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二重管掘削ビット
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- 【要約】
【課題】 二重管による掘削を被圧水の存在下で行った場合に、内管と外管との間の環状の空間から被圧水が浸入する事を確実に防止出来るような二重管掘削ビットの提供を目的としている。
【解決手段】 相対的に移動可能な外管(12)及び内管(14)を有しており、外管(12)の半径方向内側の壁面にはテーパ面(22)が形成されており、内管(14)の先端に設けられた掘削ビット(20)の外周面には溝(42)が形成され、該溝(42)には弾性シール部材(40)が嵌合されている。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】 相対的に移動可能な外管及び内管を有しており、外管の半径方向内側の壁面にはテーパ面が形成されており、内管の先端に設けられた掘削ビットの外周面には溝が形成され、該溝には弾性シール部材が嵌合されている事を特徴とする二重管掘削ビット。
【請求項2】 内管の先端に設けられた掘削ビットは、内管が所定方向に回転している場合には切り離されないが、該所定方向と反対に回転した場合には内管から切り離されるように構成されている請求項1の二重管掘削ビット。
【請求項3】 前記テーパ面は、外管の先端部近傍に形成されている請求項1、2のいずれかの二重管掘削ビット。
【請求項4】 前記テーパ面は、外管の先端部から離隔された位置に形成されている請求項1、2のいずれかの二重管掘削ビット。
- 【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、所謂被圧水アンカー工法等で用いられる掘削技術に関し、相対的に移動可能な外管及び内管を有する二重管掘削ビットに関する。
【0002】
【従来の技術】被圧水アンカー工法は、例えば特開平6−306860号公報、特開平8−74250号公報、特開平8−49233号公報等で開示されている。そして、この被圧水アンカー工法或いはその他地盤を掘削する際に、相対的に移動可能な、すなわち相対的な回転或いは軸方向移動が可能な外管及び内管を有する二重管掘削ビットが用いる場合が存在する。
【0003】二重管掘削ビットは、先端部に複数の掘削用チップを円周状に配置した環状の掘削ビットを取りつけた外管と、掘削用チップ及び掘削水噴射用の通路を備えた掘削ビット(例えばクローネンビット)を先端に取り付けた内管とを同心となるように設置して、掘削を行う。そして、一定深度毎に、内管或いは外管を構成するロッドを継ぎ足して、所定の深度まで掘削を行うのである。
【0004】ここで、先端の掘削箇所には、被圧水すなわち掘削するべき地盤中に存在する高圧水が存在し、この高圧水が内管或いは外管の内部に浸入して地上側に噴出してしまう事は必ず防止されなければならない。そして掘削時には、掘削水として地上から高圧水が供給され、当該高圧水によるヘッドで被圧水の浸入、逆流を防止する事が出来る。
【0005】しかし、ロッドの継ぎ足し等、掘削を休止する場合には地上側からの高圧水の供給も休止するので、被圧水に対抗するヘッドも当該休止時には消滅する。そのため、被圧水の浸入、逆流の恐れがある。
【0006】これに対して、例えばクローネンビットでは、その内部に形成された高圧水用の通路には逆止弁が介装されており、被圧水の浸入或いは逆流を防止できるようになっている。
【0007】しかし、クローネンビットの外周部と外管内壁面との間の環状の空間或いは隙間については、その様な逆止弁を設ける事は非常に難しいのが現状である。すなわち、当該環状の空間からの被圧水の浸入、逆流を防止する有効な手法は、従来の二重管掘削においては確立されていないのが実状であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、二重管による掘削を被圧水の存在下で行った場合に、内管と外管との間の環状の空間から被圧水が浸入する事を確実に防止出来るような二重管掘削ビットの提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の二重管掘削ビットは、相対的に移動可能な外管及び内管を有しており、外管の半径方向内側の壁面にはテーパ面が形成されており、内管の先端に設けられた掘削ビットの外周面には溝が形成され、該溝には弾性シール部材が嵌合されている事を特徴としている。
【0010】ここで、弾性シール部材は、前記テーパ面と当接した際に圧縮変形して確実に水密状態となり得る部材であれば良い。例えばゴム製のO−リングを用いる事が出来る。
【0011】本発明の実施に際して、内管の先端に設けられた掘削ビットは、内管が所定方向に回転している場合には切り離されないが、該所定方向と反対に回転した場合には内管から切り離されるように構成されているのが好ましい。
【0012】そして、前記テーパ面は、外管の先端部近傍に形成されているのが好ましいが、外管の先端部から離隔された位置に形成しても良い。
【0013】かかる構成を具備する本発明によれば、例えば外管や内管を構成するロッドを継ぎ足し或いは切り継ぎする場合には、地上側の高圧水供給用ポンプ等のヘッドを付加する機器を一時停止しても、内管を外管に対して軸方向後方に移動Rする(引っ張り込む)ことにより、弾性シール部材、例えばO−リングをテーパ面に当接せしめ、当該O−リングを圧縮変形させて、前記環状の空間を水密にシールする作用を奏するようにせしめているのである。
【0014】そして、テーパ面の形成、例えばO−リングのような弾性シール部材との当接、という極めて簡便な構成により、逆止弁を設けたのと同等な作用効果が選られるのである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1において、本発明にかかる二重管掘削ビットが、全体を符号10で示されている。この二重管掘削ビット10は、環状の外管12と、その内側に配置されている内管14とを有している。そして、外管12の先端(図1の左端)には円環状に配置された複数の掘削チップ16を設けた環状ビット17が取り付けられており、内管14の先端には、掘削チップ18を有するクローネンビット20(内管の先端に設けられた掘削ビット)が取り付けられている。
【0016】環状ビット17の半径方向内方(外管の半径方向内側の壁面)には、テーパ面22を形成したテーパ部材24が溶接26されている。
【0017】クローネンビット20には、内管14内の高圧水流路(図示せず)を介して供給される高圧水が流れる通路28が形成されており、該通路28は複数本に分岐して複数の噴射口29に連通する。そして、噴射口29から高圧水が噴出して、掘削水として作用するのである。
【0018】通路28が分岐する空間30にはスプリング34が設けられており、該スプリング34は弁体36を弁座38に座着する方向に付勢している。そして、弁体36が弁座38に座着すると高圧水通路28を閉塞して、上流側の通路28−Uと空間30及び分岐した通路28との連通を遮断する。
【0019】クローネンビット20にはO−リング40(弾性シール部材)が配置されており、該O−リング40はクローネンビット20の外周部に形成された溝42に嵌合している。クローネンビット20にはピン44が設けられており、内管14にはL字状のピン溝46が形成されている。そして、後述するように、ピン44及びピン溝46の作用により、クローネンビット20が内管14から切り離されるのである。なお図1において、符号「S」は外管12と内管14との間に形成される環状の空間(或いは隙間)を示している。
【0020】次に、二重管掘削ビット10の作用について説明する。二重管掘削ビット10を用いて掘削をするに際しては、外管12と内管14とを図1で示すように配置して、内管14を反時計方向(矢印CCW方向)に回転せしめると共に、地上側の高圧水供給用ポンプ(図示せず)を駆動して、内管14内の高圧水流路(図示せず)を介して通路28−U、28に高圧水を供給する。ここで、供給された高圧水により弁体36はスプリング34の反発力に抗して図1中左方へ移動して、弁座38から離隔する。従って、高圧水は通路28−U、空間30、通路28、噴射口30を介して図1左端の掘削面へ、掘削水として供給される。
【0021】図1において、高圧水(被圧水)の流路が符号PAで示す複数の矢印で表現されている。そして、高圧水により掘削された土壌を含有するスラリーは、符号SAで示す複数の矢印で表現される流路を通って、地上側に送られる。
【0022】ここで、図示しない高圧水供給用ポンプから付加されるヘッドにより、外管12と内管14との間の環状の空間Sを介して、被圧水が地上側へ流出してしまう事はない。なお、図示しない高圧水供給用ポンプを停止した場合には、高圧水(被圧水)は、矢印PAで示される流路を逆流する。
【0023】図1において、内管14が反時計方向矢印CCWに回転している場合は、ピン44はピン溝46の端部と当接するので、クローネンビット20が内管14から脱落する事はない。これとは逆に、内管14を時計方向(矢印CW方向)に回転させて後方(矢印R方向)に引ピン込めば、ピン44はピン溝46に沿って相対移動するので、クローネンビット20は内管14から切り離されるのである。
【0024】ここで、例えば外管12や内管14を構成するロッドを切り継ぎする場合には、図示しない高圧水供給用ポンプを一時停止する必要がある。しかし、当該ポンプを一時停止してしまうと、外管12と内管14との間の環状の空間Sにヘッドが付加されなくなってしまうので、環状の空間Sを介して被圧水が浸入してしまう恐れがある。これに対して図1の二重管掘削ビット10では、内管14を後方に引っ張り込み、O−リング40をテーパ面22に強固に当接せしめる事により、環状の空間Sを水密に保つ事が出来る。すなわち、図1の状態から内管14を後方Rに引っ張れば、テーパ部材24のテーパ面22は、後方Rほど半径方向寸法(或いは内径)が小さくなるようなテーパであるため、クローネンビット20に設けられたO−リング40はテーパ面22と確実に接触或いは当接し、半径方向に圧縮されるため、O−リング40両側の空間を確実に水密な関係に保つ事が出来て、環状の空間Sからの被圧水の侵入を防止する事が出来る。
【0025】なお、図示しない高圧水供給ポンプが一時停止した場合には、通路28−Uにもヘッドが作用しなくなるが、スプリング34の反発力により弁体36が弁座38に座着するので、被圧水が通路28及び空間30を経由して、通路28−U側へ逆流しようとしても、弁体36によって遮られるのである。
【0026】図1の実施形態では、テーパ面22を有するテーパ部材24が外管12の端部(チップ16が設けられている個所)近傍に設けられているが、外管12の端部から離隔した箇所に設けても良い。図2−図4は、テーパ面22を有するテーパ部材24を外管12の端部から離隔した箇所に設けた本発明の第2の実施形態を示している。なお、図1と同様な部材については、同様な符号を付して重複説明は省略する。
【0027】第2実施形態にかかる二重管掘削ビット100を用いて掘削している状態が、図2で示されている。上述した通り、二重管掘削ビット100は、図1の二重管掘削ビット10と比較して、テーパ部材24の位置以外の構成については同一である。そして掘削に際しては、地上側の高圧水供給ポンプ(図示せず)から供給される高圧水を掘削水として用いつつ、内管14を反時計方向CWに回転して掘削を行う。ここで、内管14が反時計方向CWに回転していれば、ピン44はピン溝46から外れる事は無く、そのため、クローネンビット20は内管14から切り離されない。
【0028】内管14或いは外管14を構成するロッドを切り継ぎするため、図示しない高圧水供給ポンプを一時停止する必要があれば、図3で示すように、内管14を外管12に対して後方(矢印R方向)に移動して、テーパ部材24のテーパ面22とクローネンビット20のO−リング40とを当接させて、O−リング40を圧縮変形させる。これにより、O−リング40は、外管12と内管14との間の環状の空間Sに被圧水が浸入しないように、シール材として作用する。換言すれば、被圧水は外管12内の空間であってO−リング40よりも図中左側の領域までは浸入するが、O−リング40によって遮られるため、O−リング40よりも右側の環状空間Sには浸入し得ない。
【0029】所定深度まで掘削を完了して、クローネンビット20を切り離す際には、図3で示す状態において、内管14を時計方向CWに回転して、ピン44がピン溝46の周方向部分46−aに沿って移動する。そして、内管14内の流路からグラウト材(或いは高圧水)を噴射すれば(図4の矢印P)、ピン44はピン溝46の軸方向部分46−bに沿って移動する。その結果、図4で示すように、クローネンビット20は内管14から切り離されるのである。
【0030】グラウト材等を噴射する代りに、内管14を図4の位置よりも更に後方Rへ引っ張っても、クローネンビット20を内管14から切り離す事が可能である。
【0031】なお、図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記載ではない事を付記する。
【0032】
【発明の効果】本発明の作用効果を以下に列挙する。
(1) 地上側からの高圧水の供給が一時的に休止する場合に、被圧水が二重管の内管と外管の間の空間から浸入してしまう事か防止される。
(2) 複雑な機構を新たに設ける事無く、逆止弁を設けた場合と同様に、内管と外管との間の空間を水密状態にシールする事が可能となる。
(3) 二重管による掘削を、従来の二重管掘削ビットと同様に確実に行う事が出来る。
(4) 内管に接続される掘削ビットを確実に切り落とす事が出来る。
- 【公開番号】特開2000−54772(P2000−54772A)
【公開日】平成12年2月22日(2000.2.22)
【発明の名称】二重管掘削ビット
- 【出願番号】特願平10−223829
【出願日】平成10年8月7日(1998.8.7)
【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
【識別番号】591002245
【氏名又は名称】るいエンジニアリング株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100071696
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 敏忠 (外1名)
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