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殺菌装置および殺菌方法
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- 【要約】
【課題】容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる殺菌装置を提供することを目的とする。
【解決手段】殺菌装置10は、殺菌対象である容器1を支持する支持手段30と、前記支持手段に支持された容器内に挿入可能な第1電極20と、前記容器内に挿入された第1電極に対し、前記容器を介して配置される第2電極22と、前記第1電極および第2電極の間に高電圧パルスを印加して、前記第1電極および第2電極の間に大気圧プラズマを生じさせる高電圧パルス印加手段57と、を備えている。支持手段は容器を回転可能に支持する。支持手段は、第1電極と第2電極との間に高電圧パルスを印加する際に、容器を回転させる。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象である容器を回転可能に支持する支持手段と、
前記支持手段に支持された容器内に挿入可能な第1電極と、
前記容器内に挿入された第1電極に対し、前記容器を介して配置される第2電極と、
前記第1電極および第2電極の間に高電圧パルスを印加して、前記第1電極および第2電極の間に大気圧プラズマを生じさせる高電圧パルス印加手段と、を備えたことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記支持手段は、略平板状からなり前記容器を一方の面上に支持する支持部材であって、その板面に略直交する軸を中心として回転可能な支持部材を有することを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記支持部材の他方の面の少なくとも一部分が、前記第2電極によって覆われていることを特徴とする請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記支持部材の容器に対面する部分に貫通孔が形成されており、
前記支持手段は、前記支持部材の貫通孔を介し前記容器を前記支持部材に向けて吸引する吸引機構を有することを特徴とする請求項2または3に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記支持手段は、前記容器を狭持する狭持機構を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
少なくとも一部分が第2電極によって外方から覆われた囲い体をさらに備え、
前記支持手段は前記容器をさらに移動可能に支持するとともに、前記第1電極は前記容器と同期して移動可能であり、
前記囲い体は前記容器の移動経路沿いに設けられ、前記容器の移動方向に直交する断面において、前記移動中の容器を少なくとも部分的に囲む輪郭を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記囲い体は、前記容器の移動方向に直交する断面において、前記容器の輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする請求項6に記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記支持手段は複数の容器を支持可能であり、前記第1電極は前記支持手段に支持される容器毎に設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の殺菌装置。
【請求項9】
殺菌対象である複数の容器を移動可能に支持する支持手段と、
前記支持手段に支持された各容器内に挿入可能かつ当該容器と同期して移動可能な複数の第1電極と、
前記容器の移動経路に沿いに設けられた囲い体と、
前記囲い体の少なくとも一部分を外方から覆う第2電極と、
前記第1電極および第2電極の間に高電圧パルスを印加して、前記第1電極および第2電極の間に大気圧プラズマを生じさせる高電圧パルス印加手段と、を備え、
前記囲い体は前記容器の移動方向に直交する断面において前記容器の輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする殺菌装置。
【請求項10】
前記囲い体は円弧状に延びていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項11】
前記囲い体は、前記容器の移動経路に沿って分断された複数の囲い要素を含むことを特徴とする請求項6乃至10のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項12】
前記囲い体は、前記容器の移動経路の一側に配置された一側囲い部材と、前記容器の移動経路の他側に配置された他側囲い部材と、を有することを特徴とする請求項6乃至11のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項13】
前記一側囲い部材および前記他側囲い部材のうち一方は、前記容器と同期して移動可能であることを特徴とする請求項12に記載の殺菌装置。
【請求項14】
前記一側囲い部材は、前記容器と同期して移動可能であり、前記容器を、前記容器の移動方向の前方および後方から少なくとも部分的に囲むことを特徴とする請求項12に記載の殺菌装置。
【請求項15】
殺菌対象を支持する回転可能な支持部材と、
前記支持部材に支持された殺菌対象を間にして配置された第1電極および第2電極と、
前記第1電極および第2電極の間に高電圧パルスを印加して、前記第1電極および第2電極の間に大気圧プラズマを生じさせる高電圧パルス印加手段と、を備えたことを特徴とする殺菌装置。
【請求項16】
前記支持部材は略平板状からなり、その板面に略直交する方向を軸として回転可能であり、
前記殺菌対象は前記支持部材の一側の面上に支持され、前記支持部材の他側の面の少なくとも一部分が前記第2電極によって覆われていることを特徴とする請求項15に記載の殺菌装置。
【請求項17】
殺菌対象である容器を回転可能に支持する支持手段によって前記容器を支持する工程と、
前記容器内に第1電極を挿入する工程と、
前記容器内に挿入された前記第1電極と、前記第1電極に対し前記容器を介して配置された第2電極と、の間に高電圧パルスを印加し、前記第1電極と前記第2電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記支持手段により殺菌対象を回転させることを特徴とする殺菌方法。
【請求項18】
前記支持手段は、平板状からなりその板面に略直交する方向を軸として回転可能な支持部材を有し、
前記容器を支持する工程において、前記容器は、前記第1電極を挿入される開口部に対面する底部が前記支持部材の一方の板面に対面するようにして、前記支持部材上に配置されることを特徴とする請求項17に記載の殺菌方法。
【請求項19】
前記支持手段は、平板状からなり前記容器を一方の面上に支持する支持部材であって、その板面に略直交する方向を軸として回転可能な支持部材を有し、
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、第1電極と、前記支持部材の他方の面の少なくとも一部分を覆う第2電極と、の間に高電圧パルスを印加することを特徴とする請求項17または18に記載の殺菌方法。
【請求項20】
前記容器は、前記底部が前記支持部材に向けて吸引され、前記支持部材に吸着保持されることを特徴とする請求項18または19に記載の殺菌方法。
【請求項21】
前記支持手段は前記容器を狭持して支持することを特徴とする請求項17乃至19のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項22】
前記大気圧プラズマを発生させる工程において、前記第1電極は、前記容器と同期して移動し、少なくとも一部分が第2電極によって外方から覆われた囲い体によって囲まれる領域に容器がある際に、高電圧パルスが当該容器に挿入された第1電極と前記第2電極との間に印加されることを特徴とする請求項17乃至21のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項23】
異なる第1電極を挿入された複数の容器が囲い体によって囲まれる領域を順次移動し、これにより、複数の容器が順次殺菌されていくことを特徴とする請求項22に記載の殺菌方法。
【請求項24】
前記囲い体は、前記容器の移動方向に直交する断面において、前記容器の輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする請求項22または23に記載の殺菌方法。
【請求項25】
殺菌対象である容器を移動可能に支持する支持手段により、複数の容器を順次支持していく工程と、
前記容器と同期して移動可能な第1電極を複数の容器内に順次挿入していく工程と、
前記容器が当該容器に挿入された前記第1電極とともに移動し、前記容器の移動経路沿いに設けられた囲い体であって前記容器の移動方向に直交する断面において前記容器の輪郭に対応した輪郭を有する囲い体によって囲まれる領域に前記容器がある際に、当該容器に挿入された第1電極と、前記囲い体の少なくとも一部分を外方から覆う第2電極と、の間に高電圧パルスを印加して前記第1電極と前記第2電極との間に大気圧プラズマを生じさせ、複数の容器を順次殺菌していく工程と、を備えたことを特徴とする殺菌方法。
【請求項26】
前記容器は円弧状の移動経路に沿って移動させられることを特徴とする請求項22乃至25のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項27】
前記囲い体は、前記容器の移動経路に沿って分断された複数の囲い要素を含むことを特徴とする請求項22乃至26のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項28】
前記囲い体は、前記容器の移動経路の一側に配置された一側囲い部材と、前記容器の移動経路の他側に配置された他側囲い部材と、を有することを特徴とする請求項22乃至27のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項29】
前記一側囲い部材および前記他側囲い部材のうち一方は、前記容器と同期して移動することを特徴とする請求項28に記載の殺菌方法。
【請求項30】
前記一側囲い部材は、前記容器の移動方向の前方および後方から前記容器を少なくとも部分的に囲みながら、前記容器と同期して移動することを特徴とする請求項28に記載の殺菌方法。
【請求項31】
回転可能な支持部材によって殺菌対象を支持する工程と、
前記支持部材に支持された前記殺菌対象を間に介して配置された第1電極と第2電極との間に高電圧パルスを印加し、前記第1電極と前記第2電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、
前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記支持部材とともに殺菌対象を回転させることを特徴とする殺菌方法。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧プラズマを用いて殺菌対象を殺菌する殺菌装置および殺菌方法に係り、とりわけ、殺菌対象を高いレベルでむらなく殺菌することができる殺菌装置および殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体、固体、または液体と固体との組み合わせからなる飲料、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、または肥料等の被充填物は無菌環境下において包装容器(包装材料)に充填され、その後、無菌環境下で包装容器が密封される。包装容器は充填工程に先立ってその内面および外面を殺菌処理され、これにより、充填工程への菌の持ち込みが防止される。
【0003】
包装容器の殺菌に適用されるものに限られず、樹脂等からなる殺菌対象の殺菌装置および殺菌方法について、様々な研究開発がなされてきた。昨今においては、内部に薬剤等が残留しないこと、殺菌対象に影響を与えず十分な殺菌効果が得られ得ること等の理由から、常温常圧下での大気圧プラズマを用いた殺菌方法および殺菌装置が開発されつつある。(例えば、特許文献1)。
【0004】
とりわけ、立体的な外形状を有する容器を殺菌する分野においては、内部へ薬剤が残留しやすいこと、むらなく殺菌することが困難であること等の理由から、大気圧プラズマを用いた殺菌方法に対する関心が非常に高まっている。
【特許文献1】特開2004−359307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状においては、大気圧プラズマを用いて立体的な外形状を有する容器を高い殺菌レベルでむらなく殺菌しようとすると、処理能力が低く装置価格が高くなってしまう。このため、大気圧プラズマを用いた殺菌は未だ商業的に広く普及するに至っていない。
【0006】
したがって、商業的な普及を実現させるには、多数の殺菌対象を順次連続して効率的に殺菌していくことができる方法および装置についても検討する必要がある。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、殺菌対象、とりわけ容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる殺菌装置および殺菌方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、殺菌対象、とりわけ容器を順次連続して効率的に殺菌していくことができる殺菌方法および殺菌装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の殺菌装置は、殺菌対象である容器を回転可能に支持する支持手段と、前記支持手段に支持された容器内に挿入可能な第1電極と、前記容器内に挿入された第1電極に対し、前記容器を介して配置される第2電極と、前記第1電極および第2電極の間に高電圧パルスを印加して、前記第1電極および第2電極の間に大気圧プラズマを生じさせる高電圧パルス印加手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような本発明による第1の殺菌装置によれば、第1電極および第2電極の間に存在する気体がプラズマ化し、容器の内外面を殺菌することができる。とりわけ、支持手段によって殺菌対象である容器を回転させた場合には、容器の内外面を高いレベルでむらなく均一に殺菌することができる。
【0011】
本発明による第1の殺菌装置において、前記支持手段が、略平板状からなり前記容器を一方の面上に支持する支持部材であって、その板面に略直交する軸を中心として回転可能な支持部材を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、支持手段上へ容器を容易に配置することができる。とりわけ容器が回転体からなる場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、容器の回転中の姿勢を極めて安定させることができる。
【0012】
この場合、前記支持部材の他方の面の少なくとも一部分が、前記第2電極によって覆われているようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、容器の支持部材に対面する部分を高い殺菌レベルで殺菌することができる。
【0013】
また、この場合、前記支持部材の容器に対面する部分に貫通孔が形成されており、前記支持手段が、前記支持部材の貫通孔を介し前記容器を前記支持部材に向けて吸引する吸引機構を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、簡易な装置および簡易な制御により容器を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。あるいは、前記支持手段が前記容器を狭持する狭持機構を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によっても、簡易な装置および簡易な制御により容器を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。
【0014】
また、本発明による第1の殺菌装置が、少なくとも一部分が第2電極によって外方から覆われた囲い体をさらに備え、前記支持手段は前記容器をさらに移動可能に支持するとともに、前記第1電極は前記容器と同期して移動可能であり、前記囲い体は前記容器の移動経路沿いに設けられ、前記容器の移動方向に直交する断面において、前記移動中の容器を少なくとも部分的に囲む輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、生成されたプラズマ化した気体を囲い体内に留めておくことができ、これにより、プラズマ化した気体を有効に容器へ接触させることができる。したがって、囲い体内で容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0015】
この場合、前記囲い体が、前記容器の移動方向に直交する断面において、前記容器の輪郭に対応した輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、生成されたプラズマ化した気体を迅速かつ有効に容器に接触させることができる。したがって、囲い体内で容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0016】
また、この場合、前記支持手段は複数の容器を支持可能であり、前記第1電極は前記支持手段に支持される容器毎に設けられていてもよい。このような殺菌装置によれば、囲い体内に順次配置されていく多数の容器を高いレベルでむらなく効率的に殺菌していくことができる。
【0017】
本発明による第2の殺菌装置は、殺菌対象である複数の容器を移動可能に支持する支持手段と、前記支持手段に支持された各容器内に挿入可能かつ当該容器と同期して移動可能な複数の第1電極と、前記容器の移動経路に沿いに設けられた囲い体と、前記囲い体の少なくとも一部分を外方から覆う第2電極と、前記第1電極および第2電極の間に高電圧パルスを印加して、前記第1電極および第2電極の間に大気圧プラズマを生じさせる高電圧パルス印加手段と、を備え、前記囲い体は前記容器の移動方向に直交する断面において前記容器の輪郭に対応した輪郭を有することを特徴とする。
【0018】
このような本発明による第2の殺菌装置によれば、囲い体は容器の移動方向に直交する断面において容器の輪郭に対応した輪郭を有しているので、生成されたプラズマ化した気体を迅速かつ有効に容器に接触させることができる。したがって、囲い体内に順次配置されていく多数の容器を高いレベルで効率的に殺菌していくことができる。
【0019】
本発明による第1および第2の殺菌装置において、前記囲い体が円弧状に延びるようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、殺菌装置を小型化することができる。
【0020】
また、本発明による第1および第2の殺菌装置において、前記囲い体が、前記容器の移動経路に沿って分断された複数の囲い要素を含むようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、多数の容器を一度に収容し得る囲い体を安価に製造することができる。
【0021】
さらに、本発明による第1および第2の殺菌装置において、前記囲い体が、前記容器の移動経路の一側に配置された一側囲い部材と、前記容器の移動経路の他側に配置された他側囲い部材と、を有するようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、殺菌装置の構成を簡略化することができ、これにより、殺菌装置のコストを安価にすることができる。
【0022】
さらに、本発明による第1および第2の殺菌装置において、前記一側囲い部材および前記他側囲い部材のうち一方は、前記容器と同期して移動可能であるようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、囲い体の殺菌装置内への組み込みを簡易化にすることができる。したがって、殺菌装置の構成を簡略化することができ、これにともなって、殺菌装置のコストを安価にすることができる。
【0023】
さらに、本発明による第1および第2の殺菌装置において、前記一側囲い部材は、前記容器と同期して移動可能であり、前記容器を、前記容器の移動方向の前方および後方から少なくとも部分的に囲むようにしてもよい。このような殺菌装置によれば、一側囲い部材と他側囲い部材とによって移動する容器を周囲から取り囲むことができる。これにより、生成されたプラズマ化した気体を極めて有効に容器の殺菌に用いることができるようになる。
【0024】
本発明による第3の殺菌装置は、殺菌対象を支持する回転可能な支持部材と、前記支持部材に支持された殺菌対象を間にして配置された第1電極および第2電極と、前記第1電極および第2電極の間に高電圧パルスを印加して、前記第1電極および第2電極の間に大気圧プラズマを生じさせる高電圧パルス印加手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
このような本発明による第3の殺菌装置によれば、第1電極および第2電極の間に存在する気体がプラズマ化し、殺菌対象を殺菌することができる。とりわけ、支持部材を殺菌対象とともに回転させた場合には、殺菌対象を高いレベルでむらなく均一に殺菌することができる。
【0026】
本発明による第3の殺菌装置において、前記支持部材が略平板状からなり、その板面に略直交する方向を軸として回転可能であり、前記殺菌対象は前記支持部材の一側の面上に支持され、前記支持部材の他側の面の少なくとも一部分が前記第2電極によって覆われているようにしてもよい。
【0027】
本発明による第1の殺菌方法は、殺菌対象である容器を回転可能に支持する支持手段によって前記容器を支持する工程と、前記容器内に第1電極を挿入する工程と、前記容器内に挿入された前記第1電極と、前記第1電極に対し前記容器を介して配置された第2電極と、の間に高電圧パルスを印加し、前記第1電極と前記第2電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記支持手段により殺菌対象を回転させることを特徴とする。
【0028】
このような本発明による第1の殺菌方法によれば、第1電極および第2電極の間に存在する気体がプラズマ化し、容器の内外面を殺菌することができる。とりわけ、大気圧プラズマを生じさせる際に、容器が支持手段によって回転させられるので、容器の内外面を高いレベルでむらなく均一に殺菌することができる。なお、この第1の殺菌方法においては、前記容器を支持する工程および前記第1電極を挿入する工程のうちいずれの工程を先に行ってもよいし、あるいは、二つの工程を並行して行ってもよい。
【0029】
本発明による第1の殺菌方法において、前記支持手段が、平板状からなりその板面に略直交する方向を軸として回転可能な支持部材を有し、前記容器を支持する工程において、前記容器は、前記第1電極を挿入される開口部に対面する底部が前記支持部材の一方の板面に対面するようにして、前記支持部材上に配置されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、容器を容易に支持することができる。また、容器への第1電極の挿入を容易に行うこともできる。とりわけ、容器が回転体からなる場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、容器の回転中の姿勢を極めて安定させることができる。
【0030】
また、本発明による第1の殺菌方法において、前記支持手段は、平板状からなり前記容器を一方の面上に支持する支持部材であって、その板面に略直交する方向を軸として回転可能な支持部材を有し、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、第1電極と、前記支持部材の他方の面の少なくとも一部分を覆う第2電極と、の間に高電圧パルスを印加するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、容器の支持部材に対面する部分を高い殺菌レベルで殺菌することができる。
【0031】
この場合、前記容器は、前記底部が前記支持部材に向けて吸引され、前記支持部材に吸着保持されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、簡易な装置および簡易な制御により容器を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。あるいは、前記支持手段が前記容器を狭持して支持するようにしてもよい。このような殺菌方法によっても、簡易な装置および簡易な制御により容器を支持部材に対して容易かつ迅速に固定することができる。
【0032】
さらに、本発明による第1の殺菌方法の前記大気圧プラズマを発生させる工程において、前記第1電極は、前記容器と同期して移動し、容器が少なくとも一部分が第2電極によって外方から覆われた囲い体によって囲まれる領域にある際に、高電圧パルスが当該容器に挿入された第1電極と前記第2電極との間に印加されるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、生成されたプラズマ化した気体を囲い体内に留めておくことができ、これにより、プラズマ化した気体を有効に容器へ接触させることができる。したがって、囲い体内で容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0033】
この場合、異なる第1電極を挿入された複数の容器が囲い体によって囲まれる領域を順次移動し、これにより、複数の容器が順次殺菌されていくようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、囲い体内に順次配置されていく多数の容器を高いレベルでむらなく効率的に殺菌していくことができる。
【0034】
また、この場合、前記囲い体は、前記容器の移動方向に直交する断面において、前記容器の輪郭に対応した輪郭を有するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、生成されたプラズマ化した気体を迅速かつ有効に容器に接触させることができる。したがって、囲い体内で容器を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0035】
本発明による第2の殺菌方法は、殺菌対象である容器を移動可能に支持する支持手段により、複数の容器を順次支持していく工程と、前記容器と同期して移動可能な第1電極を複数の容器内に順次挿入していく工程と、前記容器が当該容器に挿入された前記第1電極とともに移動し、前記容器の移動経路沿いに設けられた囲い体であって前記容器の移動方向に沿った断面において前記容器の輪郭に対応した輪郭を有する囲い体によって囲まれる領域に前記容器がある際に、当該容器に挿入された第1電極と前記囲い体の少なくとも一部分を外方から覆う第2電極との間に高電圧パルスを印加して前記第1電極と前記第2電極との間に大気圧プラズマを生じさせ、複数の容器を順次殺菌していく工程と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
このような本発明による第2の殺菌方法によれば、囲い体は容器の移動方向に直交する断面において容器の輪郭に対応した輪郭を有しているので、生成されたプラズマ化した気体を迅速かつ有効に容器に接触させることができる。したがって、囲い体内に順次配置されていく多数の容器を高いレベルで効率的に殺菌していくことができる。
【0037】
本発明による第1および第2の殺菌方法において、前記容器は円弧状の移動経路に沿って移動させられるようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、殺菌装置の配置スペースを小さくすることができる。
【0038】
また、本発明による第1および第2の殺菌方法において、前記囲い体が前記容器の移動経路に沿って分断された複数の囲い要素を含むようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、囲い体は精度良く安価に製造され得るので、結果として、容器を精度良く安価に殺菌することができる。
【0039】
さらに、本発明による第1および第2の殺菌方法において、前記囲い体は、前記容器の移動経路の一側に配置された一側囲い部材と、前記容器の移動経路の他側に配置された他側囲い部材と、を有するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、殺菌装置の構成が簡素化されるので、結果として、容器を安価に殺菌することができる。
【0040】
さらに、本発明による第1および第2の殺菌方法において、前記一側囲い部材および前記他側囲い部材のうち一方が、前記容器と同期して移動するようにしてもよい。このような殺菌方法によれば、殺菌装置の構成が簡素化されるので、結果として、容器を安価に殺菌することができる。
【0041】
さらに、本発明による第1および第2の殺菌方法において、前記一側囲い部材が、前記容器の移動方向の前方および後方から前記容器を少なくとも部分的に囲みながら、前記容器と同期して移動するようにしてもよい。一側囲い部材と他側囲い部材とによって移動する容器を周囲から取り囲むことができる。これにより、生成されたプラズマ化した気体を極めて有効に容器の殺菌に用いることができるようになる。
【0042】
本発明による第3の殺菌方法は、回転可能な支持部材によって殺菌対象を支持する工程と、前記支持部材に支持された前記殺菌対象を間に介して配置された第1電極と第2電極との間に高電圧パルスを印加し、前記第1電極と前記第2電極との間に大気圧プラズマを生じさせる工程と、を備え、前記大気圧プラズマを生じさせる工程において、前記支持部材とともに殺菌対象を回転させることを特徴とする。
【0043】
このような本発明による第3の殺菌方法によれば、第1電極および第2電極の間に存在する気体がプラズマ化し、殺菌対象を殺菌することができる。とりわけ、大気圧プラズマを生じさせる際に、前記支持部材とともに殺菌対象を回転させるので、殺菌対象を高いレベルでむらなく均一に殺菌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0045】
図1乃至図10は本発明による殺菌装置および殺菌方法の一実施の形態を示す図である。
【0046】
このうち図1は容器の成形から内容物の充填までの概略工程を示す図であり、図2は殺菌装置の概略構成を示す上面図であり、図3は殺菌装置内における各処理工程を説明する図であり、図4は容器の外面に液体を付着させる方法および付着手段の概略構成を示す図であり、図5は容器の内部に蒸気を導入する方法および導入手段の概略構成を示す図であり、図6は容器の内部への蒸気の導入方法を説明するための図であり、図7は殺菌装置を示す部分断面図であり、図8は第1電極を示す図であり、図9は図8のIX−IX線の沿った断面図であり、図10は高電圧パルス印加手段の概略構成を示す図であり、図11は殺菌方法を説明するための図である。
【0047】
<殺菌対象>
本発明による殺菌装置および殺菌方法を用いて殺菌される殺菌対象は、金属以外の各種の材料にて構成されたものであればよい。ただし、以下においては、上端に設けられた開口部1aと、開口部1aから徐々に太さが太くなっていく首部を含む側部1bと、側部1bの下方に設けられ開口部1aと向かい合う底部1cと、を有するボトル型の容器1を殺菌対象として殺菌する例を説明する。このような殺菌は、図1に示すように、容器1が成形された後であって当該容器1へ内容物を充填する前に、行われものである。
【0048】
<殺菌装置>
〔全体構成〕
まず、容器の殺菌装置10について説明する。
【0049】
図1乃至図11に示すように、殺菌装置10は、チャンバー12と、チャンバー12内に設けられた略円筒状の内部チャンバー17と、内部チャンバー17外に配置され、回転軸L1を中心として回転自在な第1の回転体24と、第1回転体24によって搬送される殺菌対象である容器1の外面に所定の液体を付着させる付着手段86と、第1回転体24によって搬送される容器1の内部に所定の液体を蒸発させてなる蒸気を導入する導入手段70と、殺菌対象である容器1を内部チャンバー17内で回転可能かつ移動可能に支持する支持手段30と、支持手段30に支持された容器1内に挿入可能な第1電極20と、容器1内に挿入された第1電極20に対して容器1を介して配置された第2電極22と、第1電極20および第2電極22の間に高電圧パルスを印加する高電圧パルス印加手段57と、を備えている。
【0050】
また、図2に示すように、殺菌装置10は、チャンバー12内に連通し、チャンバー12内に殺菌剤を供給する殺菌剤供給手段50をさらに備えている。本実施の形態においては、殺菌剤として過酸化水素を用いており、殺菌剤供給手段50は過酸化水素水と加圧されたエアーとを2流体スプレーで混合し、過酸化水素ミストとしてチャンバー12内に送り込むようになっている。また、この殺菌剤供給手段50は常温または加熱されたエアーをチャンバー12内に送り込むこともできるようになっている。なお、チャンバー12には、チャンバー12内への殺菌剤の供給に対応した1つまたは複数の排気口12aが設けられている。
【0051】
図2に示すように、このような殺菌装置10において、殺菌対象である容器1は、搬入手段15aにより搬入口14aからチャンバー12内に送り込まれ、受け渡しホイール16を介して第1回転体24へ受け渡される。第1回転体24に受け渡された容器1は、所定の処理を施されながら、受け渡しホイール16を介して支持手段30に受け渡される。その後、容器1は、受け渡しホイール16を介し、搬出手段15bまたは搬出手段19aに受け渡され、搬出口14bまたは不良品搬出口19を経てチャンバー12外へ運び出されるようになっている。
【0052】
また、チャンバー12内を含む搬入口14aよりも下流工程側を陽圧とすることができるようになっている。したがって、殺菌装置10の稼働中に、搬入口14aにおいて、チャンバー12内からチャンバー12外へ向けた気流を形成することができ、これにより、搬入口14aから菌が持ち込まれることを防止することができるようになっている。また、後に詳述するように、内部チャンバー17内へ受け渡された後の容器1の通過経路は処理スペース5aとして、チャンバー12内のその他の領域から区分けされている。そして、チャンバー12内において、処理スペース5aは、処理スペース5a以外の領域よりも陽圧に保つことができるようなっている。したがって、チャンバー12内において、処理スペース5aから処理スペース5a以外の領域に向けた気流をつくりだすことができるようになっている。
【0053】
〔第1回転体、付着手段および導入手段〕
このうちまず、主に図2、図4および図5を用いて、第1回転体24と、第1回転体24によって搬送される容器1を処理する付着手段86および導入手段70について説明する。
【0054】
第1回転体24は、モーター等の駆動手段(図示せず)を介し回転軸L1を中心として回転自在となっており、また、受け渡しホイール16を介して搬送手段15aによって搬送されてきた殺菌対象の容器1を順次受けるようになっている。図2に示すように、第1回転体24は、回転軸L1を中心とした円周上に等間隔を空けて容器1を保持し、回転軸L1を中心として回転することによって保持した容器1を円周に沿って搬送するようになっている。
【0055】
付着手段86は、第1回転体24によって搬送される容器1に向けて所定の液体を吹き付け、容器1の外面に液体を付着させるようになっている。図2および図4に示すように、このような付着手段86は、第1回転体24により搬送される容器1の移動経路の所定区間に沿って配置された複数の2流体スプレー87と、管89aを介して2流体スプレー287に連通した空気供給手段82と、管89bを介して2流体スプレー87に連通するとともに、管89cを介して空気供給手段82に連通した液体タンク88と、を有している。
【0056】
空気供給手段82は、管89aを介し、所定圧力および所定流量の空気を2流体スプレー87に送り込むようになっている。
【0057】
液体タンク88内には所定の液体が収容されている。液体タンク88は図示しない液体供給手段に連通している。そして、液体供給手段は液体タンク88に液体を供給して、液体タンク88内に蓄えられている液体の量が常に一定範囲内となるようにしている。管89bの液体タンク88内にある端部は、所定量に調整された液体中まで延びている。一方、管89cの液体タンク88内にある端部は、液体タンク88内に貯留された液体中まで延びていない、すなわち、液体中に浸かっていない。そして、この管89cを介し、空気供給手段82から液体タンク88内に空気が送り込まれ、これにともない、管89bを介し、液体タンク88から2流体スプレー87へ液体が送り込まれるようになっている。なお、空気供給手段82は、液体タンク88中の圧力が所定の圧力値となるように、液体タンク88へ空気を送り込むようになっており、これにより、2流体スプレー87に所定流量かつ所定圧力の液体が送り込まれる。
【0058】
なお、各要素には、流量計や圧力計等の適切な計器が設けられており、これによって、上述した各圧力や各流量が一定の値にあることを確認することができるようになっている。
【0059】
このような構成により、2流体スプレー87に所定流量および所定圧力の液体と空気とが送り込まれ、搬送されている容器1に液体が空気との混合物としてスプレーされる(噴射される)ようになっている。
【0060】
ここで、所定の液体としては、水、とりわけ不純物を含まない純水が適している。純水を用いた場合、その供給量は容器1の外面に曇りが生ずる程度でよく、付着する液滴は直径数μm程度の微粒子であることが好ましい。そして、例えば容器1が容量240mL(ミリリットル)の樹脂製ボトルである場合において、容器1の外面に対して0.01g〜10gの範囲の純水を付着させることが好ましい。
【0061】
なお、殺菌効果を向上させることができる限りにおいて、水(純水)に代え、エタノールやアセトン等を含む有機系水溶液や電解質等を含む無機系水溶液を供給するようにしてもよい。また、空気供給手段に代え、例えば、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウム等を供給するガス供給手段を用いることもできる。また、計器による監視だけでなく、容器1の外面への液体付着状態を検査する何らかの手段を設けるようにすることも好ましい。このような手段として、液体を付着させられた容器1の一方からレーザ光を照射するレーザ光照射器と、容器1の他方から照射されたレーザ光の透過量を測定するレーザ光測定器と、を有する手段が用いられ得る。
【0062】
次に、導入手段70について説明する。
【0063】
本実施の形態において、導入手段70は、所定の液体を蒸発させてなる蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを、第1回転体24によって搬送される容器1の内部に導入するようになっている。図2および図5に示すように、このような導入手段70は、第1回転体24の容器1を保持すべき位置にそれぞれ対応して設けられた複数の導入管75と、複数の導入管75にそれぞれ対応して設けられ導入管75を開閉する複数のバルブ79と、複数の導入管75に連結されたループ状のマニホールド73と、所定の液体を収容した液槽90と、液槽90に所定のガスを供給するガス供給手段78と、液槽90とマニホールド73とを連通させる管71と、管71を加熱するヒーター81と、ヒーター以降の管71、マニホールド73、および導入管75に巻き付けられたテープヒーター(リボンヒーター)77と、を有している。
【0064】
各導入管75の末端は、第1回転体24に保持される容器1の開口部1aの直上または容器1の内部まで延びている。図2に示すように、本実施の形態においては、マニホールド73は円形状からなっており、回転軸L1を中心とした円周に沿って延びるよう、第1回転体24の回転軸L1を中心として配置されている。そして、各導入管75は、回転軸L1を中心とした放射線(半径方向線)に沿ってマニホールド73から延び出ており、回転軸L1を中心として所定角度離間して配置されている。
【0065】
液槽90は図示しない液体供給手段に連通している。そして、液体供給手段は液槽90に液体を供給して、液槽90内に収容されている液体の量が常に一定範囲内となるようにしている。管71の液槽90内にある端部は液槽90内の上方にあり、液槽90に貯留された液体中まで延びていない、すなわち、液体中に浸かっていない。一方、ガス供給手段78は液槽90の下方から所定のガスを液槽90内に送り込んでおり、供給されたガスは液槽90内の液体中を通過し、液槽90内の液体上方に回収されるようになっている。
【0066】
また、図5に示すように、液槽90内に蓄えられた液体の温度を調整する温度調整装置91が設けられている。温度調整装置91は、液槽90の液体中に配置された加熱機構91bと、液槽90内の液体の温度を測定する熱電対91cと、加熱機構91bおよび熱電対91cに接続された調整制御部91aと、を有している。調整制御部91aは、熱電対91cによる液温の測定結果に基づいて加熱機構91bを入り切りし、液槽90内の液体の温度を一定に保つようになっている。
【0067】
このような構成によって、液槽90内の液体上方には、所定湿度、所定温度、および所定圧力の蒸気混合ガスが生成されて蓄えられる。そして、バルブ79が開いている導入管75に、管71およびマニホールド73を介して蒸気混合ガスが送り込まれ、該導入管75から容器1の内部に蒸気混合ガスが導入されるようになる。
【0068】
なお、各要素には、流量計や圧力計等の適切な計器が設けられており、これによって、上述した各圧力や各流量が一定の値にあることを確認することができるようになっている。
【0069】
ここで、所定の液体としては、水、とりわけ不純物を含まない純水が適している。純水を用いた場合、その供給量は容器1の内面に曇りが生ずる程度でよく、例えば容器1が容量240mL(ミリリットル)の樹脂製ボトルの場合、容器1の内部に0.01g〜10gの程度の純水が導入されることが好ましい。なお、殺菌効果を向上させることができる限りにおいて、水(純水)に代え、エタノールやアセトン等を含む水溶液を供給するようにしてもよい。また、ここでいう所定の液体は、上述した付着手段86から噴射される液体と必ずしも同一である必要はない。
【0070】
また、所定のガスとしては、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のガスを使用することができる。これらのガスを使用することは、高電圧パルスを印加した際の絶縁破壊電圧の低下や、生成される活性酸素種量の増加等、種々の効果を期待することができる点において好ましい。また、上記群から選ばれる2種類以上のガスを混合して供給するようにしてもよい。その他にもプラズマ生成に寄与する限りにおいて種々のガスを利用することができる。
【0071】
なお、計器による監視だけでなく、容器1の外面への液体付着状態を検査する何らかの手段を設けるようにすることも好ましい。このような手段として、液体を付着させられた容器1の一方からレーザ光を照射するレーザ光照射器と、容器1の他方から照射されたレーザ光の透過量を測定するレーザ光測定器と、を有する手段が用いられ得る。
【0072】
ところで、これらの付着手段86および導入手段70の各構成要素、とりわけ管類を、上述した殺菌剤供給手段50へ、例えばバルブ等を介して開閉自在に連通させるようにしてもよい。この場合、殺菌剤供給手段50から殺菌剤により、付着手段86および導入手段70を使用前に殺菌処理することができる点で好ましい。
【0073】
〔内部チャンバー、支持手段〕
次に、主に図2および図7を用い、内部チャンバー17、殺菌対象である容器1を内部チャンバー17内で回転可能かつ移動可能に支持する支持手段30について説明する。
【0074】
図2および図7に示すように、本実施の形態において、内部チャンバー17は両端が塞がれた略円筒状からなっている。図2に示すように、内部チャンバー17には、第1回転体24から受け渡しホイール16を介して容器1を受け入れるための受け入れ開口4aと、受け渡しホイール16を介して容器1を排出するための第1排出開口4bおよび第2排出開口4cと、が設けられている。
【0075】
本実施の形態において、支持手段30は、殺菌対象である複数の容器1を支持する支持機構、支持した容器1を回転させる回転機構、および支持した容器1を所定の移動経路に沿って搬送する移動機構として機能するようになっている。そして、図3に示すように支持手段30は、回転軸L2を中心として回転可能な第2回転体45と、第2回転体45に回転可能に支持された複数の支持部材であって容器1を下方から支持する複数の支持部材30と、を有している。
【0076】
図7に示すように、本実施の形態において、第2回転体45は、上方部材45aと下方部材45bとに分割されている。第2回転体45の上方部材45aおよび下方部材45bは、回転軸L2上を延びるシャフト49を取り囲むように配置されており、モーター等の駆動手段(図示せず)を介して回転軸L2を中心として回転自在となっている。すなわち、支持手段30は、この図示しない駆動手段および第2回転体45等を移動機構として有し、駆動手段が第2回転体45を回転駆動することにより、第2回転体45に支持された支持部材31および当該支持部材31上の容器1を円周軌道に沿って移動させるようになっている。
【0077】
なお、上方部材45aおよび下方部材45bは、それぞれ別個の駆動手段により同期して回転駆動されるようになっていてもよく、また、例えばシャフト49内に設けられた公知の連結部材等を介して同一の駆動手段により、同期して回転駆動されるようになっていてもよい。
【0078】
図7に示すように、第2回転体45は、回転軸L2に直交するようにして上方から順に配置された円板状の第1乃至第4テーブル47a,47b,47c,47dと、回転軸L2に沿って延び第1乃至第4テーブル47a,47b,47c,47dを連結する連結部46と、を有している。すなわち、第1乃至第4テーブル47a,47b,47c,47dは同期して回転駆動される。
【0079】
図2および図7に示すように、本実施の形態において、支持部材31は、一方の面上に、具体的には上方の面上に容器1を支持する略円板からなっている。後に詳述するように各支持部材31の下方(他方)の面は、第2電極22によって覆われている。また、図7に示すように、各支持部材31は、その下方の面において、円柱状の軸部材32に連結されている。なお、円柱状の軸部材32と円板状の支持部材31とは、互いの中心軸が揃うようにして、接続されている。
【0080】
一方、図7に示すように、第2回転体45の第4テーブル47dには、回転軸L2を中心とした円周上に互いに等間隔を空けて配列された複数の軸受部材33が設けられている。そして、各軸受部材33によって、上述した軸部材32がそれぞれ支持されている。すなわち、この軸受部材33を介し、各支持部材31および各軸部材32が、第2回転体45の第4テーブル47dに回転自在に支持されている。また、第2回転体45の第3テーブル47cの下面には、支持部材31を回転駆動するための駆動手段35、例えばモーターが設けられている。駆動手段35は、例えば伝達ベルトからなる駆動伝達手段34bを介し、軸部材32に設けられたプーリー34aに連結されている。
【0081】
このような構成において駆動手段35が軸部材32を回転駆動すると、軸部材32に接続された円板状からなる支持部材31が、その板面への垂線と平行な軸L3を中心として回転駆動されるようになっている。すなわち、本実施の形態において、支持手段30は、駆動手段35、プーリー34a、駆動伝達手段34b、軸部材32、および支持部材31等を回転機構として有しており、駆動手段35が軸部材32を支持部材31とともに回転駆動することにより、支持部材31上に支持された容器1を回転させるようになっている。
【0082】
ここで、支持部材31の回転速度が速過ぎると、支持部材31上に容器1を安定して支持することができなくなる。また、支持部材31の回転速度が遅過ぎると、後に詳述する回転の作用効果を享受することができなくなってしまう。このようなことを考慮し、支持部材31の回転速度を、例えば50〜3000rpmに設定することができる。
【0083】
さらに、図7に示すように、各支持部材31および当該支持部材31と接続された軸部材32には、支持部材31の容器1に対面する部分から、軸部材32の支持部材31に対面しない側の端面まで延びる貫通孔37が形成されている。また、図7に示すように、各貫通孔37は、チャンバー12内またはチャンバー12外に配置された吸引機構41に連通している。なお、各貫通孔37は、第2回転体45の下方においてシャフト49に取り付けられたロータリーカップリング40と、軸部材32の支持部材31に対面しない側の端面に取り付けられたカップリング38およびカップリング38からロータリーカップリング40まで延びる連結管39を介し、連通されている。
【0084】
このような構成において、吸引機構41は、各連結管39に設けられたバルブ39aの開閉により、任意の貫通孔37から気体を吸引することができるようになっている。したがって、支持部材31上に容器1が配置されている場合、吸引機構41を稼働させて当該支持部材31へ容器1を吸引保持(吸着)することによって、容器1を支持部材31上に安定して支持することができる。すなわち、本実施の形態において、支持手段30は、吸引機構41、貫通孔37、および支持部材31等を支持機構として有しており、吸引機構41を作動させることにより、容器1を支持部材31上に吸着し容器1を安定して支持するようになっている。
【0085】
ところで、図2および図7に示すように、第2回転体45の連結部46から延び出る第3テーブル47cの外方には、この第3テーブル47cと対向するようにして内部チャンバー17の壁部から延び出た下方テーブル17cが設けられている。図2に示すように、下方テーブル17cは、第3テーブル47cを取り囲むよう、環状に形成されている。また、図7に示すように、下方テーブル17cは、略平板状からなり、第3テーブル47cと同一平面上に配置されている。このような下方テーブル17cと第3テーブル47cとの間には略一定幅を有する環状の隙間6cが形成されている。
【0086】
一方、図7に示すように、上述した支持部材31は第3テーブル47cよりも上方に配置され、軸部材32が下方テーブル17cと第3テーブル47cとの間の隙間6cを貫通している。そして、この隙間6cの中心軌跡は、第2回転体45の回転に同期して移動する軸部材32の回転軸L3の移動軌跡と揃うようになっている。また、この隙間6cの幅は、軸部材31が支障なく回転することができる程度確保されるよう設定される。
【0087】
また、図7に示すように、第2回転体45の連結部46から延び出る第2テーブル47bの外方には、この第2テーブル47bと対向するようにして内部チャンバー17の壁部から延び出た上方テーブル17bが設けられている。上方テーブル17bは、前述の下方テーブル17cと同様に、第2テーブル47bを取り囲むよう、環状に形成されている。また、図7に示すように、上方テーブル17bは、略平板状からなり、第2テーブル47bと同一平面上に配置されている。このような上方テーブル17bと第2テーブル47bとの間には略一定幅を有する環状の隙間6bが形成されている。上方テーブル17bと第2テーブル47bとの間の隙間6bの中心軌跡は、第2回転体45の回転に同期して移動する軸部材31の回転軸L3の移動軌跡と揃うようになっている。そして、後に詳述するように、この隙間6bには第1電極20が挿入される。したがって、この隙間6bの幅は、第1電極20が支障なく挿入され得るよう、設定される。
【0088】
なお、後に詳述するように、内部チャンバー17の壁、上方テーブル17bおよび下方テーブル17c、並びに、第2回転体45の連結部46、第2テーブル47bおよび第3テーブル47cによって囲まれる空間(処理スペース)内で大気圧プラズマを生じさせる。そして、上述したように、殺菌処理中、この処理スペース5aは陽圧に保たれ、この処理スペース5a外から処理スペース5a内へ菌を含んでいる可能性のあるガスが入り込んでしまうことを防止するようになっている。したがって、上方テーブル17bと第2テーブル47bとの間の隙間6bの幅と、下方テーブル17cと第3テーブル47cとの間の隙間6cの幅とは、上述した条件を満たす限りにおいて狭く設定されていることが好ましい。
【0089】
〔囲い体〕
ところで、図2および図7に示すように、殺菌装置10は、この処理スペース5a内に設けられ、支持手段30によって移動させられる容器1の移動経路に沿って円弧状に延びる囲い体25をさらに備えている。図7に示されているように、囲い体25は、容器1の移動方向に直交する断面において、支持部材31上の容器1を少なくとも部分的に囲むようになっている。とりわけ、本実施の形態においては、囲い体25は、容器1の移動方向に直交する断面において、容器1の側部1bの外輪郭に沿った内輪郭を有しており、容器1の移動経路に沿った両側から挟むようにして当該容器1を取り囲み、また一部上側からも容器1を取り囲んでいる。さらに詳しくは、図7に示すように、容器1の移動方向に直交する断面において、囲い体25の内面が容器1から略一定距離離間するようになされ、さらに言い換えると、囲い体25の内輪郭が容器1の外輪郭と略相似形状となるようになされている。
【0090】
なお、本実施の形態において、平板状からなる支持部材31も移動経路に沿った両側から囲い体25によって挟まれている。したがって、容器1は、上側および両側から囲い体25によって取り囲まれるとともに、下側から支持部材31によって取り囲まれている。
【0091】
図2および図7に示すように、本実施の形態において、囲い体25は、支持部材31および当該支持部材31上に支持された容器1の一側(本実施形態では内側)に配置された一側囲い部材26と、支持部材31および当該支持部材31上に支持された容器1の他側(本実施形態では外側)に配置された他側囲い部材27と、を有している。また、図2に示すように、本実施の形態において、囲い体25は、容器1の経路に沿って分割された4つの囲い要素から形成されている。すなわち、本実施の形態においては、囲い体25は、第1乃至第4一側囲い要素26a,26b,26c,26dからなる一側囲い部材26と、第1乃至第4他側囲い要素27a,27b,27c,27dからなる他側囲い部材27と、からなっている。
【0092】
なお、このような囲い体25は、図7に示すように、支持部材31上に支持される容器1と同一高さレベルに配置される。そして、一側囲い部材26は一側取付部材28aによって支持されている。この一側取付部材28aは、第2回転体45の上方部分45aと下方部分45bとの間に露出したシャフト49に固定されている。一方、他側囲い部材27は内部チャンバー17の内壁に固定された他側取付部材28bによって支持されている。
【0093】
後に詳述するように、本実施の形態において、囲い体25は、支持部材31と同様に、少なくとも一部を第2電極22によって外方から覆われる。したがって、囲い体25の大きさは、囲い体25によって囲まれる領域が容器1を収容可能な最小限の大きさに多少の余裕を加えた程度となるようにすることが好ましい。なお、囲い体25によって囲まれる領域を必要以上に大きくすれば、囲い体25を覆う第2電極22と、容器1に挿入される第1電極20との間の距離が不必要に増加して放電現象の安定性が損なわれるおそれがある。
【0094】
ところで、本実施の形態において、このような囲い体25は第2電極22の誘電体として機能する。また、上述した支持部材31も、同様に、第2電極22の誘電体として機能する。誘電体として機能する囲い体25および支持部材31は、例えば、アクリル樹脂、セラミックス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、メチルペンテン系樹脂等の各種の誘電性材料を使用することができる。ただし、容器1の殺菌前等、チャンバー12内全体が殺菌処理されることがあるため、誘電体はこのとき使用される薬品に対する耐性を有していることが好ましい。また、囲い体25および支持部材31によって囲まれる領域内で生じる放電現象を外部から観察することができるよう、誘電体は透光性を有していることが望ましい。さらにまた、放電現象にともなってわずかながら紫外線が発生するため、誘電体はUV耐性を有していることが好ましい。
【0095】
このような誘電体としての囲い体25および支持部材31の厚みは、第1電極20と第2電極22との間に安定した放電を生じさせる範囲で適宜に設定することができる。
【0096】
〔第1電極および第2電極〕
次に、主に図2および図7乃至図9を用い、支持手段30に支持された容器1内に挿入される第1電極20、および容器1内に挿入された第1電極20に対して容器1を介して配置された第2電極22について説明する。
【0097】
まず、第1電極20について説明する。第1電極20は、ステンレス等の導電性材料を容器1内に挿入可能な太さの棒状部材(例えば、丸棒)に成形してなるものである。この第1電極20は、第2回転体45に支持された複数の支持部材31にそれぞれ対応して複数設けられている。図7に示すように、各第1電極20はその長手方向が支持部材31および軸部材32の回転軸L3と一直線上に揃うように第2回転体45に支持されている。具体的には、各第1電極20は、第2回転体45の第1テーブル47aと第2テーブル47bとの間に設けられたエアシリンダ48aにより、支持部材48bを介して支持されている。
【0098】
このような構成によって、支持部材31の直上に配置された第1電極20は、第2回転体45が回転することにより、当該支持部材31と同期して回転移動する。また、第1電極20の各々は、対応するエアシリンダ48aを介し、上下方向に移動する。そして、図7に示されているように、細長状に延びる第1電極20は、下方に移動させられた場合、第2回転体45と内部チャンバー17との間の隙間6b、一側囲い部材26と他側囲い部材27との隙間、さらには、支持部材31上に支持された容器1の開口部1を通過し、容器1内へ挿入されるようになっている。この間、第1電極20と支持部材31との位置関係は、第1電極20の長手方向と支持部材31および軸部材32の回転軸L3とが一直線上に揃うように、保たれ続けている。
【0099】
後述するように、この第1電極20と第2電極22との間に高電圧パルスが印加され、第1電極20と第2電極22との間に大気圧プラズマが生じるようになる。したがって、第1電極20の太さを容器1に挿入可能な範囲で太めに設定すると、第1電極20と第2電極22との離間距離を短縮してなるべく小さいエネルギで放電させることができる。その一方で、第1電極20の太さを太くし過ぎると、第2回転体45と内部チャンバー17との間の隙間6bを広く設定しなければならなくなる。これらのことを考慮して第1電極20の太さを設定することが好ましい。
【0100】
また、第1電極20の長さは容器1に必要十分な深さで挿入できるように定めればよい。第1電極20の容器1への挿入量(長さ)は容器1の全高の1/10〜9/10の範囲に設定することが好ましい。第1電極20の挿入量が容器1の全高の1/10に満たないと容器1内における放電量が不足し、挿入量が9/10を超えると容器1の底部1c側に向けた放電が集中して容器1の底部1cが熱変形するおそれがあるとともに、容器1の側部1b側にて十分な殺菌効果が得られないおそれがあるからである。
【0101】
図8および図9に示すように、本実施の形態において、第1電極20の容器1内への挿入範囲の全域には一条の螺旋状のねじ山20aが形成され、これにより第1電極20の挿入範囲のほぼ全域に亘って凹凸が設けられている。このように凹凸を設けるのは、放電現象を第1電極20の先端20bに集中させることなく、第1電極20の容器1内への挿入範囲のほぼ全長に亘って均一に放電を生じさせるためである。つまり、第1電極20においては尖った部分で電界が集中して放電が生じるため、第1電極20の容器1への挿入範囲の全域に凹凸を満遍なく設けることにより、第1電極20の先端20bに限らずねじ山20aの頂点から均一に放電を生じさせて容器1の各部で等しい殺菌作用を生じさせることができる。一方、第1電極20の先端20bはこの部分への放電の集中を避けるべくなるべく平坦に形成することが望ましい。
【0102】
第1電極20に形成されるねじ山20aのピッチPは0.01mm〜10mmの範囲が好ましく、さらには0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。ピッチPが0.01mm未満の場合には凹凸の間隔が狭すぎて均一な放電が得られないおそれがあり、他方、ピッチPが10mmを超える場合には凸部が疎らに分布して放電密度が減少する。また、ねじ山20aの頂角θは5°〜60°の範囲が好ましく、さらには10°〜45°の範囲が好ましい。頂角θが5°未満の場合はねじ山20aの強度が不足するおそれがあり、頂角θが60°を超えるとねじ山20aの頂部からの放電が弱められるおそれがあるからである。
【0103】
次に、第2電極22について詳述する。図7に示すように、本実施の形態において、第2電極22は、囲い体25を外面から覆う側部第2電極22aと、支持部材31の他方の面を覆う底部第2電極22bと、を有している。すなわち、図7に示すように、第2電極22は、囲い体25を挟んで容器1の側部1bと対向する側部第2電極22aと、支持部材31を挟んで容器1の底部1cと対向する底部第2電極22bと、を有している。本実施の形態において、側部第2電極22aの上端は、支持部材31上に支持された容器1よりも高く、かつ囲い体25の上端よりはわずかに低い位置にある。側部第2電極22aの下端は側部第2電極22bよりも下方まで延びている。
【0104】
したがって、本実施の形態において、容器1は、容器1の移動方向に直交する断面において、当該容器の輪郭と略相似形状に配置された第2電極22によって側方および下方から覆われることになる。ただし、第2電極22をこのように構成することは必須ではなく、処理される容器1の形状、求められる殺菌レベル等を考慮して、第2電極22を側部第2電極22aおよび底部第2電極22bのいずれか一方のみから構成してもよく、また側部第2電極22aを容器1の底面3よりも幾らか高い位置までしか延びていないようにしてもよい。
【0105】
第2電極22は導電性の材料(例えばステンレス等の金属)からなる板又は網によって形成され得る。第2電極22によって囲まれる領域内における放電現象を観察することができるよう、第2電極22、とりわけ側部第2電極22aは透光性を有することが望ましい。このような観点から、例えば金属網にて側部第2電極22aを構成すれば、その網目を通して放電現象を確認することができるので好ましい。本実施の形態において、側部第2電極22aは金属網から構成され、底部第2電極22bは支持部材31の他方の面を覆う金属板から構成されている。
【0106】
また、このような第2電極22を囲い体25や支持部材31の所望の外面に導電性材料を蒸着して形成することもできる。この場合、蒸着条件を適正にすることにより、第2電極25を薄く構成し、第2電極22によって囲まれる領域内の放電現象を観察できる程度の透光性を第2電極22に付与することができる。第2電極25を形成するために蒸着する材料としては銅、アルミニウム、金、白金等の金属材料、その他各種の導電性材料を使用することができる。また、蒸着に代え、囲い体25および支持部材31の所望の外面に導電性塗料を塗工して側部第2電極22aを形成することもできる。
【0107】
〔高電圧パルス印加手段〕
次に、主に図2、図7および図10を用い、高電圧パルス印加手段57を含む高電圧パルスの印加に関わる構成について詳述する。
【0108】
図2、図7および図10に示すように、本実施の形態における高電圧パルス印加手段57は、高電圧パルス電源57aと、高電圧パルスが印加される高電圧側レール59と、接地された接地側レール58とを有している。本実施の形態における高電圧側レール59および接地側レール58は略リング状に形成され、各レール59,58のリング中心と、第2回転体45の回転中心である回転軸L2とが一致するように配置されている。
【0109】
高電圧側レール59は、支持手段30の第2回転体45の第1テーブル47aの上面に固定されている。一方、接地側レール58は、支持手段30の第2回転体45の第4テーブル47dに下面に固定されている。このような構成により、高電圧側レール59および接地側レール58が第2回転体45とともに回転するようになっている。
【0110】
図10および図7に示すように、高電圧パルス電源57aと高電圧側レール59とは、導電性材料からなり摺動自在な摺動子55aを介して接続されている。この摺動子55aは、高電圧側レール59に対して進退自在に保持され、かつ高電圧側レール59に向けて付勢されている。このため、この摺動子55により、回転中の高電圧側レール59と高電圧パルス電源57aとを確実に導通させることができるようになっている。
【0111】
なお、この高電圧圧側レール59には、各第1電極20が高電圧開閉接点54を介し電気的に接続されている。高電圧開閉接点54は、図示しない制御手段に動作させられ、第1電極20および該第1電極20を挿入された容器1が囲い体25内を移動している場合等に、高電圧開閉接点54を閉じて、第1電極20と高電圧側レール59とを導通させるようになっている。同様に、接地側レール58も、上述した振動子55aと同構成からなる摺動子55bを介して接地されている。
【0112】
本実施の形態において、接地側レール58には、底部第2電極22bが導通されている。具体的には、支持部材31に接続された軸部材32が導電性材料からなり、この軸部材32が支持部材31の他方の面を覆う底部第2電極22bと導通されている。図7に示すように、軸部材32の回転軸L3に直交する方向から当該回転軸L3に向けて、上述した振動子55aと同構成からなる振動子55cが軸部材32に当接している。そして、この振動子55cが接地側レール58に電気的に接続されることにより、底部第2電極22bが接地側レール58に導通されている。
【0113】
なお、本実施の形態において、第1乃至第4一側囲い要素26a,26b,26c,26dを外方から覆う側部第2電極22aは、一側取付部材28aおよびシャフト49に支持された接地線(図示せず)を介し、内部チャンバー17外にて接地されている。また、本実施の形態において、第1乃至第4他側囲い要素27a,27b,27c,27dを外方から覆う側部第2電極22aは、他側取付部材28bに支持された接地線(図示せず)を介し、内部チャンバー17外にて接地されている。
【0114】
ところで、図2および図10に示すように、本実施の形態における殺菌装置10においては、囲い体25内を移動している隣り合う複数の容器1に挿入された第1電極20および第2電極22の間に、高電圧パルスが印加されるようになっている。
【0115】
また、図10に示すように、高電圧パルス印加手段57は、高電圧パルス電源57aに接続された等価回路部51を有している。等価回路部51は、一つの容器1に挿入された第1電極20および第2電極22の間の抵抗値と略同一の抵抗値を有する抵抗器52bと、抵抗器52bと直列に接続された回路開閉接点52aと、を有した等価回路52を、前記高電圧パルスを同時に印加される電極20,22間数(図10中では4つ)と同じ数だけ、並列に接続した回路を含んでいる。このうち、回路開閉接点52aは、高電圧開閉接点54の開閉を制御する制御手段(図示せず)と接続されている。制御手段は、囲い体25内を移動し高電圧パルスを印加されるべき第1電極20および第2電極22間に容器1が配置されていなければ、当該第1電極20および第2電極22間に高電圧パルスを印加することに代え、当該電極20,22間数と同数の等価回路52の回路開閉接点52aを閉じて当該電極間20,22数と同数の等価回路52の抵抗器52bに高電圧パルスを印加するようになっている。
【0116】
このような高電圧パルス電源57aには例えば電圧38〜80kV、周波数100〜3000Hz(またはpps(pulse per sec))の高電圧パルスを第1電極20と第2電極22との間に印加できるものが使用される。ただし、高電圧パルス電源57aの性能は殺菌対象の容器1の大きさや処理槽20の容量に応じて適宜設定することができる。
【0117】
ところで、図10に示すように、殺菌装置10は、高電圧パルス印加手段57による放電電力の負荷状況を監視する放電電力監視手段60をさらに備えている。放電電力監視手段60は、印加される高電圧パルスの電圧を計測するための高電圧プローブ63と、高電圧パルスの印加にともなって発生する電流を計測するための電流プローブ62と、を有している。本実施の形態において、高電圧プローブ63は接続線63a,63aを介して高電圧側レール59と接地側レール58とに接続されるとともに、信号線63bを介してデジタルオシロモジュールコントローラ61に接続されている。また、図10に示すように、本実施の形態において、電流プローブ62は各第1電極20毎に設けられ、信号線62aを介して、例えばデジタルオシロモジュールコントローラ61に接続されている。したがって、放電の際に流れた電流を個々の容器1毎に監視することができるようになっている。このような構成により、デジタルオシロモジュールコントローラ61を介して放電電圧および放電電流を監視することができるようになっている。また、本実施の形態によれば、放電電力の負荷状況に異常があればデジタルオシロモジュールコントローラ61から異常信号が発信されるようになっている。
【0118】
また、図10に示すように、殺菌装置10は放電光の発生状況を監視する放電光監視手段65をさらに備えている。放電光監視手段65は、大気圧プラズマにより生ずる放電光を検出し放電光の強さを電気信号に変換する放電光検出部67と、放電光検出部67から電気信号を受けて放電光の強さが所定の基準値以上であるかを判定する判定部66と、を有している。放電光検出部67はフォトダイオード、発光スペクトルモニター、あるいはCCDカメラ等から構成することができ、光を検出して光の強さを電気信号に変換することができる限りにおいて特に限定されない。本実施の形態において、放電光の発生状況に異常があれば判定部66から異常信号が発信されるようになっている。判定部66は電気信号が所定の基準値以上か否かを判定することができる限りにおいて、特に限定されず、本実施の形態においては、判定部66をアナログコンパレータから構成している。
【0119】
さらに、図10に示すように、殺菌装置10は、放電電力監視手段60のデジタルオシロモジュールコントローラ61と、放電光監視手段65の判定部66と、に接続された判定手段53をさらに備えている。判定手段53は、デジタルオシロモジュールコントローラ61および判定部66から信号を受け、この信号に基づき、各支持部材31上に支持されている容器1についての殺菌処理の異常の有無を判定するようになっている。そして、判定手段53は、判定結果に基づいて容器1を第1排出口4bおよび第2排出口4cのいずれから排出するかを決定するようになっている。
【0120】
〔温調手段および検温手段〕
次に、殺菌後の容器1から抜き出された第1電極20に対して処理を施す、言い換えると、殺菌前の容器1に挿入される前の第1電極20に対して処理を施す手段について説明する。
【0121】
本実施の形態における殺菌装置10は、容器1に挿入される前の第1電極20の温度を調節する温調手段94と、第1電極20の温度を測定する検温手段95と、をさらに備えている(図11参照)。本実施の形態における温調手段94は、所定の温度のエアーを供給するエアー源94aと、エアー源94aに連通し所定の温度のエアーを吐出する吐出ノズル94bと、を有している。エア吐出ノズル94bは、第1電極20の移動経路沿いに配置され、移動中の第1電極20に向けて所定の温度のエアーを吹き付けるようになっている。一方、検温手段95は、例えば非接触で第1電極20の温度を測定することができる放射温度計から構成され得る。ただし、このような温調手段94および検温手段95は単なる例示に過ぎず、種々の公知の手段を採用することができる。
【0122】
なお、図11に示されているように、温調手段94および検温手段95は容器1から抜き取られ、処理スペース5a外へ引き上げられた第1電極20に対して処理を施すものである。したがって、温調手段94および検温手段95は処理スペース5a外の上方に配置されている。
【0123】
<殺菌方法>
次にこのような構成からなる殺菌装置10により容器1を殺菌する方法について説明する。
【0124】
〔殺菌装置の殺菌〕
まず、容器1の殺菌処理に先立って、上述した殺菌装置10自体を殺菌剤(本実施の形態においては過酸化水素ミスト)により殺菌する。この場合、まず、殺菌剤供給手段50により、チャンバー12内に30℃から50℃前後の温風を吹き込んでチャンバー12内を昇温する。次に、殺菌剤をチャンバー12内に吹き込む。その後、常温の空気をチャンバー12内に吹き込んでチャンバー12内を冷却するとともに、残留する過酸化水素成分をチャンバー12内から排出する。このような3つの各工程が30分程度行われ、チャンバー12内が殺菌される。また、上述したようにチャンバー12には排気口12aが設けられているので、温風、過酸化水素ミスト、および空気が順次供給されている間、排気口12aからチャンバー12内の気体が排出されチャンバー12内の圧力が一定に保たれるとともに、効率的にチャンバー12内雰囲気が置換されていくようになっている。
【0125】
チャンバー12内の殺菌処理が終了した後、チャンバー12の内部を外部よりも陽圧に保ち、さらに、チャンバー12の処理スペース5aの内部をチャンバー12の処理スペース5a以外の領域よりも陽圧に保つ。これにより、処理スペース5a内から処理スペース5a外に向けた気流、並びに、チャンバー12内からチャンバー12外に向けた気流が作り出される。したがって、気体中に含まれた菌が、チャンバー12の外部から内部へ入り込むこと、並びに、処理スペース5aの外部から内部へ入り込むこと、を防止することができる。
【0126】
〔容器の殺菌方法の概略〕
次に、容器1の殺菌処理が行われる。
【0127】
まず、図3を用いて殺菌方法の概略を説明する。
【0128】
容器1が、搬入手段15aにより搬入口14aを通過してチャンバー12内に順次持ち込まれる。持ち込まれた容器1は受け渡しホイール16を介して第1回転体24に順次受け渡されていく。第1回転体24に受け渡された容器1は、第1回転体24の回転にともって移動しながら処理を施される。次に、容器1は、受け渡しホイール16を介して第1回転体24から第2回転体45へ順次転載される。転載された容器1は第2回転体45の回転にともなって移動しながら処理を施される。殺菌処理された容器1は受け渡しホイール16を介して搬出手段15bに受け渡され、搬出手段15bにより搬出口14bを通過して、次工程である充填工程(図1参照)へと搬送される。このような殺菌方法によれば、多数の容器1を順次連続して効率的に殺菌処理することができる。なお、殺菌処理に異常があった容器1については、不良品排出手段19aに受け渡され、不良品搬出口19を経由してチャンバー12内から排出される。
【0129】
〔領域A1〕
次に、第1回転体24および第2回転体45の回転にともなって容器1になされる処理工程を順に詳述していく。
【0130】
まず、図2に示すように、受け渡しホイール16を介して第1回転体24に受け渡された容器1は、第1回転体24に保持され、第1回転体24の回転にともなって移動する。このとき、第1回転体24には多数の容器1が順次送り込まれてくるが、送り込まれてきた容器1は、回転軸L1を中心とした円周に沿って等間隔に間を空けて第1回転体24に保持される。
【0131】
図2に示す領域A1においては、付着手段の2流体スプレー87から液体が噴射されている。したがって、第1回転体24の回転にともなって領域A1を通過する容器1はその外面に液体を吹き付けられ、容器1の外面に液体が付着する。このとき、上述したように、2流体スプレー87に供給される液体の流量および空気の流量および圧力は一定となるように調整されている。したがって、各容器1の外面には、略一定量の液体が付着するようになる。
【0132】
〔領域A2〕
外面に液体を付着させられた容器1は、その後、第1回転体24の回転にともなって領域A2を通過する。上述したように第1回転体24に保持された容器1の直上には、導入手段70の導入管75の末端が配置されている(図2および図5参照)。そして、容器1が領域A2に入ると、導入手段70のバルブ79が開き、導入管75から蒸気混合ガスが噴射される。このとき、上述したように、所定湿度、所定温度、および所定圧力の蒸気混合ガスが液槽90から管71に送り込まれる。また、液槽90から容器1内までの管路はヒーター81およびリボンヒーター77によって加熱されるので、一度蒸気化した液体が再凝縮することはない。さらに、領域A2は、等間隔で配置された容器1が所定の数量だけ入る(通過する)広さとなっている。すなわち、図6に示すように、開いているバルブ79の数が常に一定数(図6中では2つ)となるようになっている。なお、図6に示す例においては、6つの導入管75およびバルブ79が設けられており、このうちいずれか2つのバルブ79が開いているようになっている。
【0133】
これらのことから、導入管75から容器1の内部に送り込まれる蒸気混合ガスは一定量となる。このため、容器1の内部に一定量の蒸気を導入することができる。また、蒸気とともに導入されるガスも一定量となるので、この蒸気混合ガスの導入により容器1内の雰囲気を空気以外のガスに確実に置換することもできる。
【0134】
領域A2を通過した容器1は、その後、受け渡しホイール16を介し、支持手段30に受け渡され、内部チャンバー17内に形成された処理スペース5a内を移動することになる。
【0135】
〔領域A3乃至領域A5〕
次に、主に図11を用い、支持手段30によって支持された容器1に対して施される処理について説明する。
【0136】
図11および図2から理解できるように、内部チャンバー17内では、支持手段30の第2回転体45が回転駆動されており、第2回転体45に支持された支持部材31が順次領域A3に移動してくる。そして、図11に示すように、第1回転体24によって搬送されてくる容器1は、領域A3において、順次移動してくる支持部材31上に配置される。このとき、容器1は、底部1cが円板状からなる支持部材31に対面するようにして、支持部材31上に載置されるようになる。なお、殺菌対象となる容器1が、通常用いられている飲料用ボトルのように、回転体としての輪郭を有する場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、容器1の中心軸が支持部材31および軸部材32の回転軸L3と一直線上に揃うようにして、容器1が支持部材31上に載置される。
【0137】
また、図7に示されているように、この領域A3を通過する支持部材31および軸部材32に形成された貫通孔37を開閉するバルブ39aが開かれる。これにより、吸引機構41が貫通孔37に連通し、吸引機構41は、支持部材31の端面(支持面)に開放された貫通孔37の端から容器1を吸引するようになる。この結果、支持部材31上に載置された容器1は、支持部材31に向けて吸着保持された状態で、支持手段30に安定して支持されるようになる。
【0138】
なお、受け渡しホイール16から容器1が持ち込まれてきていない等、何らかの理由によって、容器1を載置されることなく領域A3を通過した支持部材31を、図示しない制御手段が記憶するようになっている。すなわち、制御手段は、第2回転体45の回転にともって移動している支持部材31が容器1を支持しているか否かを把握することができるようになっている。
【0139】
その後、第2回転体45の回転にともなって、支持部材31および支持部材31上に支持された容器1が領域A4を通過する。領域A4において、その長手方向が支持部材31の回転軸L3と一直線上に揃うように支持されている第1電極20が、エアシリンダ48aによって降下させられる。降下させられた第1電極20は、開口部1aを介して容器1内に挿入される。
【0140】
次に、支持部材31に支持されるとともに第1電極20を挿入された容器1は、領域A5を通過する。領域A5において、駆動伝達手段34bを介し軸部材32に連結された駆動手段35が作動する。これにより、駆動手段35により、支持部材31が、当該支持部材31に吸着保持された容器1とともに、回転駆動させられる。
【0141】
このとき、容器1は、支持部材31に吸着保持されているので、支持手段30によって安定して支持されたままとなっている。とりわけ、殺菌対象となる容器1が回転体としての輪郭を有する場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、上述したように、容器1の中心軸が支持部材31および軸部材32の回転軸L3と一直線上に揃うようにして、容器1が支持部材31上に載置される。したがって、この場合、容器1を支持部材31から引き離そうとする力に打ち勝って、容器1は支持部材31上に極めて安定して支持された状態となる。
【0142】
なお、図11に示すように、本実施の形態において、領域A5から領域A7までの容器1の移動経路沿いに、囲い体25が配置されている。すなわち、容器1は、その内部に挿入された第1電極20とともに、領域A5から領域A7までの間、囲い体25によって囲まれる領域内を移動することになる。
【0143】
〔領域A6〕
支持部材31上に支持された容器1は、その後、領域A6を移動する。図11に示すように、この領域A6における囲い体25は側部第2電極22bによって覆われている。そして、この領域A6に容器1が入ると、当該容器1に挿入された第1電極20に対応する高電圧接続接点54が閉じ、高電圧パルス電源57aに接続された高電圧側レール59と第1電極20とが接続(導通)される。これにより、第1電極20と接地された第2電極22との間に常温常圧下で高電圧パルスが印加され、第1電極20と第2電極22との間に放電が生じ、第2電極22で囲まれた領域内、すなわち、囲い体25および支持部材31によって囲まれた領域内に大気圧プラズマが生じ、当該領域内に電離されたガスが生成される。上述したように、本実施の形態において、容器1の外面には液体が付着し、また容器1の内部には蒸気が存在している。これにより、プラズマの発生が安定するとともに、強力な殺菌能力を有する活性酸素種が生成される。また、上述した領域A2での蒸気混合ガスの導入において、容器1内の雰囲気を殺菌に適したガスに置換させておくことも可能である。以上のようなことから、領域A6において、容器1の内外面、囲い体25の内面、および第1電極20の容器1内に挿入された部分が、高いレベルで効率的に安定して殺菌される。
【0144】
とりわけ、本実施の形態においては、図7に示されているように、囲い体25が、容器1の移動方向に直交する断面において、容器1の輪郭に沿った内輪郭および外輪郭を有し、支持部材31上に支持された容器1を、側方および上方から取り囲むようになっている。また、容器1の下方は支持部材31が配置されている。すなわち、容器1は、容器1の移動方向に直交する断面において、囲い体25および支持部材31によって周囲を略全周に渡って取り囲まれている。したがって、囲い体25および支持部材31によって取り囲まれた領域からプラズマ化した気体が流出してしまうことを抑制することができる。これにより、プラズマ化した気体を殺菌対象である容器1の内外面、囲い体25の内面、および第1電極20に有効に接触させ、これらを高いレベルで殺菌することができる。
【0145】
加えて、本実施の形態によれば、容器1が、当該容器1を支持する支持部材31とともに囲い体25に囲まれた領域内で回転している。また、支持部材31とともに支持部材31の他方の面に取り付けられた底部第2電極22bも回転している。したがって、寿命の短い電離されたガスを、当該ガスが消滅してしまう前に、殺菌対象である容器1の内外面、囲い体25の内面、および第1電極20に迅速かつ有効に、さらにむらなく均一に接触させることができる。
【0146】
これらのことから、本実施の形態によれば、容器1の内外面、囲い体25の内面、および第1電極20を極めて高いレベルでむらなく均一に殺菌することができる。
【0147】
上述したように、大気圧プラズマを用いた殺菌処理が行われる処理スペース5aは、処理スペース5a以外の領域に比べ陽圧に保たれている。したがって、図7および図11に矢印で示すように、処理スペース5a内と処理スペース5a外とを連通させる隙間6bおよび隙間6cには、処理スペース5a内から処理スペース5a外に向けた気流が形成される。このため、処理スペース5a外から処理スペース5a内に菌が持ち込まれることを防止することができ、これにより、容器1を、高いレベルでむらなく殺菌された状態に維持し続けることができる。
【0148】
なお、図2、図3、および図11に示されているように、隣り合う複数の支持部材31にそれぞれ支持された複数の容器1が領域A6中を同時に移動し、これら複数の容器1が同時に殺菌処理されるようになっている。したがって、多数の容器1を順次効率的に殺菌処理することができる。
【0149】
また、例えば運転開始時または運転終了時である等の何らかの理由により、容器1が支持部材31上に支持されていなかったとすると、当該支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22間の抵抗値は、容器1が配置されている場合に比べ、著しく小さくなる。この結果、当該支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22間を流れる電流値が著しく大きくなるとともに、同時に高電圧パルスを印加される他の第1電極20および第2電極22の間であって容器1を支持している支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間を流れる電流値が小さくなる。その一方で、容器1が支持されていない支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間に高電圧パルスが印加されないようにすると、同時に高電圧パルスを印加されるべき他の第1電極20および第2電極22の間であって容器1を支持している支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間を流れる電流値が大きくなり、この電極20,22間に介在する容器1が変形してしまう等の不具合が生じてしまう虞がある。
【0150】
しかしながら、本実施の形態によれば、上述したように、容器1が支持されていない支持部材31を制御手段(図示せず)が把握するようになっており、容器1が支持されていない支持部材31が領域A6を通過する場合、図10に示すように、制御手段は当該支持部材31に対応する第1電極20の高電圧開閉接点54を開いたままに保つ。また同時に、制御手段は、等価回路部51の等価回路52の回路開閉接点52aを閉じる。さらに詳しくは、領域A6に容器1が支持されていない支持部材31が移動してきた場合、当該支持部材31に対応する第1電極20の高電圧接続接点54に代え、回路開閉接点52aを閉じるようになっている。したがって、容器1が支持されていない1以上の支持部材31が領域A6を通過している場合、当該支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間に代え、等価回路52を当該支持部材31の数に応じた数だけ並列に接続した等価回路部51に高電圧パルスが印加される。上述したように、各等価回路52は、容器1を挿入された第1電極20およびこの第1電極20に容器1を挟んで対向する第2電極22の間の抵抗値、すなわち、容器1を支持している支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間の抵抗値と同一の抵抗値を有している。このため、領域A6を通過中の各第1電極20および第2電極22の間を流れる電流は略一定となり、容器1を変形させてしまう等の不具合を防止することができる。加えて、高電圧パルスの印加条件が、殺菌されるべき多数の容器1間において一定となり、信頼性の高い殺菌処理を安定して行うことができる。
【0151】
また、高電圧パルスが印加されている間、放電電力監視手段60の高電圧プローブ63と電流プローブ62とを介して、印加される高電圧パルスの電圧と発生する電流とを確認することにより放電電力の負荷状況が監視される。さらに、放電光監視手段65によって、大気圧プラズマで生ずる放電光の強さを確認することにより放電光の発生状況が監視される。本実施の形態においては、図10に示すように、放電電力負荷状況の監視結果および放電光発生状況の監視結果が判定手段53に送信されるようになっている。また、判定手段53は各支持部材31上に支持された容器1について殺菌処理の異常の有無を判定するようになっている。
【0152】
〔領域A7および領域A8〕
領域A6で殺菌された容器1は、その後、領域A7を移動する。領域A6において、駆動伝達手段34bを介し軸部材32に連結された駆動手段35が停止する。これにより、容器1および当該容器1を支持する支持部材31および軸部材32の回転が停止する。なお、この場合、例えば軸部材32に当接し得る制動手段が設けられ、この制動手段によって支持部材31および軸部材32の回転が積極的に制止されるようにしてもよい。
【0153】
その後、容器1は領域A8を移動する。領域A8において、第1電極20が、エアシリンダ48aによって上昇させられ容器1内から引き抜かれる。引き抜かれた第1電極20は、図11に示すように、一側囲い部材26と他側囲い部材27との間、並びに、第2回転体45の第2テーブル47bと内部チャンバー17の上方テーブル17bとの間の隙間6bを通過して処理スペース5aの外部に配置される。すなわち、第1電極20は、第2回転体45の第2テーブル47bと内部チャンバー17の上方テーブル17bとの上方に配置されるようになる。以降、第1電極20は、この高さレベルで第2回転体45の回転に同期して移動する。
【0154】
〔領域A9〕
次に、支持部材31に支持された容器1は、領域A9を移動する。領域A9において、容器1が配置された支持部材31および軸部材32に形成された貫通孔37を開閉するバルブ39aが閉じられる。これにより、容器1に対する吸着が解除される。吸着から解放された容器1は、受け渡しホイール16を介して内部チャンバー17内から排出される。この場合の容器1の排出先は、判定手段53による判定結果によって異なる。
【0155】
判定手段53によって殺菌処理の異常がないと判定された容器1は、図2および図3に示すように、受け渡しホイール16を介し、搬出手段15bに移載される。その後、容器1は、搬出口14bを通って殺菌装置10のチャンバー12から排出され、次工程である充填工程(図1参照)に持ち込まれる。一方、判定手段53によって殺菌処理の異常があると判定された容器1は、図2および図3に示すように、受け渡しホイール16を介し、不良品搬出手段19aに移載される。その後、容器1は、不良品排出口19を通って殺菌装置10のチャンバー12から排出され、殺菌が十分に行われなかった不良品として排出される。一方、容器1を取り除かれた支持部材31は、その後、再び領域A3へと移動する。
【0156】
以上のような処理スペース5a内における処理と並行し、処理スペース5a外に配置されている第1電極20に対しても以下の処理が施される。なお、上述したように、第1電極20は、処理スペース5aの上方に配置され、処理スペース5a内に配置された対応する支持部材31と同期して移動している。
【0157】
図11に示すように、領域A9において、第1電極20は、温調手段94の吐出ノズル沿いを通過する。第1電極20は、温調手段94の吐出ノズル94bにより所定温度のエアーが吹き付けられ、これにより、第1電極20の温度が所定の温度に調節される。なお、このとき、第1電極20に水滴が付着していれば、温調手段94によって、第1電極20を乾燥させるようにしてもよい。
【0158】
その後、第1電極20は、検温手段95沿いを通過する。検温手段95は、第1電極20の温度を測定し、第1電極20が所定の温度範囲内に調節されていることを確認する。なお、第1電極20の温度が所定の温度範囲内に調節されていないことが判明した場合、この情報は、判定部53に送信される。そして、判定部53は、当該第1電極20を挿入されて殺菌処理をなされた容器1を不良品排出口19から排出する。
【0159】
また、判定部53に送信すると同時に、第1電極20が所定の温度に調節されていないという情報が、図示しない制御手段に伝達されるようにしてもよい。この場合、制御手段は、領域A6において、この第1電極20に対応する高電圧開閉接点54を閉じることに代え、等価回路52の回路開閉接点52aを閉じるようにしてもよい。
【0160】
このようにして温度調節および検温された第1電極20は、上述した領域A4において降下するまで、処理スペース5aの上方を移動する。
【0161】
以上のようにして、容器1が順次殺菌されていく。
【0162】
<作用効果>
以上のように本実施の形態によれば、大気圧プラズマを生じさせる工程において、支持手段30により殺菌対象である容器1を回転させるようになっている。したがって、この容器1の回転によって、プラズマ化した気体を生成後すぐに容器1にむらなく均一に接触させることができる。これにより、容器1の内外面を高いレベルでむらなく均一に殺菌することができる。
【0163】
とりわけ、このような本実施の形態によれば、両端が開放されたトンネル状の囲い体25を用いながら高いレベルでむらなく容器1を殺菌することができるようにしており、処理槽本体と処理槽蓋体とを有した処理槽内へ各容器を個別に収容して殺菌する必要性を省いている。したがって、処理槽本体に容器を順次収納する手間、および容器を収容した処理槽本体に処理槽蓋体を装着する手間を省くことができ、容器1を効率的に殺菌していくことができる。また、容器毎に対応して処理槽を設ける必要がないので殺菌装置のコストを低下させることができる。さらに、処理槽の開閉に起因して処理槽本体および処理槽蓋体が摩耗してしまう可能性を排除し得るので、殺菌装置10全体の維持コストを低減することもできる。さらに、異なる形状を有した殺菌対象を殺菌する場合、次の殺菌対象の形状に対応すべく、囲い体25および支持部材31を取り替えることは、処理槽本体および処理槽蓋体を取り替えることに比べて格段に容易に行うことができる。
【0164】
また、本実施の形態によれば、支持手段30は、平板状からなりその板面に略直交する軸L3を中心として回転可能な支持部材31を有している。そして、容器1は、第1電極20を挿入される開口部1aに対面する底部1cが支持部材31の一方の板面に対面するようにして、支持部材31上に吸着保持されるようになっている。したがって、容器1を支持手段30に対して容易に固定することができる。また、容器1が、通常用いられている液体収納用のボトルのように、回転体からなる場合や容器が特定の角度で回転対称である形状を有する場合には、容器1の回転中の姿勢を極めて安定させることができる。
【0165】
さらに、本実施の形態によれば、支持部材31の他方の面に底部第2電極22bが設けられている。すなわち、底部第2電極22bも支持部材31および容器1とともに回転させられるようになっている。したがって、プラズマ化した気体の生成場所が偏ってしまうことをより確実に防止することができる。これにより、容器1をより均一に殺菌することができる。
【0166】
さらに、本実施の形態によれば、大気圧プラズマを発生させる工程において、第1電極20は、容器1と同期して、両端が開放されるとともに少なくとも一部分が第2電極22によって外方から覆われた囲い体25によって囲まれる領域を移動しながら、高電圧パルスを第2電極22との間で印加されるようになっている。したがって、生成されたプラズマ化した気体を囲い体25内に留めておくことができ、これにより、プラズマ化した気体を有効に容器1へ接触させることができる。したがって、囲い体25内で容器1を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0167】
さらに、本実施の形態によれば、囲い体25は、容器1の移動方向に直交する断面において、容器1の輪郭に対応した輪郭を有している。したがって、囲い体25内に生成されるプラズマ化した気体が過度に拡散してしまうことを防止することができるとともに、生成されたプラズマ化した気体を迅速かつ有効に容器1に接触させることができる。したがって、囲い体25内で容器1を高いレベルでむらなく殺菌することができる。
【0168】
さらに、本実施の形態によれば、異なる第1電極20を挿入された複数の容器1が囲い体25によって囲まれる領域を順次移動し、これにより、複数の容器1が順次殺菌されていくようになっている。したがって、囲い体25内に順次配置されていく多数の容器1を高いレベルでむらなく効率的に殺菌していくことができる。
【0169】
とりわけ本実施の形態によれば、隣り合う複数の支持部材31にそれぞれ対応する複数の第1電極20および第2電極22の間に高電圧パルスが同時に印加されるようになっている。したがって、複数の支持部材31上にそれぞれ支持された複数の容器1に対し、同時に殺菌処理を施すことができ、これにより、多数の容器1を順次効率的に殺菌していくことができる。
【0170】
さらに、本実施の形態によれば、囲い体25は、容器1の移動経路に沿って分断された複数の囲い要素を含んでいる。したがって、多数の容器1を一度に収容し得る囲い体25を安価に製造することができる。また、本実施の形態によれば、囲い体25は、容器1の移動経路の一側に配置された一側囲い部材26と、容器1の移動経路の他側に配置された他側囲い部材27と、を有している。すなわち、本実施の形態によれば、囲い体25が一側と他側とに分割されるとともに、その長手方向に沿っても分割されている。したがって、囲い体25を非常に容易に製造することができ、またこれにともなって、囲い体25を非常に安価に入手することが可能となる。また、製造された囲い体25に残留する残留応力は小さくなり、これによって、囲い体25が使用中に変形してしまうことを抑制することができるとともに、一側囲い部材26と他側囲い部材27との間隔を所望の幅に保ち続けることができる。
【0171】
さらに本実施の形態によれば、高電圧パルスが印加される領域A6を通過中の支持部材31のうち1以上の支持部材31に容器1が支持されていない場合には、容器1が支持されていない支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間に代えて、支持部材31上に支持された容器1に挿入された一つの第1電極20と第2電極22との間の抵抗値と同等の抵抗値を有した等価回路52を前記容器1が支持されていない支持部材31の数だけ接続した回路51に、高電圧パルスが印加されるようになっている。したがって、高電圧パルスが印加される領域A6に容器1が支持されていない支持部材31が移動してくると、当該支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間に代え、等価回路52に高電圧パルスが印加されるようになっている。そして、等価回路52が容器1を支持した1つの支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間の抵抗値と略同等の抵抗値を有していることから、高電圧パルスが印加される陽極および陰極間の総抵抗値が略同一となる。したがって、1つの容器1を支持した支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間を流れる電流値が高くなり過ぎることを防止し、容器1を一定条件の下、一定のレベルで安定して殺菌していくことができる。このことは、殺菌処理の開始時や殺菌処理の終了時にとりわけ有用であり、殺菌装置10に投入する1本目の容器1および最終の容器1をも良品として取り扱うことができるようになり、歩留まりを格段に向上させることができる。
【0172】
<変形例>
上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変形例の一例について説明する。なお、以下の説明中において図12乃至図17を参照するが、図12乃至図17中において、図1乃至図11に示す上述した実施の形態と同一部分には同一符号を付すとともに、重複する詳細な説明は省略する。
【0173】
上述した実施の形態において、支持部材31の他方の面に底部第2電極22bが設けられている例を示したが、これに限られない。底部第2電極22bを支持部材31以外に設けた例を図12に示す。図12に示された例において、囲い体25をなす一側囲い部材26および他側囲い部材27は、支持部材31を他方(下方)の面側から少なくとも部分的に取り囲むようになっている。すなわち、図12に示す例において、囲い体25は、容器1の移動方向に直交する断面において、容器1を上方、側方、および下方から取り囲むようになっている。そして、本例において、底部第2電極22bは、一側囲い部材26および他側囲い部材27の下方部分を外方から覆うよう、一側囲い部材26および他側囲い部材27の各下方部分に設けられている。
【0174】
また、上述した実施の形態において、底部第2電極22bが支持部材31とともに回転する例を示したが、これに限られない。図12に示す例のように、底部第2電極22bが回転しないようにしてもよい。また、底部第2電極22bを回転することに代え、第1電極20を回転するようにしてもよい。さらには、底部第2電極22bおよび第1電極20を両方とも回転させるようにしてもよいし、この場合、互いに異なる回転速度または互いに異なる回転方向に回転させるようにしてもよい。
【0175】
さらに、上述した実施の形態において、囲い体25が、容器1の移動経路沿いに一側取付部材28aおよび他側取付部材28bを介して固定された例を示したが、これに限られない。例えば、図13および図14に示すように、囲い体25の他側囲い部材27は、内部チャンバー17の下方テーブル17cへ直接または間接に取り付けられてもよい。一方、図13に示すように、囲い体25の一側囲い部材26は、第2回転体45の第3テーブル47cに直接または間接に取り付けられてもよい。この例において、図14に示すように、一側囲い部材26は、容器1の移動経路に沿いに設けられ、すなわち、第2回転体45の第3テーブル47cの周縁部に沿いに設けられ、当該周縁部の全周に渡って延びている。すなわち、一側囲い部材26は環状に延び、一側囲い部材26は、支持部材31および支持部材31に支持された容器1と同期して移動する。そして、一側囲い部材26の上述した領域A6(図3参照)を通過している部分と、他側囲い部材27と、によって囲い体25が形成される。
【0176】
なお、図13および図14に示す囲い体25は、その長手方向に沿って複数の囲い要素に分割されていない例を示したが、これに限られず、複数の囲い要素に分割されていてもよい。また当然に、上述した実施の形態において、囲い体25がその長手方向に沿って複数の囲い要素に分割されている例を示したが、これに限られず、長手方向に沿って分割されていないようにしてもよい。
【0177】
また、図13および図14に示す一側囲い部材26を、さらに図15および図16に示すように変形することができる。図15および図16に示す例において、一側囲い部材26は、各支持部材31に対応して複数設けられている。図15に示すように、一側囲い部材26は、容器1の移動経路沿いであって当該移動経路の一側に設けられている。一側囲い部材26は、支持部材31および当該支持部材31に支持された容器1を一側から囲む一側部126bと、一側部126bに連結され、支持部材31および当該支持部材31に支持された容器1を容器1の移動方向前方から囲む前方部126aと、一側部126bに連結され、支持部材31および当該支持部材31に支持された容器1を容器1の移動方向後方から囲む前方部126cと、を有している。この例において、一側囲い部材26は、上述した領域A6(図3参照)を通過する際に、他側囲い部材27と囲い体25を形成するようになる。この囲い体25は、容器1の移動方向に直交する断面においてだけでなく、容器1の移動方向に沿った断面においても、容器1および支持部材31を取り囲むようになる。この結果、囲い体25によって容器1を個別に収容し得る処理区画が形成されることになり、容器1をさらに高レベルでむらなく殺菌することができる。
【0178】
さらに、上述した実施の形態において、支持手段30が第2回転体45を備え、第2回転体45の回転によって容器1を円周に沿って移動させながら、円周に沿って延びる囲い体25内で殺菌していく例を示したが、これに限られない。殺菌装置10を配置すべきスペースとの関係で、例えば、支持手段30が容器1を直線に沿った移動経路で移動させ、当該直線状の移動経路沿いに延びる囲い体25内で容器1を殺菌していくようにしてもよい。
【0179】
さらに、上述した実施の形態において、支持手段30は、容器1を支持するための支持機構として、吸引機構41を有し、吸引機構41によって容器1を支持部材31に吸着保持する例を示したが、これに限られない。
【0180】
例えば、支持部材31上に設けられたクランプ機構(狭持機構)によって容器1を支持部材31に対して固定することにより、支持手段30が容器1を安定して支持するようにしてもよい。このような例を図17に示す。図17に示す例において、支持手段30は、容器1を狭持する狭持部材43を有した狭持機構(クランプ機構)42を、支持機構として備えている。本例における狭持部材43は、支持部材31上に摺動自在に配置されている。そして、この狭持部材43は、図示しないエアシリンダ等を用いて、支持部材31上に載置された容器1に対して接離可能となっている。なお、図17に示す例において、狭持部材43は容器を両側から挟み込むように配置されているが、これに限られず、例えば三つの狭持部材43が設けられていてもよい。
【0181】
また、容器1の支持方法の他の例として、第1電極20が降下した場合に、容器1の例えば開口部1aに当接する当接部材を第1電極20の上方に設け、この当接部材と支持部材31との間に容器1を狭持することにより、支持手段30が容器1を安定して支持するようにしてもよい。
【0182】
さらに、上述した実施の形態において、容器1の底部1aが下方に配置され、容器1の開口部1aが上方に配置された状態で、容器1が回転させられながら殺菌される例を示した。しかしながら、殺菌時における容器1の姿勢や、容器1の回転方向はこのような態様に限定されるものではない。
【0183】
さらに、上述した実施の形態において、まず、支持手段30によって容器1が支持され、その後、容器1内に第1電極20が挿入される例を示したが、これに限られない。例えば、容器1を支持する工程と、第1電極20を支持する工程と、の順番を逆にしてもよいし、また、これらの工程を並行して行うようにしてもよい。
【0184】
さらに、上述した実施の形態において、図11に示すように、まず、支持手段30によって容器1を回転させ、その後、回転している容器1に第1電極20を挿入した例を示したが、これに限られない。例えば、容器1を回転させる工程と、容器1に第1電極20を挿入する工程と、の順番を逆にしてもよいし、また、これらの工程を並行して行うようにしてもよい。
【0185】
さらに、上述した実施の形態において、まず、容器1の外面に液体を付着させ、その後に、容器1の内部に蒸気を導入する例を示したが、これに限られず、容器1の外面に液体を付着させる工程と、容器1の内部に蒸気を導入する工程との、順番を逆にしてもよいし、また、これらの工程を並行して行うようにしてもよい。また、容器1の内面に蒸気を導入することに代え、容器1の内面に液体を噴射して容器1の内面に液体を付着させるようにしてもよい。さらに、容器1の外面に付着させる液体として、上述した種類の液体だけでなく、過酸化水素水を用いることもできる。この場合、容器1の外面をより確実に殺菌することができる。
【0186】
さらに、上述した実施の形態において、判定手段53が、放電電力監視手段60の監視結果および放電光監視手段65の監視結果、並びに、第1電極20の温度調節結果に基づき、殺菌処理の異常の有無を判定する例を示したが、これに限られない。例えば、放電電力監視手段60の監視結果、放電光監視手段65の監視結果、および第1電極20の温度調節結果のいずれか一つまたはいずれか二つのみに基づいて、殺菌処理の異常の有無を判定するようにしてもよい。また、これらに代えて、あるいは、これらに加えて、容器1の外面への液体の付着状況や容器1の内部への蒸気の導入状況に基づいて、殺菌処理の異常の有無を判定するようにしてもよい。さらに、放電電力監視手段60のデジタルオシロモジュールコントローラ61あるいは放電光監視手段65の判定部66自体を判定手段253として用いるようにしてもよい。
【0187】
さらに、上述した実施の形態において、高電圧パルス印加手段57の等価回路部51が、容器1を支持する1つの支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間の抵抗値と同等の抵抗値を有する抵抗器52bを含んだ等価回路52を有する例を示したが、これに限られない。例えば、各等価回路52の抵抗器52bが、支持部材31上に支持される以前の処理に異常がなかった容器1を支持する1つの支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間の抵抗値と同等の抵抗値を有するようにしてもよい。そしてこの場合、高電圧パルス印加部57が複数の支持部材31に対応する各電極20,22間に高電圧パルスを印加する際に、複数の支持部材31のうち1以上の支持部材31に、支持部材31上に支持される以前の処理に異常があったと判定された容器1が支持されている場合には、当該異常があったと判定された容器1が支持されている支持部材31に対応する第1電極20および第2電極22の間に代え、当該異常があったと判定された容器1が支持されている支持部材31の数と同数の等価回路52に、高電圧パルスが印加されるようにしてもよい。ここで、支持部材31上に支持される以前の処理として、上述した実施の形態においては、例えば、領域A1における容器1の外面へ液体を付着させる処理や、領域A2における容器1の内部に蒸気混合ガスを導入する処理が挙げられる。また、例えば、領域A1において容器1の外面に液体を所定の量だけ付着させることができなかった場合、領域A2において容器1の内部に蒸気を所定の量だけ導入することができなかった場合、あるいは領域A2において容器1の内部に雰囲気置換用ガスを所定の量だけ導入することができなかった場合等が、上述した実施の形態において、支持部材31上に支持される以前の処理に異常が有った場合に該当する。そして、支持部材31上に配置される以前の処理に異常が有った容器1が支持されている支持部材31に対応する電極20,22間の抵抗値は、異常が無かった容器1が支持されている支持部材31に対応する電極20,22間の抵抗値と異なってしまう虞がある。このような場合、異常が無かった容器1を支持する他の支持部材31に対応する電極20,22間であって、同時に高電圧パルスを印加される電極20,22間を流れる電流値は、所望の値より大小してしまう。本変形例によれば、このような不具合を排除することができ、これにより、一定の高電圧パルス印加条件による一定の殺菌効果を期待することができる。なお、支持部材31上に支持される以前の処理における異常の有無は、例えば、上述したレーザ光の透過量によって異常の有無を判定する手段、あるいは、導入手段70や付着手段87の各計器等を用いて判定することができ、この判定結果を受けて、上述した制御手段(図示せず)が高電圧開閉接点54および各等価回路52の回路開閉接点52aを操作するようにしてもよい。
【0188】
さらに、上述した実施の形態において、チャンバー12内に内部チャンバー17が設けられている例を示したが、これに限られず、内部チャンバー17を省略することも可能である。
【0189】
さらに、上述した実施の形態において、開口部1a、側部1bおよび底部1cを有する容器1を殺菌する例を示したが、これに限れない。殺菌対象としての容器1の形状は特に限定されない。さらには、容器以外の殺菌対象、とりわけシート等を殺菌する場合に、本発明を適用することができる。
【実施例】
【0190】
上述した実施の形態の殺菌装置を作製してその殺菌効果を評価した。
【0191】
(殺菌評価用ボトル)
殺菌対象の容器は容量500mlのPETボトルとした。当該PETボトル内面に黒かびの胞子を所定量均一に付着させ殺菌効果評価用ボトルとした。
【0192】
(放電条件および水付条件)
第1電極:直径5mmのステンレス製の丸棒からなる電極を使用し、ボトル底部から25mm上方に設置した。
第2電極:ステンレス製金網から形成した。ステンレス製金網は、容器の側方および下方を覆うように、囲い体および支持部材に外方から取り付けた。
囲い体:容器の移動方向に直交する断面において、容器と囲い体との離間距離を略8mmとした。囲い体および支持部材の厚さはいずれも5mmとした。
パルス印加条件:電圧75kV,周波数700Hz(pps),放電時間20秒以下
内部蒸気導入条件:図5に示す導入手段を用い、ガス供給手段から120L/minの流量で混合ガスを供給して、混合ガスと純水が蒸発した水蒸気とからなる蒸気混合ガスを処理槽内の容器の内部に0.5秒間導入した。供給された混合ガスの組成は、容積比でアルゴン20%、窒素45%、酸素35%であった。純水の内部への導入量は略1.0gであった。なお、純水の導入量の測定は、付着処理前後の容器の重さを測定し、その差をとることによって行った。
【0193】
(培養方法)
放電終了後、殺菌評価用ボトルを装置から取りだし以下の方法で殺菌効果を評価した。
トリプトソーヤブイヨン液体培地約20mlをボトル内に注ぎ、予め滅菌処理したキャップをはめて充分振った後、30℃で10日間培養した。培養後、下記の式1から殺菌効果D値を算出した。
殺菌効果D値=−log(生存菌数/初発菌数)・・・式1
【0194】
(評価結果)
殺菌処理されたPETボトル内面の殺菌効果は6Dであった。また、同様にして第1電極の殺菌効果を評価したところ6Dであった。
- 【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】図1は、容器の成形から内容物の充填までの概略工程を示す図である。
【図2】図2は、殺菌装置の概略構成を示す上面図である。
【図3】図3は、殺菌装置内における各処理工程を説明する図である。
【図4】図4は、容器の外面に液体を付着させる方法および付着手段の概略構成を示す図である。
【図5】図5は、容器の内部に蒸気を導入する方法および導入手段の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、容器の内部への蒸気の導入方法を説明するための図である。
【図7】図7は、図2のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図8は、第1電極を示す図である。
【図9】図9は、図8のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】図10は、高電圧パルス印加手段の概略構成を示す図である。
【図11】図11は、殺菌方法を説明するための図である。
【図12】図12は、囲い体および第2電極の変形例を説明するための図である。
【図13】図13は、囲い体の他の変形例を説明するための断面図である。
【図14】図14は、囲い体の他の変形例を説明するための上面図である。
【図15】図15は、囲い体のさらに他の変形例を説明するための部分上面図である。
【図16】図16は、図15のXVI−XVI線に沿った断面図である。
【図17】図17は、支持手段の変形例を示す側面図である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
- 【公開番号】特開2007−269325(P2007−269325A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【発明の名称】殺菌装置および殺菌方法
- 【出願番号】特願2006−93883(P2006−93883)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100075812
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢次
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
【識別番号】100096895
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 淳平
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
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