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バイメタルの製造方法
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- 【要約】
【課題】バイメタルの製造工程を煩雑化させることなく、応力除去の熱処理(エージング)工程により識別マークが不鮮明になるのを抑制するとともに、エッチングを用いずに識別マークを形成することが可能なバイメタルの製造方法を提供する。
【解決手段】このバイメタルの製造方法は、高膨張金属板1と低膨張金属板2とを接合することによりバイメタル3を形成する工程と、バイメタル3の高膨張側の表面に、UVインク28を用いて、高膨張側の表面か低膨張側の表面かを判別するための識別マークを印字する工程とを備えている。

- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の熱膨張率を有する第1金属板と、前記第1金属板の第1の熱膨張率よりも低い第2の熱膨張率を有する第2金属板とを接合することによりバイメタルを形成する工程と、
前記バイメタルを構成する前記第1金属板および前記第2金属板の少なくとも一方の表面に、紫外線硬化型インクを用いて、前記第1金属板の表面か前記第2金属板の表面かを判別するための識別マークを印字する工程とを備えた、バイメタルの製造方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化型インクに含有される紫外線硬化型樹脂には、耐熱性を有する成分が添加されている、請求項1に記載のバイメタルの製造方法。
【請求項3】
前記紫外線硬化型インクを用いて前記識別マークを印字する工程は、
前記バイメタルを構成する前記第1金属板および前記第2金属板の少なくとも一方の表面に、前記紫外線硬化型インクを付着させる工程と、
前記紫外線硬化型インクが付着した前記バイメタルの表面に、紫外線を照射する工程とを含む、請求項1または2に記載のバイメタルの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化型インクを付着させる工程は、
前記識別マークの形状に対応した形状の凸状部を有するマーキングシートを用いて、前記バイメタルを構成する前記第1金属板および前記第2金属板の少なくとも一方の表面に、前記識別マークを転写する工程を含む、請求項3に記載のバイメタルの製造方法。
【請求項5】
前記凸状部を有するマーキングシートは、シート設置ロールの表面上に設置されているとともに、前記バイメタルは、送り出しロールおよび巻き取りロールに巻き付けられており、
前記識別マークを転写する工程は、
前記シート設置ロールの表面上に設置された前記マーキングシートの凸状部の表面に前記紫外線硬化型インクを付着させた後、前記バイメタルを前記送り出しロールから前記巻き取りロールに連続的に巻き取ることにより前記バイメタルを連続的に移動させるとともに、前記シート設置ロールを回転させることによって、前記連続的に移動するバイメタルを構成する前記第1金属板および前記第2金属板の少なくとも一方の表面に、前記識別マークを連続的に転写する工程を含む、請求項4に記載のバイメタルの製造方法。
【請求項6】
前記識別マークを転写する工程は、
前記紫外線硬化型インクが充填されたインク容器にインク供給ロールを浸漬するとともに、前記インク供給ロールを前記マーキングシートの凸状部の表面に接触させながら回転することによって、前記マーキングシートの凸状部の表面に前記紫外線硬化型インクを付着させた後、前記マーキングシートの凸状部の表面に付着した前記紫外線硬化型インクを転写ロールに付着させ、かつ、前記転写ロールを回転させることにより、前記連続的に移動するバイメタルを構成する前記第1金属板および前記第2金属板の少なくとも一方の表面に、前記紫外線硬化型インクが付着された前記転写ロールを連続的に接触させることによって、前記識別マークを転写する工程を含む、請求項5に記載のバイメタルの製造方法。
【請求項7】
前記凸状部を有するマーキングシートは、柔軟性を有する材料からなる、請求項4〜6のいずれか1項に記載のバイメタルの製造方法。
【請求項8】
前記紫外線硬化型インクにより前記識別マークを印字する工程の後に、前記バイメタルに対して、応力除去の熱処理を行う工程をさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバイメタルの製造方法。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイメタルの製造方法に関し、特に、バイメタルの表面に識別マークを印字する工程を備えたバイメタルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱膨張率の異なる少なくとも2種類の金属板を接合した構造を有するバイメタルが知られている。このバイメタルを構成する高膨張側の金属板の材料としては、Mn−Cu−Ni合金、Ni−Mn−Fe合金およびNi−Cr−Fe合金などが用いられる。また、低膨張側の金属板の材料としては、Ni−Fe合金およびCr−Fe合金などが用いられる。また、上記したバイメタルは、高電流が加わると、バイメタルを構成する少なくとも2種類の金属板の熱膨張率の違いにより湾曲する。具体的には、高膨張側の金属板の方が低膨張側の金属板よりも熱膨張が大きいので、バイメタルの高膨張側が凸状になるように湾曲する。このような特性を有するバイメタルは、温度によりオン/オフするサーモスイッチなどの電子機器に使用されている。
【0003】
ここで、サーモスイッチなどの電子機器の部品としてバイメタルを使用する場合、電子機器の組み立て時にバイメタルの組み付けミスを防止するために、バイメタルの高膨張側と低膨張側とを明確に識別して組み立てる必要がある。このため、従来では、バイメタルの高膨張側および低膨張側の少なくとも一方の表面に、高膨張側の表面か低膨張側の表面かを判別するための識別マークをエッチングにより形成していた。従来のエッチングにより識別マークを形成する製造方法は、バイメタルの表面にエッチング液を付着させる工程と、エッチング液が付着したバイメタルの表面を洗浄(水洗)する工程と、そのバイメタルの表面を乾燥する工程との3つの工程からなる。この場合のエッチング液としては、セレン、硫酸銅、硝酸、塩酸および純水の混合液を用いていた。このエッチング液に混合されるセレンは、エッチングにより腐食した部分を実質的に黒色に着色するための着色剤として機能する。この従来のエッチングにより識別マークを形成する方法では、バイメタルの表面のエッチング液が付着した部分が腐食するとともに、その腐食した部分がセレンにより実質的に黒色に着色される。
【0004】
ところで、成形加工後のバイメタルは、残留応力を持っているので、バイメタルをサーモスイッチなどの電子機器の部品として使用する際には、バイメタルの残留応力を除去する必要がある。このバイメタルの残留応力の除去には、使用時の最高加熱温度以上の温度で約1時間〜約3時間の熱処理(エージング)を行うことが有効であることが知られている。
【0005】
しかしながら、上記した応力除去の熱処理(エージング)を大気中で行った場合、バイメタルの表面が濃青色に変色するという不都合があった。このため、バイメタルの表面にエッチングにより形成された実質的に黒色の識別マークが不鮮明になるという不都合があった。
【0006】
そこで、従来では、応力除去の熱処理(エージング)工程において、バイメタルの表面が濃青色に変色するのを抑制するための技術が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。上記特許文献1には、エッチングにより識別マークを形成した後、露点が約−60℃〜約40℃のH2雰囲気中で、約200℃〜約500℃の温度条件下でバイメタルを熱処理することによって、応力除去の熱処理(エージング)前に、バイメタルの表面上に不動態被膜を形成する技術が開示されている。また、上記特許文献2には、エッチングにより識別マークを形成した後、バイメタルを硫酸などを含む不動態被膜形成液に浸漬することによって、応力除去の熱処理(エージング)前に、バイメタルの表面上に不動態被膜を形成する技術が開示されている。上記特許文献1および2では、応力除去の熱処理(エージング)前に、バイメタルの表面上に不動態被膜が形成されるので、応力除去の熱処理(エージング)において、バイメタルの表面が濃青色に変色するのを抑制することが可能となる。したがって、エッチングにより形成された実質的に黒色の識別マークが不鮮明になるのを抑制することが可能となる。
【特許文献1】特開昭62−173039号公報
【特許文献2】特開昭62−209381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および2では、バイメタルの表面上に、バイメタルの表面が変色するのを抑制するための不動態被膜を形成する工程が必要となるので、製造工程が増加するという不都合がある。その結果、バイメタルの製造工程が煩雑になるという問題点がある。
【0008】
また、従来のエッチングにより識別マークを形成する製造方法では、エッチング液付着工程と、エッチング液洗浄(水洗)工程と、バイメタルの乾燥工程との3工程が必要であるため、識別マークの形成工程を簡略化するのが困難であるという問題点がある。また、従来のエッチングにより識別マークを形成する製造方法では、バイメタルを構成する金属板の材質の違いにより、エッチング液が付着した部分の腐食の度合いに違いが生じるので、識別マークの色にムラが生じるという不都合がある。このように識別マークの色にムラが生じた場合には、識別マークが不鮮明になるという問題点がある。また、エッチングにより識別マークを形成する製造方法では、上記したように、エッチング液に、エッチングにより腐食した部分を実質的に黒色に着色するために、着色剤として機能するセレンを含有する必要がある。このエッチング液に含有されるセレンは、PRTA(Pollutant Release and Transfer Register:環境汚染物質排出・移動登録)対象物質であるので、環境に負荷を与える可能性があると考えられる。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、バイメタルの製造工程を煩雑化させることなく、応力除去の熱処理(エージング)工程により識別マークが不鮮明になるのを抑制するとともに、エッチングを用いずに識別マークを形成することが可能なバイメタルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面によるバイメタルの製造方法は、少なくとも第1の熱膨張率を有する第1金属板と、第1金属板の第1の熱膨張率よりも低い第2の熱膨張率を有する第2金属板とを接合することによりバイメタルを形成する工程と、バイメタルを構成する第1金属板および第2金属板の少なくとも一方の表面に、紫外線硬化型インクを用いて、第1金属板の表面か第2金属板の表面かを判別するための識別マークを印字する工程とを備えている。
【0011】
この一の局面によるバイメタルの製造方法では、上記のように、バイメタルを構成する第1金属板および第2金属板の少なくとも一方の表面に、紫外線硬化型インクを用いて第1金属板の表面か第2金属板の表面かを判別するための識別マークを印字することによって、この紫外線硬化型インクを用いて識別マークを印字する方法では、紫外線硬化型インクの付着工程および紫外線の照射工程の2工程のみで識別マークを形成することができるので、エッチング液付着工程、エッチング液洗浄工程およびバイメタルの乾燥工程の3工程が必要な従来のエッチングにより識別マークを形成する方法に比べて、識別マークの形成工程を簡略化することができる。また、紫外線硬化型インクを用いて識別マークを印字することによって、紫外線硬化型インクに黄色、白色および銀色などの顔料を含有させれば、バイメタルの表面に印字される識別マークの色を鮮明にすることができる。これにより、応力除去の熱処理(エージング)工程において、バイメタルの表面が濃青色に変色したとしても、バイメタルの表面に印字された識別マークが不鮮明になるのを抑制することができる。これらの結果、この一の局面では、バイメタルの製造工程(識別マークの形成工程)を煩雑化させることなく、応力除去の熱処理(エージング)工程により識別マークが不鮮明になるのを抑制することができる。また、紫外線硬化型インクにより識別マークを印字する製造方法では、バイメタルを構成する金属板の材質に関わらず、バイメタルの表面の印字部に均一に紫外線硬化型インクを付着させることができるので、識別マークの色にムラが生じるのを抑制することができる。また、紫外線硬化型インクにより識別マークを印字する製造方法では、紫外線硬化型インクにセレンなどのPRTA対象物質を含有させる必要がないので、環境に負荷を与える可能性を低減することができる。
【0012】
上記一の局面によるバイメタルの製造方法において、好ましくは、紫外線硬化型インクに含有される紫外線硬化型樹脂には、耐熱性を有する成分が添加されている。このように構成すれば、応力除去の熱処理(エージング)工程において、バイメタルの表面に付着した紫外線硬化型インクが熱により飛散するのを抑制することができるので、識別マークが不鮮明になるのをより抑制することができる。
【0013】
上記一の局面によるバイメタルの製造方法において、好ましくは、紫外線硬化型インクを用いて識別マークを印字する工程は、バイメタルを構成する第1金属板および第2金属板の少なくとも一方の表面に、紫外線硬化型インクを付着させる工程と、紫外線硬化型インクが付着したバイメタルの表面に、紫外線を照射する工程とを含む。このように構成すれば、バイメタルの表面に付着した紫外線硬化型インクを、容易に、かつ、非常に短い時間で硬化させることができる。これにより、バイメタルの表面に、紫外線硬化型インクにより識別マークを非常に短い時間で印字することができるので、識別マークの形成工程をより簡略化することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、紫外線硬化型インクを付着させる工程は、識別マークの形状に対応した形状の凸状部を有するマーキングシートを用いて、バイメタルを構成する第1金属板および第2金属板の少なくとも一方の表面に、識別マークを転写する工程を含む。このように構成すれば、容易に、バイメタルの表面に、識別マークの形状に対応するように紫外線硬化型インクを付着させることができる。これにより、より容易に、バイメタルの表面に、紫外線硬化型インクにより識別マークを印字することができる。
【0015】
上記凸状部を有するマーキングシートを用いて識別マークを転写する工程において、好ましくは、凸状部を有するマーキングシートは、シート設置ロールの表面上に設置されているとともに、バイメタルは、送り出しロールおよび巻き取りロールに巻き付けられており、識別マークを転写する工程は、シート設置ロールの表面上に設置されたマーキングシートの凸状部の表面に紫外線硬化型インクを付着させた後、バイメタルを送り出しロールから巻き取りロールに連続的に巻き取ることによりバイメタルを連続的に移動させるとともに、シート設置ロールを回転させることによって、連続的に移動するバイメタルを構成する第1金属板および第2金属板の少なくとも一方の表面に、識別マークを連続的に転写する工程を含む。このように構成すれば、連続的に移動するバイメタルの表面に識別マークを連続的に印字することができるので、バイメタルの生産性を向上させることができる。
【0016】
この場合、好ましくは、識別マークを転写する工程は、紫外線硬化型インクが充填されたインク容器にインク供給ロールを浸漬するとともに、インク供給ロールをマーキングシートの凸状部の表面に接触させながら回転することによって、マーキングシートの凸状部の表面に紫外線硬化型インクを付着させた後、マーキングシートの凸状部の表面に付着した紫外線硬化型インクを転写ロールに付着させ、かつ、転写ロールを回転させることにより、連続的に移動するバイメタルを構成する第1金属板および第2金属板の少なくとも一方の表面に、紫外線硬化型インクが付着された転写ロールを連続的に接触させることによって、識別マークを転写する工程を含む。このように構成すれば、インク供給ロールにより、容易に、回転するシート設置ロールの表面上に設置されたマーキングシートの凸状部の表面に、紫外線硬化型インクを付着させることができる。また、転写ロールにより、容易に、連続的に移動するバイメタルの表面に、識別マークを転写することができる。
【0017】
上記凸状部を有するマーキングシートを用いて識別マークを転写する工程において、好ましくは、凸状部を有するマーキングシートは、柔軟性を有する材料からなる。このように構成すれば、凸状部を有するマーキングシートを容易に変形させることができるので、容易に、凸状部を有するマーキングシートをシート設置ロールの表面上に設置することができる。
【0018】
上記一の局面によるバイメタルの製造方法において、好ましくは、紫外線硬化型インクにより識別マークを印字する工程の後に、バイメタルに対して、応力除去の熱処理を行う工程をさらに備える。このように構成すれば、容易に、バイメタルの残留応力を除去することができる。これにより、バイメタルを電子機器などの部品として使用する場合に、バイメタルの残留応力に起因して、バイメタルの変位量が設計値からずれるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明の一実施形態によるバイメタルの製造方法を説明するための概略図である。まず、図1および図2を参照して、本実施形態によるバイメタルの製造方法に用いる製造装置のうち、冷間圧接工程に用いる圧接圧延装置およびマーキング工程に用いるマーキング装置の構造について説明する。なお、圧接圧延装置は、異なる熱膨張率を有する複数の金属板を接合することにより、バイメタルを形成する装置である。また、マーキング装置は、高膨張側の表面か低膨張側の表面かを判別するための識別マークを、バイメタルの表面に印字する装置である。
【0021】
冷間圧接工程に用いる圧接圧延装置10では、図1に示すように、筐体11の外部に、コイル状に巻き取られた高膨張金属板1および低膨張金属板2をそれぞれ回転可能に支持するための送り出しロール12aおよび12bが設置されている。また、筐体11の外部の送り出しロール12aおよび12bと反対側には、接合されたバイメタル3をコイル状に巻き取るための巻き取りロール13が設置されている。また、筐体11の外部の巻き取りロール13側には、接合されたバイメタル3を巻き取りロール13側に移動させるための中継ロール14が設置されている。筐体11の内部には、高膨張金属板1および低膨張金属板2を接合するための押圧ロール15aおよび15bが対向するように設置されている。
【0022】
また、マーキング工程に用いるマーキング装置20では、図2に示すように、コイル状に巻き取られたバイメタル3を回転可能に支持するための送り出しロール21と、マーキングされたバイメタル3をコイル状に巻き取るための巻き取りロール22とが、所定の間隔を隔てて直線状に設置されている。送り出しロール21と巻き取りロール22との間の領域の上方には、転写部20aと照射部20bとが所定の間隔を隔てて設置されている。また、転写部20aは、送り出しロール21側に設置されているとともに、照射部20bは、巻き取りロール22側に設置されている。
【0023】
ここで、本実施形態では、転写部20aは、シート設置ロール23と、インク供給ロール24と、転写ロール25と、インク容器26とを備えている。シート設置ロール23の表面上には、柔軟性を有するゴムからなるとともに、識別マークの形状に対応した形状の凸状部27aを有するマーキングシート27が設置されている。また、インク容器26内には、少なくともエポキシ系の紫外線硬化型樹脂と、黄色、白色または銀色などの顔料とが含有されているUVインク28が充填されている。また、紫外線硬化型樹脂には、耐熱性を有するカルシウムやマグネシウムが添加されている。なお、UVインク28の温度は、室温に保持するのが好ましい。なお、UVインク28は、本発明の「紫外線硬化型インク」の一例である。
【0024】
そして、インク供給ロール24は、マーキングシート27の凸状部27aの表面に、インク容器26内のUVインク28を付着させる機能を有する。すなわち、インク供給ロール24は、その表面が、インク容器26内のUVインク28と、マーキングシート27の凸状部27aの表面とに接触する位置に回転可能に設置されている。また、転写ロール25は、送り出しロール21から巻き取りロール22へ移動する金属板の表面に、識別マークを転写する機能を有する。すなわち、転写ロール25は、その表面が、マーキングシート27の凸状部27aの表面と、送り出しロール21から巻き取りロール22へ移動する金属板の表面とに接触する位置に回転可能に設置されている。また、シート設置ロール23は、その表面上に設置されたマーキングシート27の凸状部27aの表面が、インク供給ロール24および転写ロール25のそれぞれの表面に接触する位置に回転可能に設置されている。
【0025】
また、照射部20bには、送り出しロール21から巻き取りロール22へ移動する金属板の表面と照射面とが対向するように、UVランプ29が設置されている。このUVランプ29は、金属板の表面に付着したUVインク28を硬化させる機能を有する。
【0026】
次に、本実施形態によるバイメタルの製造方法としては、まず、図示しないが、高膨張金属および低膨張金属を、それぞれ、従来から知られた方法を用いて、溶解、鍛造、熱間圧延および冷間圧延する。なお、高膨張金属としては、Mn−Cu−Ni合金、Ni−Mn−Fe合金およびNi−Cr−Fe合金などを用いる。また、低膨張金属としては、Ni−Fe合金およびCr−Fe合金などを用いる。これにより、高膨張金属および低膨張金属は、それぞれ、所定の厚みを有する板材としての高膨張金属板1および低膨張金属板2(図1参照)に加工される。なお、高膨張金属板1は、本発明の「第1金属板」の一例であり、低膨張金属板2は、本発明の「第2金属板」の一例である。この後、高膨張金属板1および低膨張金属板2の接合面となる表面をバフなどにより研磨するとともに、高膨張金属板1および低膨張金属板2を加工硬化させる。
【0027】
次に、図1に示した圧接圧延装置10を用いて、高膨張金属板1と低膨張金属板2とを接合する。具体的には、コイル状に巻き取られた高膨張金属板1および低膨張金属板2を、それぞれ、送り出しロール12aおよび12bに取り付ける。そして、コイル状の高膨張金属板1および低膨張金属板2を展開させながら、高膨張金属板1および低膨張金属板2を押圧ロール15aと押圧ロール15bとの間を通過させるとともに、押圧ロール15aおよび15bを、それぞれ、矢印A方向および矢印B方向に回転させる。これにより、高膨張金属板1および低膨張金属板2は、押圧ロール15aおよび15bにより圧延および圧接される。その結果、高膨張金属板1と低膨張金属板2とが接合されるので、高膨張金属板1と低膨張金属板2とを含むバイメタル3が形成される。この際、巻き取りロール13を矢印A方向に回転させることにより、中継ロール14を介して、バイメタル3をコイル状に巻き取る。
【0028】
次に、図示しないが、バイメタル3に対して、拡散焼鈍、中間・仕上げ圧延および表面検査を行う。
【0029】
次に、本実施形態では、図2に示したマーキング装置を用いて、高膨張側の表面か低膨張側の表面かを判別するための社名などの識別マークを、UVインク28によりバイメタル3の表面に印字する。なお、本実施形態では、バイメタル3の高膨張側の表面に識別マークを印字する。具体的には、まず、コイル状のバイメタル3を、送り出しロール21に取り付ける。そして、コイル状のバイメタル3を展開させながら、バイメタル3の高膨張側の表面が上になるように、転写部20aおよび照射部20bの下方を通過させる。
【0030】
この際、転写部20aにおいて、インク供給ロール24および転写ロール25を矢印A方向に回転させるとともに、シート設置ロール23を矢印B方向に回転させる。これにより、インク供給ロール24の表面に付着したUVインク28が、シート設置ロール23の表面上に設置されたマーキングシート27の凸状部27aの表面に付着する。また、マーキングシート27の凸状部27aの表面に付着したUVインク28が、転写ロール25の表面に付着する。さらに、転写ロール25の表面に付着したUVインク28が、バイメタル3の高膨張側の表面に付着することによって、識別マークがバイメタル3の高膨張側の表面に転写される。
【0031】
また、照射部20bにおいて、バイメタル3の高膨張側の表面に、UVランプ29により、高圧短波長紫外線を約1秒〜約20秒(たとえば、約3秒)照射する。この際の高圧短波長紫外線の電気入力密度は、約160W/cmである。これにより、バイメタル3の高膨張側の表面に付着したUVインク28が硬化する。
【0032】
この際、巻き取りロール22を矢印B方向に回転させることにより、バイメタル3をコイル状に巻き取る。このとき、バイメタル3を連続的に巻き取ることにより、バイメタル3を送り出しロール21から巻き取りロール22に連続的に移動させる。
【0033】
次に、図示しないが、バイメタル3を所定の寸法に切断するとともに、バイメタル3の反りなどを矯正する。このようにして、高膨張側の表面に識別マークが印字されたバイメタル3が形成される。
【0034】
なお、上記の製造方法を用いて形成されたバイメタル3は、残留応力を持っている。このため、バイメタル3を電子機器の部品として使用する際には、バイメタル3の残留応力を除去するために、使用時の最高加熱温度以上の温度で約1時間〜約3時間の熱処理(エージング)を行う。また、他の方法としては、バイメタル3に張力を加えることによって、形状矯正を加える。
【0035】
本実施形態では、上記のように、バイメタル3の高膨張側の表面に、UVインク28を用いて識別マークを印字することによって、このUVインク28を用いて識別マークを印字する方法では、UVインク28の付着工程および紫外線の照射工程の2工程のみで識別マークを形成することができるので、エッチング液付着工程、エッチング液洗浄工程およびバイメタルの乾燥工程の3工程が必要な従来のエッチングにより識別マークを形成する方法に比べて、識別マークの製造プロセスを簡略化することができる。また、黄色、白色または銀色などの顔料が含有されたUVインク28を用いることによって、バイメタル3の高膨張側の表面に印字される識別マークの色を鮮明にすることができる。これにより、応力除去の熱処理(エージング)工程において、バイメタル3の高膨張側の表面が濃青色に変色したとしても、バイメタル3の高膨張側の表面に印字された識別マークが不鮮明になるのを抑制することができる。これらの結果、バイメタル3の製造工程を煩雑化させることなく、応力除去の熱処理(エージング)工程により識別マークが不鮮明になるのを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態のUVインク28により識別マークを印字する製造方法では、バイメタル3を構成する高膨張金属板1および低膨張金属板2の材質に関わらず、バイメタル3の表面の印字部に均一にUVインク28を付着させることができるので、識別マークの色にムラが生じるのを抑制することができる。また、UVインク28にセレンなどのPRTA対象物質を含有させる必要がないので、環境に負荷を与える可能性を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態では、耐熱性を有するカルシウムやマグネシウムが添加されたエポキシ系の紫外線硬化型樹脂が含有されたUVインク28を用いることによって、応力除去の熱処理(エージング)工程において、バイメタル3の高膨張側の表面に付着したUVインク28が熱により飛散するのを抑制することができるので、識別マークが不鮮明になるのをより抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、バイメタル3の高膨張側の表面にUVインク28を付着させるとともに、UVインク28が付着したバイメタル3の高膨張側の表面に紫外線を照射することによって、バイメタル3の高膨張側の表面に付着したUVインク28を、容易に、かつ、非常に短い時間で硬化させることができる。これにより、バイメタル3の高膨張側の表面に、UVインク28により識別マークを非常に短い時間で印字することができるので、識別マークの形成工程をより簡略化することができる。
【0039】
また、本実施形態では、識別マークの形状に対応した形状の凸状部27aを有するマーキングシート27を用いて、バイメタル3の高膨張側の表面にUVインク28を付着させることによって、容易に、バイメタル3の高膨張側の表面に、識別マークの形状に対応するようにUVインク28を付着させることができる。これにより、より容易に、バイメタル3の高膨張側の表面に、UVインク28により識別マークを印字することができる。
【0040】
また、本実施形態では、バイメタル3を送り出しロール21から巻き取りロール22に連続的に巻き取ることにより、バイメタル3を連続的に移動させるとともに、マーキングシート27が設置されたシート設置ロール23を回転させることにより、連続的に移動するバイメタル3の高膨張側の表面に、識別マークを連続的に転写することによって、バイメタル3の高膨張側の表面に、識別マークを連続的に印字することができるので、バイメタル3の生産性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、インク供給ロール24の表面をマーキングシート27の凸状部27aの表面に接触させながらインク供給ロール24を回転させることにより、マーキングシート27の凸状部27aの表面にUVインク28を付着させた後、マーキングシート27の凸状部27aの表面に付着したUVインク28を転写ロール25に付着させ、かつ、その転写ロール25を回転させることにより、連続的に移動するバイメタル3の高膨張側の表面に、UVインク28が付着された転写ロール25を連続的に接触させることによって、インク供給ロール24により、容易に、回転するシート設置ロール23の表面上に設置されたマーキングシート27の凸状部27aの表面に、UVインク28を付着させることができる。また、転写ロール25により、容易に、連続的に移動するバイメタル3の高膨張側の表面に、識別マークを転写することができる。
【0042】
また、本実施形態では、柔軟性を有するゴムからなるマーキングシート27を用いることによって、マーキングシート27を容易に変形させることができるので、容易に、マーキングシート27をシート設置ロール23の表面上に設置することができる。
【0043】
また、本実施形態では、バイメタル3を電子機器の部品として使用する際に、バイメタル3の残留応力を除去するために、使用時の最高加熱温度以上の温度で約1時間〜約3時間の熱処理(エージング)を行うことによって、バイメタル3の残留応力に起因して、バイメタル3の変位量が設計値からずれるのを抑制することができる。
【0044】
次に、上記実施形態の効果のうち、耐熱性を有するカルシウムやマグネシウムが添加されたエポキシ系の紫外線硬化型樹脂が含有されたUVインクを用いることによる効果を確認するために行った実験について説明する。
【0045】
まず、低膨張金属であるFe−Ni合金からなる金属板の表面に、耐熱性を有するカルシウムやマグネシウムが添加されたエポキシ系の紫外線硬化型樹脂が含有されたUVインクを付着させた。その後、UVインクが付着した金属板の表面に、UVランプにより高圧短波長紫外線を照射することによって、UVインクを硬化させた。この際の照射条件は、照射時間:約3秒、電気入力密度:約160W/cmであった。この状態での金属板の表面に付着したUVインクの厚みは、約2μmであった。なお、UVインクの厚みは、接触式表面粗さ計を用いて測定した。
【0046】
次に、UVインクが付着した金属板に対して、応力除去の熱処理(エージング)を行った。具体的には、大気中において、約400℃の温度条件下で約1時間の熱処理を行った。この状態での金属板の表面に付着したUVインクの厚みは、応力除去の熱処理(エージング)前の厚み(約2μm)よりも小さくなることが判明した。これは、応力除去の熱処理(エージング)を行うことにより、金属板の表面に付着したUVインクの一部が熱により飛散したためであると考えられる。なお、応力除去の熱処理(エージング)後のUVインクの厚みは、小さすぎるため、接触式表面粗さ計で測定するのが困難であった。ただし、応力除去の熱処理(エージング)後のUVインクが付着した金属板の表面を目視したところ、UVインクが付着した部分を識別することができた。この結果から、紫外線硬化型インクに含有されるエポキシ系の紫外線硬化型樹脂に、耐熱性を有するカルシウムやマグネシウムを添加することによって、金属板の表面に付着したUVインクの少なくとも一部を熱により飛散させることなく残存させることができることが確認できた。
【0047】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0048】
たとえば、上記実施形態では、1つの高膨張金属板と1つの低膨張金属板とを含む2層構造のバイメタルを形成したが、本発明はこれに限らず、高膨張金属板と低膨張金属板との間に、銅などからなる金属板を挟んだ3層構造のバイメタルを形成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、バイメタルの高膨張側の表面に識別マークを印字したが、本発明はこれに限らず、バイメタルの低膨張側の表面に識別マークを印字してもよい。また、バイメタルの高膨張側の表面および低膨張側の表面の両方に識別マークを印字してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、マーキングシートから転写ロールを介してバイメタルの表面に識別マークを転写したが、本発明はこれに限らず、マーキングシートの凸状部の表面とバイメタルの表面とを接触させることにより、マーキングシートから直接バイメタルの表面に識別マークを転写してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、バイメタルの残留応力を除去するため、使用時の最高加熱温度以上の温度で約1時間〜約3時間の熱処理(エージング)を行ったが、本発明はこれに限らず、バイメタルに張力を加えることにより形状矯正を行ってもよい。
- 【公開番号】特開2006−3087(P2006−3087A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【発明の名称】バイメタルの製造方法
【発明者】
【氏名】武部 直人
【氏名】高居 善樹
【氏名】児嶋 尊
- 【出願番号】特願2004−176461(P2004−176461)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】
【識別番号】304051908
【氏名又は名称】株式会社NEOMAXマテリアル
- 【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
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