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鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置
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- 【要約】
【課題】 湿式摩擦クラッチ機構の摩擦抵抗を一定に保つ。
【解決手段】 湿式摩擦クラッチ機構を有している。湿式摩擦クラッチ機構は、固定側クラッチ部品と、可動側クラッチ部品と、クラッチばねとの組み合わせを有している。固定側クラッチ部品は制輪子隙間調整装置の筐体に形成され、可動側クラッチ部品は摩擦ライニング18aを有し、クラッチばね19によって、一定圧力で加圧されて固定側クラッチに押し付けられている。摩擦ライニング18aは、固定側クラッチに圧接されて制輪子隙間の調整に際して摩擦拘束力を生じさせる。可動側クラッチの摩擦ライニングを圧接させる固定側クラッチの全面には、潤滑油の油溜りとして可動側クラッチに接触する全面に分散させて10〜15μmの深さの窪みを有するディンプル27が形成されている、
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式摩擦クラッチ機構を有する鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置であって、
湿式摩擦クラッチ機構は、固定側クラッチ部品と、可動側クラッチ部品と、クラッチばねとの組み合わせを有し、
固定側クラッチ部品は制輪子隙間調整装置の筐体に形成されたものであり、
可動側クラッチ部品または固定側クラッチ部品の一方の面には、摩擦ライニングを有し、
摩擦ライニングは、相手側のクラッチ部品の摩擦面に圧接されて制輪子隙間の調整に際して摩擦拘束力を生じさせるものであり、
クラッチばねは、可動側クラッチ部品を加圧して固定側クラッチ部品に圧接させるものであり、
固定側または可動側のいずれか一方のクラッチ部品の摩擦ライニングを圧接させる他方のクラッチ部品の全面には、潤滑油の油溜りとして相手側クラッチ部品に接触する全面に分散させて微小な窪みを有するディンプルが形成され、
ディンプルは、摩擦ライニング面に相手側クラッチ部品を実質的に面接触させた状態で窪み内から常時潤滑油を摩擦ライニング面に給油するものであることを特徴とする鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置。
【請求項2】
摩擦ライニングの表面に形成されたディンプルは、10〜15μmの深さの窪みであることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置。
【請求項3】
固定側クラッチ部品は、筺体に形成された円錐形の摩擦面であり、
可動側クラッチ部品は、制輪子隙間の調整時に摩擦拘束力に打ち勝って転回するものであり、固定クラッチ部品の円錐摩擦面に圧接させる摩擦ライニングを有し、
ディンプルは、固定クラッチ部品の円錐摩擦面に形成されているものであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載された鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用ブレーキ装置における制輪子隙間調整装置、特に制輪子隙間調整装置に組み込まれた湿式摩擦クラッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置には湿式の摩擦クラッチが組み込まれている。湿式の摩擦クラッチは、潤滑状態で使用するよう摩擦材料が作られたものであり、潤滑方式には、油浴潤滑、ふりかけ潤滑、軸心給油などの方式が知られているが、制輪子隙間調整装置の湿式の摩擦クラッチには、油溜めとしてクラッチを構成する部品が相対応する表面に同心形状、放射形状あるいは螺旋形状の溝を刻設し、この溝内に潤滑油(例えばグリース)を溜め、溝内の潤滑油を対向面に供給する方式が用いられる。
【0003】
このうち、溝は通常旋盤加工によって刃具の刃先で部品表面を削りとることによって形成される。溝形状として、例えば回転方向に断続した放射状の溝として形成したときには、クラッチ部品間の相対的な回転角変位が大きい場合、あるいは変位速度が速い場合などで、部品間の相対回転角の変位が互いに隣接する2本の溝間を跨るような条件の下で使用されるかぎり格別の問題はないものの、部品間の相対的な回転角変位が一の溝から隣接する他の溝にまで至らないときには、部品相互間の摩擦抵抗に変動が生じて特性に安定性が得られないという問題が生じる。
【0004】
これに対し、同心円状のように円周方向に溝を形成したときには、クラッチ部品の回転方向に溝が連続し、潤滑油を対向面に供給する上に良好な条件を確保することができる。この点で油溜りとして、回転方向に連続する同心円状または螺旋状の溝を形成することは、従来より、特性の安定化に、効果があるものとされてきた。
【0005】
ところが、摩擦クラッチの使用目的によっては回転方向に連続する溝形状を好まない場合があることがわかった。その理由は、クラッチを構成する2つの部品には、通常、硬さが異なる異種材料が使用されるが、一方の部品に粘弾性特性を有する材料の成形体を使用したときには、粘弾性体の弾性余効の性質によって防振効果は得られるものの相手側部品の表面に刻まれた溝によって表面が削り取られる虞が生じるからである。
【特許文献1】実公昭58−9811号公報
【特許文献2】特表2003−529724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、油溜めとして、クラッチ部品間の相対回転方向に断続した放射状の溝として形成したときには、条件によっては特性の安定性に欠くことがあり、また、クラッチ部品間の相対回転方向に連続する溝形状に形成したときには、部品の材料によっては、摩擦ライニングの表面が溝で削り取られる虞があるという問題が生じるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、油溜りとしてクラッチの一方の部品の摩擦ライニングの表面に微細な窪みを有するディンプルを均一に分散させて形成し、クラッチ部品間の相対回転角変位の大小に関わりなく安定した特性を発現できる点を最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による制輪子隙間調整装置によれば、クラッチばねの一定圧力を作用させて設計どおりの摩擦拘束力を可動側のクラッチ部品に与えることができ、また、摩擦ライニングに粘弾性体を使用したときにおいても、摩擦ライニングの表面が削り取られるような虞もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
クラッチ部品間の相対回転角変位の大小に関わりなく安定した特性を得るという目的を、クラッチの一方の部品の摩擦ライニングの表面に形成されたディンプルの微細な窪みを油溜りとし、両摩擦ライニング面間を実質的に面接触させた状態で窪み内から常時潤滑油をライニング面に給油することによって実現した。
【実施例1】
【0010】
以下に湿式摩擦クラッチ機構が組み込まれた鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置の構成並びにその機能を説明する。図1は、ブレーキ装置を装備した車両の一部断面側面図、図2は、ブレーキ装置の要部拡大断面図である。図1、図2において、ブレーキシリンダ装置1のロッドにリンクを介してブレーキてこ2Aが連結されている。
【0011】
一方、台車にピン止めされた制輪子つり6に車輪4の一側面に圧接させる制輪子3Aが取付けられており、制輪子つり6と、ブレーキてこ2Aとが制輪子つなぎ7Aによって、同軸に連結されている。車輪4の対向面に圧接させる制輪子3Bは、制輪子つなぎ7Bでブレーキてこ2Bに枢着されており、両ブレーキてこ2A,2Bの下端にはブレーキばり8A,8Bがそれぞれ平行に取付けられ、両ブレーキばり8A,8Bの間にブレーキ棒5が設けられている。
【0012】
ブレーキ棒5は、一方のブレーキばり8Aに支持されたねじ筒9にねじ込まれ、その他端が他方のブレーキばり8Bにピンで連結されているもので、ねじ筒9内に引き込み、あるいは、引き出して両制輪子3A,3Bと車輪4との間の隙間(制輪子隙間という)の調整を行なうものである。このねじ筒9は、自動隙間調整装置の一部を構成し、制輪子3A,3Bの摩耗の増大にともなって制動時に、自動的に回転送りが与えられるようになっている。
【0013】
次に、自動隙間調整装置に組み込まれたブレーキ機構を説明する。図3,図4において、ねじ筒9を回転可能に保持して一方のブレーキばり8Aに装着される筐体10内に、ねじ筒9の軸心と平行に配設してリードの荒い自立しない雄ねじ11Aが付された送りねじ11が進退動可能に保持され、該雄ねじ11Aに作用ねじ12Bが螺合し、作用ねじ12Bの周上のスプライン12Cを介して鋸歯状歯12Aを一端面に形成した主動ラチェット体12が軸方向を摺動可能に結合されている。
【0014】
ここにリードの荒い自立しない雄ねじとは、雄ねじの直進動に対して、主動ラチェット体12が容易に回転しうる条件、いわゆる、ねじが自立しない条件(リード角>摩擦角)を満足するものをいう。送りねじ11の周上には、主動ラチェット体12と隣接して、その鋸歯状歯12Aと噛合する鋸歯状歯13Aを一端面に形成した従動ラチェット体13が回転可能に支承され、主動ラチェット体12の背面は、戻しばね14で押圧されて両歯12A,13Aは、噛み合い方向に付勢されるが、両歯12A,13Aは噛合いがずれた位置に保たれる。
【0015】
従動ラチェット体13の周上には、一定間隔を置いて円錐形部15と、角軸部16とが形成され、円錐形部15の周上には、その形状に適合する円錐形軸孔を備えた主動歯車17が外装されており、角軸部16には、可動側のクラッチ部品である円錐クラッチ18が結合し、主動歯車17と、円錐クラッチ18との間に介在させたクラッチばね19のばね力を作用させて主動歯車17を円錐形部15に圧接し、また、円錐クラッチ18の摩擦ライニング18aを筐体10に形成された固定側クラッチ部品である円錐摩擦面20に圧接させている。
【0016】
なお、円錐形部15の傾斜角θ1と、円錐クラッチ18の傾斜角θ2との関係はθ1<θ2に設定されている。筐体10に支持されたねじ筒9の周面にはキー21を介して従動歯車22が装着され、これを主動歯車17に噛合させている。ねじ筒9は、O−リング23を介して筐体10に支持されており、その一端を筐体10より外方に突出させ、その突出端に復元操作用角頭部24を設け、他端のねじ孔内にブレーキ棒5がねじ込まれている。
【0017】
本装置は、図2に示すように、その筐体10を一方のブレーキばり8Aに装着し、ブレーキ棒5を他方のブレーキばり8Bにピンで連結するとともに一方の制輪子つなぎ7Aに設けたアーム25に、連結板26を枢着し、その端末を送りねじ11の端末に連結して両ブレーキばり8A,8B間に設置されるものである。
【0018】
実施例において、ブレーキシリンダ装置1の駆動によりブレーキてこ2Aを、その支点を中心に変位させ、一方の制輪子3Aを車輪4に圧接させると、この変位がブレーキ棒5を含む一連の機構を介して他方の制輪子3Bに伝えられ、その変位で制輪子3Bは車輪4に圧接される。このブレーキてこ2Aの変位に関連して制輪子隙間の自動調整が実施されるのであるが、以下にその動作要領を説明する。
【0019】
(1)制輪子隙間が正規のとき、
ブレーキ緊締時には連結板26は、ブレーキてこ2Aの変位をうけて同方向(図2矢印方向)に変位し、送りねじ11は筐体10より外方へ引き出される。この送りねじ11の直進動によって荒いリードの雄ねじ11Aに螺合させた作用ねじ12Bが転回し、スプライン12Cを介して、その回転力が主動ラチェット体12に伝えられる。
【0020】
主動ラチェット体12の回転により歯12Aは、戻しばね14の圧力をうけて従動ラチェット体13の歯13Aの歯谷におちるが、制輪子隙間が正規のときは、主動ラチェット12の回転角は歯の一歯以下のため、従動ラチェット体13に回転送りが与えられることはない。ブレーキの緩解時には、連結板26が反対方向に戻り、送りねじ11は筐体10内へ押し込まれる。この送りねじ11の復帰によって作用ねじ12Bは逆回転し、主動ラチェット体12も戻しばね14に抗して逆回転し、原状の位置に戻る。
【0021】
(2)制輪子隙間が正規より増大したとき、
制輪子が摩耗して制輪子隙間が正規より増大すると、制動に要するストロークが増大し、ストロークが正規よりふえた分だけ送りねじ11のストロークも増す。これによって主動ラチェット体12の回転角は、正規のときの回転角を超え、主動ラチェット体12の歯12Aは歯13Aの谷に落ち、さらに、制輪子隙間の増大分に比例して従動ラチェット体13の歯13Aを回転方向に押して、これを一体に回転させる。
【0022】
次にブレーキが緩められると、主動ラチェット体12の歯12Aは元の位置に戻るが、従動ラチェット体13は、主動ラチェット体12の歯12Aで押されて転回した位置にとどまり、両歯12A,13A間の相対変位により主動ラチェット体12の歯12Aは戻しばね14の背面をうけて従動ラチェット体13Aの次の歯の歯谷に落ち込む。
【0023】
この状態で次にブレーキがかけられると、送りねじ11が直進して主動ラチェット体12の歯12Aと、従動ラチェット体13の歯13Aとが噛み合ったまま両ラチェット体12,13は一歯分一体回転する。ここにおいて、円錐形部15の傾斜角θ1は前述のように円錐クラッチ18の傾斜角θ2より小さいため、円錐形部15と主動歯車17との間の摩擦抵抗は、円錐クラッチ18の摩擦ライニング18aの面と円錐摩擦面20との間の摩擦抵抗より大きい。
【0024】
したがって従動ラチェット体13は円錐クラッチ18の摩擦ライニング18aの面と円錐摩擦面20との間の摩擦拘束力に打ち勝ってその伝達トルクにより主動歯車17を一体回転させる。従動ラチェット体13の回転により、円錐形部15に結合させた主動歯車17が一体回転し、従動歯車22に回転を伝え、キー21を通じてねじ筒9を時計方向に従転させる。
【0025】
ねじ筒9の回転により、ブレーキ棒5は、ねじ筒9内に引込まれて他方のブレーキばり8Bを引き寄せ、両制輪子3A,3Bのピン間距離を短縮し、制輪子の摩耗によって増大した隙間は正規の隙間に調整される。図3において、従動ラチェット体13の角軸部16に嵌合させた円錐クラッチ18は、クラッチばね19の圧力を受けて筐体10の円錐摩擦面20に向けて加圧され、その摩擦抵抗力が、従動ラチェット体13、主動歯車17、従動歯車22、キー21を通じてねじ筒9に作用し、その摩擦拘束力で、制輪子隙間が正規の範囲内であるときには、ねじ筒9が勝手に回りだすことがなく、制輪子隙間が正規の範囲より増大して隙間調整が実施されるときのみ、その摩擦拘束力に打ち勝って回転しなければならない。
【0026】
つまり、円錐クラッチ18の摩擦ライニング18aの面と、円錐摩擦面20との間の摩擦抵抗力は、円錐形部15と主動歯車17との間の摩擦抵抗よりも小さく保たれていなければならない。この条件を満たすために、前述のように円錐形部15の円錐形部の傾斜角θ1は、円錐クラッチの8の傾斜角θ2よりも小さく設定されているのであるが、同時に円錐クラッチ18と、円錐摩擦面20との間の摩擦抵抗力についても設計どおりの値でしかもそのライニングの全周面において、摩擦抵抗力は均一に保たれていなければならない。
【0027】
この目的達成のため、湿式摩擦クラッチ機構では、固定側の円錐摩擦面20の面に油溜りが形成され、摩擦面に給油することによって接触面に一定の摩擦拘束力を維持させるのであるが、その油溜りとして、放射形状の溝を刻設したときには、部品相互間の摩擦抵抗に変動が生じて特性に安定性が得られず、また円周方向に連続した同心円状、螺旋状の溝を刻設したときには、前述のとおり、可動側の摩擦ライニングの材料によっては、その表面が溝で削り取られるという問題が生じるのである。
【0028】
そこで本発明においては、油溜りとして、図5に示すように円錐クラッチ18の表面に張られた摩擦ライニングに圧接される円錐摩擦面20の全面にわたり、均一に分散させて微小な窪みを有するディンプル27を形成したものである。ディンプル27は、円錐摩擦面20に対するプレス加工による円錐摩擦面20の金属面への型押し(シボ付け)のほか、いわゆるブラスト加工によって円錐摩擦面20の金属面の全面にわたり形成することができる。なお、図5では、説明を判りやすくするため、クラッチ部品を構成する部分のみを図示し、ねじ筒や送りねじを含めて制輪子隙間調整装置の回転駆動機構部分の図示を省略した。
【0029】
ブラスト加工は、一般には加工面に固体金属、鉱物性又は植物性の研磨剤を高速で吹付け、その表面を清浄化、耐摩耗性向上又は表面硬化させるために用いられる方法であるが、ブラスト加工によれば、窪みの大きさ、深さ、数などの選定が比較的容易である点で優れている。窪みの深さは、一般に10μm〜15μmの範囲が摩擦クラッチの油溜りの深さとして好ましく、10μm〜15μmの深さに潤滑油(グリース)を溜めておくことにより、その窪みから、対向する円錐クラッチ18の摩擦ライニング18aの面に途切れなく供給することができる。
【0030】
図6は、回転トルク(T)の時間的変化を概念的に示す図である。図6において、曲線Aは、回転トルク(T)の値が時間的経過とともに次第に増大してゆく傾向を示し、曲線(B)は、時間の経過とともに、回転トルク(T)が限りなく一定の値に収斂してゆく傾向を示している。円錐摩擦面20と、摩擦ライニング18aの面間へ潤滑油が円滑に供給されないと、時間の経過とともにその間の摩擦抵抗力が増大し、曲線(A)の傾向をたどり、制輪子隙間が増大して隙間調整が必要なときに、従動ラチェットが摩擦ライニング18aの面と、円錐摩擦面20との間の摩擦拘束力に打ち勝てず、制輪子の摩耗によって増大した隙間を調整できないという事態が生じる。
【0031】
制輪子隙間の調整が実施されるためには、回転トルクは時間的変化に関わらず、曲線(B)のように一定の設計値に保たせることが必要である。本発明は、鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置に組み込まれた湿式摩擦クラッチの油溜りとして、可動側の円錐クラッチ18の表面に張られた摩擦ライニングに圧接される固定側の円錐摩擦面20の全面にわたり、互いに独立した微細な窪みを有するディンプル27を均一に分散させ、その窪み内に溜められた潤滑油(グリース)を対向する筐体10の円錐摩擦面20に途切れなく給油するものである。もっとも、可動側の円錐クラッチ18の表面に張られた摩擦ライニングに圧接される固定側の円錐摩擦面20の全面にわたり、互いに独立した微細な窪みを形成するのが機構を構成する上に有利であるが、この関係は逆に、固定側のクラッチ部品の表面に張られた摩擦ライニングに圧接される可動側のクラッチ部品の摩擦面の全面にわたり、互いに独立した微細な窪みを形成してもよい。
【0032】
本発明によれば、例えば回転方向に断続した放射状の溝を形成した場合のように、クラッチ部品(円錐摩擦面20と円錐クラッチ18の表面に張られた摩擦ライニング)の相互間の摩擦抵抗に変動がなく、したがって、クラッチばね19の一定圧力を作用させて図6の曲線(B)に示すように設計どおりの摩擦拘束力を円錐クラッチ18に与えることができ、制輪子隙間が正規の範囲内の時にはその摩擦力で円錐クラッチ18を拘束し、制輪子隙間が正規の範囲を超えたときにその摩擦拘束力に打ち勝って円錐クラッチ18を回転させることができる。
【0033】
また、摩擦ライニングに粘弾性体を使用したときにおいても、円周方向に同心円状の溝を形成した場合のように、摩擦ライニングの表面が削り取られるような虞も生じない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上実施例においては、湿式摩擦クラッチ機構として円錐クラッチに適用した例を説明したが、円錐クラッチに限らず、2組以上の固定側クラッチ部品と可動側クラッチ部品との組み合わせである円板摩擦クラッチにも全く同様に適用して制輪子隙間調整装置を構成することができる。
【0035】
また、実施例においては一個の車輪をはさんでその両側に配設された制輪子を両端に有する制輪子隙間調整装置に適用した例を説明したが、あるいは、前後の車輪間に跨ってそれぞれの車輪に押し付ける制輪子を両端に備えた制輪子隙間調整装置にも全く同様に適用することができ、本発明の制輪子隙間調整装置を車両に搭載してブレーキ性能を安定させることができる。
- 【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ブレーキ装置を装備した車両の一部側面図である。
【図2】ブレーキ装置の要部拡大斜視図である。
【図3】本発明による制輪子隙間調整装置の分解斜視図である。
【図4】本発明による制輪子隙間調整装置の拡大断面図である。
【図5】摩擦クラッチ機構の要部分解拡大図である。
【図6】回転トルクの時間的変化を概念的に示すグラフである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
- 【公開番号】特開2009−168135(P2009−168135A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【発明の名称】鉄道車両用ブレーキ装置の制輪子隙間調整装置
- 【出願番号】特願2008−6624(P2008−6624)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
- 【代理人】
【識別番号】100075306
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 中
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