4μmと定めた。
(c)含有割合その含有割合が5%未満では、圧縮強さに所望の向上効果が得られず、一方その含有割合が10%を越えても、圧縮強さに低下傾向が現れるようになることから、その含有割合を5〜10%と定めた。
【0008】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の掘削工具を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、それぞれ表1に示される最大粒径、最小粒径、および平均粒径を有するダイヤモンド粗粒およびダイヤモンド細粒、さらに各種の焼結助剤成分を用意し、これら原料粉末を同じく表1に示される配合割合に秤量し、まず、前記ダイヤモンド細粒と焼結助剤成分をアセトンを溶剤として用い、ボールミル中で6時間混合した後、真空乾燥し、ついで、これに残りのダイヤモンド粗粒を加えて、さらにボールミルで2時間乾式混合して混合粉末とし、この混合粉末を1ton/cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体をTaカプセルに封入した状態で通常のベルト式超高圧焼結装置に装填し、圧力:7〜9GPa、温度:2000〜2400℃の範囲内の所定の圧力および温度に30分間保持の条件で焼結して、いずれも直径:10mm×厚さ:1.2mmの寸法をもった円形チップ形状の焼結体をそれぞれ16個づつ形成し、これらの焼結体の表面をダイヤモンド砥石を用いて鏡面研磨した後、レーザーを用いて直径:8mmに加工して焼結ダイヤモンド製切刃片とし、この場合同時に直径:1.5mm×長さ:1.5mmの寸法をもった圧縮強さ測定用焼結試験片も形成し、ついで前記切刃片16個を、いずれも同じCo:6重量%、WCおよび不可避不純物:残りの組成および最大径:15mm×底面径:13mm×長さ:24mmの寸法並びに図1に示す形状を有する16個の超硬ポストの先方側面に、Ti:2重量%、Agおよび不可避不純物:残りの組成をもった厚さ:0.1mmのろう材を用い、このろう材を挟んだ状態で、Arガス中、温度:950℃に5分間保持の条件でろう付けし、さらにこのように切刃片をろう付けした16個の超硬ポストを、図1に示される通りJIS・SCM415に規定される合金鋼で構成されたビット本体の直径:240mmの先端面に十字状に配列形成された深さ:8mmの合計16個の凹みのそれぞれに、その底部を重量%でCu−40%Ag−6%Sn−2%Niの組成をもった厚さ:0.1mmのろう材を挟んで嵌着し、Arガス中、温度:800℃に5分間保持の条件でろう付けすることにより本発明掘削工具1〜12をそれぞれ製造した。また、比較の目的で、原料粉末として上記のダイヤモンド粗粒およびダイヤモンド細粒に代わって、表2に示される通りの平均粒径を有する市販のダイヤモンド粒を用いる以外は同一の条件で従来掘削工具1〜12を製造した。
【0009】この結果得られた本発明掘削工具1〜12および従来掘削工具1〜12は、それぞれこれを構成する焼結ダイヤモンド製切刃片が表1、2に示される配合割合と実質的に同じ組成を有し、かつ本発明掘削工具1〜12の切刃片は、いずれもダイヤモンド粗粒が相互に隣接結合し、前記ダイヤモンド粗粒間に焼結助剤成分が存在し、かつ前記焼結助剤成分中にダイヤモンド細粒が分散分布した組織をもち、一方従来掘削工具1〜12の切刃片は、いずれもダイヤモンド粒が相互に隣接結合し、これに焼結助剤成分が分散分布した組織をもつものであった。
【0010】つぎに、この結果得られた各種の掘削工具について、掘削材:1010kg/cm2 の一軸圧縮強度および75のショア硬さを有する安山岩、掘削速度:45cm/min、給水量:90l/min、回転速度:150r.p.m.、給圧:500kg/ビット、の条件で高速掘削試験を行ない、使用寿命に至るまでの掘削長をそれぞれ測定した。これらの測定結果を表1、2に示した。また、表1、2には上記焼結試験片を用いて圧縮強さを測定した結果も合わせて示した。
【0011】
【表1】【0012】
【表2】【0013】
【発明の効果】表1、2に示される結果から、本発明掘削工具1〜12は、これを構成する切刃片が、いずれもダイヤモンド粗粒が相互に隣接結合し、前記ダイヤモンド粗粒間に焼結助剤成分が存在し、かつ前記焼結助剤成分中にダイヤモンド細粒が分散分布した組織をもつことによって、きわめて高い圧縮強さをもつようになることから、苛酷な条件での掘削作業となる高速掘削にもかかわらず、前記切刃片に欠けやチッピングなどが発生するのが著しく抑制され、これによってすぐれた耐摩耗性を示し、すぐれた掘削性能を長期に亘って発揮するのに対して、従来掘削工具1〜12は、これを構成する切刃片が、いずれも高速掘削時に発生する高圧縮負荷に耐えられず、このため前記切刃片には欠けやチッピングなどが発生し易く、この結果掘削開始後短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
- 【公開番号】特開2000−2073(P2000−2073A)
【公開日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【発明の名称】切刃片がすぐれた圧縮強さを有する掘削工具
- 【出願番号】特願平10−169391
【出願日】平成10年6月17日(1998.6.17)
【出願人】
【識別番号】591062685
【氏名又は名称】石油公団
- 【代理人】
【識別番号】100076679
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 和夫 (外1名)
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