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タウリン高含有酵母及びその製造法
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- 【要約】
【課題】
菌体内にタウリンを高濃度に含有する酵母を開発し、食品や飼料に適用可能な程に安全なタウリン給源として提供すること。
【解決手段】
タウリンを9%(w/v)以下の濃度で含有する溶液中に酵母を懸濁し、非増殖的に攪拌又は振とう処理することにより、乾燥菌体当りタウリンを12%(w/w)以下の濃度で含有するタウリン高含有酵母を製造する方法。左記方法は、溶液中のタウリン濃度を調節することにより、菌体内に取込まれるタウリン量を適宜調節することが可能であることを特徴とする。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウリン含量が0.1〜12%(乾物重量)の範囲であることを特徴とする、タウリン高含有酵母。
【請求項2】
タウリンを含有する溶液中に酵母を懸濁し、処理することを特徴とする、タウリン高含有酵母の製造法。
【請求項3】
タウリンが、合成タウリン、畜産物由来タウリン、水産物由来タウリン、畜産物エキス又は海産物エキスのいずれか一つ若しくは二つ以上に由来することを特徴とする、請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
溶液中のタウリン含量が0.1〜9%(w/v)であることを特徴とする、請求項2又は3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
処理時間が3〜60時間であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
処理温度が25〜40℃であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の製造法。
【請求項7】
溶液のpHが3〜7であることを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の製造法。
【請求項8】
タウリンを含有する溶液が、非栄養的であることを特徴とする、請求項2〜7に記載の製造法。
【請求項9】
処理が、非増殖的な攪拌又は振とうであることを特徴とする、請求項2〜8に記載の製造法。
【請求項10】
酵母を懸濁する溶液に含まれるのタウリン濃度を調節することにより、得られるタウリン高含有酵母中のタウリン含量を調節することを特徴とする、請求項2〜9のいずれかに記載の製造法。
【請求項11】
タウリン高含有酵母中のタウリン含量が0.1〜12%(乾物重量)の範囲であることを特徴とする、請求項2〜10のいずれかに記載の製造法。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウリンを高濃度に含有する酵母及びその製造法に関する。より詳細には、培養条件を適宜設定することにより、任意のタウリン含量を有する酵母を製造する方法、及びそれにより得られる酵母に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間も含む陸上哺乳類から魚等の水棲動物まで、タウリンの重要性、特に健康面における重要性が明らかにされつつある。タウリンとはアミノ酸の一種で、体内でメチオニンやシステインなどの含硫アミノ酸から作られ、生命維持に必須な心臓、脳、網膜に多く存在する。タウリンには細胞内浸透圧調節因子という、細胞に栄養素や情報を取り入れ、細胞膜を安定させ、細胞の機能を維持する役割がある。
【0003】
タウリンは、疲労やストレス下に置かれた状態では欠乏しがちになるため、食餌により補給する必要がある。現在最も安価なタウリン源として合成タウリンが候補として考えられるが、合成タウリンは一部の医薬品に使用が認められているのみで、一般の食品や飼料安全法に規定されている配合飼料への使用は認められていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術に鑑み、本発明では、一般の食品や配合飼料への使用が可能な程に安全なタウリン源、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者による鋭意研究の結果、酵母の処理液中にタウリンを含有させ、その処理液中で一定の条件下で酵母を処理すると、酵母がタウリンを菌体内に効率的に取込むこと、特に、酵母を栄養培地ではなくむしろ任意のタウリン濃度の処理液中で非増殖的に酵母を嫌気的並びに好気的に攪拌することにより、酵母菌体中に効率的にタウリンが取込まれることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1>タウリン含量が0.1〜12%(乾物重量)の範囲であることを特徴とする、タウリン高含有酵母。
<2>タウリンを含有する溶液中に酵母を懸濁し、処理することを特徴とする、タウリン高含有酵母の製造法。
<3>タウリンが、合成タウリン、畜産物由来タウリン、水産物由来タウリン、畜産物エキス又は海産物エキスのいずれか一つ若しくは二つ以上に由来することを特徴とする、上記<2>に記載の製造法。
<4>溶液中のタウリン含量が0.1〜9%(w/v)であることを特徴とする、上記<2>又は<3>のいずれかに記載の製造法。
<5>処理時間が3〜60時間であることを特徴とする、上記<2>〜<4>のいずれかに記載の製造法。
<6>処理温度が25〜40℃であることを特徴とする、上記<2>〜<5>のいずれかに記載の製造法。
<7>溶液のpHが3〜7であることを特徴とする、上記<2>〜<6>のいずれかに記載の製造法。
<8>タウリンを含有する溶液が、非栄養的であることを特徴とする、上記<2>〜<7>に記載の製造法。
<9>処理が、非増殖的な攪拌又は振とうであることを特徴とする、上記<2>〜<8>に記載の製造法。
<10>酵母を懸濁する溶液に含まれるのタウリン濃度を調節することにより、得られるタウリン高含有酵母中のタウリン含量を調節することを特徴とする、上記<2>〜<9>のいずれかに記載の製造法。
<11>タウリン高含有酵母中のタウリン含量が0.1〜12%(乾物重量)の範囲であることを特徴とする、上記<2>〜<10>のいずれかに記載の製造法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタウリン高含有酵母の製造法においては、処理条件を適宜調節することにより任意のタウリン含量を有する酵母を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、タウリン高含有酵母とは、0.1〜12%(乾物重量)の範囲でタウリンを含有する酵母のことを指す。本発明におけるタウリン高含有酵母は、タウリンを含有する溶液に酵母を懸濁、攪拌及び/又は振とうし、酵母にタウリンを取り込ませることにより調製される。本発明タウリン含有酵母の基となる酵母としては、特に限定はされないが食用酵母であるのが好ましい。食用酵母としては、特に制限はなく公知のものの中から選択することができ、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母及び味噌醤油酵母から選択されるのが好ましく、パン酵母であるのが特に好ましい。食用酵母の菌株としては、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属、トルラスポラ(Torulopsis)属、キャンディダ(Candida)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属などが挙げられる。
【0009】
また食用酵母の菌株の具体例としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces rouxii、Torulopsis utilis、Torulopsis candida、Mycotorula japonica、Mycotorula lipolytica、Torulaspora delbrueckii、Torulopsis fermentati、Candida sake、Candida tropicalis、Candida utilis、Hansenula anomala、Hansenula suaveolens、Saccharomycopsis fibligera、Saccharomyces lipolytica、Rhodotorula rubra、Pichia farinosa、などが挙げられる。これらの中でも、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensisが好ましく、Saccharomyces cerevisiae が特に好ましい。
【0010】
本発明において使用するタウリンとしては、医薬品グレードの合成タウリン、畜産物由来タウリン、水産物由来タウリンをはじめ、タウリンを高含有する畜産物エキス、海産物エキスでも使用可能である。本発明の用途に使用しうるタウリン原料としては、例えば豚内臓エキス、オキアミエキス、あるいはイカエキス等が挙げられる。
【0011】
本発明のタウリン高含有酵母の製造を実施するための処理としては、タウリンを添加した栄養培地で酵母を増殖的に培養しても差し支えないが、非栄養的なタウリン溶液中で酵母を懸濁せしめ、非増殖的に攪拌及び/又は振とう処理するのが望ましい。なお、本発明において「非栄養的」とは、培地中に酵母の増殖に必要な栄養成分のいずれかが欠けている状態であることを意味する。また、本発明において「非増殖的」とは、培地中に酵母の増殖に必須な栄養成分のいずれかが欠けている為、酵母が増殖出来ない状態であることを意味する。
【0012】
また、酵母をタウリン溶液により処理する場合、最初に一定量のタウリン溶液を調製してその中で酵母を処理するバッチ式の処理方法、あるいはタウリン溶液を少量ずつ流下させて処理する流加式の処理方法等、いずれの処理法によっても本発明を実施することが可能であるが、望ましくはバッチ式の処理方法である。
【0013】
タウリン溶液により酵母を処理する時間としては、3〜60時間、好ましくは35〜55時間、更に望ましくは45〜50時間である。なお、3時間未満の余りに短時間ではタウリンが酵母菌体内に十分に取り込まれず、また50時間以上ではその時間の増加に見合うだけの効果が見られなくなる。
【0014】
タウリン溶液により酵母を処理する温度としては、25〜40℃の範囲が適用可能であるが、望ましくは30〜37℃、より望ましくは35℃である。なお、25℃未満ではタウリンが菌体内に効率的に取り込まれず、一方40℃以上では酵母菌体の自己消化が起こり、望ましくない。
【0015】
タウリン溶液により酵母を処理する際のpHは、3〜8の範囲が適用可能であるが、望ましくは5〜7、より望ましくは5である。なお、pHが3以下あるいは8以上の条件になると酵母菌体にとってストレスとなり、効率的にタウリンを菌体内に取り込まなくなるため、望ましくない。
【0016】
タウリン溶液により処理する際の酵母濃度としては、開始時菌体量が10〜30%の範囲が適用可能である。なお、酵母の細胞当たりのタウリン含量を高くするためには酵母濃度が少ない方が望ましく、開始時菌体量を10%程度に低くするのが望ましい。一方、溶液中タウリンの利用率を高くするためには、酵母濃度が高い方が望ましく、開始時菌体量を30%程度に高くするのが望ましい。
【0017】
酵母を処理する際の、処理液中のタウリン濃度としては、0.1〜9.0%(w/v)の範囲が適用可能であり、また、左記タウリン濃度の範囲内において、酵母菌体中のタウリン含量を任意に調節することが可能である。なお、処理液中のタウリン濃度が9%以上になると、溶解したタウリンが処理中に結晶を形成して析出するため、望ましくない。
【実施例1】
【0018】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、溶液中のタウリンを効率良く酵母菌体に取込むための処理条件の検討を、3Lの小型ジャーファーメンタを用いて行った。
<試験例1:処理時間の検討>
酵母菌体に効率的にタウリンを取込ませるのに必要な処理時間の検討を行った。
タウリンが0.5、1.0及び2.0%(w/v)となるように必要量の合成タウリン(潜江永葯業製)を50〜60℃の温水に溶解した溶液を調製し、このタウリン溶液にパン酵母菌体(オリエンタル酵母工業(株)製レギュラーイースト)200g(1x109個/ml)を懸濁し、更に水を添加して総量を1Lに調整した。この懸濁液を3Lジャーファーメンタにて30℃で51時間、100rpmで攪拌処理した。途中一定時間経過毎に少量の菌体を回収して遠心分離(3000rpm、15分)によって集菌し、イオン交換水で2回洗浄した。洗浄後の菌体は超音波処理あるいはガラスビーズによって菌体破砕し、10%(w/v)になるようにTCA(トリクロロ酢酸)を添加して10分間熱湯抽出した。左記抽出液の濾過液を検体とし、HPLCによってタウリン含量を測定した。なお、今回の試験ではタウリンの溶解、酵母の懸濁、洗浄には脱イオン水を用いたが、水道水でも代替可能である。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0019】
いずれの時間においても処理液のタウリン濃度が高い区ほど酵母菌体のタウリン含量も高い値を示した。また、酵母のタウリン含量はいずれの区も経時的に増加しているが、45時間でほぼ平衡に達している。よって、いずれのタウリン濃度の処理液においても最大のタウリン含量の酵母を得るには45時間以上処理を行えば良いことが明らかとなった。
【0020】
<試験例2:処理温度の検討>
タウリン溶液の温度が酵母のタウリン取り込みに大きく影響を及ぼすことが考えられるため、酵母にタウリンを効率的に取込ませるための処理温度の検討を行った。
処理液中のタウリン濃度は2.0%(w/v)とし、処理温度は25、30および35℃の3区を設定した。その他の処理条件及びタウリンの分析法は試験例1と同じであるが、24時間の処理で明確な差が認められたので、24時間で処理を終了した。結果を表2に示す。
【表2】
【0021】
本試験の結果、25℃の低温でも酵母によるタウリンの取り込みは起こるが、30℃と35℃に比べて少ないことが明らかとなった。また培養温度が高いほど酵母のタウリン取り込みは高く、特に35℃で高い値を示していることが見られた。なお、パン酵母は40℃に近くなると自己消化が激しくなることが知られている。ため、今回の試験結果と合わせ考え、培養温度は35℃付近が望ましいことが明らかとなった。また、実施例1のタウリン2.0%区の24時間目の値が2370mg/Kg湿酵母、今回試験の30℃区24時間目の値が2677mg/Kg湿酵母であるため、使用する酵母の活性に大きな違いが無い場合、処理条件を厳密に管理すれば酵母によるタウリンの取り込み量に関し、再現性が高いと考えられる。
【0022】
<試験例3:タウリン溶液のpHの検討>
酵母に効率良くタウリンを取込ませるための、タウリン溶液のpHを検討した。
酵母の処理開始時のpHを硫酸と水酸化ナトリウムを用いて3、5および7に調整し、処理液中のタウリン濃度を2.0%(w/v)、処理温度を35℃とし、その他の処理条件とタウリンの分析法は試験例1と同様とした。また、24時間の処理で明確な結果が得られたので、24時間で処理を終了した。結果を表3に示す。pH5以下で酵母のタウリンの取り込みが若干少なかったが、pH5及び7においては比較的多いことが明らかとなった。
【表3】
【0023】
<試験例4:酵母濃度の検討>
酵母に効率良くタウリンを取込ませるための、処理開始時の菌体濃度を検討した。処理開始時の酵母湿菌体量は、処理液総量の10、20および30%の3区とし、処理液のタウリン濃度は2.0%(w/v)、pHは5とし、その他の処理条件とタウリンの分析法は試験例1と同じである。結果を表4に示す。
【表4】
【0024】
本試験により、開始時菌体量が少ない区ほど高い傾向を示すことが明らかとなった。よって、酵母のタウリン含量を高くするためには開始時菌体量を10%程度に低くするのが望ましい。
但し、溶液中のタウリンの酵母への取り込み絶対量で比較すると、菌体中に含まれるタウリンの各区間比は、10%区では10883×1=10883、20%区では8226×2=16452、30%区では7895×3=23685となり、30%、20%、10%の順となる。よって、溶液中タウリンの利用率を高くすることを目的とする場合には、開始時菌体量を30%程度に高くするのが望ましいということになる。すなわちその時々の目的によって培養開始時の菌体濃度を調整すれば良い。なお、以下の試験例及び実施例では、酵母のタウリン含量を高くすることを第1の目標としたため、開始時菌体量を10%とした。
【0025】
<試験例5:処理液中のタウリン濃度の検討>
試験例1の結果では処理液のタウリン濃度が0.5〜2.0%(w/v)の範囲ではタウリン濃度が高い区ほど酵母中のタウリン含量が高い傾向が見られたため、酵母のタウリン取り込みに最も効率の良いタウリン濃度の検討を行った。
処理温度は35℃とし、処理液のタウリン濃度は2、3、6および9%(w/v)の4区とした。その他の処理条件とタウリンの分析法は試験例1と同じであるが、処理時間は48時間とした。結果を表5及び図1に示す。
【表5】
【0026】
処理液のタウリン濃度が2〜6%(w/v)の範囲では、酵母のタウリン含量も直線的に増加するが、6%(w/v)以上になると傾きが小さくなり、取込み効率が悪くなる傾向が見られた。なお、処理液のタウリン濃度が2〜6%(w/v)の範囲で、処理液のタウリン濃度X(%)及び酵母のタウリン含量Y(mg/Kg湿酵母)の相関を解析した結果、Y=1580X+3409の直線式が得られ、R2は0.9987であった。なお、試験例1の処理温度が30℃、処理液中のタウリン濃度が0.5〜2.0%(w/v)の条件においては、Y=1514X+424、R2が0.9978という相関式が得られた。この結果も合わせて図1に示す。以上より、一定の処理条件下であれば酵母のタウリン取り込みは温度と処理液中のタウリン濃度によって規定されることが示唆される。
【0027】
次に、処理開始後48時間目の酵母の水分含量を測定し、更に定法に従って菌体を加水分解して酵母乾燥物当りのタウリン含量を求めた。結果を表6及び図2に示す。
【表6】
【0028】
両者の間にはY(酵母のタウリン含量:%(乾物重量))=1.2477X(処理液のタウリン濃度:%(w/v))+2.6385の直線式が得られ、R2=0.9988であった。また、乾物酵母の総タウリン含量Y(%(乾物重量))と湿物酵母の酸抽出可能タウリン含量X(%(湿物重量))の間にはY=7.8906X−0.0486の直線式が得られた。処理液のタウリン濃度が6〜9%(w/v)の範囲では、Y(酵母のタウリン含量:mg/Kg湿酵母)=527X(処理液のタウリン濃度:%(w/v))+9693の直線式が得られる。この式を乾物のタウリン含量の式に直すと、Y(酵母のタウリン含量:%(乾物重量))=0.40X(処理液のタウリン濃度:%(w/v))+7.7となる。この式を用いて、処理温度35℃、処理液中タウリン濃度0〜9%(w/v)の範囲において試験例1〜5で検討した処理条件下で48時間酵母を処理した場合に得られる酵母中のタウリン含量を推定すると表7のようになる。
【表7】
このことは処理液中のタウリン濃度を0〜9%(w/v)の範囲内で変化させ、その他の条件を一定にしておけば、酵母のタウリン含量が0〜12%(乾物重量)の範囲で任意のタウリン含量を有する酵母を調製することが可能になることを示している。
【0029】
試験例1〜5より、最適な処理条件として、温度35℃、pH5、処理時間45時間以上、処理開始時湿菌体濃度10%(但し、培養液タウリンの利用率を高くする場合には10%以上にする)が考えられる。なお、通気の必要性についても検討したが、菌体が沈降しない程度に攪拌(回転羽根を用いて100rpmで攪拌)すれば十分であることが明らかとなったため、通気は行わないこととした。この条件下で培養液タウリン濃度0〜9%(w/v)の範囲で酵母を処理すれば、ほぼ任意のタウリン含量の酵母が得られることとなる。
【実施例2】
【0030】
(3KL大型タンクを用いたタウリン富化条件の検討)
上記実施例1において得られた検討結果を基に、3KLの実生産用大型タンクで処理を行った場合の再現性を検討した。
処理液中タウリン濃度を、35℃での溶解可能限界量である9%(w/v)とし、以下の手順で処理液の調製を行った。
− 1600Lの熱水に合成タウリン225Kgを添加、溶解する。
− 3KLタンクに上記のタウリン溶液の全量を入れ、40℃前後に保温する。
− 250Kg湿菌体相当量の濃縮クリーム状酵母を添加する。
− 水で全体量を2500Lに調整する(以上の処理で酵母濃度は10%、処理液のタウリン濃度は9%(w/v)となる)。
【0031】
上記処理液を35±2℃、pHは5.0±0.5、攪拌速度100rpmで44時間処理し、処理後の酵母はノズルセパレータで2回以上洗浄後濃縮し、菌体濃度を湿菌体で50%以上とした。更に濃縮菌体の水分含量を定法により算出し、総タウリン含量を試験例5と同じ方法により算出した。その結果、得られた酵母中のタウリン含量は11.5%(乾物重量)であった。この値は3Lジャーファーメンタで得られた結果(11.3%(乾物重量))とほぼ一致しており、3KLの大型タンクで培養した場合にも高い再現性が認められた。
【実施例3】
【0032】
3Lジャーファーメンタで得られた結果を基に、3KLの大型タンクでも目的とするタウリン含量の酵母を得ることが可能か否かにつき検討を行った。なお、本実施例においては、酵母のタウリン含量の目標を5%乾物とした。
【0033】
試験例5で示したように、処理液のタウリン濃度X(%(w/v))と酵母のタウリン含量Y(%(乾物重量))に間にはY=1.2477X+2.6385の関係があるので、5.0−2.6385=1.2477X、X=1.89となり、約1.9%(w/v)のタウリン濃度が必要と予想されるため、2500Lの処理液量であれば47.5Kgのタウリンが必要となる。なお、処理液の調製にあたり、1600Lの熱水に合成タウリン48Kg添加し、その後250Kg湿菌体相当量の濃縮クリーム状酵母と水を加えて総量を2500Lとし、タウリン濃度1.92%(w/v)の処理液を得た。
【0034】
実施例2と同様の処理条件、菌体の洗浄濃縮、タウリンの分析を行った結果、酵母のタウリン含量は5.4%(乾物重量)で、当初の目的をほぼ達成することができた。以上の結果から、3Lの小型ジャーファーメンタでの試験によって得られた最適処理条件は、3KLの大型タンクでにおいても適用可能であることが明らかとなった。
- 【公開番号】特開2007−37(P2007−37A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【発明の名称】タウリン高含有酵母及びその製造法
【発明者】
【氏名】増田 佳史
【氏名】酒本 秀一
【氏名】鈴木 康生
- 【出願番号】特願2005−181481(P2005−181481)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
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