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電気転てつ機の手回しハンドル
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- 【要約】
【課題】 鎖錠期間中の安全を確保する。
【解決手段】 クランクハンドル1と、ハンドル軸2と、回り止め体3との組合せを有している。クランクハンドル1は、回転操作用の握り部4を有し、ハンドル軸2に脱着可能に取り付けられるものである。ハンドル軸2は、クランクハンドルの回転操作を受けて電気転てつ機の転換及び鎖錠を行うものである。回り止め体3は、ハンドル軸2の軸方向の任意の位置に支えられ、且つハンドル軸に回転方向に抵抗を与えるものであり、スリット12を有している。転換終了後、スリット12を電気転てつ機のケーシングの一部に係止させてハンドル軸2の逆転を阻止し、クランクハンドル1は、ハンドル軸2から取り外して、建築限界に支障を生じさせない。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクハンドルと、ハンドル軸と、回り止め体との組合せを有する電気転てつ機の手回しハンドルであって、
クランクハンドルは、回転操作用の握り部を一端に有するアームの他端に、ハンドル軸を差し込むボス部が形成されているものであり、
ハンドル軸は、断面円形の軸の下端に操作用頭部を有し、上端に角軸部を有し、
操作用頭部は、電気転てつ機の手回しハンドル挿入口内に差し込まれ、クランクハンドルの手回し操作を受けて電気転てつ機の転換及び鎖錠を行うものであり、
角軸部は、クランクハンドルのボス部に差し込んで脱着可能に取り付けられるものであり、
回り止め体のボス部から外方に張り出した板面一部に外縁側に開放したスリットを有し、
回り止め体のボス部は、軸孔に差し込まれたハンドル軸の軸方向の任意の位置に支えられ、且つハンドル軸に回転方向に抵抗を与えるものであり、
スリットは、電気転てつ機のケーシングの一部に係止させる切欠きであることを特徴とする電気転てつ機の手回しハンドル。
【請求項2】
前記回り止め体は、中心にボス部を有する合成樹脂製の円板であり、ボス部には、金属製のハンドル軸が差し込まれ、ハンドル軸の外周と、ボス部の内周面との間の摩擦抵抗によって、ハンドル軸の定位置に保持されるものであることを特徴とする請求項1に記載の電気転てつ機の手回しハンドル。
【請求項3】
前記スリットは、回り止め体の円板の数箇所に放射方向に形成され、複数のスリットのうちのいづれか1つが電気転てつ機のケーシングの一部に係止されるものであることを特徴とする請求項2に記載の電気転てつ機の手回しハンドル。
【請求項4】
前記スリットは、電気転てつ機のケーシングに備えた手回しハンドル挿入口を塞ぐ蓋の施錠用止め金に係止されるものであることを特徴とする請求項1又は3に記載の電気転てつ機の手回しハンドル。
【請求項5】
ハンドル軸の角軸部と、クランクハンドルのボス部とは、角軸部の周面一部に備えたプレスフィットプランジャーの突子をボス部の軸孔内周面に圧接することによって、脱着可能に一体的に組合わされるものであることを特徴とする請求項1に記載の電気転てつ機の手回しハンドル。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気転てつ機を手回しで操作する手回しハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の線路が敷設された停車場内で1つの鉄道線路から他の線路へ、列車又は車両(以下列車などという)を移動させるために、停車場内には、分岐器が敷設されている。分岐器は、トングレールを左右いずれかの基本レールに密着させ、列車などの通路を形成する装置であり、ポイント部、リード部、クロッシング部からできている。トングレールを転換し、基本レールに密着させる装置を転換装置といい、密着状態のトングレールを、その位置に保持する装置を鎖錠装置といい、転換装置と鎖錠装置を総称して「転てつ装置」という。
【0003】
そして、電気転てつ機は、電気を動力としてポイント部を転換する装置である。線路が複雑に集合しあるいは分岐する場所では、転てつ機、信号機および標識等のような、進路を開通させたり、進路への進入の可否を表示させたりする機器が進路制御機器として多数設置され、列車などの到着、出発、通過、列車などからの要求に合わせて進路の切り換え、進路の開通が行われる。それらの進路制御機器の切換操作は、速やかにかつ適切に行い、能率よく列車等を運行させ、通行させるには、進路制御機器の操作に間違いがあってはならない。
【0004】
そこで、進路制御機器の操作を間違った場合には、その誤操作を排除して保安を確保したり、作業能率を向上させるために、関連する複数の進路制御機器の操作関係に予めインターロック(鎖錠)を設定し、これに従って制御操作を行わせる連動装置が採用されている。
【0005】
連動装置は取扱者が進路設定要求に合わせて、列車の発点・着点等のデータを入力したときに、これを受けて、関係する進路が他の列車によって既に設定開通されているか否かを照査(チェック)し、設定されていないことが確認されると、要求進路を開通するのに必要な転てつ機を所定の方向に転換するための指令を出力する装置である。
【0006】
特許文献1には、上記従来の連動装置では、軌道回路、転てつ機または諸設備が故障した場合に、連動表に記載された場内・出発信号機、誘導信号機、または入換信号機、入換標識の進路では列車等を運転することができず、所定の着発番線に列車等を進入または進出させるために、進入または進出の進路を構成するには人手による進路開通操作、すなわち手回しハンドルによる関係転てつ機全ての転換操作(以下、手回し転換という)を行い、さらに転てつ機の鎖錠を行わなければならないという問題点を指摘し、安全性を確保しつつ応急運転時の省力化を図ることを目的として異常時対応の信号方式を有する連動装置を提案している。
【0007】
特許文献1記載された装置は、要するに転てつ機等が故障し、その故障により影響を受ける軌道区間が進路情報として入力されると、その入力された軌道区間を応急運転範囲として軌道回路予約テーブルに登録するとともに、故障に直接関連する転てつ機以外の転てつ機の進路を開通させる開通指令を転てつ制御手段に対して出力する応急運転制御手段を設けるというものである。
【0008】
この装置によれば、応急運転時には、転換不能となった転てつ機のうち、故障に直接関連する転てつ機のみを人手によって手回しハンドルで操作して転換させればよいから、応急運転時の省力化を大幅に向上させることができるという効果が強調されている。
【0009】
ところで、手回しハンドルは、手回し安全器(手回し装置)とも云われ、電気転てつ機を手回しで操作するものである。手回しハンドルは、図4に示すように手回し安全器レバー20を動かして、手回しハンドル挿入口21と、図示を略す手回しハンドル孔とを合わせると、手回しハンドル22が挿入でき、電動機回路が遮断されるようになっている。手回しハンドル22は、電気転てつ機の据え付け時や、通常の保守時に行うポイントの密着、鎖錠調整の場合に使用するほか、前述のように停電時などの異常時の手回しに使用される。なお、図4では、電気転てつ機のケーシングは図示を略してある。
【0010】
手回しハンドルを用いて電気転てつ機を定位から反位に転換し、あるいは反位から定位に転換し、定位又は反位に鎖錠したあと、その鎖錠期間中は、電気転てつ機の挿入口には手回しハンドルを差し込んだままに置かれるが、鎖錠状態に手回しハンドルを保持しないと、列車などの移動時に生じる振動の影響をうけて手回しハンドルが逆転し、鎖錠が緩む虞がある。このような理由から、鎖錠期間中は、手回しハンドルが逆転することがないように、作業員が手で抑えていなければならなかった。つまり、手回しハンドルを用いて、電気転てつ機を定位又は反位に転換し、その鎖錠期間中は作業員が電気転てつ機の機側に張り付いて、手回しハンドルを手で抑えていなければならなかった。
【0011】
たしかに、特許文献1に記載の連動装置が開発されて、故障などに直接関連する電気転てつ機のみを人手によって操作すればよいため、省力化を大幅に向上できたが、それでも、故障などに直接関連する電気転てつ機の定位又は反位の鎖錠期間中は作業員が電気転てつ機の機側に張り付いて、手回しハンドルを手で抑えていなければならないという問題が解決されたわけではない。
【特許文献1】特許公開平6−286613号公報
【非特許文献1】「転てつ装置」 (社)日本鉄道電気技術協会 平成4年5月10日初版発行 P42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、手回しハンドルを扱って電気転てつ機を定位又は反位に転換操作したあと、その鎖錠期間中、作業員が特定の電気転てつ機の機側に張り付いて、手回しハンドルを手で抑えていなければならないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
手回しハンドルは、ハンドル軸に脱着可能であり、ハンドル軸をハンドル挿入口に挿入した状態で手回しハンドルをハンドル軸から取り外し、ハンドル軸を差し込んだ回り止め体を電気転てつ機のケーシングの一部に係止させてハンドル軸の自由回転を阻止した点を最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による電気転てつ機の手回しハンドルによれば、電気転てつ機の手回し操作において、電気転てつ機を定位又は反位に転換したときにその鎖錠期間中、ハンドル部分をハンドル軸から取り外しができるため、ハンドルの一部、特に握り部の部分が建築限界を超えて列車などの移動を妨げるような危険な事態が発生することがなく、また、ハンドル軸を差し込んだ回り止め体を電気転てつ機のケーシングの一部、例えば手回しハンドル挿入口の蓋の施錠用止め金に係止しておくことによって、振動を受けてても手回しハンドルを自由回転させることがなく、したがって鎖錠期間中手回しハンドルの逆転により鎖錠が緩むことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
鎖錠期間中手回しハンドルの逆転を防止し、しかも、建築限界に支障を生じさせずに鎖錠期間中の安全を確保するという目的を、ハンドル軸に取り付けた回り止め体を電気転てつ機のケーシングの一部に係止し、しかも、鎖錠期間中はハンドル軸から操作用のクランクハンドルを取り外すことによって実現した。
【実施例1】
【0016】
図1(a)は、本発明による電気転てつ機の手回しハンドルの平面図、図1(b)は、使用時の状態を示す断面図である。図において、本発明の手回しハンドルは、クランクハンドル1と、ハンドル軸2と、回り止め体3との組合せからなっている。クランクハンドル1は、回転操作用握り部4を一端に有するアーム5の他端にボス部6が形成されているものである。ハンドル軸2は、円柱軸7の下端に操作用頭部8を有し、上端に角軸部9を有している。上端の角軸部9は、クランクハンドドル1のボス部6の軸孔内に差し込まれ、角軸部9と、ボス部6とは、角軸部9の周面一部に埋め込まれたプレスフィットプランジャー10の突子をボス部6の軸孔内周面に圧接することによって、クランクハンドル1とハンドル軸2とを脱着可能に一体的に結合させている。
【0017】
回り止め体3は、回り止め体3のボス部11から外方に張り出した板面一部に外縁側に開放したスリット12を有するものである。ボス部11は、その軸孔に差し込まれた前記ハンドル軸2の軸方向の任意の位置に支えられ、且つハンドル軸2に回転方向の抵抗を与えるものである。この実施例において、回り止め体3は、中心にボス部11を有する合成樹脂製の円板であり、板面数箇所(この実施例では4箇所)に、中心軸上を放射方向に延びて周縁に開放したスリット12、12、・・・が形成されている。スリット12は、後述するように電気転てつ機のケーシングの一部、この実施例では手回しハンドル挿入口を塞ぐ蓋16の施錠用止め金17を係止させる切欠きである。
【0018】
回り止め体3のボス部11の内径は、ハンドル軸2の外径よりやや小さく設定されており、金属製のハンドル軸2を合成樹脂製の回り止め体3のボス部11の軸孔内に強制的に差込むと、ボス部11とハンドル軸2間の摩擦抵抗によって、回り止め体3は、回り止め体3のボス部11とハンドル軸2間の摩擦抵抗によって、ハンドル軸2の任意の高さ位置に保持され、その摩擦抵抗に抗して回り止め体3を軸方向にスライドさせて任意の位置に保持でき、また摩擦抵抗の大きさの範囲内で回転方向の自由回転が阻止される。
【0019】
本発明の手回しハンドルを使用するときには、図2に示すようにハンドル軸2に回り止め体3を取付け、さらに上端の角軸部9にクランクハンドル1を取り付ける。電気転てつ機を手回しで操作する要領は基本的には従来と同じである。すなわち、電気転てつ機のハンドル挿入口14の位置と対応して、ケーシング13に開口された窓孔15を施蓋する蓋16を開き、回り止め体3をハンドル軸2の軸上を上部に引き上げた状態で、窓孔15を通して電気転てつ機のハンドル挿入口14内にハンドル軸2の操作用頭部8を差込み、図示を略すフリクションクラッチの手回しハンドル孔内に図1(b)に示すようにハンドル軸7の角頭部8を嵌め込み、電気転てつ機の電動機回路を遮断するとともにクランクハンドル1の握り部4を手で持ってハンドル軸2を回転させる。
【0020】
図2において、電気転てつ機を定位から反位に転換するには、ハンドルを右回転、反位から定位に転換するにはハンドルを左回転することによって、動作桿、鎖錠桿(いづれも図示略)が駆動され、ポイントは定位から反位へ、或いは反位から定位に転換し、転換後、定位鎖錠、反位鎖錠が行われる。その転換操作の要領は従来の手回しハンドルによるハンドル操作と全く同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0021】
本発明において、転てつ装置を定位鎖錠或いは反位鎖錠したときに、図3に示すように回り止め体3をハンドル軸2に沿って引き下げ、回り止め体3のスリット12のひとつを電気転てつ機のケーシング13に備えた蓋16の施錠用の止め金17に引っ掛け、その状態でハンドル軸2の角軸部9からクランクハンドル1のボス部6を引き抜いてハンドル軸2からクランクハンドル1を取り外す。
【0022】
一方、蓋16の施錠用の止め金17に引っ掛けられた回り止め体3は、その位置に保持され、ボス部11の軸孔内に差し込まれているハンドル軸2と、回り止め体3間の摩擦抵抗によって、ハンドル軸2の自由回転を阻止し、列車などが1つの線路から他の線路へ、例えば分岐線から基準線へ、或いは基準線から分岐線へ移動する鎖錠期間中、転てつ装置は、定位鎖錠状態あるいは反位鎖錠状態を保持する。
【0023】
また、クランクハンドル1は、プレスフィットプランジャー10の突子の押圧力によってハンドル軸2に保持されているため、通常の使用時には、簡単には外れず、転換操作後は、プレスフィットプランジャー10の突子の押圧力に抗してクランクハンドル1を上方に引き抜くことによって、これをハンドル軸2から容易に取り外すことができる。転てつ装置の鎖錠期間中は、図3のようにクランクハンドル1が取り外されているため、ハンドルの握り部4の位置によって建築限界に支障をきたすことがなく、従って列車などの移動を妨げることはない。
【0024】
本発明において、回り止め体3は、要するにハンドル軸2に一定の力で保持された板状物であって、その一部に電気転てつ機のケーシングの一部(この例では蓋の止め金)を係止させるスリット12が形成されていれば良いのであるが、円板を用いることにより、板面には、2以上のスリット12を放射状に形成でき、したがって、手回し操作による電気転てつ機の転換終了時に、回り止め体3を引っ掛けるべき止め金17の近傍のスリットを選定できる点で有利である。
【0025】
また、ハンドル軸2は、回り止め体3のスリット12を電気転てつ機のケーシング13の止め金17に引っ掛けることによって、その自由回転(ハンドルの逆転)が阻止されるのであるが、回り止め体3のスリット12を引っ掛けるための係止手段は必ずしも止め金に限るものではない。要するに、可動側となる回り止め体3は、固定側である電気転てつ機のケーシングの一部に引っ掛けられて回転が阻止されればよいのであって、必ずしも蓋の止め金に限るものではないが、既存の止め金を利用することによって、回り止め体3の係止手段を格別に設ける必要がなくなる。
【0026】
また、回り止め体3と、ハンドル軸2との関係については、要するにハンドル軸2に対して回り止め体3を相対的に上下に変位させて任意の位置に停止させることができ、しかも回転方向に対してある程度の抵抗を確保できればよいのであって、必ずしもキーやスプライン結合のような完全に相対回転を阻止する手段を用いる必要はない。
【0027】
つまり、列車などが移動する際の振動の影響によって生じるハンドル軸2の自由回転を阻止するには、合成樹脂製の回り止め体の軸孔内に金属製のハンドル軸を強制的に圧入したときに生じる両者間の摩擦抵抗力で十分である。本発明によれば、電気転てつ機の故障その他の原因により影響を受ける軌道区間の応急運転時の安全を確保し、手回し安全器を使用中のすべての電気転てつ機の機側に作業員が張り付いている必要がなく、少数の作業員で能率よく復旧作業を行うことが可能となり、応急運転時の大幅な省力化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
鉄道の駅構内などのように線路が複雑に集合、分岐する場所の軌道回路、電気転てつ機その他の設備が故障して、連動表に記載された場内・出発信号機、誘導信号機、入換信号機、入換標識の進路で列車の運転ができないような事態が発生したときに、所定の着番線に列車などを進入、進出させる必要から、進入、進出回路を手動で構成する場合に適用できる。
- 【公開番号】特開2008−6985(P2008−6985A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【発明の名称】電気転てつ機の手回しハンドル
- 【出願番号】特願2006−180006(P2006−180006)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
- 【代理人】
【識別番号】100075306
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 中
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