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乗物のバンク角検知装置およびヘッドランプ装置
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- 【要約】
【課題】バンク開始時やスラローム走行時を含む多様な走行状況の下でバンク角の推定精度を向上できる乗物のバンク角検知装置およびそれを用いたヘッドランプ装置を提供する。
【解決手段】自動二輪車の前後軸心C1に対して左右軸心C2回りに予め定めた傾斜角度θで傾斜配置された角速度センサ55と、自動二輪車の走行速度を検出する速度センサ57と、角速度センサ55により検出された角速度ωと傾斜角度θと自動二輪車の速度vとに基づいて得られた前後軸心C1回りの角速度を推定した推定ロールレートPを時間積分することによって自動二輪車のバンク角を推定した推定バンク角δを求めるバンク角推定手段59とを備えている。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の前後軸心に対して左右軸心回りに予め定めた傾斜角度θで傾斜配置された角速度センサと、
乗物の走行速度vを検出する速度センサと、
前記角速度センサにより検出された角速度ωと前記傾斜角度θと乗物の走行速度vとに基づいて得られた前後軸心回りの角速度を推定した推定ロールレートPを時間積分することによって乗物のバンク角を推定した推定バンク角δを求めるバンク角推定手段と、
を備えたバンク角検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記バンク角推定手段は、前記推定ロールレートPを時間積分して推定バンク角δを出力する積分回路と、前記推定バンク角δと前記走行速度vとに基づき乗物の上下軸回りの角速度を推定した推定ヨーレートを求め、この推定ヨーレートにcosθを乗じてヨーレート成分を求めて、このヨーレート成分を前記角速度ωに負帰還させるフィードバック回路とを有するバンク角検出装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記バンク角推定手段は、δ‘を以前に算出された推定バンク角、gを重力加速度としたとき、前記傾斜角度θおよび乗物の走行速度vを用いて、前記推定バンク角δを
【数4】
により算出するバンク角検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記バンク角推定手段は、さらに、乗物の角速度がゼロとなる、予め定める角速度ゼロ条件を満足すると前記角速度をゼロに置き換えるドリフト除去回路を有するバンク角検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のバンク角検出装置と、
車体の前方を照射するヘッドランプと、
前記ヘッドランプの照射範囲を変更する配光調整機構と、
前記推定バンク角に基づき前記配光調整機構を制御し、旋回走行時に旋回方向内側の遠
方を照射するように前記照射範囲を変更させる配光制御手段と、
を備えたヘッドランプ装置。
【請求項6】
請求項5において、さらに、前記配光制御手段から出力されるランプ速度指令値を時間積分してランプ角度を求めるランプ速度積分回路と、
前記推定バンク角δと前記ランプ角度との差分を求める第1減算回路と、を備え、
前記配光制御手段は、前記第1減算回路の出力値に基づいて前記配光調整機構を制御するヘッドランプ装置。
【請求項7】
請求項5において、前記配光制御手段は、前記推定ロールレートPをランプ速度指令として前記配光調整機構を制御するヘッドランプ装置。
【請求項8】
請求項5において、
さらに、ランプ速度指令値を時間積分してランプ角度を求めるランプ速度積分回路を備え、
前記バンク角推定手段は、前記推定ロールレートPを時間積分して前記推定バンク角δを求める角速度積分回路を有し、
前記配光制御手段は、前記推定バンク角δと前記ランプ角度との差分を求める第2減算回路と、この第2減算回路の出力を予め定めた時間設定値で除算する除算回路と、前記推定ロールレートPに前記除算回路の出力を加算して前記ランプ速度指令値を生成する加算回路とを有する、
ヘッドランプ装置。
【請求項9】
乗物の前後軸心に対して左右軸心回りに予め定めた傾斜角度θで傾斜配置された角速度センサを用いて、乗物のバンク角を求める方法であって、
乗物の前後軸心回りの角速度であるロールレートPを含むロール成分P・sinθと、乗物の上下軸回りの角速度であるヨーレートRを含むヨー成分R・cosθとが合成された角速度ωを、1つのセンサを用いて予め定められた時間間隔ごとに順次検出する角速度検出工程と、
乗物の走行速度vを検出する速度検出工程と、
注目する時点tnでの乗物の推定バンク角δnを求めるに当たって、注目する時点tnより以前の時点tn−Aで求められた乗物の推定バンク角δn−Aでかつ注目する時点tnでの乗物の速度vで乗物が傾斜した場合のヨーレートRn−Aを算出し、乗物がヨーレートRで旋回する場合に前記角速度センサで検出されるヨー成分Rn−A・cosθを算出する推定工程と、
注目する時点tnでの角速度ωnから、前記ヨー成分Rn−A・cosθを減算してロール成分Pn・sinθを求め、ロール成分Pn・sinθからロールレートPnを抽出する抽出工程と、
予め定めた時点toから注目する時点tnまでに順次抽出したロールレートPを合計して注目する時点tnでの乗物の推定バンク角を算出するバンク角算出工程と、
を備えたバンク角検出方法。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動二輪車、小型滑走艇のような乗物のコーナリング時の乗物バンク角を精度よく検知できるバンク角検知装置およびこれを用いたヘッドランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の走行においては、車体をバンクさせてコーナリングする。ところが、従来の一般的な自動二輪車のヘッドランプは車体に固定されていて、車体がバンクすると、これに合わせてヘッドランプの光軸も傾斜するため、夜間の走行においてコーナリングするとき、ライダーの目線が向く進行方向の内側へのヘッドライトの配光が減少し、進行方向前方の視野が狭くなる。
【0003】
すなわち、自動二輪車が直進するとき、搭乗したライダーからの前方視を示す図13のように、ヘッドランプの照射範囲(配光)Aは水平線Hに平行な左右方向に広がった照射範囲となるが、例えば図14のように、自動二輪車がカーブした車線90に沿って矢印Pで示す左側に進行方向を変えるとき、車体を左側にバンクさせてコーナリングするので、ヘッドランプの照射範囲Aが直進の場合に比べて左下がりに傾斜する。その結果、ライダーの目線が向く旋回方向の内側(同図に破線の円で囲む部分B)、つまり進行先となるエリアへのヘッドランプの照射範囲Aが少なくなり、事実上、進行方向前方の視野が狭くなる。
【0004】
このような課題の解決を図るヘッドランプ装置として、バンク角検出手段により検知された車体のバンク角に基づき、ヘッドランプのレンズおよび発光体をバンクした方向と逆方向に回転させるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−155404号公報
【0006】
前記特許文献1のヘッドランプ装置では、バンク角検出手段として、ジャイロのようなヨーレートセンサを用いており、バンク角δは、自動二輪車の車速をv、重力加速度をg、ヨーレートをRとすると、式(1)より得られる。
δ=sin-1(v・R/g) ・・・・・・(1)
このようにして求められたバンク角δに応じた角度だけバンク角δと反対方向にヘッドランプを回転させることで、視野の広いヘッドランプの照射範囲を得ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記式(1)で求められるバンク角δは車体に加わる遠心力と重力成分がつり合う定常旋回時のバンク角である。つまり、バンク開始時やスラローム時の過渡的なバンク角を正確に表現したものではない。このため、(1)式で求められるバンク角δに従いランプを回転させるとライダーに対して不自然感ないし不快感を与えることがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、バンク開始時やスラローム走行時を含む多様な走行状況の下でバンク角の推定精度を向上できる乗物のバンク角検知装置およびそれを用いたヘッドランプ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るバンク角検出装置は、乗物の前後軸心に対して左右軸心回りに予め定めた傾斜角度θで傾斜配置された角速度センサと、乗物の走行速度を検出する速度センサと、前記角速度センサにより検出された角速度ωと前記傾斜角度θと乗物の走行速度vとに基づいて得られた前後軸心回りの角速度を推定した推定ロールレートPを時間積分することによって乗物のバンク角を推定した推定バンク角δを求めるバンク角推定手段とを備えている。
【0010】
この構成によれば、ロールレートを推定して、この推定ロールレートPを時間積分することによって乗物のバンク角を推定しているので、バンク開始時やスラローム走行時を含む多様な走行条件においてバンク角を精度よく推定できる。また、角速度センサは1つで足りるので、部品点数の増加を抑制して構成が簡略化され、製造コストも抑えることができる。
【0011】
本発明において、前記バンク角推定手段は、前記推定ロールレートPを時間積分して推定バンク角δを出力する積分回路と、前記推定バンク角δと前記速度vとに基づき乗物の上下軸回りの角速度を推定した推定ヨーレートを求め、この推定ヨーレートにcosθを乗じてヨーレート成分を求め、このヨーレート成分を前記角速度センサの検出値ωに負帰還させるフィードバック回路とを有することが好ましい。この構成によれば、角速度センサを用いたことによる数値積分誤差、およびセンサドリフトによる推定誤差を、前記推定ヨーレートに基づいて補正しているので、時間の経過と共に誤差が蓄積されるのを防ぎ、バンク角を精度よく推定できる。
【0012】
本発明において、前記バンク角推定手段は、δ‘を以前に算出された推定バンク角、gを重力加速度としたとき、前記傾斜角度θおよび乗物の走行速度vを用いて、前記推定バンク角δを
【0013】
【数1】
により算出することができる。
【0014】
本発明において、前記バンク角推定手段は、さらに、予め定める角速度ゼロ条件を満足すると前記角速度ωをゼロと置き換えるドリフト除去回路を有することが好ましい。この構成によれば、角速度センサのドリフトによる誤差が解消され、バンク角をさらに精度よく推定できる。例えば、角速度ゼロ条件は、一定時間以上直進走行する場合、走行を停止した場合、エンジンを停止した場合などの条件として設定できる。
【0015】
本発明に係るヘッドランプ装置は、本発明のバンク角検出装置と、車体の前方を照射するヘッドランプと、前記ヘッドランプの照射範囲を変更する配光調整機構と、前記推定バンク角に基づき前記配光調整機構を制御し、旋回走行時に旋回方向内側の遠方を照射するように前記照射範囲を変更させる配光制御手段とを備えている。
【0016】
この構成によれば、上述のように、バンク角検知装置により、多様な走行条件においてバンク角が正確に求められるので、配光制御手段は、検知された車体バンク角に基づき配光調整機構を制御して、適切にヘッドランプの照射範囲(配光)を変更できる。例えば、配光調整機構は、ヘッドランプの照射範囲をこれの中心軸のまわりに、バンクした方向と逆方向に推定バンク角の大きさに応じた角度だけ回転させる。これにより、旋回走行時にライダーの目線が向く旋回方向の内側へのヘッドランプの配光が多くなって、広い視野を確保できる。
【0017】
本発明において、さらに、前記配光制御手段から出力されるランプ速度指令値を時間積分してランプ角度を求めるランプ速度積分回路と、前記推定バンク角δと前記ランプ角度との差分を求める第1減算回路とを備え、前記配光制御手段は、前記第1減算回路の出力値に基づいて前記配光調整機構を制御することが好ましい。この構成によれば、ランプ角度、すなわちヘッドランプの照射範囲(配光範囲)を、バンク角推定結果に応じて精度よく変更させることができる。
【0018】
本発明において、前記配光制御手段は、前記推定ロールレートPをランプ速度指令として前記配光調整機構を制御することが好ましい。この構成によれば、ヘッドランプの角度の推定バンク角に対する応答性が向上する。すなわち、ヘッドランプの角度が推定バンク角に対して遅れることを抑えることができる。
【0019】
本発明において、さらに、ランプ速度指令値を時間積分してランプ角度を求めるランプ速度積分回路を備え、前記バンク角推定手段は、前記推定ロールレートPを時間積分して前記推定バンク角δを求める角速度積分回路を有しており、前記配光制御手段は、前記推定バンク角δと前記ランプ角度との差分を求める第2減算回路と、この第2減算回路の出力を予め定めた時間設定値で除算する除算回路と、前記推定ロールレートPに前記除算回路の出力を加算して前記ランプ速度指令値を生成する加算回路とを有することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、時間設定値を適切に設定することで推定バンク角δに対するヘッドランプの角度の的確な追従性と速やかな応答性を両立することができる。ここで、ランプ速度指令値の時間積分により求めたランプ角度は、配光調整機構に取り付けられたエンコーダの角度値から求めてもよい。
【0021】
本発明に係るバンク角検出方法は、乗物の前後軸心に対して左右軸心回りに予め定めた傾斜角度θで傾斜配置された角速度センサを用いて、車体のバンク角を求める方法であって、乗物の前後軸心回りの角速度であるロールレートPを含むロール成分P・sinθと、乗物の上下軸回りの角速度であるヨーレートRを含むヨー成分R・cosθとが合成された角速度ωを、1つのセンサを用いて予め定められた時間間隔ごとに順次検出する角速度検出工程と、乗物の走行速度vを検出する速度検出工程と、注目する時点tnでの乗物の推定バンク角δnを求めるに当たって、注目する時点tnより以前の時点tn−Aで求められた乗物の推定バンク角δn−Aかつ注目する時点tnでの乗物の速度vで乗物がバンクした場合のヨーレートRn−Aを算出し、乗物がヨーレートRで旋回する場合に前記角速度センサで検出されるヨー成分Rn−A・cosθを算出する推定工程と、注目する時点tnでの角速度ωnから、前記ヨー成分Rn−A・cosθを減算し、ロール成分Pn・sinθを求め、ロール成分Pn・sinθからロールレートPnを抽出する抽出工程と、予め定めた時点toから注目する時点tnまでに順次抽出したロールレートPを積分して注目する時点tnでの乗物の推定バンク角を算出するバンク角算出工程とを備えている。
【0022】
この構成によれば、上述のように、推定ロールレートPを時間積分することによって乗物のバンク角を推定しているので、多様な走行条件においてバンク角を正確に求めることができる。また、角速度センサを用いたことによる数値積分誤差、およびセンサドリフトによる推定誤差を前記ヨーレートにて補正しているから、時間の経過と共に誤差が蓄積されるのを防いで、バンク角を一層正確に算出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のバンク角検出装置またはそれを用いたヘッドランプ装置によれば、ロールレートを推定して、この推定ロールレートPを時間積分することによって乗物のバンク角を推定しているので、バンク開始時やスラローム走行時を含む多様な走行条件においてバンク角を精度よく推定できる。また、角速度センサが1つで足りるので、部品点数の増加を抑制して構成が簡略化され、製造コストも抑えることができる。
- 【公開番号】特開2011−11582(P2011−11582A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【発明の名称】乗物のバンク角検知装置およびヘッドランプ装置
- 【出願番号】特願2009−155408(P2009−155408)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
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