ラビング布貼付け用両面粘着テープ及びそれを貼付したローラ巻着用ラビングシート
- 【要約】
【課題】ラビングローラとの界面における両面粘着テープの浮きなどの発生を抑制したラビング布貼付け用両面粘着テープ、及び該両面粘着テープと1枚以上の布が一体化された、長尺のローラに対応することのできる配向むらや配向瑕を低減させうるローラ巻着用ラビングシートを提供する。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に、ローラに貼着される粘着剤層Iを有し、他方の面にラビング布が貼着される粘着剤層IIを有するラビング布貼付け用両面粘着テープにおいて、基材フィルムとして、10%伸張させ、伸張停止1分後の応力が20N/15mm以下であり、かつ、1%延伸時の引張り応力が3000MPa以下であるフィルムを用いたラビング布貼付け用両面粘着テープ。
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に、ローラに貼着される粘着剤層Iを有し、他方の面にラビング布が貼着される粘着剤層IIを有するラビング布貼付け用両面粘着テープにおいて、該基材フィルムとして、基材シート幅15mm、長さ150mmに切り出して得た試験片をオリエンテック製「TENSIRON RTA−100」を用いてチャック間距離100mmにセットし、速度200mm/minでの引っ張り測定において、基材フィルムを10%伸張させ、伸張停止1分後の応力が20N/15mm以下であるフィルムであって、かつ、1%延伸時の引張り応力が3000MPa以下であるフィルムを用いたことを特徴とするラビング布貼付け用両面粘着テープ。
【請求項2】
基材フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである請求項1記載のラビング布貼付け用両面粘着テープ。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムが、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はこれらの混合物のいずれかからなるフィルムである請求項2記載のラビング布貼付け用両面粘着テープ。
【請求項4】
基材フィルムが軟質塩化ビニル系樹脂フィルムである請求項1記載のラビング布貼付け用両面粘着テープ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のラビング布貼付け用両面粘着テープの粘着剤層IIに、少なくとも1枚のラビング布をパイルが表面側になるように貼付け一体化したことを特徴とするローラ巻着用ラビングシート。
【請求項6】
ラビング布の複数枚を、その布端縁が相互に対応するように突合わせ、前記突合わせた布端縁が形成する継目をまたいで連続的に両面粘着テープを貼付し、複数枚のラビング布を繋ぎ合わせてなる請求項5記載のローラ巻着用ラビングシート。
【請求項7】
ラビング布の継目が直線状であり、かつ該ラビング布の継目のラビング方向に対する角度が0度以上45度以下である請求項6記載のローラ巻着用ラビングシート。
【請求項8】
ラビング布として、地布にパイルをファーストパイルの様式に組織して製織されたベルベット織物であって、前記パイルがコットン、レーヨン、酢酸セルロース、ポリノジック、テンセル、ナイロン、ポリエステル及びビニロンの中から選ばれる繊維からなり、かつ前記地布を構成する地糸の経糸及び緯糸の両方若しくは一方が熱可塑性合成繊維からなるものを用いる請求項5〜7のいずれかに記載のローラ巻着用ラビングシート。
【請求項9】
ラビング布の布端縁が溶断され、この端縁において地布を構成する熱可塑性合成繊維からなる地糸が他の地糸と相互に融着状態にあるか、あるいは地糸の熱可塑性合成繊維が溶融により変形された状態にある請求項8記載のローラ巻着用ラビングシート。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビング布貼付け用両面粘着テープ及びそれを貼付したローラ巻着用ラビングシートに関する。さらに詳しくは、本発明は、液晶表示装置の配向膜などをラビング処理するためのラビング布をローラに巻着するのに用いられ、ローラとの界面における両面粘着テープの浮きなどの発生を抑制して配向むらを低減させうるラビング布貼付け用両面粘着テープ、及びこの両面粘着テープを貼付したローラ巻着用ラビングシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置の配向膜に対して、液晶分子の配向を規制するためにラビング処理が行われている。この処理に使われる布はラビング布といわれ、パイルがコットン、レーヨン、トリアセテートなどの繊維からなるベルベット織物が使われている。ラビング布は両面粘着テープを介し、ラビングローラに貼着されラビング処理が行われている。ラビング処理を繰り返すことにより、ラビング布のパイルが摩耗するため、所定のサイクルがくるとラビングローラから剥がして、新たなラビング布と交換する必要がある。そのため、交換時に両面粘着テープは、ラビング布と共に剥離し、かつローラ面に粘着剤が残らないことが望まれる。前記両面粘着テープとは、これまで一般に、厚さ10〜30μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材フィルムの両面に、粘着剤層を設けた粘着テープが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
近年、液晶表示装置の大型化と生産性の向上のため、通常マザーグラスと呼ばれる複数枚の配向膜が形成されているガラス板の大きさが大きくなるに伴い、ラビング布を固定するラビングローラの長さが長くなってきた。ラビング布として、使用されるベルベット織物は、通常110〜150cm幅で製織されるので、長尺のラビングローラに対応するには、ラビング布を分割し、ラビングローラの軸に垂直方向に複数枚のラビング布を貼り付けることが有力な手段である。
複数枚のラビング布をラビングローラに貼付ける方法として、(1)先にラビングローラに両面粘着テープを貼り、その上にラビング布を並べて、貼付ける方法、(2)予め、複数のラビング布を両面粘着テープの一方の面に貼付け、一体化したものをラビングローラに巻着する方法が考えられる。
ラビング布をラビングローラに取付ける方法として、通常行なわれている方法は、まず両面粘着テープの一方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を上にして、所定の位置に置き、その端部にラビングローラを乗せて、該ローラを回転させることにより、両面粘着テープをラビングローラに貼着させた後、ラビング布のパイルを下側にして所定の位置に置き、ラビングローラに貼着された両面粘着テープの他方の剥離シートを剥がし、同様に両面粘着テープの付いたラビングローラを回転させて、ラビング布を貼り付ける。
前記(1)の方法において、従来の厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムの両面に、粘着剤層を設けた両面粘着テープを用いて、ラビング布を貼付ける場合、ラビングローラと両面粘着テープの間には、浮きは生じないが、ラビング布のパイルは若干斜め方向に傾斜がついているため、貼る際の圧力により、ラビング布がずれてしまう問題がある。
また前記(2)の方法において、同様に従来の厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムの両面に、粘着剤層を設けた両面粘着テープを用いて、ラビング布を貼付けてから、ラビングローラに貼付ける場合、両面粘着テープ上に精度良く、強固にラビング布を貼付することができ、ラビングローラに精度良く貼着することができるが、ラビングローラと両面粘着テープの間には、浮きが生じる。
この現象は、次のように考えられる。両面粘着テープの基材及びラビング布自体は単独では、剛性が低い(PET25μm:ガーレ剛性度約80mN、ラビング布:ガーレ剛性度約400〜800mN)。したがって、前記(1)の方法では、浮きが生じることなく貼付できる。しかし、これらが一体化された積層物になると、ガーレ剛性度約5000〜8000mNと桁違いに剛性が高まり、これらの積層物を円筒状のラビングローラに貼付するときに内外周差による内部応力が発生し、ラビングローラと両面粘着テープの間に、浮きが生じるものと考えられる。(ガーレ剛性度:J・TAPPI紙パルプ試験方法No.40に準拠し、ガーレ式柔軟度試験機[(株)東洋精機製作所製]を用いて、両面テープ基材及び、ラビング布は両側から測定を行い、その平均値をガーレ剛性度とした。積層物は、両面粘着テープ基材の片側にラビング布貼着用粘着剤層が設けられたものにラビング布を貼着して、上記と同様に測定したものである。)
またラビングローラの中央に位置するラビング布の切断個所のパイルの一部が地布の織物組織より外れ、パイル長が長くなった状態でラビング処理を行なったり、ラビング中に外れたパイルが他のパイル部分に巻き込まれた状態でラビング処理が行なわれると配向膜に配向むらが起こる原因になる。したがって、切断面のパイルが外れ難くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−220570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情のもとで、液晶表示装置の配向膜などをラビング処理するためのラビング布をラビングローラに巻着するのに用いられ、「貼付け工程の単純化と確実化、大型ガラス基板対応」の課題に対応するため、ラビングローラとの界面における両面粘着テープの浮きなどの発生を抑制したラビング布貼付け用両面粘着テープ、及び該両面粘着テープと1枚以上の布が一体化された、長尺のローラに対応することのできる配向むらや配向瑕を低減させうるローラ巻着用ラビングシートを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、両面粘着テープと1枚以上のラビング布が一体化されたラビングローラ巻着用ラビングシートにおいて、ラビングローラと粘着剤層との界面で浮きが生じるのを抑制するには、一体化されたラビングローラ巻着用ラビングシートをローラに貼付ける際に生じる内部応力を両面粘着テープの基材フィルムによって、緩和させればよいことに着目し、下記の知見を得た。また、ラビング布の切断面のパイルが外れ難くするには、地布を構成する熱可塑性合成繊維からなる地糸が他の地糸と融着状態にあるか、あるいは地糸の熱可塑性合成繊維が溶融により変形された状態にあるようにすればよいことに着目し、下記の知見を得た。
すなわち、本発明は、
(1)基材フィルムの一方の面に、ローラに貼着される粘着剤層Iを有し、他方の面にラビング布が貼着される粘着剤層IIを有するラビング布貼付け用両面粘着テープにおいて、該基材フィルムとして、基材シート幅15mm、長さ150mmに切り出して得た試験片をオリエンテック製「TENSIRON RTA−100」を用いてチャック間距離100mmにセットし、速度200mm/minでの引っ張り測定において、基材フィルムを10%伸張させ、伸張停止1分後の応力が20N/15mm以下であるフィルムであって、かつ、1%延伸時の引張り応力が3000MPa以下であるフィルムを用いたことを特徴とするラビング布貼付け用両面粘着テープ、
(2)基材フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである(1)記載のラビング布貼付け用両面粘着テープ、
(3)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムが、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はこれらの混合物のいずれかからなるフィルムである(2)記載のラビング布貼付け用両面粘着テープ、
(4)基材フィルムが軟質塩化ビニル系樹脂フィルムである(1)記載のラビング布貼付け用両面粘着テープ、
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のラビング布貼付け用両面粘着テープの粘着剤層IIに、少なくとも1枚のラビング布をパイルが表面側になるように貼付け一体化したことを特徴とするローラ巻着用ラビングシート、
(6)ラビング布の複数枚を、その布端縁が相互に対応するように突合わせ、前記突合わせた布端縁が形成する継目をまたいで連続的に両面粘着テープを貼付し、複数枚のラビング布を繋ぎ合わせてなる(5)記載のローラ巻着用ラビングシート、
(7)ラビング布の継目が直線状であり、かつ該ラビング布の継目のラビング方向に対する角度が0度以上45度以下である(6)記載のローラ巻着用ラビングシート、
(8)ラビング布として、地布にパイルをファーストパイルの様式に組織して製織されたベルベット織物であって、前記パイルがコットン、レーヨン、酢酸セルロース、ポリノジック、テンセル、ナイロン、ポリエステル及びビニロンの中から選ばれる繊維からなり、かつ前記地布を構成する地糸の経糸及び緯糸の両方若しくは一方が熱可塑性合成繊維からなるものを用いる(5)〜(7)のいずれかに記載のローラ巻着用ラビングシート、及び
(9)ラビング布の布端縁が溶断され、この端縁において地布を構成する熱可塑性合成繊維からなる地糸が他の地糸と相互に融着状態にあるか、あるいは地糸の熱可塑性合成繊維が溶融により変形された状態にある(8)記載のローラ巻着用ラビングシート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液晶表示装置の配向膜などをラビング処理するためのラビング布をローラに巻着するのに用いられ、ローラとの界面における両面粘着テープの浮きなどの発生を抑制して配向むらを低減させうるラビング布貼付け用両面粘着テープ、及び該両面粘着テープと1枚以上のラビング布が一体化され、大型ラビングローラに対応し得るローラ巻着用ラビングシートを提供することができる。
また、前記本発明のローラ巻着用ラビングシートにおいては、ラビング布として使用されるベルベット織物は、地布を構成する地糸を選択することにより、ラビング布の切断に熱溶融切断方法を採用することで、切断された地糸同士が溶融接着し、あるいは地糸の先端部が球状又は偏平状などの変形状態になり、パイルの剥離や脱落を防ぐことが可能となり、その結果、配向瑕や配向むらをより一層低減することができ、長尺のラビングローラに対しても効果的に対応し得るなどの効果を奏する。
- 【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】複数のラビング布を繋ぎ合わせる方法の1例を示す説明図である。
【図2】本発明のローラ巻着用ラビングシートの構成の1例を示す断面図である。
【図3】V字型パイルのベルベット織物の組織図である。
【図4】ファーストパイルのベルベット織物の組織図である。
【図5】実施例におけるラビング試験方法を示す説明図である。
- 【公開番号】特開2012−21160(P2012−21160A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【発明の名称】ラビング布貼付け用両面粘着テープ及びそれを貼付したローラ巻着用ラビングシート
- 【出願番号】特願2011−185641(P2011−185641)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
【識別番号】594197975
【氏名又は名称】大蔵商事株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100075351
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
- ※以下のタグをホームページ中に張り付けると便利です。
-
当サイトではIPDL(特許電子図書館)の公報のデータを著作権法32条1項に基づき公表された著作物として引用しております、
収集に関しては慎重に行っておりますが、もし掲載内容に関し異議がございましたらお問い合わせください、速やかに情報を削除させていただきます。