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車両用内接歯車型オイルポンプ
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- 【要約】
【課題】油圧室内の油圧の急激な上昇を防止しつつ、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制することができる車両用内接歯車型オイルポンプを提供する。
【解決手段】油圧室54の全体が第1高圧吐出油路68と第1低圧吐出油路70との間に位置させられるときにおいて、その油圧室54と第1高圧吐出油路68とがそれぞれ連通させられるように、ポンプ室58の側面60に形成された第1油逃がし油路76を有することから、油圧室54が第1高圧吐出油路68と第1低圧吐出油路70との間を通過するときには、その油圧室54内の油圧が第1油逃がし油路76を通じて第1高圧吐出油路68へ逃がされ、上記油圧室54内の油圧値が第1高圧吐出油路68内の油圧値と同じ値に維持されるので、内周歯48と外周歯42との間を通じて、第1高圧吐出油路68から上記油圧室54へ油が流れ込むことが抑制される。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周歯を有し、一軸心まわりに回転可能に設けられたドライブギヤと、該ドライブギヤの外周歯に噛み合わされた内周歯を有して前記一軸心から偏心した偏心軸心まわりに回転可能に設けられ、該ドライブギヤにより回転駆動される円環状のドリブンギヤと、該ドリブンギヤおよび前記ドライブギヤが収容させられたポンプ室と、該ポンプ室内から油をそれぞれ吐出するために該ポンプ室の側面に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられた高圧吐出油路および低圧吐出油路とを有するハウジングとを、備え、前記内周歯と外周歯との噛合隙間によって周方向に形成された複数の油圧室が前記ドライブギヤおよびドリブンギヤの回転に伴って所定の回転方向に移動させられ、該油圧室の容積が減少させられる過程で該油圧室が前記高圧吐出油路および低圧吐出油路に連通させられる型式の車両用内接歯車型オイルポンプであって、
前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が前記高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、該所定の油圧室と該高圧吐出油路とが連通させられるように、前記ポンプ室の側面に形成された油逃がし油路を含むことを特徴とする車両用内接歯車型オイルポンプ。
【請求項2】
前記高圧吐出油路は、前記低圧吐出油路に対して前記回転方向の後方側に設けられ、
前記油逃がし油路は、前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が前記高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、前記高圧吐出油路の前記回転方向の前方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向外側から該回転方向の前方側へ周方向に延設されて、先端部が該所定の油圧室に連通させられる外側周方向溝と、前記高圧吐出油路の前記回転方向の前方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向内側から該回転方向の前方側へ周方向に延設されて、先端部が該所定の油圧室に連通させられる内側周方向溝との少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項1の車両用内接歯車型オイルポンプ。
【請求項3】
前記高圧吐出油路は、前記低圧吐出油路に対して前記回転方向の前方側に設けられ、
前記油逃がし油路は、前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が前記高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、前記高圧吐出油路の前記回転方向の後方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向外側から該回転方向の後方側へ周方向に延設されて、先端部が該所定の油圧室に連通させられる外側周方向溝と、前記高圧吐出油路の前記回転方向の後方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向内側から該回転方向の後方側へ周方向に延設されて、先端部が該所定の油圧室に連通させられる内側周方向溝との少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項1の車両用内接歯車型オイルポンプ。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧吐出油路および低圧吐出油路を含む車両用内接歯車型オイルポンプに関し、特に、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外周歯を有し、一軸心まわりに回転可能に設けられたドライブギヤと、そのドライブギヤの外周歯に噛み合わされた内周歯を有して前記一軸心から偏心した偏心軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ドライブギヤにより回転駆動される円環状のドリブンギヤと、そのドリブンギヤおよび前記ドライブギヤが収容させられたポンプ室と、そのポンプ室内から油をそれぞれ吐出するためにそのポンプ室の側面に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられた高圧吐出油路および低圧吐出油路を有するハウジングとを備え、前記内周歯と外周歯との噛合隙間によって周方向に形成された複数の油圧室が前記ドライブギヤおよびドリブンギヤの回転に伴って所定の回転方向に移動させられ、前記油圧室の容積が減少させられる過程で前記油圧室が前記高圧吐出油路および低圧吐出油路に順次連通させられる型式の車両用内接歯車型オイルポンプが知られている。たとえば、特許文献1に記載されたものがそれである。
【0003】
上記低圧吐出油路の作動油は、その下流側に設けられる例えばレギュレータ等の油圧調節装置により、高圧吐出油路の作動油と合流させられるか、または油路内の油圧が高圧吐出油路内の油圧よりも相対的に低い低油圧に維持されるかが、切り換えられるようになっている。そして、オイルポンプの吐出先に設けられる油圧回路において、相対的に高油圧の作動油の消費量が高圧吐出油路からの吐出量だけで足りる場合には、低圧吐出油路の作動油は上記低油圧に維持されて、例えば潤滑や冷却のために用いられる。また、相対的に高油圧の作動油の消費量が高圧吐出油路からの吐出量だけで足りない場合には、低圧吐出油路の作動油は、高圧吐出油路の作動油と合流させられて前記油圧回路へ供給される。
【0004】
また、前記特許文献1の車両用内接歯車型オイルポンプは、前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が前記高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、その所定の油圧室と低圧吐出油路とが連通させられるように、前記ポンプ室の側面に形成された油逃がし溝を含むものである。これによれば、上記所定の油圧室が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間を通過するときに昇圧しようとするその所定の油圧室内の作動油が上記油逃がし溝を通じて低圧吐出油路へ逃がされるので、閉じ込み状態とされた油圧室の容積が減少させられることでその油圧室内の油圧が急激に上昇することを阻止し、その油圧室内の油圧上昇に起因してオイルポンプの駆動トルクが増大することを阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−127569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の車両用内接歯車型オイルポンプでは、低圧吐出油路内の油圧が前記低油圧に維持されている場合において、所定の油圧室が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間を通過するときには、その所定の油圧室内の作動油が油逃がし溝を通じて低圧吐出油路へ逃がされるため、上記所定の油圧室内の油圧値が上記低油圧またはそれに近い状態まで低下させられる。そのため、上記所定の油圧室内の油圧値とその所定の油圧室に隣接し且つ高圧吐出油路に連通された油圧室内の油圧値との圧力差が拡大することに起因して、内周歯と外周歯との間(チップクリアランス)を通じて高圧吐出油路から上記所定の油圧室へ油が流れ込み、すなわち油洩れが発生して、高圧吐出側の容積効率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、油圧室内の油圧の急激な上昇を防止しつつ、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制することができる車両用内接歯車型オイルポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a-1) 外周歯を有し、一軸心まわりに回転可能に設けられたドライブギヤと、(a-2) そのドライブギヤの外周歯に噛み合わされた内周歯を有して前記一軸心から偏心した偏心軸心まわりに回転可能に設けられ、前記ドライブギヤにより回転駆動される円環状のドリブンギヤと、(a-3) そのドリブンギヤおよび前記ドライブギヤが収容させられたポンプ室と、そのポンプ室内から油をそれぞれ吐出するためにそのポンプ室の側面に周方向の所定の間隔を隔ててそれぞれ開口させられた高圧吐出油路および低圧吐出油路とを有するハウジングとを、備え、(a-4) 前記内周歯と外周歯との噛合隙間によって周方向に形成された複数の油圧室が前記ドライブギヤおよびドリブンギヤの回転に伴って所定の回転方向に移動させられ、前記油圧室の容積が減少させられる過程で前記油圧室が前記高圧吐出油路および低圧吐出油路に連通させられる型式の車両用内接歯車型オイルポンプであって、(b) 前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が前記高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、前記所定の油圧室と該高圧吐出油路とが連通させられるように、前記ポンプ室の側面に形成された油逃がし油路を含むことにある。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a) 前記高圧吐出油路は、前記低圧吐出油路に対して前記回転方向の後方側に設けられ、(b) 前記油逃がし油路は、前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が前記高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、前記高圧吐出油路の前記回転方向の前方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向外側から前記回転方向の前方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる外側周方向溝と、前記高圧吐出油路の前記回転方向の前方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向内側から前記回転方向の前方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる内側周方向溝との少なくとも一方を備えることにある。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、(a) 前記高圧吐出油路は、前記低圧吐出油路に対して前記回転方向の前方側に設けられ、(b) 前記油逃がし油路は、前記複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が前記高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、前記高圧吐出油路の前記回転方向の後方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向外側から前記回転方向の後方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる外側周方向溝と、前記前記高圧吐出油路の前記回転方向の後方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向内側から前記回転方向の後方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる内側周方向溝との少なくとも一方を備えることにある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる発明の車両用オイルポンプによれば、複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、その所定の油圧室と高圧吐出油路とが連通させられるように、ポンプ室の側面に形成された油逃がし油路を含むことから、低圧吐出油路内の油圧が所定の低油圧まで低下させられている場合において、所定の油圧室が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間を通過するときには、その所定の油圧室内の作動油が油逃がし油路を通じて高圧吐出油路へ逃がされて、上記所定の油圧室内の油圧値が高圧吐出油路と同じ所定の高油圧に維持される。そのため、上記所定の油圧室内の油圧値とその所定の油圧室に隣接し且つ高圧吐出油路に連通された油圧室内の油圧値との圧力差が拡大することなく、内周歯と外周歯との間(チップクリアランス)を通じて高圧吐出油路から上記油圧室への油洩れが発生しない。それ故に、油圧室内の油圧の急激な上昇を防止しつつ、高圧吐出側の容積効率の低下を抑制することができる。
【0012】
また、請求項2にかかる発明の車両用オイルポンプによれば、前記高圧吐出油路は、前記低圧吐出油路に対して前記油圧室の回転方向の後方側に設けられ、前記油逃がし油路は、複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、高圧吐出油路の前記回転方向の前方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向外側から前記回転方向の前方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる外側周方向溝と、高圧吐出油路の前記回転方向の前方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向内側から前記回転方向の前方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる内側周方向溝との少なくとも一方を備えることから、内周歯と外周歯との噛合位置を挟んで周方向に隣接する油圧室同士がその内周歯と外周歯との噛合によって所定の油密状態を維持させられつつも、所定の油圧室が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間を通過するときには、その所定の油圧室内の作動油を外側周方向溝または内側周方向溝を通じて高圧吐出油路へ逃がすことができる。
【0013】
また、請求項3にかかる発明の車両用オイルポンプによれば、前記高圧吐出油路は、前記低圧吐出油路に対して前記油圧室の回転方向の前方側に設けられ、前記油逃がし油路は、複数の油圧室のうちの所定の油圧室の全体が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間に位置させられるときにおいて、高圧吐出油路の前記回転方向の後方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向外側から前記回転方向の後方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる外側周方向溝と、高圧吐出油路の前記回転方向の後方側端面のうちの前記内周歯と外周歯との噛合位置よりも径方向内側から前記回転方向の後方側へ周方向に延設されて、先端部が前記所定の油圧室に連通させられる内側周方向溝との少なくとも一方を備えることから、内周歯と外周歯との噛合位置を挟んで周方向に隣接する油圧室同士がその内周歯と外周歯との噛合によって所定の油密状態を維持させられつつも、所定の油圧室が高圧吐出油路と低圧吐出油路との間を通過するときには、その所定の油圧室内の作動油を外側周方向溝または内側周方向溝を通じて高圧吐出油路へ逃がすことができる。
- 【公開番号】特開2012−2189(P2012−2189A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【発明の名称】車両用内接歯車型オイルポンプ
- 【出願番号】特願2010−140016(P2010−140016)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】豊興工業株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
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