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電気転てつ機の転換動作の診断方法とその装置
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- 【要約】
【課題】 電気転てつ機を駆動するモータの回転数のみを検知することによって電気転てつ機の転換動作の状態を診断する。
【解決手段】 転てつ機駆動用モータの動作中の回転数を測定し、下式にしたがって計算して回転数負荷率を求める。
ただし、モータは誘導電動機であり、S2は、モータのトルク特性曲線から得られた停動トルク発生回転数、S0は、同期負荷回転数であり、得られた回転数負荷率の値によってモータの安定度を評価し、回転数負荷率の値の変化をもって電気転てつ機の転換時の負荷を診断し、回転数負荷率の値が予め定めた閾値を越えたときに転換異常を出力する。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気転てつ機駆動用モータの動作中の回転数を検出し、検出された動作中の回転数が誘導電動機のトルク曲線上の停動トルク発生回転数から無負荷回転数までの間の回転領域中のどの位置に属するかを判定して電気転てつ機のモータの安定度を評価することを特徴とする電気転てつ機の転換動作の診断方法。
【請求項2】
転てつ機駆動用モータの動作中の回転数を測定し、下式にしたがって回転数負荷率を求め、
ただし、モータは誘導電動機であり、S2は、モータのトルク特性曲線から得られた停動トルク発生回転数、S0は、無負荷回転数であり、
得られた回転数負荷率の値によってモータの安定度を評価し、回転数負荷率の値の変化をもって電気転てつ機の転換時の負荷を診断し、回転数負荷率の値が予め定めた閾値を越えたときに転換異常を出力することを特徴とする電気転てつ機の転換動作の診断方法。
【請求項3】
電気転てつ機駆動用モータの動作中の回転数を検知する手段と、前記モータの使用可能な回転領域を記憶する手段と、停動トルク発生回転数から無負荷回転数までのモータの使用可能な回転領域内で、検知された動作中のモータの回転数がどの位置に属するかを判定して電気転てつ機のモータの安定度を評価する手段とを有することを特徴とする電気転てつ機の転換動作診断装置。
【請求項4】
前記電気転てつ機の転換動作の状態を判断する手段は、モータの動作時の回転数における負荷率を計算し、負荷率の値の大小に基づいて電気転てつ機の転換動作の状態を判断するものであることを特徴とする請求項3に記載の電気転てつ機の転換動作診断装置。
【請求項5】
メモリを有し、転てつ機駆動用モータの回転数検知信号を入力とする入力CPUを備えた電気転てつ機の転換動作診断装置であって、
メモリは、予めモータの特性を測定して求めた無負荷回転数S0(rev/min)、停動トルク発生回転数S2(rev/min)を記憶しており、両回転数S0、S2は、CPUの指令を受けて読み出され、
CPUは、モータの回転数算出処理部と、負荷率算出処理部と、比較処理部を有し、
モータの回転数算出処理部は、入力されたモータの回転数検知信号を演算してモータの回転数を求め、算出されたモータの回転数を負荷率算出部に出力するものであり、
負荷率算出処理部は、算出されたモータの回転数S1と、メモリから読み出された両回転数S0、S2とを演算し、定期的に式、
によって回転数負荷率を求め、得られた回転数負荷率の値を比較処理部に出力するものであり、
比較処理部は、入力された回転数負荷率の値を、予め定めた閾値と比較し、入力された回転数負荷率の値が閾値との大小を判定し、入力された回転数負荷率の値が、予め定めた閾値を越えたときに、異常指示信号を出力するものであることを特徴とする電気転てつ機の転換動作診断装置。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気転てつ機の転換動作を診断する方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気転てつ機には、転換鎖錠器を使用した割り出し機能を有する電気転てつ機として例えばYS形電気転てつ機がある。YS形電気転てつ機は、転換鎖錠器(YS形)および回路制御器(YS形)と併用され、本線以外のポイントの転換に使用することを目的した電気転てつ機であり、背向割出しが可能である。
図3にYS形電気転てつ機の設置状態を示す。電気転てつ機は、転換装置であり、転換機構、減速機構及び転てつ機駆動用モータから構成されている。転てつ機駆動用モータには、単相誘導電動機が用いられる。転換機構は、転換歯車に固定された転換ローラとカムによりクランクを動かし、ポイントを転換するものである。また、転換鎖錠器は鎖錠装置であり、回路制御器が密着照査装置である。
【0003】
図3において、転換鎖錠器3は、Y形クランク5と絶縁リンク6とで構成され、Y形クランク5は90°回転した位置でばねによって保持されるようになっている。Y形クランク5と、同軸上に取り付けられたアーム8と、電気転てつ機4のクランク10とは、オフセットリンク9で接続されている。
オフセットリンク9は、電気転てつ機4のクランク10の動きを転換鎖錠器のアーム8に伝え、アーム8は、同軸上のY形クランク5を、左又は右方向に回転させて基本レール1a、1bに対してトングレール7a、7bの方向を転換し、ポイントを定位から反位に、あるいは反位から定位に転換する。
【0004】
ここで重要なことは、転換終了後、肘金およびクランクピン孔中心A,B点とクランク軸の中心C点が1直線となってトングレールと直角方向に死点を構成して対向鎖錠を確保することである。
【0005】
ところで、YS形に限らず、一般の電気転てつ機の転換動作の適否を判定する手段として転てつ機駆動用モータのトルクの大小をもって判断する方法が既に実用化されている。モータのトルクは、電圧−電流から得られたデータあるいは電圧―回転数から得られたデータをモータのトルク特性(テーブル)と比較し、あるいは特性計算によってモータトルクを算出するという方法である。
【0006】
特許文献1には、モータの駆動電流及び電圧からトルクの換算を行って動的負荷トルクを測定する方法が記載されている。また、特許文献2には、電動機の回転数、電圧を検知してトングレールの転換動作及びその変化状態を検知する方法が記載されている。さらに、特許文献3には、電気転てつ機が動作中における鎖錠杆の移動量と、電動機の動作電流及び転てつ機の負荷を計測して転てつ機の動作を監視する装置が記載されている。
【0007】
しかしながら、トルクは、電圧と電流、または電圧と回転数などによって算出されるため、トルクによって電気転てつ機のモータの安定度を評価するには、電圧と電流、または電圧と回転数などの数値を測定しなければならず、そのためにすくなくとも2つの測定用センサが必要となるだけでなく、センサがもつ性能には限界があって、測定精度を上げること必ずしも容易ではない。そのうえ、より、根本的な問題として、モータのトルクを求めるだけでは、必ずしも適正に電気転てつ機のモータの安定度を評価できることにはならないという問題である。たとえば、モータの出力トルク特性曲線上では、動作中の回転数で規定の出力トルクが得られることになるとしても、そのモータが出しうる最大の力より電気転てつ機の転換負荷が大きければ、当然モータは回転を停止することになる。
【0008】
現実問題としてモータが定格電圧で運転されているとは限らない。印加電圧が定格電圧より低下したような場合に、そのモータが出しうる最大の力は低下するのである。したがって、モータがポイントの転換に必要な余力を有しているか、どうかは、単にモータの負荷トルクの大小を監視するだけでなく、モータの出しうる最大の力に対する転換時の負荷の状態がわからなければ、モータの安定性、ひいては電気転てつ機の動作を正しく評価できないと言うことである。
【特許文献1】特開2000−168557
【特許文献2】特開平8−268282公報
【特許文献3】特開平4−56675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、トルクによって電気転てつ機の動作を評価しようとしたときに、電圧と電流、または電圧と回転数など複数のセンサが必要であるという点、センサがもつ性能には限界があり容易にトルクの測定精度を上げることが困難であるという点、より根本的な問題として、モータのトルクを求めるだけでは必ずしも適正に電気転てつ機のモータの安定度を評価できることにはならないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電気転てつ機の転換動作の診断方法および装置においては、電気転てつ機を駆動するモータの回転数のみを検知することによって電気転てつ機の転換動作の状態の判断を可能としたことをもっとも主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による電気転てつ機の転換動作診断装置によれば、回転数検知センサを用いて、電気転てつ機を駆動するモータの動作中の回転数を検知するだけであるため、高精度の測定が可能であり、ひいては転換状態判断の信頼性が高く、電気転てつ機の負荷が電気転てつ機を駆動するモータが出しうる最大の力に対する割合を算出することによって、モータがポイントの転換に必要な力を保有しているかどうかを含めて電気転てつ機の転換動作の状態を診断するができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
電気転てつ機の動作の成否を評価するという目的を、電気転てつ機を駆動するモータの動作中の回転数を検知し、動作中のモータの回転数と、予めモータの特性を測定して求めた無負荷回転数、停動トルク発生回転数とを演算処理し、回転数負荷率を求めることによって実現した。
【実施例1】
【0013】
本発明は、電気転てつ機駆動用モータの動作中の回転数を検出し、検出された動作中の回転数が単相誘導電動機のトルク曲線上の停動トルク発生回転数から無負荷回転数までの間の回転領域中のどの位置に属するかを判定して電気転てつ機の転換動作の状態を判断する方法であり、電気転てつ機駆動用モータの動作中の回転数を検知する手段と、前記モータの使用可能な回転領域を記憶する手段と、停動トルク発生回転数から無負荷回転数までのモータの使用可能な回転領域内で、検知された動作中のモータの回転数がどの位置に属するかを判定して電気転てつ機の転換動作の状態を判断する手段との組み合わせによって実現される。前記電気転てつ機の転換動作の状態を判断する手段は、モータの動作時の回転数における負荷率を計算し、負荷率の値の大小に基づいて電気転てつ機の転換動作の状態を判断するものである。
【0014】
図1は、本発明による電気転てつ機の転換動作診断装置の評価の原理を説明するための図である。図1(a)は、電気転てつ機を駆動するモータ(単相誘導電動機)に定格の電圧が印加されているときのモータのトルク特性曲線Aを示している。図において、誘導電動機のトルク特性は、概ね以下の通りである。すなわち、モータの電源スイッチを入れた直後に始動トルクTsを発生して回転が始まり、停動トルク(最大トルク)までは加速度的に加速する。
【0015】
やがて、停動トルク発生回転数(S2)以上の回転数となり、無負荷回転数(S0)までの間で、負荷の必要としているトルク(負荷トルク)と釣り合う回転数(動作中回転数(S1))で回転数が一定になる。モータ(単相誘導電動機)は、停動トルク発生回転数(S2)から、無負荷回転数(S0)までの間が使用可能な回転領域(モータの動作領域)である。
【0016】
この動作領域内で、検出された動作中の回転数が誘導電動機のトルク曲線上の停動トルク発生回転数から無負荷回転数までの間の回転領域中のどの位置に属するかを判定は、本発明においては、回転数負荷率Lを算出することによって行う。図1(a)において、出力トルクTnを与えるモータの動作中回転数をS1としたとき、回転数負荷率L(%)は次式で設定される。
停動トルク発生回転数(S2)から、無負荷回転数(S0)までの間で、停動トルク発生回転数(S2)に近い回転数の位置にマージンとして閾値が設定される。
【0017】
図1(b)は、モータの印加電圧が定格電圧より低下した場合のトルク特性曲線Bを示している。トルク特性曲線Bにおいて、出力トルクTnを与えるモータの動作中回転数をS1´としたとき、回転数負荷率L´(%)は、
となる。モータの印加電圧が定格電圧より低下した場合の動作中回転数S1´は、定格電圧時のモータの動作中回転数S1より小さい、すなわち、
(S0−S1´)>(S0−S1) ・・・ (3)
であるから、回転数負荷率L、L´は、
L´(%)>L(%) ・・・ (4)
となる。
【0018】
このように、出力トルクが同じであっても、モータ特性の低下に伴って回転数負荷率の値は上昇する。この回転数負荷率の上昇の程度によってモータの安定度は低下したと判断できる。
【0019】
本発明は、モータの回転数負荷率の変化を監視することによって、電気転てつ機の動作の状態を診断し、動作中のモータの回転数が停動トルク発生回転数に近づいたとき(正確には予め定めた閾値を越えたとき)に転換異常の発生を報知するものである。
【0020】
図2は、本発明による電気転てつ機の転換動作診断装置の構成を示すブロック図である。本発明による電気転てつ機の転換動作診断装置は、CPU(中央演算処理装置)11はメモリ12を有し、入力側にカウンタ13が接続されたものである。カウンタ13には、転てつ機駆動用モータの回転数検知信号が入力される。
【0021】
この実施例においては検出センサ14を用いて、転てつ機駆動用モータの出力軸に取り付けられたモータ歯車15の回転数を検知している。検出センサ14は、磁性金属を非接触で検出可能な近接センサで、モータ歯車15の歯を検出できるようにモータ歯車に近接させて配置している。検出センサ14は、磁性金属が近づくと出力トランジスタがONし、遠ざかるとOFFとなり、モータ歯車6の回転速度に比例した周期でON−OFFを繰り返し、歯の数を検出センサ14の出力信号としてカウンタ13に入力する。
【0022】
カウンタ13には、発振器15から、予め周期のわかっているクロック信号が入力され、検出センサ14の出力がON−OFFの繰り返し1周期あたりのクロック数を数え、その数をモータの回転数検知信号としてCPU11に入力する。CPU11は、モータの回転数算出処理部17と、負荷率算出処理部18と、比較処理部19とを有している。
【0023】
モータの回転数算出処理部17は、電気転てつ機駆動用モータの動作中の回転数を検知する手段として、カウンタ13から入力されたモータの回転数検知信号を演算してモータの回転数を求め、算出されたモータの回転数を負荷率算出部8に出力する。モータの回転数S1(rev/min)は、モータ歯車の歯数をNt、クロックの周期をTc(sec)、クロック数をNcとすると、次式、
から求めることができる。
【0024】
一方、メモリ12は、前記モータの使用可能な回転領域を記憶する手段であり、予めモータの特性を測定して求めた無負荷回転数S0(rev/min)、停動トルク発生回転数S2(rev/min)を記憶しており、両回転数S0、S2は、CPU1の指令を受けて読み出される。負荷率算出処理部8は、算出されたモータの回転数S1と、メモリ2から読み出された両回転数S0、S2とを演算して、定期的に次式(6)によって回転数負荷率を求め、得られた回転数負荷率の値を比較処理部9に出力する。
【0025】
比較処理部19は、停動トルク発生回転数から無負荷回転数までのモータの使用可能な回転領域内で、検知された動作中のモータの回転数がどの位置に属するかを判定して電気転てつ機の電気転てつ機の転換動作の状態を判断するものであり、入力された回転数負荷率の値を、予め定めた閾値と比較し、入力された回転数負荷率の値が閾値との大小を判定し、入力された回転数負荷率の値が閾値を越えたときに、異常指示信号を外部インターフェイス20に出力する。
【0026】
外部インターフェイス20は、異常指示信号出力を受けて外部装置(図示略)に警報を出力するほか、回転数負荷率の変化状況から求めた情報を外部装置に伝送したりすることもできる。なお以上の説明では便宜上、S0~S2の単位をrev/minとしたが、単位を(基準クロックの)クロック数にして、計算(式5)を省くこともできる。
【0027】
電気転てつ機の駆動用モータに用いる単相誘導電動機の動作領域は、図1に示したように停動トルクを発生する回転数から同期回転数までの範囲である。図1(a)、図1(b)を比較して明らかなようにモータの使用可能な回転領域(動作領域)は、印加電圧が降下(モータの特性が低下)しても常に一定であるのに対し、出力トルク(定格トルク)を発生するために必要な動作中のモータ回転数(S1)は、印加電圧が下降するにしたがって減少する。したがって動作中の回転数を常時監視し、回転数負荷率を求めることによってモータの安定性、すなわち、電気転てつ機の転換動作状態の正否を評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、YS形電気転てつ機に限らず、単相誘導電動機を使用した電気転てつ機に適用し、動作中の回転数を変化を監視することによって、モータの安定動作の程度を評価し、電気転てつ機の転換動作状態を診断することができる。
- 【公開番号】特開2010−818(P2010−818A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【発明の名称】電気転てつ機の転換動作の診断方法とその装置
- 【出願番号】特願2008−158744(P2008−158744)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
- 【代理人】
【識別番号】100075306
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 中
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