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遺伝子増幅法
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- 【要約】
【課題】作業手順が少なく、消耗品及び汚染廃物が少ない遺伝子増幅法、検体数が少ない検査にも有用な遺伝子増幅法、コンタミネーションの危険性が極めて少ない遺伝子増幅法、及び、既存の器具及び機器を用いることによる、安価且つ簡便な遺伝子増幅法を提供する。
【解決手段】 ピペットチップを反応容器として用意する工程と、前記ピペットチップ中に、標的核酸を含む試料及び増幅反応液の混合液の層と、前記混合液の層の上面を覆うオイルの層とを調製する工程と、前記ピペットチップ中で前記標的核酸の増幅を行う工程とを含む、核酸増幅法。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップを反応容器として用意する工程と、
前記ピペットチップ中に、標的核酸を含む試料及び増幅反応液の混合液の層と、前記混合液の層の上面を覆うオイルの層とを調製する工程と、
前記ピペットチップ中で前記標的核酸の増幅を行う工程とを含む、核酸増幅法。
【請求項2】
前記ピペットチップ中に前記混合液の層と前記オイルの層とを調製する工程は、
前記ピペットチップとは別の容器内に、前記増幅反応液の層と、前記増幅反応液の層の上面を覆う前記オイルの層とを用意する工程と、
前記オイルの層から、前記ピペットチップ内に前記オイルを吸い上げる工程と、
前記増幅反応液の層から、前記ピペットチップ内に前記増幅反応液を吸い上げる工程と、
前記ピペットチップ内に前記試料を吸い上げる工程とを含む、請求項1に記載の核酸増幅法。
【請求項3】
前記ピペットチップ中に前記混合液の層と前記オイルの層とを調製する工程は、
前記ピペットチップとは別の容器内に、前記増幅反応液を前記オイルと混合分散した分散液を用意する工程と、
前記ピペットチップ内に前記分散液を吸い上げる工程と、
前記ピペットチップ内に試料を吸い上げる工程と、
前記ピペットチップ内に吸い上げられた前記分散液から分離する前記オイルの層を得る工程とを含む、請求項1に記載の核酸増幅法。
【請求項4】
前記混合液の層の下面を覆うオイルの層を調製する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸増幅法。
【請求項5】
オイルの層で上面を覆われた核酸増幅反応液が収容されたピペットチップ。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA/RNAからの遺伝子増幅、感染症検査、遺伝子組み換え植物の検出、特定微生物の存在有無確認、及び遺伝子多型解析などに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子増幅法として、PCR、リガーゼ鎖反応(LCR法)、NASBA法、LAMP法、ICAN法などが知られている。もっとも一般的に知られているPCR法は、温度の上げ下げを頻繁に繰り返すことで、DNAを増幅する方法である。PCR法には専用装置が必要であり、通常増幅には1.5〜2.5時間程度かかる。この増幅の時間を短くするための方法として、キャピラリーを用いたPCR法などが知られている。
【0003】
増幅されたDNAは、通常、アガロースゲル電気泳動で確認する。増幅されたDNAをリアルタイムで確認するために、増幅操作をしながら蛍光物質を検出するリアルタイムPCR装置が開発されている。
【0004】
PCR技術は、研究分野以外でも広く行われるようになってきた。例えば、感染症検査の分野では、PCRにより、感染症の原因菌が存在するかどうかを判別することができる。JP Forum, Vol. 12, No. 1, p.21-22 (2003)には、PCRを用い、医薬品の製造工程管理試験や出荷判定試験において検出される微生物を、遺伝学的に種又は属レベルで同定又は推定する手法が示されている。また、遺伝子組み換え食品に関する分野や、食品のトレーサビリティの分野でも、PCRを使った判定が広く行われるようになってきた。さらに、近年では、微生物を使った環境浄化も行われるようになり、ここでも有用菌の存在の有無をPCRによって判定することが有用である。
【0005】
PCRには、1.5〜2.5時間程度かかることが多く、この反応時間を短くするために、キャピラリーや特殊なプレートを利用したPCR装置が開発されている。しかしながら、このような装置は高価である。一般的に実験室で使用されるPCR装置の反応容器は、0.5ml用チューブから0.2ml用チューブへと、容量及び外形が小さくなってきている。現在では、さらに細かい384ウェルプレートが使用されることもあり、PCR反応容器の容量及び外形がさらに小さくなってきている。
【0006】
例えば、特開2004−154008号公報においては、マイクロチップ上において等温条件下で核酸増幅反応を行い、得られた増幅産物を引き続きマイクロチップ上で解析を行う方法が記載されている。この方法においては、電気泳動解析、又は核酸増幅産物に過剰のインターカレーターを添加し、生じる色の変化によって標的核酸の有無を目視検出する可視的解析が行われる。
【0007】
一方、特開平8−196923号公報においては、ピストンと、このピストンがボア内を往復動するシリンダと、このシリンダの先端に設けられてチップの嵌め合わされるノズルとを有するピペットと、このピペットでチップ内に吸引された反応試料を加熱冷却する温度サイクル装置とで構成された液体分注反応装置が開示されており、この液体分注反応装置によって核酸増幅を行う方法が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−154008号公報
【特許文献2】特開平8−196923号公報
【非特許文献1】日本公定書協会編、ジャパニーズ・ファーマコピーアル・フォーラム(Japanese Pharmacopoeial Forum)、2003年、第12巻、第1号、p.21−22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、PCR法などの遺伝子増幅を行う際には、DNAの抽出・精製という前処理が必要であり、この前処理に時間と手間とがかかっていた。血液などから直接PCR反応を行う手法も知られているが、PCR反応までの手順を考えると、依然として試薬の混合や分注操作などの手数がかかっている。
【0010】
特開2004−154008号公報などに開示されている反応容器の小型化は、研究を効率的に進めるためや、大量のサンプルを処理するために、時間と試薬量とを節約することが目的である。一方、検査対象の検体数が少ない場合、反応容器をチューブで行うことが好ましい。しかしながら、この場合は、反応用チューブが小さすぎて、サンプル名の判別が困難となる場合がある。判別がしやすいように、より大きなチューブを用いるとすれば、液量が多く必要となり、反応時間もかかってしまう。
【0011】
また、JP Forum, Vol. 12, No. 1, p.21-22 (2003)などに開示されているように、遺伝子検査などでPCRが行われるようになっているが、そのためにはできるだけ簡便な操作が求められている。しかしながら、以下に示す理由で、PCRは、その操作を行う環境や、その操作を行う人の経験などによっては、まだ難しい技術であるといえる。
【0012】
例えば、サンプルごとに、チップと反応チューブが必要である。さらに、PCR後の確認にも、別のチップを使用し、反応液とローディングダイとを混ぜて、アガロースゲルへアプライする操作が必要である。このため、消耗品のコストがかかり、操作が複雑であり、環境の整った実験室以外で作業を行うには、手間が多すぎるといえる。
【0013】
また例えば、チューブで反応をかける場合には、DNaseのコンタミネーションなどを防ぐため、例えばふたの裏面をさわらない、などの細心の注意が必要である。
【0014】
一方、特開平8−196923号公報に開示された液体分注反応装置によって核酸増幅を行う方法では、シリンジをつけた状態で増幅反応が行われる。すなわち、既存の機器を用いることができず、特定の液体分注反応装置を用意しなければならない。
【0015】
そこで、本発明の目的は、作業手順が少なく、消耗品及び汚染廃物が少ない遺伝子増幅法を提供することにある。特に本発明の目的は、検体数が少ない検査にも有用な遺伝子増幅法、コンタミネーションの危険性が極めて少ない遺伝子増幅法、及び、既存の器具及び機器を用いることによる、安価且つ簡便な遺伝子増幅法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下の発明を含む。
(1)ピペットチップを反応容器として用意する工程と、
前記ピペットチップ中に、標的核酸を含む試料及び増幅反応液の混合液の層と、前記混合液の層の上面を覆うオイルの層とを調製する工程と、
前記ピペットチップ中で前記標的核酸の増幅を行う工程とを含む、核酸増幅法。
【0017】
前記(2)〜(4)は、ピペットチップ中に混合液の層とオイルの層とを調製するための操作について記載する。
(2)前記ピペットチップ中に前記混合液の層と前記オイルの層とを調製する工程は、
前記ピペットチップとは別の容器内に、前記増幅反応液の層と、前記増幅反応液の層の上面を覆う前記オイルの層とを用意する工程と、
前記オイルの層から、前記ピペットチップ内に前記オイルを吸い上げる工程と、
前記増幅反応液の層から、前記ピペットチップ内に前記増幅反応液を吸い上げる工程と、
前記ピペットチップ内に前記試料を吸い上げる工程とを含む、(1)に記載の核酸増幅法。
【0018】
(3)前記ピペットチップ中に前記混合液の層と前記オイルの層とを調製する工程は、
前記ピペットチップとは別の容器内に、前記増幅反応液を前記オイルと混合分散した分散液を用意する工程と、
前記ピペットチップ内に前記分散液を吸い上げる工程と、
前記ピペットチップ内に試料を吸い上げる工程と、
前記ピペットチップ内に吸い上げられた前記分散液から分離する前記オイルの層を得る工程とを含む、(1)に記載の核酸増幅法。
【0019】
(4)前記混合液の層の下面を覆うオイルの層を調製する工程をさらに含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の核酸増幅法。
【0020】
なお、(2)〜(4)において、ピペットチップ内に吸い上げるとは、ピペットのボタン操作によってピペットチップ内に吸い上げることと、ボタン操作によらず毛細管現象によってピペットチップ内に引き込むことの両方を含む。
【0021】
前記ピペットチップは使い捨てのものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸増幅法。
【0022】
下記は、試料について記載する。
前記標的核酸がDNA又はRNAである、(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸増幅法。
前記試料は、前記標的核酸の抽出操作を受けていない、(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸増幅法。
前記標的核酸は、薬物応答性に対する遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、病気の易罹患性に関連する遺伝子、細菌又はウイルスの遺伝子、遺伝子組み換え植物のマーカー遺伝子、品種を判別するマーカー遺伝子、プラスミド又はファージベクターにクローン化された遺伝子から選ばれる遺伝子を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸増幅法。
【0023】
下記は、増幅反応液について記載する。
前記増幅反応液は、プライマーを1組以上含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸増幅法。
前記増幅反応液は、前記標的核酸の増幅を確認するための試薬を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸増幅法。
前記増幅を確認するための試薬が電気泳動用の試薬である、上記の核酸増幅法。
前記増幅を確認するための試薬が蛍光物質である、上記の核酸増幅法。
【0024】
前記増幅をPCR法、LCR法、NASBA法、LAMP法、又はICAN法によって行う、上記の核酸増幅法。
【0025】
下記(5)は、核酸増幅のための反応容器として有用なピペットチップについて記載する。
(5)オイルの層で上面を覆われた核酸増幅反応液が収容されたピペットチップ。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、ピペットチップを反応容器に用いることによって、作業手順が非常に少なく、消耗品及び汚染廃棄物が少ない遺伝子増幅が可能になる。また、本発明では、ピペットチップを反応容器に用いることによって、検体数が少ない場合であっても、1つの反応容器内に極小スケールの反応系を構築することができるため、増幅反応の反応時間を短くすることができる。しかも、本発明においては、個々の反応容器の識別及び取り扱いが簡単である。従って、本発明によって、検体数が少ない検査にも有用な遺伝子増幅が可能になる。また、本発明によって、コンタミネーションの危険性が極めて少ない遺伝子増幅が可能になる。さらに、本発明によって、既存の器具及び機器を用いることによる、安価且つ簡便な遺伝子増幅が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、ピペットチップを反応容器とし、ピペットチップ中において、核酸増幅のための反応混合液の表面をオイルで覆った状態で核酸増幅反応を行う方法である。すなわち、本発明は、ピペットチップを用意する工程;ピペットチップ中に、核酸増幅のための反応混合液の層とその上面にオイルの層とを調製する工程;及び、ピペットチップ中で核酸増幅反応を行う工程を含む。
【0028】
本明細書においては、核酸増幅のための反応混合液とは、増幅すべき標的核酸を含む試料と増幅反応液との混合液をいい、増幅反応混合液と記載することがある。また、増幅反応液とは、増幅反応試薬又は増幅反応試薬を含む溶液をいう。
【0029】
本発明を行うために必要なものは、標的核酸を含む試料、増幅反応試薬、ピペットチップ(本明細書では、単にチップと記載することがある)、オイル、及びPCR装置を準備する。目的を絞った検査の場合、増幅に用いる試薬セットは1種類であることが多い。特にこの場合、増幅を行うためのプライマーが決まっており、プライマーが含まれる増幅反応液は、各検体について共通のものを準備することができる。
【0030】
ピペットチップは、好ましくは使い捨てのものを、1検体につき1個用意する。ピペットチップは、その材質などを問わず、市販のものを特に限定することなく用いることができる。ピペットチップの容量は、例えば10〜250μlとすることができる。ピペットチップの長さとしては、例えば12〜35mm程度とすることができる。ピペットとしても、その性能や精度などを問わず、市販のものを特に限定することなく用いることができる。
【0031】
標的核酸としては、DNA及びRNAを問わない。本発明では、最終的に検出したい遺伝子の種類などに応じて、あらゆる種類の核酸を増幅すべき標的核酸とすることができる。例えば、薬物応答性に対する遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、病気の易罹患性に関連する遺伝子、細菌又はウイルスの遺伝子、遺伝子組み換え植物のマーカー遺伝子、品種を判別するマーカー遺伝子、プラスミド又はファージベクターにクローン化された遺伝子などから選ばれる遺伝子を含む核酸が挙げられる。
【0032】
核酸を含む試料は、当業者によって適宜調製される。従って、試料はどのような形態で用意してもかまわない。例えば、採取検体をバッファなどの適当な液体に含ませる場合や、採取検体そのものが液状である場合などは、液体状のものとして用意することができる。一方、採取検体からコロニーを形成した場合や、採取検体そのものが固体である場合などは、固形状のものとして用意することができる。また、試料は、標的核酸の抽出操作を行っていない状態のものであっても良い。
【0033】
これら試料は、その形態に応じて、チューブなどの適当な容器内や、コロニープレートなどの適当なプレート上などに用意しておくことができる。また、液体状の試料(以下、単に試料液と記載する場合がある)を用意し、その試料液を核酸増幅以外に用いる可能性がある場合などは、増幅に使用する適量分の試料液を別の場所に移しておくと良い。例えば、増幅に使用する適量分の試料液を、ピペットチップとは別の適当な容器の中、パラフィルムの上、又は、増幅反応液などが用意されたチューブの蓋の中などに滴下しておくことができる。
【0034】
一方、増幅反応液の組成としては、増幅反応の種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。本発明では、増幅反応液に1組以上のプライマーを含ませることができる。2組以上のプライマーを含ませる場合は、マルチプレックス増幅用に設計されたプライマーが用意される。また、増幅反応液には、標的核酸の増幅を確認するための試薬を含ませても良い。このような試薬に関しては、後述する。さらに、増幅反応液には、核酸増幅を促進する作用などがある添加物を含ませても良い。このような添加物としては例えば、島津製作所製Ampdirectなどが挙げられる。
【0035】
なお、本発明において増幅反応液と記載する場合、調製の途中段階で必ずしも必要な増幅反応試薬の全てを含んでいる必要はなく、増幅反応を行う直前の段階において、必要な増幅反応試薬の全てを含んでいれば良い。例えば、プライマーや核酸ポリメラーゼと、バッファ、塩、dNTPなどの、全ての増幅反応系に共通する試薬とは、増幅反応の直前で混合されれば良く、それらを別々の容器内に用意し、別々の段階でチップ内に収容しても構わない。もちろん、必要な全ての増幅試薬を含む増幅反応液を一つの容器中に用意しても良い。
【0036】
増幅反応を行う直前の、増幅に必要な全ての試薬がピペットチップ内に収容されたとき、増幅反応液の最終pHとしては、例えば、25℃において8.5〜9.5とすることができる。
【0037】
オイルとしては、増幅反応混合液より比重の低い不揮発性液体を特に制限無く用いることができる。本明細書において不揮発性とは、核酸増幅反応の条件下において揮発しない性質をいう。このような液体としては、ミネラルオイル(鉱物油)、植物油、動物油、シリコーンオイル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ミネラルオイルは、ペトロラタムから蒸留により得られる液体の炭化水素化合物であり、流動パラフィン、流動ペトロラタム、ホワイト油などとも呼ばれ、低比重の軽油も含む。動物油としては、タラの肝油、オヒョウ油、ニシン油、オレンジラフィー油またはサメの肝油などが挙げられる。また、植物油としてはカノーラ油、扁桃油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナツ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油などが挙げられる。
【0038】
本発明では、ピペットチップを反応容器として用いるため、試料、増幅反応液、及びオイルが収容された反応容器を用意する際には、チップをピペットに装着し、試料、増幅反応液、及びオイルをチップ内に吸い上げるという操作を行うことが簡便で好ましい。ピペットの容量設定値は、5〜50μl、例えば15μl程度とすることができる。なお、本発明における吸い上げ操作は、吸い上げたい液量によって、ピペットのボタンを上に上げる操作によって行ってもよいし、ボタン操作によらず毛細管現象を利用してチップ内に液体を引き込むことによって行っても良い。
【0039】
ピペットチップ中に、核酸増幅のための反応混合液の層とその上面にオイルの層とを調製する工程においては、ピペットチップ中に増幅反応混合液の層とその上面にオイルの層とが収容された状態のものが用意されれば、どのような手順を行っても良い。本発明においては、場合により、増幅反応混合液の層の下面にもオイルの層を設けてもよい。オイルの層を設けることにより、作業中や増幅反応中において生じうる、混合液のコンタミネーションや、混合液からの水分蒸発を防止することができる。
【0040】
ピペットチップ内で増幅反応混合液層の上面がオイル層で覆われるようにするためには、例えば、最初にオイルを吸い上げ、次に、上述のように増幅反応液と試料とを吸い上げる操作を行うことができる。増幅反応混合液層の下面もオイル層で覆う場合は、内径の小さいピペットチップの先端部の内壁にオイルが付着した状態でとどまる現象を利用することができる。このため、上層のオイルと同じ成分のオイルで下層を形成させることができる。
【0041】
オイルと増幅反応液とは、ピペットチップとは別の一つの容器中に共存させて用意しても良い。この場合、両者が層をなした状態で用意してもよいし、両者が混合分散された状態で用意しても良い。このような方法は、増幅反応液が核酸増幅を行う検体に共通して使用される場合や、検体数が少数である場合などにおいて有効である。
【0042】
試料を液体状の試料として用意した場合は、例えば、適当な場所に用意された試料液と、適当な容器内に用意された増幅反応液とを、一本のピペットチップの中に吸い上げると、増幅反応混合液を調製することができる。試料液と増幅反応液とが、最終的にチップ内で互いに混ざり合って増幅反応混合液となればよいため、それぞれの液を吸い上げる順序は問わない。例えば、同一増幅反応液にて多検体について増幅を行う場合など、容器内の増幅反応液への他の試料の混入を防ぐため、増幅反応液を先に吸い上げることが好ましい。
【0043】
オイルと増幅反応液とを、ピペットチップとは別の容器中に層をなした状態で用意する場合、そのような容器としては、チューブなどを用いると良い。そして、具体的には、以下のような操作を行うことができる。最初にチューブA(1)内のオイル(3)の層にチップ(2)を差し込んでオイルを吸い上げ(図1−<1>)、続いてチップを増幅反応液(4)の層に差し込んで(図1−<2>)、増幅反応液を吸い上げ(図1−<3>)、さらに別のチューブB(5)に試料液(6)を用意し(図1−<4>)、試料液中にチップを差し込んで試料を吸い上げる(図1−<5>)と、増幅反応混合液(7)の上面をオイル(3)の層で覆うことができる(図1−<6>)。なお、図1−<5>においては、便宜上、増幅反応液と試料液とが重層しているように描いているが、これらの液は、自然にチップ内で均一に混ざり合い、増幅反応混合液となる。なお、図1においては、ピペット本体を省略して描画している。
さらに、増幅反応液と試料とをチップ内に収容した後、最後にもう一度オイルを吸い上げて下層のオイル層を形成しても良い。
【0044】
また、オイルと増幅反応液とを、ピペットチップとは別の容器中に混合分散された状態で用意する場合、具体的には、以下の操作を行うことができる。チューブなどの容器内に増幅反応液とオイルとを入れ、振り混ぜるなどすることにより、両者を混合分散する。このようにして用意した分散液を一時に吸い上げるというシンプルな操作によって、増幅反応液とオイルとの両方をピペット内に収容することができる。その後、試料をピペットチップ内に吸い上げる。ピペットチップ内に収容された分散液からは、自然に、又は、分散液吸い上げ後又は試料吸い上げ後に静置などの操作を行うことにより、図1のIや、図1の<6>のようにオイルの層が分離する。
【0045】
試料を固体状のものとして用意した場合も、上記に準じた操作を行うことができる。この場合、固体状試料の表面にチップの先端を接触させて吸い上げることによって試料を採取することができる。そして、採取した固体状試料の一部がチップ内に入りきらずチップの先端に付着している場合があるため、付着した試料が効率よくチップ内に収容されるように、さらに液体を吸い上げる操作を行うことができる。具体的には、例えば、オイル(3)と増幅反応液(4)とを収容したチューブA(2)を用意し、チップ(1)の中へオイルを吸い上げ(図2−<1>)、続いて増幅反応液を吸い上げ(図1−<2>及び<3>)、その後、コロニープレート(8)上のコロニー(9)の表面にチップの先端を接触させて吸い上げる(図2−<4>)、さらにチューブA(2)内のオイルを吸い上げる(図2−<5>)操作を行うことができる。なお、図2においては、ピペット本体を省略して描画している。
【0046】
吸い上げる液量としては、ピペットチップの容量を考慮し、当業者が適宜決定することができる、増幅反応液の吸い上げ量としては、例えば、3〜10μl程度とすることができる。試料液の吸い上げ量としては、例えば、0.5〜1μl程度とすることができる。さらに、オイルの吸い上げ量としては、例えば、0.5〜2μl程度とすることができる。吸い上げる操作は、チップの先を液面にわずかにつけることによって行うとよい。
【0047】
試料、増幅反応液及びオイルから選ばれる必要な全てをピペットチップ内に収容した後は、ピペットのボタンを上に上げ、チップの先に空気層を作っても良い。試料、増幅反応液及びオイルから選ばれる必要な全てをピペットチップ内に収容した段階で、試料の一部がチップ内に入りきらずチップの先端に付着している場合を考慮し、付着した試料を効率よくチップ内に収容する目的で、この操作が任意に行われる。
【0048】
さらに、チップの先を物理的に閉じる操作を行ってもよい。例えば、熱したピンセット(10)などでチップの先をはさみ(図3−<1>)、はさんだ部分を溶かして栓(11)を形成することにより密閉する(図3−<2>)方法や、ゴムなどの固形物を栓として用いて密閉する方法などにより行うことができる。反対に、このように閉じる操作を行わず、チップの先が開いた状態であっても、増幅反応終了まで内容物がこぼれ落ちることはない。このため、チップの先を物理的に閉じる操作は任意に行うことができる。
【0049】
また、ピペットチップには、IDタグを付けることが好ましい。たとえば、サンプル名やサンプル番号を記載したシールやテープをピペットチップ上部に貼り付けることができる(図3−<3>)。本発明では、反応容器として用いられるピペットチップは、小さい容量でありながら、ある程度の大きさの外形を有する。このため、本発明は、反応系のスケールが微小でありながら、サンプル名の識別がしやすい十分な大きさを有するIDタグを付けることが可能で、しかも反応容器の取り扱いが簡単であるという利点を有する。
【0050】
以上のようにして、増幅反応混合液をピペットチップ内に調製することができる。なお、増幅反応混合液をピペットチップ内に調製するまでの工程の中で、オイルで上面を覆われた増幅反応液が収容されたピペットチップ(例えば図2や図3で示される例ではIに相当する)は、さまざまな試料に対して有用である。例えば、バッファ、塩、dNTPなどの、全ての増幅反応系に共通する試薬を含んだ増幅反応液と、オイルとが収容されたピペットチップを調製して保存しておくことができる。そして、試料中の核酸を増幅したい時に、保存しておいたピペットチップ内に、さらに適宜選択されたプライマーや核酸ポリメラーゼを収容した後、試料を収容し、増幅反応に供することができる。
【0051】
本発明では、1検体ごとに1つの反応容器を用いるという形式をとりながら、1つの反応容器内に極小スケールの反応系を構築することが可能になる。そして、ピペットチップをそのまま直接増幅反応装置に装着することによって、増幅反応混合液を増幅反応に供することができる。増幅反応装置に装着する際は、ピペットチップはピペット本体からはずされた状態で装着する。なお、ピペットを用いて吸い上げる操作が全て終了した後、チップ先端を閉じる操作やIDタグを付ける操作においては、チップはピペット本体からはずしておくことができる。
【0052】
本発明では、ピペットチップ内で増幅反応を行うため、反応用チューブを準備する必要がない。従って、従来、ピペットを用いて反応用チューブに試料などを移す工程において求められた、コンタミネーションに対する細心の注意を緩和することができる。また、作業手順が非常に少なく、消耗品や汚染廃棄物が非常に少ないという利点もある。
【0053】
核酸増幅法としては、特に限定されず、あらゆる方法を採用することができる。例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法、LCR(リガーゼ鎖反応)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法などが挙げられる。最も一般的方法として、PCR法を行うことが好ましい。
【0054】
本発明では、1検体ごとに1つの反応容器を用い、且つ1つの反応容器内に極小スケールの反応系を構築するため、反応時間を短くすることが可能である。例えば、本発明の方法を用いると、増幅反応時間は0.5〜3時間程度とすることができる。
【0055】
反応が終わったチップは、先を物理的に閉じたものであれば、閉じた部分を切り落とし、増幅物の検出の作業に供することができる。増幅反応前に増幅反応液に検出用試薬を含ませていた場合であれば直接、検出を行うことができる。増幅反応前に増幅反応液に検出用試薬を含ませていなかった場合であれば、増幅反応後に、チップ内容物と前述の検出用試薬とを混ぜ合わせ、検出を行うことができる。
【0056】
増幅物の検出法としては、通常、核酸の検出のために用いられる方法であればどのような方法を用いることができる。従って、検出用試薬としては、通常、核酸の検出に用いられるものを特に限定することなく用いることができる。
【0057】
例えば、電気泳動法によって確認する場合、電気泳動用ダイなどが挙げられる。予め電気泳動用のダイを増幅反応液に含ませていた場合は、増幅反応終了後、チップをピペットに装着すれば、反応容器として用いたチップをそのまま引き続いて用いることによって、増幅物を電気泳動ゲルのウェルにアプライすることができる。このように、本発明の方法を用いると、増幅反応後の検出においても、消耗品を最小限にとどめるとともに非常に操作が簡単になる。
【0058】
また例えば、蛍光を検出することによって確認する場合、適当な蛍光物質が挙げられる。具体的には、例えばインベーダー法で用いられる試薬などが挙げられる。この場合、増幅反応に引き続いてインベーダー反応に供することができる。本発明によって、このように遺伝子多型のタイピングも非常に簡単に行うことができる。
【0059】
このように、本発明の方法を用いると、遺伝子増幅を用いるさまざまな検査を非常に簡単に行うことが可能になる。増幅反応用の試薬や検出用の試薬などを検査液として収容したチューブとピペットチップとがあれば、何所ででも、反応用混合液の調製を行うことができる。例えば、検査液入りチューブとピペットチップとを現場に持って行き、環境中の微生物を採取することによって、環境検査の作業を非常に簡単にすることができる。しかも、本発明は、反応容器ごとに微小スケールの反応系構築が可能であることや、個々の反応容器の取り扱いの簡便さなどから、検査すべき検体数が少ない場合にも有用に用いることができる。また、作業手順が非常に少なく、消耗品及び汚染廃棄物が少ないことから、検査すべき検体数が多い場合も、本発明が有用であることはいうまでもない。
【実施例】
【0060】
<実施例1>
[1.20組のプライマーを用いたマルチプレックスPCR反応]
精製ヒトゲノムDNAを鋳型とし、35ng/μl鋳型DNAを含むPCR反応混合液24μlを調製した。PCR反応混合液には以下の成分が混入されている。
鋳型DNA 35ng/μl
20対(40種類)のプライマー 各12.5mmol
Ex−Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)10ユニット
TaqStart(クローンテック・ラボラトリーズ社製) 0.55μg
なお、TaqStartは、EX-TaqDNAポリメラーゼに対する抗体であり、反応液に加えることによってホットスタートを行うことができる。
【0061】
プライマーとしては、具体的には、表1に示すSNPを含む領域を増幅することができる、配列番号1〜40のプライマーを使用した。これらのプライマーは、プロリゴ・ジャパン社に合成を委託した。
【0062】
【表1】
【0063】
上記混合液を、3μlずつピペットチップへ分注後、ミネラルオイルを2μlずつ重層した。ピペットチップを、1.5mlのアシストチューブにいれて軽く遠心した後、PCR反応を行った。
【0064】
PCR反応は、PCR反応装置Quick Thermo Personal QTP-1(日本ジェネティックス社製)を用いた。PCR反応は、まず98℃で2分加熱し、98℃1秒−55℃30秒−65℃1分のサイクルを35回繰り返すという条件で行った。このとき、PCR反応時間は約2時間であった。
【0065】
[2.インベーダー反応による確認]
PCR反応終了後、反応済混合液0.2μlをインベーダー反応に用いた。インベーダー試薬としては、インベーダーアッセイキット(サードウェーブテクノロジー社製)を使用した。
インベーダー反応の条件は、まず96℃で5分加熱した後、63℃で40分インキュベーションを行い、リアルタイムで1分おきに蛍光シグナルVIC及びFAMを検出した。蛍光シグナルの検出は、Mx3000P(ストラタジーン社製)を用いた。X軸にVICシグナル、Y軸にFAMシグナルをプロットし、タイピングを試みたところ、予想される適切な位置に14SNPsがタイピングされた。
【0066】
[3.評価]
ピペットチップが、反応容器として有用であることを確認することができた。また、ピペットチップが、インベーダー反応で、遺伝子多型のタイピングを行う前処理容器としても有用であることを確認することができた。
【0067】
<実施例2>
[1.PCR反応]
精製ヒトゲノムDNAを鋳型とし、5ng/μl鋳型DNAを含むPCR反応混合液24μlを調製した。PCR反応混合液は、以下のものを含む。
鋳型DNA 3ng
1対のプライマー 各4μmol
Ex−Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製) 5ユニット
dNTP Mix(各2.5mM) 1.2μl
Ampdirect(島津製作所製) 4.8μl
なお、プライマーとしては、具体的には、表1に記載の配列番号33及び34のプライマーを使用した。
【0068】
上記混合液を、先端を熱によって密閉したピペットチップへ3μlずつ分注後、ミネラルオイルを2μlずつ重層した。ピペットチップを、1.5mlのアシストチューブにいれてスピンダウンし、PCR反応を行った。PCR反応は、QTP-1にて、まず98℃で2分加熱し、98℃1秒−55℃10秒−65℃40秒のサイクルを30回繰り返すという条件で行った。このとき、PCR反応時間は約1時間であった。
【0069】
[2.アガロース電気泳動法による確認]
PCR反応後、ピペットチップをピペットへ装着し、密閉されたピペットチップの先をはさみで切断し、ミネラルオイルと反応済混合液とをパラフィルム上に吐き出した。反応済混合液を電気泳動用ダイと混合後、反応済混合液2μlについてアガロース電気泳動を行った。その結果、約550bpのバンドを確認することができた。
【0070】
[3.インベーダー反応による確認]
別途、PCR反応後、反応済混合液0.2μlについてインベーダー反応を行った。インベーダー試薬としては、インベーダーアッセイキット(サードウェーブテクノロジー社製)を使用した。
インベーダー反応の条件は、まず96℃で5分加熱した後、63℃で30分インキュベーションを行い、リアルタイムで1分おきに蛍光シグナルVIC及びFAMを検出した。蛍光シグナルの検出は、Mx3000P(ストラタジーン社製)を用いた。その結果、両者の蛍光シグナルが検出されたため、鋳型DNAには野生型と変異型との両方の塩基を有することが明らかになった。
【0071】
[4.評価]
ピペットチップが、反応容器として有用であることを確認することができた。また、ピペットチップが、インベーダー反応で、遺伝子多型のタイピングを行う前処理容器としても有用であることを確認することができた。
【0072】
<実施例3>
[1.PCR反応]
プラスミドにクローニングした大腸菌のインサート確認と、大腸菌の16SrRNA遺伝子の増幅とを行うため、次のような工程でPCRを行った。
1)チューブに、PCR反応液(下層)とミネラルオイル(上層)とを予め入れておいた。
2)ピペットに装着したピペットチップに、まず上層からミネラルオイルを2μl吸い上げた。
3)次に、チップを深く差し込んで、下層からPCR反応液を3μl吸い上げた。
4)チップをチューブから取り出し、チップの先をプレート上の大腸菌コロニーに接触させた。
5)もう一度、チューブ内の上層からミネラルオイルを2μl吸い上げ、PCR反応液をミネラルオイルではさんだ状態にした。
6)ピペットチップの先端を熱したピンセットではさむことによって熱をかけて密閉し、その後、PCR反応を行った。
【0073】
PCR反応液は、以下のものを含む。
Ex−Taq(5ユニット/μl)1.0μl
ExTaqバッファ 1.2μl
dNTP Mix(各2.5mM)1.2μl
プライマー 各4μl
蒸留水 (反応溶液の全量を12μlとした。)
【0074】
なお、プライマーとしては、具体的には以下のものを用いた。
M13プラスミドDNA由来の遺伝子の増幅用プライマーとして;
M13-F(フォワードプライマー;CGACGTTGTAAAACGACGGCCAGT:配列番号41)及び
M13-R(リバースプライマー;GGAAACAGCTATGACCATGATTAC:配列番号42)、各々20pmol/μlで0.5μl(いずれも宝酒造社製)と、
大腸菌16SrRNA遺伝子の増幅用プライマーとして;
10F(フォワードプライマー;GTTTGATCCTGGCTCA:配列番号43)及び
800R(リバースプライマー;TACCAGGGTATCTAATCC:配列番号44)、各々10μMで0.5μl(いずれもプロリゴ・ジャパン社に合成を委託した。)とを用いた。
【0075】
PCR反応は、QTP-1(日本ジェネティクス社製)にて、まず98℃で2分加熱し、98℃1秒−55℃10秒−65℃40秒のサイクルを30回繰り返すという条件で行った。このとき、PCR反応時間は約1時間であった。
【0076】
[2.アガロースゲル電気泳動法による確認]
PCR反応後、ピペットチップをピペットへ装着し、密閉されたピペットチップの先をはさみで切断し、ミネラルオイルと反応済混合液とをパラフィルム上に吐き出した。反応済混合液を電気泳動用ダイと混合後、反応済混合液2μlについてアガロース電気泳動を行った。その結果を図4に示す(Mはマーカーのレーンであることを示す)。図4が示すように、プラスミドにクローニングされたDNAのPCR増幅産物(図中M13で示されるバンド)及び大腸菌16SrRNA遺伝子のPCR増幅産物(図中16Sで示されるバンド)を確認した。
【0077】
なお、本実施例は、JP Forum(日本公定書協会)Vol.12 No.1(2003) p.21-22第十四改正日本薬局方第二追補に収載予定の改正案を参考にした。当該文献には、16SrRNAの高度可変領域の一部の遺伝子配列を自動解析し、データーベースと照合することによって、微生物である細菌を迅速に同定又は推定する手法を記載している。
【0078】
[3.評価]
コロニーに直接接触したピペットチップで電気泳動の操作までを行うことができるため、消耗品が少なくてすむことが示された。また、プラスミドDNAだけでなく16SrRNA遺伝子の増幅を行うことも可能であったことから、微生物検査に有効であることが示された。
【0079】
<実施例4>
[1.PCR反応]
実施例1で調製したゲノムDNAを鋳型とし、3ng/μlの鋳型DNA水溶液をチューブ内に調製した。また、PCR反応液10μlを別のチューブ(0.2ml)内に調製した。PCR反応液は、以下のものを含む。
1対のプライマー 各4μmol
Z−Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製) 1ユニット
dNTP Mix(各2.5mM) 1.0μl
Ampdirect(島津製作所製)2.5μl
なお、プライマーとしては、表1に記載の配列番号33及び34のプライマーを使用した。
【0080】
PCR反応液10μlの入ったチューブに、ミネラルオイル10μlを重層した。
10μl用のピペットのメモリを10μlにセットし、ピペットチップを装着した。
鋳型DNAが入っているチューブから鋳型DNA溶液を2μlほど吸い上げ、PCR反応液とミネラルオイルとが入ったチューブのふたに吐出して移した。
【0081】
ピペットチップを、チューブ内上層のミネラルオイル層に入れ、約2μlのミネラルオイルを吸引した後、ピペットチップを下層の反応液層に差し込んで、3μlの反応液を吸引した。さらに、チューブのふたの中に移しておいた鋳型DNA溶液を0.5μl吸入した。もう一度、チューブ内の上層からミネラルオイルを2μl吸い上げ、最後にチップを外に出して、空気を吸い上げた。
【0082】
ピペットからピペットチップをはずし、コンタミネーション防止のためのアルミホイルでチップをはさみ、in situPCR用ブロックを用いたサイクラー(DNA Engine Tetrad 2 PTC-240、Flat Block Alpha Unit、MJリサーチ社製)でPCR反応を行った。PCR反応は、まず98℃で2分加熱し、98℃1秒−55℃10秒−65℃40秒のサイクルを30回繰り返すという条件で行った。このとき、PCR反応時間は約1時間であった。
【0083】
[2.アガロース電気泳動法による確認]
PCR反応後、ピペットチップをピペットへ装着し、ミネラルオイルと反応済混合液とをパラフィルム上に吐き出した。反応済混合液を電気泳動用ダイと混合後、アガロース電気泳動を行った。その結果を図5に示す(Mはマーカーのレーンであることを示す)。図5が示すように、約550bpのバンドを確認することができた。
【0084】
[3.評価]
ピペットチップの先端をつぶさない方法で増幅を行うことが可能であることが示された。電気泳動時に先端を切断する必要がないため、例えばPCR反応液に電気泳動用のダイを予め加えておけば、PCR反応後にピペットチップをピペットに装着すれば、そのまま電気泳動を行うことができる可能性が示された。
- 【公開番号】特開2007−74960(P2007−74960A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【発明の名称】遺伝子増幅法
【発明者】
【氏名】緒方 是嗣
【氏名】小林 崇介
- 【出願番号】特願2005−265503(P2005−265503)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
- 【代理人】
【識別番号】100100561
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 正広
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