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鉄道車両の貫通開き戸支持構造
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- 【要約】
【課題】部品点数が少なく、貫通開き戸の取り付け及び調整に要する時間を少なくできる鉄道車両の貫通開き戸支持構造を提供する。
【解決手段】車体1は、正面部に貫通路用開口1aを有する。この貫通路用開口1aの車体内方側に車両上下方向に延びる貫通路柱2A,2Bが設けられている。貫通開き戸4の下部に対し一端部(回転軸14A,14B)が、貫通柱2Bに対し他端部(回転軸15A,15B)がそれぞれ回転軸芯同士が平行でかつずれるように上側および下側の開閉リンク3A,3Bが回転可能に取り付けられ、貫通開き戸4が、貫通路用開口1aを閉塞しているときの向きを維持して開閉される。開閉リンク3A,3Bの各端部は、貫通開き戸4および貫通路柱2Bに取り付けられた取付座11,21の取付基準面11a,21aに回転可能に取り付けられる。
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- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の正面部に貫通路用開口が形成され、前記貫通路用開口が貫通開き戸にて略平行リンク機構の動作を行うリンク機構を介して開閉可能に閉塞されている鉄道車両の貫通開き戸支持構造であって、
前記車体は、前記貫通路用開口の車体内方側に車両上下方向に延びる柱部材を有し、
前記リンク機構は、前記貫通開き戸の下部に対し一端部が、前記柱部材に対し他端部がそれぞれ回転軸の軸芯同士が平行でかつずれるように回転可能に取り付けられる第1および第2の開閉リンクを有し、
前記貫通開き戸が、前記リンク機構によって、前記貫通路用開口を閉塞しているときの向きを維持して開閉される構成とされていることを特徴とする鉄道車両の貫通開き戸支持構造。
【請求項2】
前記柱部材は、前記貫通路用開口の車体内方側に設けられ車両上下方向に延びる貫通路柱であり、
前記貫通路柱に、取付基準面を有する車体側取付座が取り付けられ、
前記車体側取付座の取付基準面に前記第1および第2の開閉リンクの他端部が回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の貫通開き戸支持構造。
【請求項3】
前記貫通開き戸は、車体内方側に、取付基準面を有する開き戸側取付座が取り付けられ、
前記開き戸側取付座の取付基準面に前記第1および第2の開閉リンクの一端部が回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両の貫通開き戸支持構造。
【請求項4】
前記第1および第2の開閉リンクのうち一方の開閉リンクは、他方の開閉リンクよりも車両上下方向の長さが長く、板厚の厚いことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両の貫通開き戸支持構造。
【請求項5】
前記第1および第2の開閉リンクは,上下に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両の貫通開き戸支持構造。
【請求項6】
前記一方の開閉リンクの上下方向中間部に開口があり、前記他方の開閉リンクが前記一方の開閉リンクの前記開口を通して、回転可能に取付けられていることを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両の貫通開き戸支持構造。
【請求項7】
前記第1および第2の開閉リンクの各端部における回転軸は、含油軸受を介して回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の鉄道車両の貫通開き戸支持構造。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の貫通開き戸支持構造に関するもので、特に正面形状が流線形状のものに適する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、先頭車両あるいは最後尾車両となる場合には、車体正面部(車体前面部あるいは車体後面部)には、緊急避難時において脱出口として貫通開き戸を開閉可能に取り付ける場合がある。そして、このような脱出口は法規で最小開口幅が規定されており、最小開口幅を確保するためには貫通開き戸を大きく開閉する必要がある。
【0003】
ところで、近年、デザイン性を重視して、先頭車両あるいは最後尾車両の正面形状は流線形状になることが多い。その場合には、貫通開き戸を設ける部分が流線形状となり、貫通開き戸が前記流線形状の一部を形成することになる。
【0004】
このように、貫通開き戸が流線形状の一部を形成する場合には、開閉動作の際に単純な動線を描く引戸の形式や回転開閉戸の形式とすることが困難で、プラグドア(戸袋が無く、リンク機構で車体の外側に開き、閉じたときには車体の内側に移動して開口部にはまり込み、車体外面との段差がなくなる方式の戸)とすることが多い。このようなプラグドアとする場合には、貫通開き戸は100kg程度の重量物となるため、下記のような構造が今まで採用されている。
【0005】
(i)車体の正面壁体の近傍床面と扉上部とに上下ガイドレールを設けて開き戸の動線を規制し、床面側の下ガイドレールに重量を支持させる(例えば特許文献1参照)。
【0006】
(ii)開き戸上下にリンクを取り付ける。
【0007】
(iii)開き戸上下部にリンクを取り付け、開き戸側にリニアガイドを取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−331928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記(i)の場合には、上下にガイドレールを設けるので、部品点数が多くなり、取り付け及び調整に時間がかかる。
【0010】
前記(ii)の場合には、部品点数は少なくなるが、取り付け及び調整に時間がかかる。
【0011】
前記(iii)の場合は、部品点数は前記(i)と(ii)との間の数であるが、開き戸側に取り付けるリニアガイドのコストが高い。
【0012】
本発明は、部品点数が少なく、貫通開き戸の取り付け及び調整に要する時間を少なくできる鉄道車両の貫通開き戸支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、車体の正面部に貫通路用開口が形成され、前記貫通路用開口が貫通開き戸にて略平行リンク機構の動作を行うリンク機構を介して開閉可能に閉塞されている鉄道車両の貫通開き戸支持構造であって、前記車体は、前記貫通路用開口の車体内方側に車両上下方向に延びる柱部材を有し、前記リンク機構は、前記貫通開き戸の下部に対し一端部が、前記柱部材に対し他端部がそれぞれ回転軸の軸芯同士が平行でかつずれるように回転可能に取り付けられる第1および第2の開閉リンクを有し、前記貫通開き戸が、前記リンク機構によって、前記貫通路用開口を閉塞しているときの向きを維持して開閉される構成とされていることを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、貫通開き戸の下部や貫通路用開口の車体内方側の柱部材に対し、第1および第2の開閉リンクの端部が、回転軸の軸芯がずれるように取り付けられているので、部品点数を多くすることなく、貫通開き戸の取り付け及び調整に要する時間を少なくして、前記貫通開き戸が、前記貫通路を閉塞しているときの向きを維持して開閉されるようにすることができる。
【0015】
特に、貫通開き戸の下部に対し第1および第2の開閉リンクを設けているので、貫通開き戸を含む車体の正面部の下部が前方に突出していることによって生ずるデッドスペースを有効に利用して、第1および第2の開閉リンクを配置することができる。
【0016】
請求項2に記載のように、前記柱部材は、前記貫通路用開口の車体内方側に設けられ車両上下方向に延びる貫通路柱であり、前記貫通路柱に、取付基準面を有する車体側取付座が取り付けられ、前記車体側取付座の取付基準面に前記第1および第2の開閉リンクの他端部が回転可能に取り付けられていることが望ましい。
【0017】
このようにすれば、車体がもともと備える貫通路柱を利用することができ、部品点数の低減に有利である。また、貫通路柱の製作上の公差に対しては貫通路柱は製作誤差が比較的大きくなる傾向があるものの、貫通路柱に1つの車体側取付座(第1および第2の開閉リンクに共通する取付座)を取り付け、その車体側取付座の取付基準面(例えば鉛直面)に対し第1および第2の開閉リンクの他端部がそれぞれ取り付けられるので、第1および第2の開閉リンクの他端部側での、回転中心の位置調整作業が容易になる。
【0018】
請求項3に記載のように、前記貫通開き戸は、車体内方側に、取付基準面を有する開き戸側取付座が取り付けられ、前記開き戸側取付座の取付基準面に前記第1および第2の開閉リンクの一端部が回転可能に取り付けられていることが望ましい。
【0019】
このようにすれば、貫通開き戸の車体内方側に1つの開き戸側取付座を取り付け、その開き戸側取付座の取付基準面(例えば鉛直面)に対し第1および第2の開閉リンクの一端部がそれぞれ取り付けられるので、貫通開き戸の、貫通路柱の製作上の公差に対する製造誤差の大小にかかわらず、第1および第2の開閉リンクの一端部側での、回転中心の位置調整作業が容易になる。このように製作されることによって、前記車体側取付座、開き戸側取付座、第1および第2の開閉リンク、およびそれぞれの開閉リンクの回転軸が、車体および貫通開き戸に取付けられる前に、前もって装置として組み立てて、動作確認をすることができるため、取付後の調整が少なくてもすみ、高い組立精度の装置が製作可能となる。
【0020】
これらの場合は、請求項4に記載のように、前記第1および第2の開閉リンクのうち一方の開閉リンクは、他方の開閉リンクよりも車両上下方向の長さが長く、板厚の厚いことが好ましい。
【0021】
このようにすれば、貫通開き戸の荷重を主として一方の開閉リンクで安定して支持し、他方の開閉リンクで貫通開き戸が傾かないように支持できるので、貫通開き戸の回転中心の位置調整作業を容易にするのに有利であり、閉じた状態でのシール性を確保する上でも有利である。
【0022】
この場合、請求項5に記載のように、前記第1および第2の開閉リンクは、上下に配置されている構成とすることができる。
【0023】
このようにすれば、上下に配置するだけであるので、構造が簡単である。
【0024】
請求項6に記載のように、前記一方の開閉リンクの上下方向中間部に開口があり、前記他方の開閉リンクが前記一方の開閉リンクの前記開口を用いて、回転可能に取付けられている構成とすることもできる。
【0025】
このようにすれば、他方の開閉リンクが、一方の開閉リンクの開口を用いて回転可能に取付けられているので、上下方向においてコンパクト化が図れる。
【0026】
請求項7に記載のように、前記第1および第2の開閉リンクの各端部における回転軸は、含油軸受(オイルレスベアリング)を介して回転可能に取り付けられていることが望ましい。
【0027】
このようにすれば、貫通開き戸の重量が重くても、貫通開き戸の開閉動作をスムーズに行うことができるとともに、長期間にわたってメンテナンスが省略できる。また通常のボールベアリング等を使用することも可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、貫通開き戸の下部や貫通路用開口の車体内方側の柱部材に対し、第1および第2の開閉リンクの端部が、回転軸の軸芯がずれるように取り付けられているので、部品点数を多くすることなく、貫通開き戸の取り付け及び調整に要する時間を少なくして、前記貫通開き戸が、前記貫通路用開口を閉塞しているときの向きを維持して開閉されるようにすることができる。
- 【公開番号】特開2012−6530(P2012−6530A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【発明の名称】鉄道車両の貫通開き戸支持構造
- 【出願番号】特願2010−145778(P2010−145778)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
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