自動二輪車の蒸発燃料処理装置
- 【要約】
【課題】レイアウト自由度を向上させることができる自動二輪車の蒸発燃料処理装置を提供する。
【解決手段】車体フレームに配設された燃料タンク38上部に気液分離器38Hを有し、気液分離器38Hで分離した蒸発燃料をキャニスターに101導くチャージ配管102を、気液分離器38Hから延びて燃料タンク38内を通過し、燃料タンク38の側壁のチャージ配管貫通部38Iを貫通して外部に出てキャニスター101に接続されるようにした。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに配設された燃料タンク上部に気液分離器を有し、前記気液分離器で分離した蒸発燃料をチャージ配管を介してキャニスターに導く自動二輪車の蒸発燃料処理装置において、
前記チャージ配管は、前記気液分離器から延びて、前記燃料タンク内を通過し、前記燃料タンクの側壁のチャージ配管貫通部を貫通して外部に出て、前記キャニスターに接続されることを特徴とする自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記チャージ配管貫通部は、車体側方を覆うサイドカウルによって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
前記チャージ配管貫通部は、乗員のニーグリップ部より上方の前記燃料タンクの前記側面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
前記チャージ配管貫通部は、前記燃料タンクの前記側面の最外張り出し部よりも車体内側になる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
前記チャージ配管は、前記燃料タンク内で少なくとも1つ以上の屈曲部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項6】
前記チャージ配管は、前記燃料タンクの前記側面に対して傾斜して貫通していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項1項に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項7】
前記チャージ配管は、前記蒸発燃料の移動方向に沿っての下流側が下方に位置するように傾斜していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項8】
前記チャージ配管貫通部は、前輪の接地点とハンドルバー端部とを結んだ平面より車体内側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項9】
前記チャージ配管貫通部は、前記燃料タンクの側壁に、前記チャージ配管の外径よりも大径の貫通孔を設け、この貫通孔の周囲に、前記チャージ配管の傾斜に沿って斜めに延びて前記貫通孔と連通すると共に前記貫通孔の外形よりも大径のボス孔を有する補強板を接合し、前記チャージ配管を前記貫通孔および前記ボス孔に貫通させ、ロウ付けされて形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
【請求項10】
前記車体フレームに前記燃料タンクとヘッドライトとを配設すると共に、前記サイドカウルを構成するフロントサイドカウルが車幅方向に膨出凸部を有し、側面視前記ヘッドライトと前記燃料タンク間で、前記フロントサイドカウル内側の膨出凹部に、燃料タンクからの蒸発燃料を貯留するキャニスターを配置したことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の自動二輪車の蒸発燃料処理装置。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内部で発生した蒸発燃料を燃料タンク外部に導くチャージ配管を備えた自動二輪車の蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車において、燃料タンクに貯留されたガソリン等の燃料は、その一部が蒸発して蒸発燃料となる。この蒸発燃料を外気に放出することなく再利用するようにした装置が蒸発燃料処理装置として知られている。
このような蒸発燃料処理装置のうち、自動二輪車用のものとして、車体にキャニスターやチャージ配管を設ける構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−340281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、引用文献1によれば、チャージ配管は、その一部が燃料タンク内部に配置されていて、燃料タンクの下部から燃料タンク外部に出されているため、燃料タンク下方の他部品との位置関係を考慮しなければならず、レイアウト自由度に制約がある。一方、チャージ配管を燃料タンク上方から出す場合には、乗員によるハンドル操作等の妨げにならない等、乗員との位置関係を考慮することが必要となり、同じくレイアウト自由度に制約がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、レイアウト自由度を向上させることができる自動二輪車の蒸発燃料処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、車体フレームに配設された燃料タンク上部に気液分離器を有し、前記気液分離器で分離した蒸発燃料をチャージ配管を介してキャニスターに導く自動二輪車の蒸発燃料処理装置において、前記チャージ配管は、前記気液分離器から延びて、前記燃料タンク内を通過し、前記燃料タンクの側壁のチャージ配管貫通部を貫通して外部に出て、前記キャニスターに接続されることを特徴とする。
この発明によれば、チャージ配管が燃料タンクの側壁のチャージ配管貫通部を貫通して外部に出るので、燃料タンクの上方や下方からチャージ配管を出す場合と異なり、乗員や燃料タンク下方の他部品との位置関係を考慮する必要がなく、レイアウト自由度が向上する。
【0006】
また、上述構成において、前記チャージ配管貫通部は、車体側方を覆うサイドカウルによって覆われるようにしてもよい。この構成によれば、チャージ配管貫通部は、サイドカウルによって覆われることにより保護され、また、サイドカウルで隠されるので外観がよくなる。
また、上記構成において、前記チャージ配管貫通部は、乗員のニーグリップ部より上方の前記燃料タンクの前記側面に設けられるようにしてもよい。この構成によれば、チャージ配管貫通部は、乗員のニーグリップ部より上方の燃料タンクの側面に設けられているので、乗員の足が当たらないようにしてチャージ配管貫通部を保護することができる。
【0007】
また、上記構成において、前記チャージ配管貫通部は、前記燃料タンクの前記側面の最外張り出し部よりも車体内側になる位置に配置されるようにしてもよい。この構成によれば、チャージ配管貫通部は、燃料タンクの側面の最外張り出し部よりも車体内側になる位置に配置されているので、車体側方から外力が作用した場合に、チャージ配管貫通部に外力が作用しにくい。
また、上記構成において、前記チャージ配管は、前記燃料タンク内で少なくとも1つ以上の屈曲部を有するようにしてもよい。この構成によれば、チャージ配管は、燃料タンク内で少なくとも1つ以上の屈曲部を有するので、燃料タンクに対して外力が作用した場合に、その一部を屈曲部で吸収して、チャージ配管貫通部や気液分離器との接続部に作用する外力を低減させることができる。
【0008】
また、上記構成において、前記チャージ配管は、前記燃料タンクの前記側面に対して傾斜して貫通するようにしてもよい。この構成によれば、チャージ配管は、燃料タンクの側壁に対して傾斜して貫通するので、チャージ配管が車幅方向に突出しないようにして、コンパクトな車体レイアウトにできる。また、傾斜により、側面から作用する外力がチャージ配管貫通部に集中しないようにすることができる。
また、上記構成において、前記蒸発燃料の移動方向に沿っての下流側が下方に位置するように傾斜しているとよい。この構成によれば、チャージ配管内で液溜まりしないようにすることができる。
【0009】
また、上記構成において、前記チャージ配管貫通部は、前輪の接地点とハンドルバー端部とを結んだ平面より車体内側に配置されるようにしてもよい。この構成によれば、チャージ配管貫通部は、前輪の接地点とハンドルバー端部とを結んだ平面より車体内側に配置されているので、車体側方から外力が作用した場合に、外力がチャージ配管貫通部に作用しにくい。
また、上記構成において、前記チャージ配管貫通部は、前記燃料タンクの側壁に、前記チャージ配管の外径よりも大径の貫通孔を設け、この貫通孔の周囲に、前記チャージ配管の傾斜に沿って斜めに延びて前記貫通孔と連通すると共に前記貫通孔の外形よりも大径のボス孔を有する補強板を接合し、前記チャージ配管を前記貫通孔および前記ボス孔に貫通させ、ロウ付けされて形成されるようにしてもよい。この構成によれば、チャージ配管貫通部の剛性を確保できると共に、チャージ配管の周囲の隙間を一括ロウ付けで容易かつ確実に塞ぐように管理できるので、気密性を確保できる。
【0010】
また、上記構成において、前記車体フレームに前記燃料タンクとヘッドライトとを配設すると共に、前記サイドカウルを構成するフロントサイドカウルが車幅方向に膨出凸部を有し、側面視前記ヘッドライトと前記燃料タンク間で、前記フロントサイドカウル内側の膨出凹部に、燃料タンクからの蒸発燃料を貯留するキャニスターを配置してもよい。この構成によれば、フロントサイドカウル内側の膨出凹部にキャニスターを配置することにより、車体のレイアウトの自由度を向上させ、ヘッドライトと燃料タンク間のデッドスペースを有効利用でき、また、フロントサイドカウルで覆ってキャニスターを保護し、さらに、直射日光,排気熱,走行風等に起因する外部からの熱がキャニスターに伝わりにくくして、キャニスターの吸脱性能を良好に確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、チャージ配管を、燃料タンクの側壁のチャージ配管貫通部を貫通させて外部に出すようにしたので、燃料タンクの上方や下方からチャージ配管を出す場合と異なり、乗員や燃料タンク下方の他部品との位置関係を考慮する必要がなく、レイアウト自由度を向上させることができる。
また、チャージ配管貫通部をサイドカウルによって覆うようにすれば、サイドカウルによって、チャージ配管貫通部を保護し、また、外観をよくすることができる。
また、チャージ配管貫通部を、乗員のニーグリップ部より上方の燃料タンクの側面に設けるようにすれば、乗員の足が当たらないようにしてチャージ配管貫通部を保護することができる。
【0012】
また、チャージ配管貫通部を、燃料タンクの側面の最外張り出し部よりも車体内側に配置すれば、車体側方から外力が作用した場合に、外力がチャージ配管貫通部に伝わりにくくすることができる。
また、チャージ配管が燃料タンク内で少なくとも1つ以上の屈曲部を有するようにすれば、燃料タンクに対して外力が作用した場合に、その一部を屈曲部で吸収して、チャージ配管貫通部や気液分離器との接続部に作用する外力を低減させることができる。
また、チャージ配管が燃料タンク側壁に対して傾斜して貫通するようにすれば、チャージ配管が車幅方向に突出しないようにして、コンパクトな車体レイアウトにできる。また、傾斜により、側面から作用する外力がチャージ配管貫通部に集中しないようにすることができる。
【0013】
また、チャージ配管を、蒸発燃料の移動方向に沿っての下流側が下方に位置するように傾斜させれば、チャージ配管内で液溜まりが起きにくいようにすることができる。
また、チャージ配管貫通部を、前輪の接地点とハンドルバー端部とを結んだ平面よりも車体内側に配置すれば、車体側方から外力が作用した場合に、その外力がチャージ配管貫通部に作用しにくくすることができる。
また、チャージ配管貫通部は、燃料タンクの側壁に、チャージ配管の外径よりも大径の貫通孔を設け、この貫通孔の周囲に、チャージ配管の傾斜に沿って斜めに延びて上記貫通孔と連通すると共に貫通孔の外形よりも大径のボス孔を有する補強板を接合し、チャージ配管を上記貫通孔および上記ボス孔に貫通させ、ロウ付けされて形成すれば、チャージ配管貫通部の剛性を確保できると共に、チャージ配管の周囲の隙間を一括ロウ付けで容易かつ確実に塞ぐように管理できるので、気密性を確保できる。
また、側面視ヘッドライトと燃料タンク間で、フロントサイドカウル内側の膨出凹部にキャニスターを配置すれば、ヘッドライトと燃料タンク間のデッドスペースを有効に利用でき、レイアウトの自由度を向上させ、フロントサイドカウルによって外力からキャニスターを保護し、直射日光等の外部からの熱の影響を少なくしてキャニスターの吸脱性能を良好に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、添付した図面を参照して説明する。なお説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、車体に対してのものとする。また、図中においては、適宜、車体の前方を矢印F、後方を矢印B、左方を矢印L、右方を矢印R、上方を矢印U、下方を矢印Dで示す。なお、左右方向については適宜、「車幅方向」という。
図1は、本発明の実施形態に係る蒸発燃料処理装置を備えた自動二輪車の側面図であり、また、図2は、その正面図である。
この自動二輪車10は、図1に示すように、車体フレーム11と、この車体フレーム11の前端部に取り付けられたヘッドパイプ12によって回動自在に支持された左右一対のフロントフォーク13,13(ただし、図1では、左側のフロントフォーク13のみを図示している。)と、これらフロントフォーク13,13の上端部を支持するトップブリッジ14に取り付けられた操舵用のハンドル15と、フロントフォーク13,13の下端部に回転自在に支持された前輪16と、車体フレーム11に支持されたエンジン17と、このエンジン17に排気管18を介して連結された排気マフラー19と、車体フレーム11の後下部のピボット20によって上下方向揺動自在に支持されたリアスイングアーム21と、このリアスイングアーム21の後端部に回転自在に支持された後輪22と、リアスイングアーム21と車体フレーム11との間に介装されたリアクッション23とを備えており、さらに、車体前部側方を車幅方向外側から覆うフロントサイドカウル(サイドカウル)24を備えている。
【0015】
図3は、フロントサイドカウル24を取り外した状態の車体前部の左側方の拡大図であり、図4は、同じく車体前部の右側方の拡大図である。
図4に示すように、自動二輪車10は、キャブレター25と、ラジエータ26とを備えており、さらに、図1,図2,図3に示すように、車体前部の左側に、蒸発燃料処理装置100の一部を構成するキャニスター101を備えている。
図1に示すように、車体フレーム11は、ヘッドパイプ12から緩やかに後ろ下がりで後方に延びた後、湾曲部31Aを介して略下方に延びるメインフレーム31と、同じくヘッドパイプ12からメインフレーム31の下方を、後ろ斜め下方に延びた後、湾曲部32Aを介して略水平に後方に延びるダウンチューブ32とを有している。メインフレーム31の下端には、ピボットプレート33が配設されていて、このピボットプレート33には、リアスイングアーム21を揺動自在に支持するピボット20が設けられている。
【0016】
また、メインフレーム31の湾曲部31Aには、後方に延びるシートレール34が連結されている。シートレール34は、後ろ上がりに緩やかに傾斜しており、ピボットプレート33から後ろ斜め上方に延びるステー35によって補強されている。シートレール34の後端側上方には、同乗者が把持するグラブレール36が配設されている。また、シートレール34上には、乗員及び同乗者が着座するシート37が支持されている。このシート37の前方、すなわちメインフレーム31におけるヘッドパイプ12と湾曲部31Aとの間に位置する部分には、燃料タンク38が支持されている。なお、燃料タンク38については後に適宜説明する。上述のピボットプレート33の下端近傍には、着座姿勢の乗員が足を乗せるための折りたたみ式のステップ39が取り付けられ、また、メインスタンド40、サイドスタンド41が揺動自在に取り付けられている。図1では、メインスタンド40が掛けられて、サイドスタンド41が外された状態を図示している。
【0017】
エンジン17は、燃料タンク38の下方、すなわち、メインフレーム31とダウンチューブ32とに囲まれた空間に配置されている。なお、図示例のエンジン17は、空冷V型2気筒のエンジンである。エンジン17は、エンジンマウント42を介してダウンチューブ32によって支持されており、上述のピボットプレート33に支持されたクランクケース17Aと、このクランクケース17Aの前部上方及び後部上方に連結されたシリンダブロック17B,17Bと、これらシリンダブロック17B,17Bの上部に連結されたシリンダヘッド17C,17Cと、これらシリンダヘッド17C,17Cの上部に連結されたヘッドカバー17D,17Dとを有している。
【0018】
シリンダブロック17B及びシリンダヘッド17Cの周囲には空冷用フィンが設けられている。シリンダブロック17Bには、シリンダ内にピストンが往復自在に収納されていて、クランクケース17A内には、ピストンにコンロッドを介して連結されたクランク軸やエンジン出力軸17E(ただし、図1では、クランクケースカバーの、エンジン出力軸17Eに対応する部分を示している。)が軸支されると共に、クランク軸とエンジン出力軸との間の動力伝達機構を構成するクラッチ機構や変速機等が収納されている。上述のエンジン出力軸17Eに装着されたスプロケットと、後輪22に装着されたスプロケット43との間には、ドライブチェーン44(図1では二点鎖線で図示している。)が掛け渡されていて、エンジン17の回転は、動力伝達機構等を介して、後輪22に伝達されるようになっている。
また、シリンダヘッド17C,17Cには排気管18が接続され、また、シリンダヘッド17C,17C近傍には、エアクリーナーやキャブレター25(図4参照)が配設されている。キャブレター25には、燃料タンク38内の燃料が供給され、エアクリーナーからの空気に燃料を混合させてエンジン17に供給している。なお、キャブレター方式に代えて、インジェクション方式を採用してもよい。
【0019】
上述構成の自動二輪車10には、図1に示すように、車体を覆う種々の車体カバー50が設けられている。車体カバー50としては、車体の前部を覆うフロントカウル(カウル)51、車体の側部を覆う左右一対のサイドカバー52,52(ただし、図1では左側のサイドカバー52のみを図示している。)、車体後部を覆うリアシートカウル53があり、さらに、前輪16を覆うフロントフェンダー54と、後輪を覆うリアフェンダー55とがある。
フロントカウル51については、後に詳述する。
サイドカバー52は、側面視において、シート37の下方で、かつエンジン17の後方に配設されている。すなわち、サイドカバー52は、シート37の前後方向の略中央からシートの後方に延びるように配置されていて、シート37の下端縁とステー35との間の空間を覆っている。
リアシートカウル53は、シートレール34の後端側に固定されている。リアシートカウル53は、サイドカバー52の後端に接続されて、後方に延設され、シートレール34の後部を覆っている。リアシートカウル53には、リアウインカー56が一体的に組み込まれている。
フロントフェンダー54は、フロントフォーク13,13のアウターチューブ57に固定されて、前輪16の上側を覆っている。
リアフェンダー55は、シートレール34の後部の下側に取り付けられていて、後輪22の上方を覆っている。
【0020】
図1,図2に示すように、フロントカウル51は、車体前部中央を覆うフロントアッパカウル60と、このフロントアッパカウル60の側方に設けられて車体前部側方を覆う左右一対のフロントサイドカウル24,24とを備えて構成されている。
図5は、車体フレーム11に支持された燃料タンク38及びカウルステー61等の上面図である。
フロントカウル51は、図5に示すように、車体フレーム11に支持された(固定された)カウルステー61によって支持されている。
カウルステー61は、パイプ部材を屈曲させて形成されたベースステー62を有している。ベースステー62は、車幅方向(左右方向)に延びる水平部62Aと、この水平部62Aの左右両端の屈曲部62B,62Bで屈曲されて、後方に延びる傾斜部62C,62Cを有している。各傾斜部62Cは、図5に示す上面視において、前半部62Dが後ろ広がりで後方に延び、中間部62Eが真っ直ぐ後方に延び、後部62Fが内側に向かって屈曲されている。傾斜部62Cは、図1に示す側面視においては、全体が後ろ下がりに傾斜している。
【0021】
図5に示すように、ベースステー62は、水平部62Aの左右方向の中央が、ヘッドパイプ12との間に介装された固定ステー63によって支持され、後部62F,62Fの内側端部がそれぞれダウンチューブ32,32の上端近傍に連結され、さらに、左右の傾斜部62C,62Cのそれぞれの前半部62Dと中間部62Eとの間の部分が略左右方向に向いた補強ステー64によって連結されている。
また、水平部62Aの左右方向の略中央には、略コ字形の、メーター76(図3参照)を支持するためのメーターステー65が固定されている。また、水平部62Aの左右両端の屈曲部62B,62Bには、上端に略楕円状の取付プレート66Aを有するカウル支持ステー66が立設されている。この取付プレート66Aには、2個の雌ねじが螺刻されていて、図3に示すバックミラー67の基端部(下端部)の略楕円状の取付部67Aに穿設されている貫通孔にボルト68(図5参照)を通して、取付プレート66Aの雌ねじに螺合させることにより、カウル支持ステー66にバックミラー67を取り付けることができる。この際、カウル支持ステー66側の取付プレート66Aとバックミラー67側の取付部67Aとの間でフロンカウルを挟み込むことで、フロントカウル51の前端側をカウルステー61によって支持することができる。また、フロントカウル51の後端側は、図3に示す燃料タンク38の側面に設けられた係止部38Aに取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、フロントアッパカウル60は、車体フレーム11にカウルステー61を介してヘッドパイプ12の前方に固定され、ヘッドライト70及びスクリーン71が配置されている。
フロントアッパカウル60は、前端から斜め後方に湾曲するノーズ部72と、このノーズ部72の左右に張り出すノーズサイド部73,73と、ノーズ部72の下方に設けられるエアインテークダクト部74,74とを一体に備えて構成されている。
ノーズ部72には、ヘッドライト70を収納するヘッドライト開口部72Aが設けられると共に、このヘッドライト開口部72Aの上方に、フロントアッパカウル60後方に収納されるメーター76を遮光するメーターバイザー75が設けられており、メーターバイザー75の前面にスクリーン71が取り付けられている。
【0023】
メーターバイザー75は、図3,図4に示すように、メーター76を覆うバイザー部75Aと、その左右両端部からそれぞれ後方に延びるインナーフロントサイドカウル部75B,75Bとを有している。さらに、インナーフロントサイドカウル部75Bは、バイザー部75Aの側面に連結されて略水平に後方に延びて燃料タンク38の前側上部近傍に接続される長板状の上部カバー部75Cと、この上部カバー部75Cの内側端縁から下方に延びる、略三角形状の内側カバー部75Dとを有している。内側カバー部75Dは、図3に示すように、側面視において、キャニスター101の前面101Aと略同じ位置から、キャニスター101の後面101Bよりもさらに後方に延びて、燃料タンク38の前部に至るように構成されている。このように、キャニスター101は、上下方向及び前後方向の面状に延びる内側カバー部75Dによって、上方及び上方斜め後方の空間が内側から覆われ、前後方向に略帯上に延びる上部カバー部75Cによって、上方及び斜め後方の空間が上側から覆われている。内側カバー部75Dには、上部における前部及び後部に、外側に向かって円筒状の取付部75E,75Eが突設されており、この取付部75E,75Eには、後述するフロントサイドカウル24の上部フロントサイドカウル部80の上端が取り付けられる。内側カバー部75Dは、この上部フロントサイドカウル部80と、所定の間隙を介して対面している。ここで、所定の間隙とは、後述するキャニスター101が、その長手方向を前後方向に向けた姿勢で、収納することができる程度の間隙をいう。
【0024】
ノーズサイド部73は、図2に示すように、左右対称形状に形成され、図1の側面視で、ノーズ部72の前部下端の側方を頂点として後方へ向かい略V字形状に延びるカバー形状であって、車体正面視(図2参照)で内側に開口した断面略V字形状を有して後側で上下に分岐されている。このノーズサイド部73の断面略V字形状の上側側面73Aは、ノーズ部72に沿って比較的急傾斜で後ろ上がりに延在し、ノーズサイド部73の下側側面73Bは、上側側面73Aよりも緩い傾斜で後ろ上がりに延存し、図1に示すように、ハンドル15よりも下方で上側側面73Aから分岐してその上縁が後方に向けて略水平に延びることによってハンドル15と干渉しないように形成されている。
エアインテークダクト部74は、図2に示すように、フロントアッパカウル60の前部下端に位置し、前方に向かって開口する左右一対のダクトを備え、車体前方からの走行風を左右一対のフロントサイドカウル24,24間の空間内に導入する。
【0025】
次に、フロントサイドカウル24,24を説明する。図2に示すようにフロントサイドカウル24は、左右対称形状に形成されており、以下では、一方(車体左側)のフロントサイドカウル24を詳述する。
フロントサイドカウル24は、図1,図2に示すように、エアインテークダクト部74の外側やや下方を頂点として後方へ略V字形状に延びるカバー形状に形成され、後ろ上がりに延存する上部フロントサイドカウル部80と、上部フロントサイドカウル部80の前下部から後ろ下がりに延存する下部フロントサイドカウル部81からなる一体のカバーに形成されている。つまりフロントサイドカウル24は、側面視で後方へ向かって上下に分岐するV字形状の単一のカバーに形成されている。
これら上部フロントサイドカウル部80及び下部フロントサイドカウル部81は、上記頂点から後方へ行くに従って、徐々に車幅方向外側へ張り出す湾曲形状に形成され、燃料タンク38の前部側方で上下に分岐して後方へ延び、これら上部フロントサイドカウル部80,下部フロントサイドカウル部81の後縁が、燃料タンク38に設けられたニーグリップ部38Bの窪みの輪郭線38Cに略倣うように側面視略V字形状に切り欠かれた形状に形成されている。
【0026】
より具体的には、上部フロントサイドカウル部80は、エアインテークダクト部74の外側やや下方から燃料タンク38側方を後方に延びて、フロントカウル51前端から燃料タンク38側方までを覆うと共に、この燃料タンク38側方で車幅方向内側へ湾曲して燃料タンク38の側面に滑らかにつながる。
この上部フロントサイドカウル部80は、図2に示すように、全体として車体正面視で、車体下方に進むに従って車幅方向外側に傾斜する上側傾斜面(上側側面)80Aと、車体下方に進むに従って車幅方向内側に傾斜する下側傾斜面(下側側面)80Bとからなる、内側に開放した断面略V字形状に形成されている。すなわち、上部フロントサイドカウル部80は、全体として、車幅方向外側に向かって凸状の、膨出凸部を構成している。そして、上部フロントサイドカウル部80の内側には、膨出凹部90が構成されていて、後述するキャニスター101は、この膨出凹部90に配置されている。上述のように、本実施形態では、上部フロントサイドカウル部80は、その全体が、車幅方向の外側に向かって凸状となる膨出凸部を構成しており、その内側全体が、膨出凹部90に相当することになる。
上述の上側傾斜面80Aは、図1に示すように、シート37に着座する乗員に向けて後ろ上がりに延びる面に形成され、これによって車体前方からの走行風を乗員の、特に上半身側に向けて導く導風面として機能させることができる。
【0027】
また、図1に示すように、この上側傾斜面80Aとノーズサイド部73の下側側面73Bとによってフロントアッパカウル60とフロントサイドカウル24との合わせ部を境として車体前後方向に伸びる側面視V字形状の整流溝82が形成され、これによって、車体前方からの走行風をこの整流溝82によって整流して車体後方へ円滑に流すことができる。
下部フロントサイドカウル部81は、図1に示すように、エアインテークダクト部74の外側やや下方から燃料タンク38とエンジン17との間にある空間側方を覆うように後方へ延びて、前側のエンジン17の上部(ヘッドカバー)側方を覆っている。
この下部フロントサイドカウル81は、車体正面視で、車体下方に行くに従って略車幅方向内側に傾斜する傾斜面81Aを有している。
この傾斜面81Aは、車体前後方向に延び、上部フロントサイドカウル部80の下側傾斜面80Bとで、車体前後方向に延びる整流溝83を形成する。この整流溝83によって、車体前方からの走行風を車体前後方向に整流して後方へ流すことができる。また、整流溝83が、エアインテークダクト部74からフロントサイドカウル24に導入された走行風を、上部フロントサイドカウル部80側と下部フロントサイドカウル部81側とに分離し、上側の空気を燃料タンク38と上部フロントサイドカウル部80との間の空間を通して円滑に排出させると共に、下側の空気を燃料タンク38下へ導き、エンジン17の冷却性を向上させると共に、エンジン17の熱が燃料タンク38に伝わるのを効果的に遮断できる。
【0028】
また、傾斜面81Aは、車体下方に進むに連れて車体内側に傾斜するので、車体前方からの走行風を車体下方かつ車体内側に導き、エンジン17に送ることができる。これによってエンジン17の冷却フィンに走行風を十分に流して冷却効果の向上を図ると共に、エンジン17からの排熱を奪った走行風が車体下方を流れるので、乗員にエンジンの排熱が伝わらないようにすることができる。
上述構成の自動二輪車10は、蒸発燃料処理装置100を備えている。
図6は、燃料タンク38の前方に配置されたキャニスター101の側面図であり、また、図7は、同じく斜視図である。
蒸発燃料処理装置100は、図2,図6,図7に示すように、車体の左側に配設されたキャニスター101を備え、さらに、図6に示すように、上流側の燃料タンク38とこのキャニスター101とを繋ぐチャージ配管102と、このキャニスター101と下流側のエンジン17の吸気系とを繋ぐパージ配管103とを備えている。ここで、上流側、下流側とは、燃料タンク38で発生した蒸発燃料の移動方向に沿っての上流側、下流側をいい、最上流側は、燃料タンク38であり、最下流側は、エンジン17の吸気系であって、その途中にキャニスター101が配設されている。
【0029】
キャニスター101は、図3に示すように側面視において、ヘッドライト70と燃料タンク38との間で、かつ図2に示すように前面視においてフロントサイドカウル24の上部フロントサイドカウル部80の内側の膨出凹部90に配置されている。
キャニスター101は、図7に示すように、全体が前面(天井面)101A及び後面(底面)101Bを有する略筒形に形成されていて、前面視で上下に長い楕円形状に形成されている。このキャニスター101は、左右寸法L1よりも上下寸法L2の方が長く、さらに、上下寸法L2よりも前後寸法L3の方が長くなるように形成されている。また、左右寸法L1及び上下寸法L2が、前側に進むに従って小さくなるように形成されている。つまり前側ほど細くなるように形成されている。この形状は、上部フロントサイドカウル部80の内側の膨出凹部90全体のうちの、フロントサイドカウル24側の上部フロントサイドカウル部80と、メーターバイザー75側の内側カバー部75Dと間に構成される空間の形状に対応している。すなわち、上部フロントサイドカウル部80における、キャニスター101が配設される部分は、後ろ側ほど車幅方向外側への張り出し量が多くなっている。
なお、キャニスター101は、上述では、車体前後方向に横長に配置したが、例えば、フロントサイドカウル24の形状によっては、これを車幅方向に横長に配置してもよく、あるいは、縦長に配置してもよく、さらには、斜め配置でもよい。また、ヘッドライト70と燃料タンク38との間であれば、フロントフォーク13と必ずしもオーバーラップさせる必要はなく、フロントフォーク13の前方或いは後方のいずれかに配置してもよい。
【0030】
キャニスター101の内側には、活性炭等の吸着剤が収納されている。燃料タンク38から後述するチャージ配管102によってキャニスター101に送られた蒸発燃料は、キャニスター101内の吸着剤によって吸着されて回収される。こうして、吸着剤に吸着された蒸発燃料は、エンジン始動に伴う吸気負圧によって、吸着剤から開放され、後述するパージ配管103、さらに、エンジン17の吸気系を介してエンジン17に供給されて燃焼される。
ここで、キャニスター101は、温度が高いと、脱着しやすく、一方、温度が低いと、吸着しやすい。このため、チャージ時は温度を低くし、パージ時は温度を高くするのが望ましい。本実施形態では、後述するように、駐車時には、直射日光等の外部の熱がキャニスター101に伝わりにくいようにして温度の上昇を防止し、一方、走行時には走行風によってキャニスター101が冷却されにくいようにしている。
【0031】
キャニスター101の前面101Aには、上側にチャージ配管取付部101Cが突設され、また、下側にパージ配管取付部101Dが突設されている。上側のチャージ配管取付部101Cは、上方に向けて屈曲されていて、ここにはチャージ配管102の下流端が接続されている。一方、下側のパージ配管取付部101Dは、前方に向けて突設されていて、ここには、パージ配管103の上流端が接続されている。また、キャニスター101の下端には、前側と後ろ側とにそれぞれ1個ずつ合計2個の舌片状の取付部101E,101Eが下方に向けて突設されている。図6に示すように、キャニスター101の後面101Bの下部には、キャニスター101からの蒸発燃料を排出し、及び、キャニスター101内に浸入した液体ガソリンを排出するためのドレン105が接続されている。
【0032】
キャニスター101は、図7に示すように、カウルステー61の傾斜部62Cに溶接されたブラケット106に対して、取付部101E,101Eがボルト107により、長手方向を前後に向けた姿勢で固定されている。
本実施形態においては、上述のキャニスター101は、図1に示すように、側面視においてはヘッドライト70と燃料タンク38との間で、かつフロントサイドカウル24の内側の膨出凹部90、さらに詳しくはフロントサイドカウル24の上部フロントサイドカウル部80の内側の膨出凹部90に配置した。この膨出凹部90には、他の部品は、配設されていないので、キャニスター101を他の場所に配置する場合よりも、比較的容易に配置することができる。すなわち、キャニスター101の形状や位置、また、後述するチャージ配管102、パージ配管103、パージコントロールバルブ104の配管等についてのレイアウト自由度が高い。
【0033】
図8はキャニスター101の遮蔽構造を示している。この図に示すように、キャニスター101は、外側(キャニスター101左側)がフロントサイドカウル24の上部フロントサイドカウル部80によって覆われ、内側斜め上方がメーターバイザー75の内側カバー部75Dによって覆われ、上方がメーターバイザー75の上部カバー部75C及びフロントサイドカウル24によって覆われている。また、キャニスター101の前方および後方についてもフロントサイドカウル24の上部フロントサイドカウル部80によって覆われ、フロントサイドカウル部24内側(つまり、上部フロントサイドカウル部80内側)の膨出凹部90内にキャニスター101全体が収容されている。
このため、車体の左側、右側及び上側等から射し込む直射日光(地面で反射した日光も含む)をフロントサイドカウル24及びメーターバイザー75によって遮ることができる。さらに、フロントサイドカウル24は、キャニスター101の外側(キャニスター101左側)を下方に延びる下部フロントサイドカウル部81を有するので、路面からの輻射熱がキャニスター101に伝わりにくい。
このように、キャニスター101の周囲は、フロントサイドカウル24とメーターバイザー75によって覆われているので、外部からの熱の影響を少なくすることができる。すなわち、例えば、キャニスター101のチャージ性能は、温度が低い方が高くなる。したがって、キャニスター101に覆いがない状態で、自動二輪車10を屋外に駐車するとキャニスター101に直射日光が当たって、温度が上昇し、チャージ性能が低下する。本実施形態では、フロントサイドカウル24によってキャニスター101に直射日光が当たることを防止することができるので、直射日光に起因するチャージ性能の低下を防止できる。
【0034】
また、図8に示すように、キャニスター101の下方には、車体右側にラジエータ26が配設され、車体左側にそのリザーブタンク28(図3,図4参照)が配設されている。すなわち、キャニスター101の下方における、前後方向及び上下方向の略同じ位置に、ラジエータ26とリザーブタンク28とが配設されている。なお、図8では、ラジエータ26の前面を覆うラジエータカバー26Aの一部を省略して示している。
ここで、図8に示すように、フロントサイドカウル24とメーターバイザー75の下方は開口しているため、走行時にラジエータ26から放出される熱が、この開口(図8に示す間隙G)を介してキャニスター101周囲空間に入り、車両走行中のキャニスター101が加温されてパージ性能を向上することができる。
すなわち、本構成では、フロントサイドカウル24とメーターバイザー75は、キャニスター101を上方から覆うと共に下方に開口するので、直射日光を遮ってチャージ量を稼ぎ、かつ、走行時のラジエータ26の熱をキャニスター101に導いて車両走行中のパージ性能を促進させることができる。
また、キャニスター101に走行風が当たると、温度が低下してパージ性能が低下するが、本実施形態では、図1,図2,図8に示すように、キャニスター101の少なくとも側方及び前方をフロントサイドカウル24で覆っているので、走行風が直接、キャニスター101に当たることを防止して、パージ性能の低下を防止することができる。なお、ラジエータ26を通過した走行風については、ラジエータ26の後方に抜けるので、キャニスター101に向けては流れず、パージ性能の低下は防止される。
【0035】
また、図2に示すように、キャニスター101は、その外側をフロントサイドカウル24によって覆われているので、車体左側方から外力が加わった場合に、外力が直接、キャニスター101に作用することがない。特に本構成のフロントサイドカウル24は、上部フロントサイドカウル部80と下部フロントサイドカウル部81とによって側面視V字形状に形成されるため、断面も略V字となってカウル剛性が高く、かつ、走行時はラジエータ26からの熱、停車時は稼働中のエンジン17の排熱が上部フロントサイドカウル部80内側にこもりやすくなっている。このため、この上部フロントサイドカウル部80内側にキャニスター101を配置することによって、キャニスター101を適切に覆いつつ加温を効率良く行うことができる。
さらに、キャニスター101を、前輪16の接地点16Aとハンドルバー端部15Aとを結んだ平面Hよりも、車幅方向内側に配置すれば、例えば、車体左側方から面状で外力が作用したときに、この外力は、前輪16の接地点16A及びハンドルバー端部15Aに作用して、キャニスター101には作用しにくい。
【0036】
また、フロントサイドカウル24,24は、左右略対称に形成されていて、右側のフロントサイドカウル24の内側に、上述の膨出凹部90と同様の膨出凹部90が形成されるので、この右側の膨出凹部90にキャニスター101を配設することも可能ではあるが、上述のように、キャニスター101は、左側のフロントサイドカウル24によって形成される膨出凹部90に配置することが好ましい。その理由は、自動二輪車10を例えば屋外に駐車する際に、図1に示すメインスタンド40を使用することなく、サイドスタンド41を使用した場合、車体は、サイドスタンド41のある左傾斜する。このため、一般に、右側のフロントサイドカウル24よりも、左側のフロントサイドカウル24の方が直射日光が当たりにくくなると考えられる。したがって、キャニスター101も、右側の膨出凹部90よりも左側の膨出凹部90に配置した方が、温度の上昇を抑制することができ、チャージ性能の低下を抑制することが可能である。
【0037】
また、キャニスター101の配設位置を、フロントフォーク13,13の回動範囲内の外側に設定すれば、ハンドル15の操舵によるフロントフォーク13,13との干渉を回避することができる。また、キャニスター101の配設位置を、エンジン17の直上からずらして、前方に設定することができるので、エンジン17の熱による影響も少なくすることができる。
チャージ配管102は、図6に示すように、その下流側部分102Aが燃料タンク38の外側に配置され、一方、その上流側部分102Bが燃料タンク38の内側に配設されていて、下流側部分102Aと上流側部分102Bとの間の貫通部102Dが燃料タンク38の側面を貫通している。燃料タンク38の内側上部の気相部、すなわち、燃料タンク38の上端の給油用の開口部38Gの直下には、環状の気液分離器38Hが設けられていて、燃料タンク38に入れられた液体の燃料と、ここから発生する気体の蒸発燃料とを分離している。チャージ配管102は、その上流側部分102Bの上流端を気液分離器における前端側でかつ右側にされ、チャージ配管貫通部38Iに向かって左方に延びる。この際、直線状に延びるのではなく、上面視において、左方に延びながら少し後方に延び、屈曲部102Cで屈曲した後、左方斜め前に延びて、チャージ配管貫通部38Iに至る。この屈曲部102Cは、鈍角に屈曲している。チャージ配管102は、燃料タンク38の内側から、チャージ配管貫通部38Iを貫通して外部に出た後、屈曲して前方やや左に、キャニスター101の上方を通過し、キャニスター102の前面で下方に向きを変えて、チャージ配管取付部101Cに連結される。
【0038】
図9は、チャージ配管貫通部38I、すなわち燃料タンク38における、チャージ配管102が貫通する部分を後方から見た図であり、また、図10(A)は、このチャージ配管貫通部38Iを、前後方向に略直交する平面で切って前方から見た縦断面図である。チャージ配管貫通部38Iは、燃料タンク38の側壁における前側でかつ上側に設定されている。ここで、燃料タンク38の側壁とは、ここからチャージ配管102が突出された場合でも、乗員のハンドル操作を妨げないような位置であると言える。
【0039】
図5,図6,図9に示すように、チャージ配管貫通部38Iは、略長方形の凹状に形成されていて、チャージ配管102は、このチャージ配管貫通部38Iを斜めに、すなわち、タンク面に対して所定の角度を持って貫通している。図10(A)に示すように、チャージ配管貫通部38Iに対応する、燃料タンク38の内面には、補強板38bがスポット溶接により接合されている。補強板38bにおける、チャージ配管102の貫通部102Dに対応する部分には、チャージ配管102の傾斜角度に合わせて斜めに傾斜したボス部38dを内側に向けて設けてある。一方、チャージ配管貫通部38Iの壁部(タンク壁)38aには、チャージ配管102の外径よりも大きい内径の、傾斜した貫通孔38cが穿設され、この貫通孔38cに補強板38vのボス部38dを貫通するボス孔が連通する。
【0040】
組み立てに際しては、ボス部38dにチャージ配管102を挿入した後、壁部38aにおける貫通孔38cの周囲、つまりチャージ配管102における外側に突出している部分の基端部を全周にわたって溶接して溶接部108を設けている。また、(チャージ配管102の外径)<(補強板38bのボス部38dの孔径(内径))<(壁部(タンク壁)38aの孔径)となっているため、補強板38bと壁部(タンク壁)38aの位置合わせが容易で、かつ、チャージ配管102を通しやすく、さらに、上記3部材(チャージ配管102、補強板38b、壁部(タンク壁)38a)を一括してロウ付けできるようになっている。
すなわち、チャージ配管貫通部38Iは、燃料タンク38の側壁(底部38a)に、チャージ配管102の外径よりも大径の貫通孔38cを設け、この貫通孔38cの周囲に、チャージ配管102の傾斜に沿って斜めに延びて貫通孔38cと連通すると共に貫通孔38cの外形よりも大径のボス孔(ボス部38d)を有する補強板38vを接合し、チャージ配管102を貫通孔38cおよびボス孔(ボス部38d)に貫通させ、一括でロウ付けされて形成され、これによって、チャージ配管貫通部38Iの剛性を確保できると共に、チャージ配管102周囲の隙間を一括ロウ付けで容易かつ確実に塞ぐように管理できるので、気密性を確保できる。
【0041】
ここで、図10(B)は、図10(A)の変形例である。この変形例では、補強板38bにおいて、チャージ配管102が挿入される傾斜したボス部38fを、図10(A)の例とは逆に、外側に向けて突出させている。壁部(タンク壁)38aには、ボス部38fの外径と略同じ内径の貫通孔38eを穿設して、この貫通孔38eにボス部38fを貫通させている。チャージ配管102を、ボス部38fに貫通させた後、ボス部38fの先端とチャージ配管102の外周とを溶接して溶接部108を設けている。本変形例においても、図10(A)の例と同様の効果、すなわち、組み付け時に、チャージ配管102を貫通孔38eに通しやすく、組み付け性が向上する。
【0042】
また、チャージ配管102は、燃料タンク38の側壁に設けられたチャージ配管貫通部38Iを斜めに貫通するので、チャージ配管102は、傾斜している分、燃料タンク38の側壁からの実質的な突出量を少なくすることができる。これに対し、チャージ配管102が傾斜角度を持って燃料タンク38の側壁を貫通していると、チャージ配管102の上述と同方向の外力が作用した場合に、チャージ配管102は、直交に対する傾斜角度を大きくする方向に変形するため、チャージ配管貫通部38Iを保護できる。
【0043】
また、チャージ配管102は、上述のように、燃料タンク38の内側に位置する上流側部分102Bの一部に屈曲部102Cを有しているので、燃料タンク38に対して外力が作用した場合に、その一部を屈曲部102Cで吸収して、チャージ配管貫通部38Iや気液分離器38Hとの接続部に作用する外力を低減させることができる。
また、図5に示すように、燃料タンク38のチャージ配管貫通部38Iは、燃料タンク38の側面のうちの、最外張り出し部Wよりも車体内側になる位置に配置されている。これにより、燃料タンク38に対して、車体側方から外力が作用した場合に、外力はまず最外張り出し部Wに作用することになるので、チャージ配管貫通部38Iには外力が直接作用しにくい。
【0044】
また、図6に示すように、チャージ配管貫通部38Iは、燃料タンク38における、乗員のニーグリップ部38Bより上方の燃料タンク38の側面に設けてある。これにより、チャージ配管102が乗員の足が当たる等に起因するチャージ配管貫通部38Iへの影響を排除することができる。
また、図1に示すように、チャージ配管貫通部38Iは、車体側方を覆うフロントサイドカウル24によって覆われており、かつ、フロントサイドカウル取付部である係止部38A近傍に設けられるので、カウルが強固に支持される部分にチャージ配管貫通部38Iがあり、チャージ配管貫通部38Iが保護を保護できると共に、チャージ配管貫通部38Iを外観視不能にして外観性を向上できる。
また、チャージ配管貫通部38Iを、図2に示す上述の平面H、すなわち、前輪16の接地点16Aとハンドルバー端部15Aとを結んだ平面Hよりも車幅方向内側に配置する場合には、車体左側方から面状に外力が作用しようとした場合、その外力はチャージ配管貫通部38Iに作用する前に、ハンドルバー端部15Aや前輪16の接地点16Aに作用することになるので、チャージ配管貫通部38Iには作用することがなく、又は作用した場合でも、その大きさが低減されることになる。
【0045】
上述のように、チャージ配管102は、その上流端が燃料タンク38の内側上部の気相部に配置された気液分離器38Hに配置されており、中間に位置する貫通部102Dがチャージ配管貫通部38Iに配置され、下流端がキャニスター101の前面101Aの上側に位置するチャージ配管取付部101Cに接続されている。ここで、上述の気液分離器38Hと、チャージ配管貫通部38Iと、チャージ配管取付部101Cは、この順に高い位置から低い位置となるように配置されている。これにより、チャージ配管102全体は、最上流でもっとも高く、下流側に行くほど徐々に低くなり、そして、最下流でもっとも低くなるように配管されている。このように、チャージ配管102が、下流側ほど低くなるように配管されているので、チャージ配管102を移動する、空気よりも重たい蒸発燃料は、この傾斜に沿って上流側の気液分離器38Hから下流側のチャージ配管取付部101Cに向かって円滑に流れる。
【0046】
また、チャージ配管102が燃料タンク38の側壁を貫通して外部に出るので、燃料タンク38の上方や下方からチャージ配管102を出す場合と比較して、乗員や燃料タンク下方の他部品との位置関係を考慮する必要がなく、レイアウト自由度が向上する。
パージ配管103は、図6に示すように、その上流端がキャニスター101の前面101Aの下側のパージ配管取付部101Dに連結されて、上方斜め後方に立ち上がり、略、チャージ配管102に沿って燃料タンク38のチャージ配管貫通部38Iに向かって延びた(後ろ上がり部103A)後、屈曲されて前方斜め下方に延び(前下がり部103B)、燃料タンク38の二股部の裏面側に入り込んで下方斜め後方に延び(急傾斜部103C)、その後、湾曲して後方斜め下方に延び(緩傾斜部103D)、さらに少し傾斜をきつくして後方斜め下方に延びた後、エンジン17の吸気系に連結されている。
【0047】
パージ配管103は、このように、キャニスター101の前面101Aのパージ配管取付部101Dに連結された上流端からチャージ配管貫通部38I近傍に至るまでの後ろ上がり部103Aが、下流側ほど高くなるように配置されることにより、キャニスター101内で液体になった燃料がパージ配管103を通って外部に漏れ出すことを防止している。上述のチャージ配管102及びパージ配管103は、フロントサイドカウル24の上部フロントサイドカウル部80の内側面、又はメーターバイザー75の上部フロントサイドカウル部80の内側カバー部75Dの外側面に一体的に設けられたクランプ(不図示)に取り付けられている。これにより、専用のクランプを設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
上述のチャージ配管102、パージ配管103は、鋼管によって形成されている。ただし、柔軟性を有するチューブを使用することもできる。
【0048】
図6に示すように、上述のパージ配管103の後ろ上がりの部分にはパージコントロールバルブ104が設けられている。パージコントロールバルブ104は、パージ配管103の流路を開閉するバルブ本体104Aと、このバルブ本体104Aを制御する制御部104Bとを有している。バルブ本体104Aの下部には、前方及び後方に向けて、パージ配管103が接続される接続部104D,104Cが突設されている。制御部104Bは、バルブ本体104Aをオン/オフのduty制御することで、パージ配管103を通ってエンジン17の吸気系に送られる蒸発燃料量を制御する。
パージコントロールバルブ104は、図6に示すように、ねじ107によってメーターバイザー75側の内側カバー部75Dに取り付けられている。これにより、パージコントロールバルブ104を取り付けるためのステーを省略して、部品点数を削減することができる。なお、パージコントロールバルブ104は、内側カバー部75Dに取り付けるに代えて、フロントサイドカウル24側の上部フロントサイドカウル部80の内面に取り付けるようにしてもよい。
【0049】
図11,図12はキャニスター111の他の取付例を示す。ここで、図11は、図3に相当する図、すなわち、フロントサイドカウル24を取り外した状態の車体前部の左側方の拡大図であり図12は、図11の状態からさらにキャニスターを取り外した状態の、車体前部の左側方の拡大図である。図12に示すように、カウルステー61の傾斜部62に、側面視が略三角形の取付部材115を例えば溶接によって固定する。この取付部材115の上端には1つ、また下端には2つの、外側に屈曲された板状の取付部115A,115B,115Bが形成されている。また、キャニスター111の上面及び下面には、取付部115A,115B,115Bが挿入されるスリット開口状の受け入れ部111A,111B,111Bが形成され、取付部115A,115B,115Bを、キャニスター111側の受け入れ部111A,111B,111Bに挿入することで、キャニスター111を固定する。なお、図11,図12に図示する例では、チャージ配管112及びパージ配管113は、キャニスター111の後面111D側に連結するようにしている。なお、図12中の符号112A,112Dは、それぞれチャージ配管112の下流側部分,貫通部を示している。
この実施形態では、取付部115A,115B,115Bと、キャニスター111側の受け入れ部111A,111B,111Bとを整合させ、このキャニスター111を取付部材115に向けて略水平に押動するだけで、キャニスター111側の受け入れ部111A,111B,111Bに、取付部115A,115B,115Bを嵌合させて固定できるため、図6の形態と比較した場合、ボルト107などを用いることなく、キャニスター111を簡単に固定できる。さらに、キャニスター111は、燃料タンク38のチャージ配管貫通部38I及びエンジン17の吸気系よりも前側に配置されているので、チャージ配管112及びパージ配管113をキャニスター111の前面111Cではなく、後面111Dに連結するようにすれば、前面111Cに接続する場合と比較して、チャージ配管112及びパージ配管113の配管長さを短縮して、構成を簡略化することができる。
【0050】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。例えば、上述の実施形態では、キャニスター101の前方及び後方をフロントサイドカウル24で覆うようにしたが、メーターバイザー75の内側カバー部75Dを屈曲する等してメーターバイザー75でキャニスター101の前方及び後方を覆うようにしてもよく、要は、キャニスター101をフロントサイドカウル24及びメーターバイザー75で覆うように構成すればよい。
- 【公開番号】特開2011−31752(P2011−31752A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【発明の名称】自動二輪車の蒸発燃料処理装置
- 【出願番号】特願2009−180198(P2009−180198)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100091823
【弁理士】
【氏名又は名称】櫛渕 昌之
【識別番号】100101775
【弁理士】
【氏名又は名称】櫛渕 一江
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