鞍乗型車両のエアバッグ装置
- 【要約】
【課題】本発明は、エアバッグを好ましい方向に展開させることを可能にした鞍乗型車両のエアバッグ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】自動二輪車のエアバッグ装置86は、エアバッグが収納されている保持箱121をケース体とするエアバッグモジュール82と、このエアバッグモジュール82を制御するエアバッグ制御ユニット87と、を備えている。エアバッグモジュール82に、乗員が着座する乗員シート71の直前に設けられる保持箱121と、この保持箱の開口部を閉じるリッド141と、このリッド141の車両後方の側に設けられエアバッグが展開するときにリッドの回動支点となるヒンジ部158と、が備えられている。リッド141と保持箱の間には、リッド141の開放角度を規制するリッド規制手段としてのリンク機構151が備えられている。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座する乗員シートの直前位置にて車体フレームに設けられている保持箱と、この保持箱に収納され膨張時に乗員の前方で展開するエアバッグと、前記保持箱の開口部を閉じるリッドと、このリッドの車両後方の側に設けられ前記エアバッグが展開するときに前記リッドの回動支点となるヒンジ部と、を備えた鞍乗型車両のエアバッグ装置において、
前記リッドと前記保持箱の間に、前記リッドの開放角度を規制するリッド規制手段が備えられていることを特徴とする鞍乗型車両のエアバッグ装置。
【請求項2】
前記リッドに、左右のリッドステーが一体に設けられ、これらの左右のリッドステーに、各々、前記リッド規制手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の鞍乗型車両のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記リッド規制手段は、リンク機構であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鞍乗型車両のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記リッド規制手段は、帯状部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鞍乗型車両のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記リッドに前記リッドステーがインサート成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の鞍乗型車両のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグモジュールが鞍乗型車両に搭載された状態で、路面に対して、前記リッドの展開角度は、90°を超えないように、前記リッド規制手段により設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の鞍乗型車両のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記帯状部材に、この帯状部材の長手方向に沿って脆弱部が設けられ、前記保持箱に、前記脆弱部の一端を保持する留め部材が設けられ、前記リッドは、前記留め部材で前記脆弱部を裁断しながら所定角度まで開放するようにしたことを特徴とする請求項4記載の鞍乗型車両のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記帯状部材は、左右一体に形成され、前記リッドの内側を通過するとともに、前記リッドの内側に設けたガイド部材によって保持され、
前記帯状部材は、前記ガイド部材と前記リッドとの間を通過しながら、前記リッドを、所定角度まで開放するようにしたことを特徴とする請求項4記載の鞍乗型車両のエアバッグ装置。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のエアバッグ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員シートの前方に設けられ、車両が所定の衝撃を受けたときに膨張展開するようにした鞍乗型車両のエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1(図3)、特許文献2(図7)参照。)。
【0003】
特許文献1の図3において、車体フレーム1(符号は、同公報のものを流用する。以下同じ。)に座席シート5が取り付けられ、この座席シート5の前方に燃料タンク4が設けられ、この燃料タンク4の前方に、エアバッグ14が収納されているバッグハウジング12が配置されている。このエアバッグ14後面の中間部から、バッグ繋留体18が車両後方へ延ばされ、このバッグ繋留体18の先端は、座席シート5の下方にて、車体フレーム1に結ばれている。
【0004】
エアバッグ14が開き始めると、バッグハウジング12の上面を覆う蓋体122が、バッグハウジング12の前部に設けた蝶番部を支点として上方に開く。そして、エアバッグ14がバッグハウジング12から張り出し、展開される。この際に、バッグ繋留体18が伸びて繋留作用を発揮し、エアバッグ14を所定の位置に保持する。
【0005】
このように、特許文献1の技術では、バッグ繋留体18が必須要素となる。しかし、バッグ繋留体18の先端がバッグハウジング12からでて、車体フレーム1まで延びているために、外観性に影響がでる。そのため、バッグ繋留体18の廃止が望まれる。
この要望に応えるために特許文献2が提案された。
【0006】
特許文献2の図7において、車体フレーム1(符号は、同公報のものを流用する。以下同じ。)に座席シート5が取り付けられ、この座席シート5の直前にエアバッグ14を収納するバッグハウジング12が配置され、バッグハウジング12の前方に燃料タンク4が設けられている。
【0007】
エアバッグ14が膨らみ始めると、バッグハウジング12の上面を覆う蓋体122が、上方へ開く。そして、エアバッグ14は、ほぼ真上へ展開される。
すなわち、特許文献2の技術は、バッグハウジング12を、乗員が着座する座席シート5の直前位置に配置するものであり、乗員とバッグハウジング12との間の距離を短くすることで、繋留体18を省いたことを特徴とする。
【0008】
エアバッグ14は、車体前部(ハンドルなど)と乗員との間で展開し、且つエアバッグ14が車体前部に接触している形態で、乗員がエアバッグ14に当たることが望まれる。
しかし、特許文献2では、乗員の直前に配置されているエアバッグ14が、ほぼ真上へ展開するため、エアバッグ14が車体前部に接触する前に乗員がエアバッグ14に当たることとなる。すなわち、エアバッグ14の展開方向が重要となる。
そこで、エアバッグが展開する方向を改良することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3592447号公報
【特許文献2】特許第3685872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、エアバッグを好ましい方向に展開させることを可能にした鞍乗型車両のエアバッグ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、乗員が着座する乗員シートの直前位置にて車体フレームに設けられている保持箱と、この保持箱に収納され膨張時に乗員の前方で展開するエアバッグと、前記保持箱の開口部を閉じるリッドと、このリッドの車両後方の側に設けられ前記エアバッグが展開するときに前記リッドの回動支点となるヒンジ部と、を備えた鞍乗型車両のエアバッグ装置において、リッドと前記保持箱の間に、前記リッドの開放角度を規制するリッド規制手段が備えられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、リッドに、左右のリッドステーが一体に設けられ、これらの左右のリッドステーに、各々、リッド規制手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明では、リッド規制手段は、リンク機構であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明では、リッド規制手段は、帯状部材であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、リッドにリッドステーがインサート成形されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、エアバッグモジュールが鞍乗型車両に搭載された状態で、鞍乗型車両が載置されている路面に対して、リッドの展開角度は、90°を超えないように、リッド規制手段により設定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る発明は、帯状部材に、この帯状部材の長手方向に沿って脆弱部が設けられ、保持箱に、脆弱部の一端を保持する留め部材が設けられ、リッドは、留め部材で脆弱部を裁断しながら所定角度まで開放するようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る発明では、帯状部材は、左右一体に形成され、リッドの内側を通過するとともに、リッドの内側に設けたガイド部材によって保持され、帯状部材は、ガイド部材とリッドとの間を通過しながら、リッドを、所定角度まで開放するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、リッドと保持箱の間に、リッドの開放角度を規制するリッド規制手段を備えている。
エアバッグが展開するときに、エアバッグは、リッドを開放させながら展開するものとなるが、リッド規制手段を設けたことにより、エアバッグの展開方向が規制されることになる。エアバッグの展開方向を規制することで、エアバッグを好ましい方向に展開させることが可能になる。
【0020】
請求項2に係る発明では、リッドに、リッド規制手段を取り付けるリッドステーが左右一体的に備えられている。リッドにリッドステーを左右一体的に設けることにより、リッドが展開するときに、リッド規制手段から受ける衝撃をリッドに均等に受け止めさせることができる。結果、リッドの形状設計が容易になる。
【0021】
請求項3に係る発明では、リッド規制手段をリンク機構としたので、リッドが開放されるとき、リンクは直線的に延びる。リンクが直線的に延び、直線的に延びたリンクによってエアバッグがガイドされ、リンクの外側にエアバッグが拡がり難くなるため、エアバッグの展開方向を必要な領域に向けることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、リッド規制手段は、帯状部材である。帯状部材であれば、複数の部材が必要な機構と較べると、部品点数の増加を抑えることができる。部品点数の増加が抑えられるのでコストの低減を図ることが可能になる。
【0023】
請求項5に係る発明では、リッドにリッドステーがインサート成形されているので、締結部材を用いることなくリッドにリッドステーを一体化させることができる。したがって、部品点数の増加を抑えることが可能になる。
【0024】
請求項6に係る発明では、リッドの展開角度は、路面に対し90°を超えないように設定されているので、エアバッグを保持箱の前方から上方にかけて展開させることができる。かかる角度設定であれば、乗員が前方移動した場合であっても、エアバッグを確実に前方かつ上方へ向け展開させることができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、帯状部材に、脆弱部が設けられ、保持箱に設けた留め部材で、脆弱部を裁断しながら、リッドが所定角度まで開放するようにしたので、エアバッグが開放するときに、リッドが開放する速度を下げることができる。
【0026】
請求項8に係る発明では、帯状部材は、左右一体に形成され、リッドの内側を通過するとともに、リッドの内側に設けたガイド部材によって保持され、このガイド部材によって規制されながら、リッドが所定角度まで開放するようにしたので、エアバッグが開放するときに、リッドが開放する速度を下げることができる。
- 【公開番号】特開2011−962(P2011−962A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【発明の名称】鞍乗型車両のエアバッグ装置
- 【出願番号】特願2009−145709(P2009−145709)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
- ※以下のタグをホームページ中に張り付けると便利です。
-
当サイトではIPDL(特許電子図書館)の公報のデータを著作権法32条1項に基づき公表された著作物として引用しております、
収集に関しては慎重に行っておりますが、もし掲載内容に関し異議がございましたらお問い合わせください、速やかに情報を削除させていただきます。