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移動体制御情報伝送装置
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- 【要約】
【課題】走行ライン上を移動する移動体に制御情報を伝送する。
【解決手段】電波受信用ループコイル1と、移動体制御情報発信タグ2と、タグ交信用ループコイル3との組み合わせを有している。電波受信用ループコイル1と、タグ交信用ループコイル3とは閉ループを構成している。移動体制御情報発信タグ2は、移動体制御情報データを格納した汎用の無線ICタグであり、タグ交信用ループコイル3と交信し、移動体制御情報発信タグ2に格納された移動体制御情報データを読み出して電波受信用ループコイル1に送出する。電波受信用ループコイル1は、移動体の発する電波を受信して前記移動体制御情報発信タグ2に電源を供給するととともに、移動体制御情報発信タグ2から読み出された移動体制御情報を移動体に送出する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波受信用ループコイルと、移動体制御情報発信タグと、タグ交信用ループコイルとの組み合わせを有する移動体制御情報伝送装置であって、
前記電波受信用ループコイルと、タグ交信用ループコイルとは閉ループを構成し、
前記電波受信用ループコイルは、走行ライン上を移動する移動体の発する電波を受信して前記移動体制御情報発信タグに供給し、前記移動体制御情報発信タグから読み出された移動体制御情報データを伝送情報として前記移動体に送出するものであり、前記移動体の走行ラインに沿って配設され、
前記移動体制御情報発信タグは、移動体制御情報データを格納した汎用の無線ICタグであり、
前記タグ交信用ループコイルは、移動体の発する電波を受信時に移動体制御情報発信タグと交信し、移動体制御情報発信タグに格納された移動体制御情報データを読み出して電波受信用ループコイルに送出するものであることを特徴とする移動体制御情報伝送装置。
【請求項2】
移動体制御情報発信タグと、タグ交信用ループコイルと、電波受信用ループコイルとの組み合わせを移動体制御情報発信部とし、2以上の移動体制御情報発信部は、伝送情報としてそれぞれに格納された移動体制御情報データを移動体に伝送するものであることを特徴とする請求項1に記載の移動体制御情報伝送装置。
【請求項3】
2以上の移動体制御情報発信部を有する移動体制御情報伝送装置であって、
各移動体制御情報発信部は、電波受信用ループコイルを共用し、
電波受信用ループコイルは、それぞれの移動体制御情報発信部に備えた専用のタグ交信用ループコイルと選択的に接続されて閉ループを構成するものであることを特徴とする請求項2に記載の移動体制御情報伝送装置。
【請求項4】
前記移動体制御情報発信部の電波受信用ループコイルは、地上子として列車の走行ラインである軌道上に設置され、列車の車上子より伝送される電波を受信して移動体制御情報発信タグに供給し、移動体制御情報発信タグから読み出された列車の走行に必要な運転制御情報を変調波として列車の車上子に伝送するものであり、
前記移動体制御情報発信タグは、列車の運転制御情報を格納し、電波を受信時に移動体制御情報発信タグと交信し、移動体制御情報発信タグに格納された列車の運転制御情報を読み出して電波受信用ループコイルに送出するものであることを特徴とする請求項1に記載の移動体制御情報伝送装置。
【請求項5】
切替制御部を有し、
切替制御部は、特定の移動体制御情報発信部を選択し、当該特定の移動体制御情報発信部のタグ交信用ループコイルと、電波受信用ループコイルとの組み合わせによるコイルの閉ループを構成し、他の移動体制御情報発信部のタグ交信用ループコイルと、電波受信用ループコイル間の閉ループを開放するものであることを特徴とする請求項2、3または4のいずれか一に記載の移動体制御情報伝送装置。
【請求項6】
前記切替制御部は、信号機制御装置から鉄道信号機に発する信号現示指令に対応した動作指令信号を入力として特定の移動体制御情報発信部を選択し、選択された特定の移動体制御情報発信部のタグ交信用ループコイルと、電波受信用ループコイルとの組み合わせによるコイルの閉ループを構成させるものであることを特徴とする請求項5に記載の移動体制御情報伝送装置。
【請求項7】
2以上の移動体制御情報発信部を有する移動体制御情報伝送装置であって、各移動体制御情報発信部の電波受信用ループコイルあるいは2以上の移動体制御情報発信部に共用される電波受信用ループコイルは地上子として軌道上に設置され、各移動体制御情報発信部のタグ交信用ループコイルと移動体制御情報発信タグとは、シールドによって、車上子が発する電波の影響が阻止されていることを特徴とする請求項6に記載の移動体制御情報伝送装置。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体制御情報伝送装置に関し、例えば運転に必要な制御情報を列車に伝達する移動体制御情報伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行ラインとして予め敷設された移動用軌道上を移動する移動体が移動用軌道の所定位置を通過する際に、当該移動体に対して移動に関する制御情報(これを移動体制御情報と呼ぶ)を伝達する手段として、例えば、移動体である列車の運転に関する情報(これを運転制御情報と呼ぶ)を列車の車上装置に伝送する地上子を用いた装置(列車制御情報伝送装置という)が開発された。
【0003】
列車制御情報伝送装置は、当該地上子の位置を列車が通過したとき、信号機制御装置から信号機に与えられる信号現示制御信号に基づき、赤色現示、黄色現示及び青色現示の内容に対応する応動動作をし得るように構成されたものである。列車制御情報伝送装置には、種々の方式があるが、そのうちの1つにATS−P方式がある。
【0004】
ATS−P方式は、停止現示に対応した停止予定点を定め、そこまでの距離と速度制限情報などを地上から列車に伝え、車上で刻々の位置と自車の制動性能から速度制限値を算出して速度照査を行う方式である。以下に特許文献1を参照して従来のATS−P形地上装置の1例を図8に示す。図8において、レールRの所定区間毎にそれぞれ信号機S1,S2・・・が設けられ、各信号機S1、S2・・・の手前には、互いに所定の間隔を保って複数の地上子Ea、Eb、・・・が設置されている。
【0005】
各地上子は、列車の車上へ信号を送信するためのアンテナAを有し、各信号機S1、S2、・・・の近傍には、符号処理器EC1,EC2がそれぞれ設けられている。各符号処理器EC1、EC2は、信号機S1,S2の信号現示に対応した情報(電文)を生成して各中継器RP1〜RP3にそれぞれ出力するように構成されたもので、各符号処理器EC1とEC2と、中継器RP1、RP2、・・とはそれぞれ情報ケーブルC1及び電源ケーブルC2を介して接続される。
【0006】
特許文献1には、このような従来のATS−P方式の自動列車制御装置によるときには、信号機の現示情報を各中継器の情報に生成する符号処理器を必要とし、また各中継器もCPUなどを用いる必要があり、さらに、符号処理器と各中継器とを情報ケーブルおよび電源ケーブルで接続しなければならないことから、設備コストがかかるとして、信号機の現示信号を利用し、さらに、地上子を無電源型にして低コストに実現できる列車制御装置を提案している。
【0007】
特許文献1に記載の装置によれば、従来のような複雑で高価な符号処理器や、中継器は必要でなくなり、また情報伝達のためのケーブルや電源供給用のケーブルは不要にはなるものの、地上子として、列車専用として特別に製作された装置を使用しなければならないことには変わりなく、従来に比べて設備が簡略化され、設備コストの低コスト化を実現できたとはいえ、汎用の機器類や、回路素子を利用する場合に比べれば、設備の簡略化、設備コストの低コスト化にはおのずから限度がある。
【特許文献1】特開平8−2414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、特許文献1に記載の装置によれば、確かに従来のような複雑で高価な符号処理器や、中継器は必要でなくなくなり、また情報伝達のためのケーブルや電源供給用のケーブルは不要にはなるものの、地上子としては、列車専用に製作された装置を使用しなければならず、従来に比べて設備が簡略化されたとはいえ、設備の簡略化、設備コストの低コスト化にはおのずから限度があるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、列車を含む移動体に対する移動体制御情報の伝達をできるだけ汎用性の大きい回路要素を用いた簡易な構成によってなし得るようにしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電波受信用ループコイルで電波を受信し、タグ交信用ループコイルでタグとの交信を行うに際し、電波受信用ループコイルの長さを長くして電波受信範囲を広げることによって、車上子単体の電波受信範囲外にある移動体制御情報発信タグの読取制御が可能となり、簡易な構成によって移動体に対して移動体制御情報を伝送できる移動体制御情報伝送装置を実現できる。特に本発明を列車の制御情報伝送装置に適用して簡単な構成によって、ATS−P方式による自動列車制御装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
簡易な構成によって移動体に対して移動体制御情報を伝送するという目的を汎用の無線ICタグを用いることによって実現した。図1において、本発明は、電波受信用ループコイル1と、移動体制御情報発信タグ2と、タグ交信用ループコイル3との組み合わせを有するものである。電波受信用ループコイル1と、タグ交信用ループコイル3とは閉ループを構成するものである。電波受信用ループコイル1は、移動体の発する電波を受信して移動体制御情報発信タグ2に供給し、移動体制御情報発信タグ2から読み出された移動体制御情報を伝送情報として移動体に送出する。
【0012】
移動体制御情報発信タグ2は、汎用の無線ICタグであり、移動体制御情報のデータを格納し、タグ交信用ループコイル3は、移動体の発する電波を受信時に移動体制御情報発信タグ2と交信し、移動体制御情報発信タグ2に格納された移動体制御情報データを読み出して電波受信用ループコイル1に送出する。
【0013】
電波受信用ループコイル1は、走行中の移動体の制御情報受信手段と、移動体の制御に要する交信が可能な長さに設定して移動体の走行ラインに沿って配設され、移動体制御情報発信タグは、移動体の発する電波の影響を受けない適宜の位置に設置される。タグ交信用ループコイル3と、電波受信用ループコイル1間は接続ケーブル5で接続されてループを形成する。
【0014】
移動体の発する電波に応答して移動体を制御するときには、リレー接点回路17を閉じて閉ループを構成し、移動体制御情報発信タグ2に格納されている移動体制御情報を電波受信用ループコイル1から移動体に伝送する。移動体の制御が不要のときには、リレー接点回路17の接点を開いて閉ループを開放し、移動体制御情報の伝送を停止する。電波受信用ループコイル1には、同調コンデンサ4が並列に接続されている。同調コンデンサ4は、電波受信用ループコイル1と、タグ交信用ループコイル3間を接続する接続ケーブルによって構成される閉回路にて同調を行い、感度を向上させるためのものである。
【0015】
図1に示す移動体制御情報発信タグ2と、タグ交信用ループコイル3と、電波受信用ループコイル1との組を制御情報発信部とし、その2組以上を用いて2種類以上の移動体制御情報データを伝送情報として選択的に移動体に送出することができる。
以下本発明を鉄道信号機の信号現示を利用して移動体としての列車に距離情報を伝送することによって、列車の速度制御を行う場合の例を説明する。
【実施例1】
【0016】
図2は、本発明を適用したATS−P方式による自動列車制御装置の構成を示す図である。図2において、列車Tが走行する軌道のレールRの所定間隔ごとに信号機Sが設置され、その信号機Sの手前には、移動体制御情報伝送手段としての地上子Eが配設されている。
【0017】
地上子Eは、列車Tに搭載された車上子Mに対して列車の制御情報を伝送する制御情報発信部6であり、地上子Eは、信号機Sの設置位置までの間で、列車Tが信号機Sの現示に対応する運行パターンに従って運行することができる距離だけ離れた信号機Sの手前の位置のレールR間(軌道上)に設置されている。信号機Sは、信号機制御装置7より出力される信号現示指令によって赤色現示、又は黄色現示、又は青色現示を表示する。
【0018】
制御情報発信部6は、赤色現示情報発信部6Aと、青色現示情報発信部6Bとからなっており、赤色現示情報発信部6Aと青色現示情報発信部6Bとは、図3に示すようにそれぞれ移動体制御情報発信タグとして、赤色現示情報発信部6Aは赤信号用制御情報発信タグ2Aを備え、青色現示情報発信部6Bは青信号用制御情報発信タグ2Bを備えている。赤色現示情報発信タグ2A及び青信号用制御情報発信タグ2Bはいずれも汎用の無線ICタグである。赤色現示情報発信部6Aは、電波受信用ループコイル1Aと、タグ交信用ループコイル3Aとの組み合わせを有し、青色現示情報発信部6Bは、電波受信用ループコイル1Bと、タグ交信用ループコイル3Bとの組み合わせを有している。
【0019】
赤色現示情報発信部6Aと青色現示情報発信部6Bとは同じ構成のため、以下に赤色現示情報発信部6Aの構成を説明し、青色現示情報発信部6Bについては、赤色現示情報発信部6Aの構成と同一構成部分には、同一番号にBの符号を付してその説明を省略する。赤色現示情報発信部6Aの電波受信用ループコイル1Aと、タグ交信用ループコイル3Aとは接続ケーブル5Aによって接続されてループを形成し、ループを開閉するリレー接点回路17Aがループの一部に結線されている。ループには同調コンデンサ4Aが結線されている。赤信号用制御情報発信タグ2Aは、汎用の無線ICタグであり、移動体制御情報記憶部8Aと、アンテナ部9Aと、電源形成部10Aと、移動体制御情報書込・読取部11Aと、インピーダンス切換部12Aとを有している。
【0020】
移動体制御情報記憶部8Aには、赤信号現示時に列車に対して出力すべき情報、この実施例においては、信号機Sの手前の所定距離の位置にある地上子を通過する列車の時速や、所定の運行速度以下でなければならないブレーキパターンを指定する距離データが制御情報データとして格納されている。赤信号用制御情報発信タグ2Aは、アンテナ部9Aが電波を受信すると、電源形成部10Aで電力が形成され、移動体制御情報記憶部8Aに格納されている移動体制御情報データを移動体制御情報書込・読取部11Aにおいて読み出し、インピーダンス切換信号としてインピーダンス切換部12Aに与え、インピーダンス切換部12Aは、アンテナ部9Aの負荷抵抗のオンオフを移動体制御情報データの論理レベルの変化に応じて切り換えることにより、搬送波電波に対するインピーダンスを変化させ、移動体制御情報データを搬送波電波としてアンテナ部9Aに照射し、アンテナ部9Aのインピーダンスが変化することにより、制御情報データによって変調された移動体制御情報信号を出力する。
【0021】
タグ交信用ループコイル3Aは、制御情報発信タグ2Aと交信して、赤信号用制御情報発信タグ2Aより出力された移動体制御情報信号を受信し、受信した移動体制御情報信号を前記電波受信用ループコイル1Aに送出する。
【0022】
一方、青色現示情報発信部6Bは、移動体制御情報発信タグとしての青信号用制御情報発信タグ2Bと、電波受信用ループコイル1Bと、タグ交信用ループコイル3Bとの組み合わせを有している点は赤色現示情報発信部6Aの構成と同じである。青信号用制御情報発信タグ2Bの図示は省略するが、その移動体制御情報記憶部(図示略)には、列車Tが地上子Eを通過したときの運行パターンを指定する距離データが移動体制御情報データとして格納され、信号機の青色信号現示時には、移動体制御情報データが読み出され、移動体制御情報信号として電波受信用ループコイル1Bから、列車の車上子Mに伝送される。
【0023】
図4において、赤色現示情報発信部6Aの電波受信用ループコイル1Aと、青色現示情報発信部6Bの電波受信用ループコイル1Bとは、地上子Eとして軌道のレールR,R間に設置されるが、赤色現示情報発信部6Aのタグ交信用ループコイル3Aと赤信号用制御情報発信タグ2Aの組合せおよび青色現示情報発信部6Bのタグ交信用ループコイル3Bと、青信号用制御情報発信タグ2Bの組合せとは、可能なかぎり軌道を走行する列車Tの車上子Mから発する電波の影響を受けない位置に設けるのが望ましい。
【0024】
車上子Mから発する電波の影響を受けるおそれがあるときには、タグ交信用ループコイル3Aと赤信号用制御情報発信タグ2Aとの組およびタグ交信用ループコイル3Bと青信号用制御情報発信タグ2Bとの組を含めて、あるいは個別に鉄板などのシールド材14で覆って、電磁的にシールドし、列車Tの車上子Mから発せられる電波の影響による誤動作を阻止する。
【0025】
図5に、切替制御部13の具体例を示す。この例において、切替制御部13は、リレー接点回路17Cと、タグ読取制御部18とからなり、信号機制御装置から出力された動作指令信号S1に基づいてリレー接点回路17Cに赤色現示制御信号S21又は青色現示制御信号S22を出力する。
【0026】
その指令が赤色現示制御信号S21であるときには、リレー接点回路17Cの接点切替により固定接点c1,c2を切替接点a1、b1に導通させて赤色現示情報発信部6Aの電波受信用ループコイル1Aに、タグ交信用ループコイル3Aを接続して閉ループを構成し、青色現示情報発信部6Bの電波受信用ループコイル1Bとタグ交信用ループコイル3Bとを切り離す。
【0027】
逆に動作指令信号S1が青色現示制御信号S22であったときには、タグ読取制御部18はリレー接点回路17Cに指令を出力し、接点切替により固定接点c1,c2を切替接点a2、b2に導通させて青色現示情報発信部6Bの電波受信用ループコイル1Bに、タグ交信用ループコイル3Bを接続して閉ループを構成し、赤色現示情報発信部6Aの電波受信用ループコイル1Aとタグ交信用ループコイル3Aとの間のループを開放する。
【0028】
本発明に用いる制御情報発信タグは、「RFIDタグ」(Radio Frequency Identification Tag)として市販されている標準規格の汎用のものを適用し得る。
【0029】
移動体制御情報記憶部へ格納すべき移動体制御情報データは、当該汎用の無線ICタグについて、地上子として使用する前に(製造時工場で)、例えばユーザビットとして用意されるメモリ空間にアンテナ部から移動体制御情報書込・読取部を介して移動体制御情報記憶部に書き込むことにより予め格納することができる。
【0030】
図3において、信号機Sは、信号機制御装置7から発せられる信号現示指令によって、赤色現示、黄色現示または青色現示を行い、信号機制御装置7は、信号機Sに対する信号現示指令と同時に切換制御部13に対し、赤色現示のときには、信号機制御装置7から与えられる動作指令信号S1の指令内容に応じ赤色現示情報発信部6Aのリレー接点回路17Aに接点切替指令を出力して赤色現示情報発信部6Aの電波受信用ループコイル1Aと、タグ交信用ループコイル3Aに閉ループを構成させ、青色現示情報発信部6Bの電波受信用ループコイル1Bと、タグ交信用ループコイル3Bとによって形成されるループを開放する。
【0031】
信号機Sが赤色現示のときに、列車Tが地上子Eの位置を通過すると、列車Tの車上子Mから発せられている電波を電波受信用ループコイル1Aが受け、その電波は、タグ交信用ループコイル3Aを経て、赤信号用制御情報発信タグ2Aのアンテナ部9Aに受信されて電源形成部10Aに入力され、電源形成部10Aにおいて形成された電源が移動体制御情報書込・読取部11A及びインピーダンス切換部12Aに供給される。
【0032】
移動体制御情報書込・読取部11Aは、移動体制御情報記憶部8Aから、移動体制御データを読み出し、そのデータによる制御信号は、インピーダンス切換部12Aを介してアンテナ部9Aから13.56〔MHz〕の電波として発信され、当該移動体制御情報は、列車Tに搭載された車上子Mに受信され、情報受信装置15を介して運転制御装置16に取り込まれる(図2参照)。
【0033】
信号機Sが赤色現示のときに指定された時速や運行速度に関するブレーキパターンを指定する距離データ情報が移動体制御信号として車上に伝えられ、もし、列車Tが当該ブレーキパターンに反する運行速度で走行したものと列車Tの運転制御装置16が判断したとき、運転制御装置16は列車Tのブレーキを動作させる。
【0034】
逆に信号機が青色現示のときには、切換制御部13は、信号機制御装置7から与えられる動作指令信号S1の指令内容に応じて青色現示制御信号S22として青色現示情報発信部6Bに動作指令信号を出力し、コイルの閉ループを構成し、赤色現示情報発信部6Aのコイルの閉ループを開放する。信号機Sが青色現示のときに、列車2が地上子Eの位置を通過すると、列車Tの車上子Mから発せられている電波に応答して青色現示用情報発信部6Bの青信号用移動体制御情報発信タグ2Bに記憶されている移動体制御情報として列車Tが地上子Eを通過したときの運行パターンを指定する距離データが出力され、列車Tは、出力された制御情報に従って走行する。
【0035】
列車Tが軌道の所定位置に設置されている多数の地上子E上を順次通過しながら走行している状態において、列車Tの車上子Mは1つの地上子Eを通過するごとに、当該1つの地上子に対して電波を供給し、その応答として地上子Eから、前方信号機の赤信号、青信号に応じた移動体制御信号を受け取り、列車の運転制御が実行される。
【0036】
本発明によれば、汎用の無線IDタグを利用した簡易な構成によって、電波受信用ループコイルで車上子から発せられる電波を受信し、タグ交信用ループコイルでタグとの交信を行い、赤色現示用情報発信部6Aまたは青色現示用情報発信部6Bの移動体制御情報発信タグから放射される移動体制御情報データを選択的に移動体制御情報信号として送出し、安全かつ確実に移動体制御情報を車上子Mに伝送できる移動体制御情報伝送装置を実現できる。
【0037】
実験によれば、電波受信用ループコイルの大きさが長辺160cm、短辺7cmの長方形、巻き数が1巻き、タグ交信用ループコイルの大きさが長辺7cm、短辺5cmの長方形、巻き数が7巻き、接続ケーブルは、長さが2m、導電性材料は、外径0.5mmのエナメル銅線、容量は33pFの同調コンデンサを使用し、車上子と電波受信用ループコイルとの離隔が40cmの場合、電波受信用ループコイル長手方向に対して120cmの応答範囲が得られることを確認できた。
【実施例2】
【0038】
上述の実施例1においては、電波受信用ループコイルを赤色現示情報発信部と、青色現示情報発信部とに専用の電波受信用ループコイルを設けた例を説明したが、1個の電波受信用ループコイルを赤色現示情報発信部と、青色現示情報発信部とに共用することができる。図6は、実施例2の列車制御装置の構成を示す図である。この実施例において地上子Eは、赤色現示情報発信部26Aと、青色現示情報発信部26Bとからなっている点は実施例1と同じであるが、この実施例においては、赤色現示情報発信部26Aと、青色現示情報発信部26Bに電波受信用ループコイル21を共用し、その電波受信用ループコイル21をそれぞれの移動体制御情報発信部に備えた専用のタグ交信用ループコイルに選択的に接続して閉ループを構成する例である。
【0039】
図6において、共用する電波受信用ループコイル21は、地上子Eとして列車が信号機Sの現示に対応する運行パターンに従って運行することができる距離だけ離れた信号機Tの手前の位置のレール間(軌道間)に設置され、信号機制御装置27からの指令を受けた切換制御部33の制御によって電波受信用ループコイル21が赤色現示情報発信部26Aのタグ交信用ループコイル23A又は青色現示情報発信部26Bのタグ交信用ループコイル23Bと選択的に組み合わされる。この実施例においても、赤色現示情報発信部26Aの赤信号用制御情報発信タグ22A及び青色現示情報発信部26Bの青信号用制御情報発信タグ22Bには汎用の無線ICタグを用いている。
【0040】
図7に、電波受信用ループコイル21を選択的にタグ交信用ループコイル23A又は23Bに接続する要領を説明する。この実施例においても赤色現示情報発信部26Aと、青色現示情報発信部26Bとは同一構造のため、以下赤色現示情報発信部26Aの構成について説明し、青色現示情報発信部26Bについてはその説明を省略する。図7において、赤色現示情報発信部26Aは、電波受信用ループコイル21と、赤信号用制御情報発信タグ22Aと、タグ交信用ループコイル23Aとの組み合わせであり、電波受信用ループコイル21とタグ交信用ループコイル23A間は接続ケーブル25によって接続されてループを形成する。赤信号用制御情報発信タグ22Aは、汎用の無線ICタグであり、前実施例と同様に移動体制御情報記憶部28Aと、アンテナ部29Aと、電源形成部30Aと、移動体制御情報書込・読取部31Aと、インピーダンス切換部32Aとを有している。
【0041】
切換制御部33は、タグ読取制御部38と、リレー接点回路37とからなっている。タグ読取制御部38は、信号機制御装置27が、信号機Sに発する赤色現示あるいは青色現示指令に基づいてリレー接点回路37に動作指令信号を出力し、リレー接点回路37は、その指令を受け、接点切替により固定接点c1を可動接点a1に、固定接点c2を可動接点b1に導通させ、あるいは固定接点c1を可動接点a2に、固定接点c2を可動接点b2に導通させることにより赤色現示情報発信部26Aのタグ交信用ループコイル23Aまたは青色現示情報発信部26Bのタグ交信用ループコイル23Bを選択的に電波受信用ループコイル21に接続するものである。電波受信用ループコイル21には、同調コンデンサ24が並列に接続されている。
【0042】
実施例において、信号機Sは、信号機制御装置27の指令によって、赤色現示、黄色現示または青色現示を行い、信号機制御装置27は、信号機Sに対する信号現示指令と同時に切換制御部33に動作指令信号S1を出力する。この指令を受けて切換制御部33は赤色現示のときに赤色現示制御信号S21を出力してリレー接点回路37を動作させ、接点切り替えにより赤色現示情報発信部26Aのタグ交信用ループコイル23Aを電波受信用ループコイル21に接続して閉ループを構成し、青色現示情報発信部26Bのタグ交信用ループコイル23Bを電波受信用ループコイル21から切り離してループを開放する。
【0043】
信号機Sが赤色現示のときに、列車Tが地上子Eの位置を通過すると、列車Tの車上子Mから発せられている電波が電波受信用ループコイル21に送信され、その電波はタグ交信用ループコイル23Aを経て、赤信号用制御情報発信タグ22Aのアンテナ部29Aに受信され、受信した電源供給電波が電源形成部30Aに入力され、電源形成部30Aにて形成された電源が移動体制御情報書込・読取部31A及びインピーダンス切換部32Aに供給される。
【0044】
移動体制御情報書込・読取部31Aは、移動体制御情報記憶部28Aから、移動体制御データを読み出し、移動体制御信号は、インピーダンス切換部32Aを介してアンテナ部29Aから変調波として列車Tの車上子Mに伝送される。信号機Sが赤色現示を提示しているときには、青色現示情報発信部26Bのタグ交信用ループコイル23Bは電波受信用ループコイル21と切り離されてループは開放されるため、青色現示用の移動体制御情報は電波として送出されない。
【0045】
逆に、信号機Sが青色現示のときには、切換制御部33は、信号機制御装置27から与えられる動作指令信号S1を受けて青色現示制御信号S22を出力する。切換制御部33は、この指令を受けてリレー接点回路37を動作させ、接点の切り替えにより青現示情報発信部26Bのタグ交信用ループコイル23Bを電波受信用ループコイル21に接続して閉ループを構成し、赤色現示情報発信部26Aのタグ交信用ループコイル23Aを電波受信用ループコイル21から切り離す。
【0046】
したがって、信号機Sが青色現示のときに、列車Tが地上子Eの位置を通過すると、列車の車上子から発せられている電波に応答して青色現示情報発信部26Bから移動体制御情報として列車Tが地上子Eを通過したときの運行パターンを指定する距離データが出力される。
【0047】
以上実施例においては、地上子Eとして、2つの情報発信手段、すなわち赤色及び青色現示情報発信部を設けたものを適用したが、本発明はこれに限らず、その一方を省略するようにしても良く、あるいは逆に、さらに、信号機Sが黄色現示の際の情報発信手段を含めて3以上の情報発信部を設けることができる。
【0048】
上述の実施の形態においては、移動体制御情報発信タグとして、信号現示時に列車に対して出力すべき情報を格納した例を説明したが、移動体制御情報発信タグに格納する移動体制御情報は、信号現示時に列車に対して出力すべき情報に限られるものではなく、各種の制御情報を格納して発信できる。また、移動体制御情報発信タグは、電波を受信したときその平滑電力を電源として電波を当該伝送情報によって変調して伝送する、いわゆるパッシブ素子を用いた場合について述べたが、本発明はこれに代え、内部で常時発生させた情報電波を自動的に放射する、いわゆるアクティブ素子を用いた場合にも同じように適用できる。
【0049】
上述の実施の形態においては、移動体制御情報を伝送する搬送波として、HF帯に含まれる13.56[MHz]の電波を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、誘導結合を利用するその他の周波数を用いるようにしても良い。
【0050】
上述の実施の形態においては、切換制御部にリレー接点を用いた読取制御リレー接点回路によって有接点リレー回路を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電子式リレー回路を用いるようにしても、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0051】
上述の実施の形態においては、移動体としてレール上を走行する列車に移動体制御情報を伝達する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、一般的に予め敷設された走行ラインを移動体が移動するような場合について適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、軌道上に設置する地上子に適用して簡単な構造でATS−P方式の自動列車制御装置を実現できるが、自動列車制御装置に限らず、予め敷設された走行ライン上を移動体が移動するような設備に広く活用することができる。
- 【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による移動体制御情報伝送装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明による移動体制御情報伝送装置の実施例1を示す制御情報発信部の配置例を示す図である。
【図3】本発明による実施例1の移動体制御情報伝送装置の構成を示す図である。
【図4】電波受信用ループコイルと、移動体制御情報発信タグと、タグ交信用ループコイルとの組み合わせのうち、移動体制御情報発信タグと、タグ交信用ループコイルとを電磁的にシールドする場合の例を示す図である。
【図5】赤色現示情報発信部と、青色現示情報発信部とを切り替える切換制御部の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施例における移動体制御情報伝送装置の配置例を示す図である。
【図7】本発明による実施例2の移動体制御情報伝送装置の構成を示す図である。
【図8】従来の自動列車制御装置の1例を示す図である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
- 【公開番号】特開2010−111141(P2010−111141A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【発明の名称】移動体制御情報伝送装置
- 【出願番号】特願2008−282870(P2008−282870)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】
【識別番号】501284767
【氏名又は名称】株式会社ジェイアール総研電気システム
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
- 【代理人】
【識別番号】100075306
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 中
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