交互共重合ポリマー、及び有機光電変換素子
- 【要約】
【課題】従来のp型半導体材料と比べて開放電圧が更に向上し得る新規有機材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、交互共重合ポリマー、及び、この交互共重合ポリマーを含む光電変換層を有する、有機光電変換素子。
(式(I)中、Rは一価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、Dは炭素骨格からなる多環式芳香族化合物もしくはヘテロ元素を含む複素多環式芳香族化合物由来の構成単位を示す。nは繰り返し単位の数を示し、2〜25である。)
- 【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、交互共重合ポリマー。
【化1】
(式(I)中、Rは一価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、Dは炭素骨格からなる多環式芳香族化合物もしくはヘテロ元素を含む複素多環式芳香族化合物由来の構成単位を示す。nは繰り返し単位の数を示し、2〜25である。)
【請求項2】
前記一般式(I)中のRが、炭素数1〜12のアルキル基又は置換アルキル基である、請求項1に記載の交互共重合ポリマー。
【請求項3】
前記一般式(I)中のnが、3〜20である、請求項1又は2に記載の交互共重合ポリマー。
【請求項4】
前記一般式(I)中のDが、フルオレン構造又はカルバゾール構造を有する芳香族を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の交互共重合ポリマー。
【請求項5】
前記一般式(I)中のDが、下記一般式(IIa)又は(IIIa)で表される構成単位である、請求項4に記載の交互共重合ポリマー。
【化2】
(式(IIa)中のR1、R2、及び(IIIa)中のR3は、それぞれ独立に一価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(IIa)又は(IIIa)中のR1〜R3が、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は置換アルキル基である、請求項5に記載の交互共重合ポリマー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の交互共重合ポリマーを含む光電変換層を有する、有機光電変換素子。
- 【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交互共重合ポリマー、及びその交互共重合ポリマーからなる光電変換層を有する有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模での問題であるエネルギー問題を解決するためのエネルギー源の一つとして、環境負荷が少なく、半永久的に供給される太陽光エネルギーの利用が活発に研究されている。その中でも、特に、有機半導体材料を用いた有機太陽電池は、軽量、安価、フレキシブルな素子の作製が可能であり、現在の主流であるシリコン半導体等の無機系材料を用いた太陽電池に代わる次世代の太陽電池として期待されている。
このような背景から、有機半導体材料を用いた有機光電変換素子の研究が全世界的に行われており、有機光電変換素子の光電変換効率向上においては、光電変換層を構成する有機半導体材料の電子構造の設計技術が重要であることが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、有機薄膜太陽電池の効率向上において、n型半導体材料であるフラーレンと組合せるp型半導体材料の適切な設計が重要であると記載されている。ここでいう適切な設計とは、本来電子ドナー性が重要であるp型ポリマーの骨格に、敢えて弱い電子アクセプターを適切な様式で導入することで、ポリマーの最高被占軌道(HOMO)準位を深く(負の方向に絶対値を大きくする)させ、n型フラーレンの最低空軌道(LUMO)準位との差を大きくすることを指す。ポリマーのHOMO準位とフラーレンのLUMO準位のエネルギー差は素子特性を大きく左右する開放電圧(Voc)を決定する因子となることから、上記設計は実用化レベルの変換効率達成に向けて有望な手法とみなされている。
【0004】
光電変換層を構成する有機半導体のうち、p型半導体材料については、有機合成的に電子ドナーと電子アクセプターを適切な形態で共有結合させた繰り返し単位を有する交互共重合体を用いることで、太陽光吸収効率の良い2eV程度の狭いバンドギャップが得られ、また、最高被占軌道の準位を深くすることで、素子内で大きな開放電圧(Voc)を得られることが知られている。
例えば、特許文献1では、電子アクセプターとして、チエノチオフェンユニットを組み込んだ交互共重合体を用いた光起電力素子が開示されている。また、特許文献2〜5では、ポリフルオレン誘導体骨格を電子ドナーユニットとして、様々な電子アクセプターユニットと交互共重合して得られた共重合体を用いた有機光電変換素子が開示されている。
【0005】
一方、光電変換層を構成する有機半導体のうち、n型半導体材料については、例えば、特許文献6には、ベンゾトリアゾール骨格を含むπ共役ポリマーをn型半導体材料として用いた有機デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−158921号公報
【特許文献2】特開2008−106239号公報
【特許文献3】特開2008−106240号公報
【特許文献4】WO2005/060012号公報
【特許文献5】特開2009−215349号公報
【特許文献6】特開2006−077171号公報
【非特許文献1】Brabec, C. J. et al., Advanced Materials, 2009年, 21巻, 1ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように光電変換層を構成する有機半導体材料について様々な開発がなされているが、開放電圧を更に向上し得る有機半導体材料が求められている。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、従来のp型半導体材料と比べ、開放電圧を更に向上し得る新規有機材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記に示す交互共重合ポリマーが、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記[1]〜[7]を提供するものである。
[1]下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、交互共重合ポリマー。
【化1】
(式(I)中、Rは一価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、Dは炭素骨格からなる多環式芳香族化合物もしくはヘテロ元素を含む複素多環式芳香族化合物由来の構成単位を示す。nは繰り返し単位の数を示し、2〜25である。)
[2]前記一般式(I)中のRが、炭素数1〜12のアルキル基又は置換アルキル基である、上記[1]に記載の交互共重合ポリマー。
[3]前記一般式(I)中のnが、3〜20である、上記[1]又は[2]に記載の交互共重合ポリマー。
[4]前記一般式(I)中のDが、フルオレン構造又はカルバゾール構造を有する芳香族を含む、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の交互共重合ポリマー。
[5]前記一般式(I)中のDが、下記一般式(IIa)又は(IIIa)で表される構成単位である、上記[4]に記載の交互共重合ポリマー。
【化2】
(式(IIa)中のR1、R2、及び(IIIa)中のR3は、それぞれ独立に一価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表す。)
[6]前記一般式(IIa)又は(IIIa)中のR1〜R3が、それぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基又は置換アルキル基である、上記[5]に記載の交互共重合ポリマー。
[7]上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の交互共重合ポリマーを含む光電変換層を有する、有機光電変換素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の交互共重合ポリマーを含む光電変換層を用いた有機光電変換素子は、従来のp型半導体材料を用いた有機光電変換素子に比べ、得られる開放電圧を更に向上させることができる。
- 【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の有機光電変換素子の一例を示す図である。
- 【公開番号】特開2012−77116(P2012−77116A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【発明の名称】交互共重合ポリマー、及び有機光電変換素子
- 【出願番号】特願2010−221068(P2010−221068)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
- 【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
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